BACK INDEX NEXT


259 :Thank You! ◆NN1orQGDus :2008/10/28(火) 20:03:48 ID:ybuorth6

“こどもえ”

 クラスの男子――逢瀬呂人ほか数名がスカートめくりなんてセクハラめいた悪戯をしてきた。
 異性の体に興味がある年頃だから仕方ないと思うけど、なんだかムカつく。
 お子様に興味を持たれても傍迷惑な話だし、出来れば近所の“お兄ちゃん”に興味を持って欲しい。
 そんな事を考えてしまう私は我ながらかなりのワガママだと思ってしまう。
「……ガキね」
 ニヤニヤしてる逢瀬を一瞥して自分の席にもどる。
「菱ちゃん大丈夫?」
 心配してくれるのは綿貫舞夢ちゃんだ。太い眉毛をハの字にして泣きそうなな顔をしている。
「まぁーったく。アイツラは……」
 握り拳で怒っているのは那園ゆんちゃん。逢瀬を始めとした男子をキッと睨んでる。
「理恵のパンツエロパンツー!」
 逢瀬の腰巾着の太田昆が囃し立てて来た。
「お前ら、いい加減にしろよ!」
 ゆんちゃんは怒鳴り返してビシッと指差す。ゆんちゃんはかなり気が短い。多分堪忍袋の緒は切れやすい粗悪品なんだろう。
「菱戸のエロパンツをめくるお前らは変態だ! 菱戸がエロパンツ履いてたら悪いのか?」
 舞夢ちゃんはオロオロと慌ててる。涙を浮かべて泣きそうだ。
「菱ちゃんはエロパンツなの……?」
 なんか違う。論点がスカートめくりの是非からエロパンツになってる。
 私が履いてるのは白と水色のしましまスキャンティだ。決してエロパンツなんかじゃない。ブラはそれに合わせたい所だけどお兄ちゃんを悩殺する為にしてない。
 間違ってるかも知れないけど、私にとってはそれが正義だ。
「お前らそこまでだ。俺が――判断してやる」
 キラリと歯が光るような爽やかな笑顔で仲裁に入る男子が一人。
 木津根大だ。さぁ、プリーズと指をワキワキと動かしている。
 ――意味が解らない。
 私を無視して勝手に盛り上がっている面々を無視する事に決めた。
「――変態と話す舌はないわ」
 私は笑顔で返してランドセルからパステルカラーのブックカバーの文庫本を一冊取り出す。お兄ちゃんに勧められた本だ。
 doブックスと言うライトノベルのレーベルの本で、新人小説家の短編集――と言うよりは、競作的なアンソロジー集に近い。
 読みやすいから読んでみなよ、と勧められたけど、読みやすくて何度も読み直してしまう程だ。

 夏休みに作った押し花のしおりが挟んであるページを捲ると後ろに人の気配を感じた。
 振り向くと逢瀬が後ろから本を取り上げようとして来たから私は取られないように胸に抱いた。
「エロパンツの次はエロ小説かよ?」
 ――大好きなお兄ちゃんに勧められた本を馬鹿にされた。
 パリン、と私の中で何かが音を立てて弾けた。
「逢瀬、アンタ何がしたいのよ? 人に物を頼む時は土下座でしょ? ホラ、早くしなさいよ! 床を舐めなさいよ!」
「……え? ……ああ……うん」
「何が見たいのか言ってみなさいよ!」
「え……エロパンツ?」
「パンツ見たいなんて卑しい変態ね!」
 皆が私を見る視線が違って来た。教室がざわざわざわめいている。
 ――何だか気持いいな。罵倒するのって。










【キャラ紹介】

逢瀬呂人(おうせ・ろと)
理恵のクラスメート。エロ1号。

太田昆(おおた・こん)
逢瀬の腰巾着。通称オタ。

木津根大(きつね・まさる)
逢瀬の腰巾着2号。

綿貫舞夢(わたぬき・まいむ)
理恵のクラスメート。太い眉毛がチャームポイント。

那園ゆん(なぞの・ゆん)
理恵のクラスメート。怒りっぽくて男勝り。



BACK INDEX NEXT


タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2008年10月28日 22:20