203 :ThankYou! ◆NN1orQGDus :2008/10/13(月) 21:24:18 ID:zYtgl11G
“公式×もえ”
「なぁ、有賀。これ読んで欲しいんやけど。……俺が書いてん」
始業前に隣の席の取江ららがおずおずと紙切れを差し出してきた。
疑問に思う事が三つ。
なんで彼女の一人称は俺なんだろうか。一学期は私、夏休み明けは僕、そして今日は俺。変わりすぎだ。
それに微妙な言葉遣い。昨日までは語尾に『なり』をつけていた筈だ。
そして、この紙切れの開けるなと言わんばかりの奇妙奇天烈摩訶不思議な折り畳みかた。
あまりにも謎過ぎる。
「今読んでええんやで?」
キラキラと目を輝かせて期待されても困る。
「えーと、何々……?」
一面にビッシリと書き連ねられているのは小説のようだ。
何処かで見た事がある主人公が何処かで見たような超能力で何処かで見たような組織を叩き潰して世界を救う。
何処かで見たような話だ。しかも微妙に同性愛らしき香りがする。ひょっとしたらネタなのかも知れない。
正直な話、何処を縦読みすれば良いのか悩む。ネタに真面目に返事して良いのだろうか。悩む。
「なあなあ、俺の自信作やってん。どうやった?」
「ああ、面白いんじゃないか?」
それなりに。そこそこ。或いはそういうのが好きな人には。
付け加えたい言葉が喉まで上がって来るけどゴクンと飲み干した。
「何処が面白いと思ったん?」
ざっと読んだだけなのに、感想を強要されるのはある意味拷問だ。
それでもどうにかしないとまずいだろう。
「あー、ラストの主人公と友人の会話シーンかな」
「あー、あれな。友達じゃなくてヒロインやねん」
「ああ、成る程」
「せや。ああ、成る程の仲なんや。うれしいわぁ、有賀もわかってくれるんやなあ」
俺が何を解っているんだろうか。
ああ、なるほど。アア、ナルホド。アアナルホド……。
解りたくなかった。なんで俺はどうしようもなく仕方がないんだろう。
取江は我が意を得たりとペラペラと熱弁を振るい始めた。神聖な学舎には不適切な方程式の説明を始める
攻めだの受けだの、日本語として間違っている対義語を懇切丁寧に使っている。
クラスメートは俺たちを変な目で見ている。そしてドン引きしている。
――いったい俺にどうしろと?
204 :ThankYou! ◆NN1orQGDus :2008/10/13(月) 21:26:05 ID:zYtgl11G
投下終了。
【キャラ紹介】
取江らら【とりえ・らら】
丁のクラスメート。普通に可愛いツインテール。重度の中二病発症者。趣味は痛い創作。物凄く性格に難あり。
最終更新:2008年10月20日 23:16