迷い猫
Author:初代スレ>>37
37 :1/1:2008/09/01(月) 22:27:59 ID:cMYl3CGb
「クソ暑いもんだな、全く」
頭上でサンと輝くお天道様を睨み付けたところで事態が改善されるはずもないが、
この纏わり付くような湿度と気温の中にあってはそうせざるを得ないというもんだぜ。
大体、暦上ではもう秋なんだぞ?
少しは遠慮して休暇でも取りやがれってんだ。
「クソッ……」
再び呟いてみる。
すると俺様の目の前に居た高校生の坊主が、怪訝にこちらを窺ってきやがった。
@
なんだってんだ全く。
校門の前なんかに突っ立ってないで、さっさと教室へでも行っちまえよ。
俺様は”依頼”で忙しいんだ。お前さんに構っている暇などないんだよ。
その学生の脇、つまりは校門前を素通りしながら”資料”を再確認していく。
名前:ぶっちょむ
概要:三毛猫、雄
特徴:片耳を齧られている
別途で写真同封
そうなのだ、つまり俺様に回された依頼内容は迷い猫の捜索。
そして俺様の職業は探偵。
事件でさえもない下らない依頼内容ではあるが、三毛猫の雄は中々に貴重であり、
ひいては依頼主が小金持ちの御婦人だったので、
売れない探偵業を営んでいる俺様の身としてはシノギを削る為に引き受けるほかなかったのだ。
「胸躍る事件が起きないものかねぇ」
職業柄一人で行動する羽目になる事が多い所為か、気付いた時には独り言が多くなってしまっていた。
悪い癖だとは自認しちゃいるんだがな、今更修正する労力を割くほうが無駄だってもんだ。
「クソッ……」
再三、ギラギラと暴れ狂う光源を睨む。
ああ、分かっているさ。
この季節なのに紺スーツにソフト帽、さらにはサングラスを掛けている俺が悪いってんだろ?
でもな、俺様は探偵なんだよ。
探偵足るもの、先ずは形から入るべきなんだよ。
それがお前に分かるか?
……分かったのなら、少しくらい雲の影に隠れてはくれないかい?
最終更新:2008年09月05日 13:33