なんとか通り探検隊(仮)
 Author:ID:NpVl7MoY(初代スレ>>455)



455 :1/1 なんとか通り探検隊(仮):2008/09/15(月) 06:34:38 ID:NpVl7MoY

「絵画に宿る地縛霊、ねぇ」

肩を竦めると同時に口元を歪める一連の動作。
さらには嘲笑の色を帯びたその眦。

一目でわかった。
ユカリ先輩は私が仕入れて来た”噂”を、根も葉もない風評だと切り捨てたのだ。
けれども、こちらだっておいそれと引き下がる訳にもいかない。
その為に証拠だって手に入れて来たのだから。

「ほら、これを見てくださいって」
机の中の取り出し易い位置に収めておいた写真を取り出し、次いで突き付ける。
「なによコレ?」
流れるように私の手からそれを奪い取った彼女は、あからさまに眉を潜めていた。
それもそうだろう。写真の中に写っているのは単なる一枚の肖像画でしかない。
しかしそれに”いわく”という付加価値が宿れば、それはたちまち証拠となり”噂”と成り得るのだ。
私は若干の高揚感を憶えつつ、身を乗り出すようにして語り始めた。

「それはですね、10年前に飛び降り自殺をした女生徒が描いていた絵画なんです!     →@
 しかもなんと! その女生徒は、うちの学校の生徒だったという話もあるんですよ!」
「はいはい」
「ちゃんと聞いてくださいってー」
「わかったわかった、分かったから袖を離す」
「先輩のそういう所、ミカは好きですよ?」

はぁ、と溜息。
先輩は所謂、逆八方美人で一つ一つのリアクションがオーバーの為に反感を買い易いが、私にとってそれが魅力でもある。
……って、想いに耽っている場合ではなかった。

「それでですね、実はこの絵画、夜になると血の涙を流すんですよ」
「またまた在り来たりな怪談話って訳ね」
「違いますよ! これにもちゃんとした謂れがあってですね、」
「はいはい、取り敢えずチャイムが鳴るからクラスに帰りな」

強制的に話の腰を折られ、まるで犬でも払うかのように手で制された。
もう、いつもマイペースなんだから。
でも、そういう所もミカは好きなんですけどねっ!

「とにかく」
またも夢想の境地に入り掛けていた私だったが、不意に注いで来た先輩の声で現実へと招かれた。
そして私の注意を十二分に引きつけた後、静かに宣ったのだ。

――信じないから、この眼で見るまでは

先輩お決まりの常套句だ。
つまりこれが意味するものは、
「今日の放課後でいいんですか?」
「ま、暇つぶし程度にね」
素っ気ない声での”検証”承諾のサインだ。

良かった。
これで今日も先輩と一緒の時間を過ごす事が出来る。

私は軽やかに一礼を送ると、小躍りする心を抑え切れずにクラスへ向かって走り出したのであった。







456 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/15(月) 06:40:54 ID:NpVl7MoY

携帯については現在が2008年と置いた場合、その10年前なら高校生への普及年度的にもギリギリOKって所だろう









タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2008年09月16日 14:50