予防医学

部品構造


  • 大部品: 予防医学 RD:21 評価値:7
    • 部品: 予防医学とは
    • 部品: リスク・コミュニケーション
    • 部品: SMART
    • 大部品: 疫学 RD:6 評価値:4
      • 部品: 疫学とは
      • 部品: 統計学
      • 部品: 観察研究
      • 部品: 介入研究
      • 部品: システマティック・レビュー
      • 部品: 交絡バイアス
    • 部品: 健康診断
    • 大部品: 食事療法 RD:3 評価値:3
      • 部品: 食事療法とは
      • 部品: 減塩
      • 部品: 禁酒・減酒
    • 部品: 運動療法
    • 大部品: 禁煙 RD:2 評価値:2
      • 部品: 禁煙とは
      • 部品: ニコチン補充療法
    • 大部品: 予防接種 RD:3 評価値:3
      • 部品: 予防接種とは
      • 部品: ワクチン
      • 部品: 健康被害救済制度
    • 部品: 性習慣
    • 部品: 銃(医学)



部品定義


部品: 予防医学とは

予防医学(preventive medicine)とは、地域や集団を対象に知類の健康を増進する予防的介入を専門とした分野である。
予防医学の専門家には、生物統計学(biostatistics)や疫学といった公衆衛生学・組織経営・予防医療の実践が得意でなければならないため、医学以外にも社会学・経済学・行動科学の知識や技術が必要になる。
たとえば、食事療法・運動療法・禁煙など、患者の生活習慣改善には、行動科学の動機づけ面接法(motivational interviewing)が患者の行動変容を促すことに役立てられている。
予防医学の実践を予防医療と呼ぶ。

部品: リスク・コミュニケーション

リスク・コミュニケーションとは、あるリスクに関する情報についてやり取りすることである。
予防医学において、リスク・コミュニケーションの目的は、対象となる相手が、リスクに関する正確な情報にもとづいて、主体的に意思を決定し、行動できるようになることである。
そのためには、患者を過剰に不安がらせたり安心させたりせず、患者の情動を考慮して対話する必要がある。
また、正確な情報を平易な表現でわかりやすく伝えるだけでなく、患者がその情報を信頼し、納得してもらうことが重要である。
そのため、もっている情報はなるべく早く開示したほうが賢明である。
開示できない情報がある場合は、なにが話せないか、なぜ話せないかをはっきりしたほうがよい。
また、わからことを聞かれた場合は、なにがわかっていないのか、それによって起こる最悪の事態はなにか、それに備えてなにをしているかを明確に伝えたほうがよい。
リスク・コミュニケーションの実践には、充分な準備と練習が重要である。
そのため、医療従事者はリスク・コミュニケーションが必要な事態を想定した訓練をおこなうことが望ましい。

部品: SMART

SMARTとは、specific(具体的な)、measurable(測定できる)、achievale(達成できる)、relevent(意義のある)、time-bound(時間制限のある)の略で、目標を設定する際に重要な考え方である。
たとえば「生活習慣の改善のため、毎日体重を測定する」とした場合、それをより具体的に「今日から4週間、毎日お風呂上りに体重を測定し、それを記録する」と具体化し、次回の外来に持ってきてもらうことを約束する。
約束通り毎日測定した場合は感謝の意を伝えることで、行動変容を強化し、継続を促すか、次の改善項目を探してさらなる行動変容へとつなげる。

部品: 疫学とは

疫学(epidemiology)とは、知類を観察して集められた情報を、統計学を駆使して一般法則に集約する知識や技術を集めたものである。
疫学の方法論を用いて、病棟や外来などで患者を対象に研究することを臨床研究と呼ぶ。
また、地域や職場などで住民や職員などを対象に研究することを公衆衛生研究や疫学研究と呼ぶ。
疫学研究の中で、栄養・食べ物・食べ方など、食に関する事柄を扱ったものを栄養疫学研究と呼ぶ。
疫学において、「統計学的に有意差がないこと」は「影響がないこと」と混同されがちだが、観察数が足りないから有意差がない場合もあるため、注意が必要である。
/*/
栄養学や栄養疫学研究において、EBNとはevidence-based nutritionの略で、「エビデンスに基づく栄養学」のことである。
エビデンスとは、サイエンティフィック・エビデンス(scientific evidence)の略で、科学的な研究成果や科学的根拠、科学的に立証された事実などを指す。
研究成果に対し「エビデンスが強い」「エビデンスの質が高い」と述べた場合、バイアスをできるだけ排除した研究であるということである。
バイアスとは、真の値からの系統的な偏りのことを指す。
なお、看護においてはEBNはevidence-based nursing(エビデンスに基づく看護)を指すため、両者を混同しないよう注意が必要である。

部品: 統計学

統計学(statistics)とは、自然現象を数値化し、定量的な一般法則や理論を導き出すための方法を集めたものである。
統計上、その現象が起こることが偶然とは考えにくいと判断する基準となる確率を有意水準と呼ぶ。
有意水準は恣意的に選ばれるが、5パーセントや1パーセント、0.1パーセントなどを選ぶことが多い。
統計上、その現象が起こる確率が有意水準未満であることを「有意差がある」という。
観察数を増やすほど、有意差は出やすくなる。

部品: 観察研究

疫学において、観察研究(observational study)とは、調査対称となる個人や集団に対し、能動的な介入をおこなわず、健康状態や診療記録などをありのまま観察し、その観察データを分析する研究である。
観察研究は、横断研究と縦断研究に分けられる。
横断研究(cross-sectional study)とは、対象者を一度だけ観察する研究である。
それに対し、縦断研究(longitudinal study)とは、対象者を複数回繰り返し観察する研究である。
横断研究は、縦断研究と比べ、経費や時間の面で効率が良いが、原因と結果の因果関係が明確ではなく、因果の逆転が生じやすい欠点がある。
観察研究を前向き研究(prospective study)と後ろ向き研究(retrospective cohort study)に分ける分類もある。
前向き研究とは、現在から未来に向かってデータを収集する研究である。
それに対し、後ろ向き研究とは、過去のデータを収集する研究である。
後ろ向き研究は、前向き研究と比べ、経費や時間の面で効率が良いが、対象者を選ぶ段階で偏りが生じたり、記憶の錯誤があったりと、誤った結論を導き出す恐れがある。
観察研究の欠点は、介入研究と比べ、交絡バイアスが生じやすいことである。
たとえば、人知類の乳児を母乳で育てた場合と粉ミルクで育てた場合を比較した場合、母乳で育てたほうが健康になっていたとする。
もし、「母乳で育てると健康に良い」という情報が流布している場合、健康に関心のある親は乳児に対し、他の健康に良いことを乳児に対し、おこなっていると考えられる。
そのため、乳児が健康になったことは母乳で育てられたからなのか、他の要因が関係しているのか、区別が難しい。
このように観察研究は、他の要因で正しい研究結果が得られない恐れがある。
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症例対照研究(case control study)とは、傷病の有無、つまり負傷・病気になった者とならなかった者のような結果から、その結果の原因や要因と考えられる食事内容や生活習慣などの履歴を面接や記録から確認する研究である。
たとえば、肺がんで亡くなった患者を対象に喫煙歴を調べ、肺がんと喫煙に相関関係があるか調べる研究は、症例対照研究である。
症例対照研究は、後ろ向き研究に分類される。
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コホート研究(cohort study)とは、傷病の原因や要因となりうる食事内容や生活習慣などから、負傷や病気になったか、ならなかったかを追跡する研究である。
コホート研究には、前向きコホート研究と後ろ向きコホート研究があり、単にコホート研究と言った場合、前向きコホート研究を指す場合が多い。
たとえば、喫煙者を研究対象にし、研究開始時点から毎年、肺がんや脳卒中などになっていないか、確認する研究は、前向きコホート研究である。
前向きコホート研究は、症例対照研究と比べ、様々な種類の疾患に対するリスク要因を検討することができる長所がある。
ただし、前向きコホート研究は、病気になる前に研究を始めるため、発症例数の少ない疾患の研究には適さない。

部品: 介入研究

介入研究(interventional study)とは、調査対称となる個人や集団に対し、傷病と因果関係があると考えられる要因に積極的に介入する研究である。
介入研究は、実験疫学(experimental epidemiology)とも呼ばれる。
介入研究は、群間比較試験と交差試験に分けられる。
適切に試験をおこなった場合、介入研究は観察研究よりバイアスの影響が少ないため、信頼性が高いとされている。
ただし、飲酒や喫煙など害のあるリスクを強要することは倫理的に問題があるため、介入研究で調査することはできない。
また、調査する期間が同じ場合、介入試験は観察研究より必要な研究費が高くなる。
そのため、たとえば食物繊維を摂取することが大腸がんの予防につながるかといったような研究の場合、目的の疾患が発症するまで時間がかかることが予想されるため、費用面から充分な期間をとりにくい介入研究では有意義な研究をおこなうことが難しいと考えられる。
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群間比較試験(group comparison study)とは、たとえば薬Xと薬Yを比較する際の薬効を比較する際、X投与群とY投与群に分け、それぞれの薬効や副作用のデータを集め、群の間での結果を比較する試験である。
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交差試験(cross-over study)とは、たとえば薬Xと薬Yを比較する際の薬効を比較する際、同じ対象者に時期を変えてふたつの薬剤を投与し、薬効や副作用を比較する試験である。
対象者は、薬Xを先に投与する群と薬Yを先に投与する群に分ける。
先に投与した薬剤の持ち越し効果を避けるため、二つの薬の間に休養期間を設ける。
交差試験は、薬効の消失に時間がかかる薬には不向きで、完治したり死亡したりする疾患に対する効果検証にも使えない。
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ランダム化比較試験とは、群間比較試験や交差試験をおこなう際、無作為に群を分ける試験である。
たとえば、新薬Xと従来薬Yを比較する際、無作為に対象者を群に分けていない場合、新薬Xのほうが良い成績になるようイカサマをすることができる。
このような不正をする余地をなくすため、二重盲検法が用いられる。
二重盲検法とは、ランダム化比較試験において、無作為に群を分けるための方法である。
二重盲検法では、試験の対象者も観察者も薬Xと薬Yか分からないようにしておこなう。
観察者もどちらがどちらか分からないため、無意識に新薬Xの薬効を高く評価したり、従来薬Yの薬効を低く評価したりする恐れを防ぐことができる。

部品: システマティック・レビュー

システマティック・レビュー(systematic review)とは、過去に行われた研究を網羅的・系統的に調査し、バイアスの恐れを評価しながら、分析・再評価したものである。
システマティック・レビューで、ランダム化比較試験のような特に信頼性の高い研究に限定し、それぞれの研究に重み付けしたうえで、効果指標の値を統計学的手法で定量的に統合したものは、メタアナリシス(meta-analysis)と呼ばれる。
たとえば、複数の研究で結果が異なる場合、メタアナリシスで複数の研究をまとめることで一定の結論を導くことができる。
ただし、メタアナリシスで導き出された結論が正しいとは限らない。
たとえば、メタアナリシスをおこなった時点で対象となった研究で観察数が充分ではない場合、その後におこなわれた大規模なランダム化比較試験で異なる結果が出ることがある。

部品: 交絡バイアス

交絡バイアス(confounding bias)とは、交絡因子により正しい研究結果が得られないことである。
交絡因子(confounding factor)とは、予測因子以外の因子で、転帰に影響を与えるものである。
交絡因子は交絡要因とも呼ばれる。
医学で予測因子(predictor)とは時間的・生物学的に先行している因子、転帰(outcome)とは時間的・生物学的に後行している因子である。
簡単に言うと、負傷や病気などの発生が転帰で、その原因と思われ調査対象となっている因子が予測因子である。
交絡バイアスを防ぐ研究手法としては、対象者の限定やマッチングなどがある。
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対象者の限定(specification)とは、研究対象者が持つであろう交絡因子をできるかぎり取り除く方法である。たとえば、高血圧と脳卒中の関係を調査するとき、喫煙者や高齢者など、高血圧を起こしやすい他の因子を交絡因子として取り除く。
ただし、対象者を限定しているため、研究結果を一般化することが難しいという問題がある。
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マッチング(matching)とは、症例対照研究で使われている方法で、予測因子を持つ群(case)と持たない群(control)を比較する際、予測因子以外の因子を一致させることで、交絡因子を取り除く方法である。
たとえば、心筋梗塞を起こした群と起こしていない群に対して、種族・年齢・性別・喫煙量が等しい例同士と比較する。
マッチングは様々な交絡因子を取り除くことができる長所がある。
反面、すべての対象者をマッチングさせることが難しい。
また、マッチングした因子が交絡因子ではなかった場合、症例対照研究の統計的な価値が減る、オーバーマッチング(overmatching)の問題がある。

部品: 健康診断

健康診断とは、疾患の予防や早期発見・早期治療を目的におこなわれる検査・介入である。
健康診断は、健診とも呼ばれる。
健康診断でおこなわれる検査や介入は様々な種類があり、学術的・臨床的に有効と評価された種類については政庁が受診を推奨している。
健康診断には過剰診断・過剰介入の危険があり、注意が必要である。
たとえば、死ぬまで進行がんにならない成長の遅い早期がんのように、放置しても患者の健康に影響を与えないような疾患は、発見しても健康増進の効果はない。
それどころか発見したことにより、患者が不安を感じ、外科的切除などの予防的介入をおこなう恐れがある。
さらに、その外科的切除によって合併症を発症する危険もある。
そのため、藩国民に対する集団の健康増進を目的として、全体に限りのある医療資源を適切に配分するには、健診の種類や種族・年齢・性別などの組み合わせで特に費用対効果が高い場合のみ、公費負担や助成金が適応される制度とすることが望ましい。
また、推奨されない医療行為については推奨しないことを明確にすることが適切である。
なお、健診の費用対効果を分析する際は、検診した場合としなかった場合のい診察や治療などの総費用を比較するが、医療にかかる直接的な費用のみを含むのか、仕事を休むことによる機会損失などの間接的な費用を含むのかといった、なにを費用に含めるのかによって、分析結果が変わるため、分析結果から結論を出す際は慎重にならなければならない。
特に、医療費や社会構造の異なる他の藩国の費用対効果分析は、自藩国でそのまま使うことは不適切であるため、注意しなければならない。

部品: 食事療法とは

予防医学において、食事療法(alimentary therapy)とは、健康的な食事をおこなうことで健康を増進する、非常に効果的な一次予防策のひとつである。
食事療法は、栄養療法(dietetic therapy)とも呼ばれる。
健康的な食事は種族によって異なるが、適切な量を食べること、健康的な食材を多く食べること、塩分やアルコールを控えることなどがある。
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適切な量を食べるためには食物のカロリー量を可視化することが有効である。
たとえば、マフィン半分は、大きな深鉢の食器に山盛り入ったブロッコリーと同じカロリー量である。
また、500ミリリットルのコーラに含まれる砂糖の量は角砂糖16個分である。
これらの比較によって食材によるカロリー量が明確になる。
カロリー量の多い食材をカロリー量の少ない食材に置き換えることで、見かけ上の食事量を変えずに摂取カロリーを抑えることができる。
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健康的な食材を多く食べるためには、どの食材が健康によいか知る必要がある。
たとえば、玄米を週に200グラム以上摂取する人知類は、月に100グラム未満の人知類と比べ、糖尿病になるリスクが11パーセント低いが、白米の摂取量と糖尿病のリスクには正の相関があるため、白米の摂取量はできるだけ少ないほうがよい。
また、多くの生の果物は糖尿病のリスクを下げるが、フルーツジュースは逆に糖尿病のリスクを上げるというデータがある。
疾患のリスクを上げる食材を、疾患のリスクを下げる食材に置き換えることで、健康的な食事をおこなうことができる。
ただし、乳製品は人知類の前立腺がんや卵巣がんのリスクを上げる恐れがあるが、乳製品のヨーグルトは摂取量が多い人知類ほど糖尿病になるリスクが低い可能性があるなど、同じ食品がある疾患のリスクを上げ、別の疾患のリスクを下げる場合もあるため、注意が必要である。

部品: 減塩

食塩は食品を腐敗から守る天然の防腐剤であるが、過剰な塩分摂取は高血圧・動脈硬化・脳梗塞・心筋梗塞などのリスクを上げる。
冷凍・冷蔵や缶詰・真空パックなど、食塩以外の長期保存の技術が普及している藩国では防腐剤としての食塩は不要であるため、減塩したほうがよい。
なお、調味料として食塩の代わりに灰を使う文化では、灰に含まれる豊富なカリウムによって加齢による血圧上昇はほとんどないとされている。

部品: 禁酒・減酒

消費が法的に許されている物質の中で、アルコールはタバコと並んで、強い身体的依存性をもたらすものである。
一定以上のアルコール摂取は明らかな健康リスクがあり、人知類の心疾患・脳梗塞・がん・肝障害・痛風・肥満などのリスクを高める。
また、少量の飲酒でも認知機能を低下させ、二日酔いや集中力低下による生産性の低下、暴力や犯罪リスクの上昇など、社会的リスクを増大させる。
そのため、アルコールはできるだけ飲む量を減らすことが望ましい。
アルコールを飲まずに済むなら飲まないに越したことはない。
アルコール依存はタバコと異なる点は、アルコール依存に陥ることが恥と考え、当事者が問題を隠し、アルコール依存が深刻になるまで周囲が気づかないことである。
そのため、診療所や病院の外来でアルコール摂取を防ぐ場合、早期に介入することが重要である。
当事者が問題を自覚する前であれば、飲酒行動を正確に報告してくれる可能性が高く、助言やカウンセリングなどで飲酒のリスクを伝えることでより適切な飲酒行動を促すことができる。

部品: 運動療法

予防医学において、運動療法(therapeutic exercise)とは、運動習慣によって、身体機能低下にともなう筋骨格系疾患および心疾患・脳血管疾患など、幅広い疾患を防ぐ、非常に効果的な一次予防策のひとつである。
推奨量より少ない運動量でも、疾病を予防する効果があるため、患者に与える具体的な助言は「明日からでもできる」と思う内容に落とし込むことが重要である。

部品: 禁煙とは

タバコには人知類に有害な物質が数百種類含まれ、発がん性物質は50種類以上にのぼる。
喫煙は肺がんを始めとする様々ながん、脳卒中や心筋梗塞、うつ病、流産・早産・子宮外妊娠など、様々な病気・障害のリスクを上げる。
タバコの煙には、タバコを吸う者が直接吸い込む主流煙と、火のついた先から立ち上る副流煙に分けられる。
この副流煙を、自分の意思とは関係なく吸い込むことを受動喫煙と呼ぶ。
主流煙は副流煙よりも多くの有害物質を含み、受動喫煙によって周囲の知類の健康リスクが高くなることが明らかになっている。
タバコの害を防ぐ費用対効果の高いものとして、レストランやカフェなどの公共空間での禁煙、タバコ税の増税など、藩国規模での公衆衛生対策が挙げられる。
禁煙になった敷地内での違法な喫煙を防ぐためには、禁煙ポスターの掲示や火災探知機の設置、頻繁なパトロールなどが挙げられる。
禁煙は、一般外来において対応できる予防医療で、予防医学的に最も効果が高いとされている。
医師による介入が効果的であることが確立されており、禁煙治療には保険が適用されるためため、医師が積極的に介入することが望ましい。
具体的な介入方法としては、すべての患者・来談者に対し、喫煙状況を確認することが挙げられる。
禁煙に関しては、徐々に喫煙本数を減らすより禁煙する日を決めて一気にやめるほうが禁煙成功率が高いという研究結果が出ている。

部品: ニコチン補充療法

タバコに含まれるニコチンは、ヘロインやコカインと並び、高い身体依存性がある。
そのため、タバコをやめる際はニコチンパッチやニコチンガムなどのニコチン製薬による補充療法が有効である。
ニコチン補充療法は、禁煙によるニコチン離脱症状を当面引き延ばすことが目的である。
もともと吸っていた本数にもよるが、普段はニコチンパッチで血中にニコチンを供給し、タバコを吸いたくなったときにニコチンガムを頓用に用いる併用療法が効果的である。
ただし、睡眠障害が出ることがあるため、就寝前はニコチンパッチをはがしたほうがよい。
タバコを口にしない口寂しさに慣れたところで、ニコチンパッチやニコチンガムを徐々に減らしていく。

部品: 予防接種とは

予防接種(protective inoculation)とは、疾病に対して免疫の効果を獲得するために、疾病予防の有効性が確認されているワクチンを知類の体に注射・接種することである。
予防接種は、伝染の恐れがある疾病の発生・蔓延を予防するため、公衆衛生の見地から実施される。
予防接種は、集団免疫の観点から重要である。
集団免疫(herd immunity)とは、共同体や地域社会で多数の知類が予防接種によって免疫を得ることで、感染症の蔓延を防止できることである。
ワクチンを打つ取り組みを続けることで、免疫のない者が感染者の接触する確率が低くなるため、社会全体での感染症の流行を防ぐことができる。
免疫力が低いために予防接種を受けられない者を感染から守れるため、集団免疫は重要である。
各藩国で接種が推奨されている各種ワクチンは、専門家が個別にワクチン接種の利益と害を詳細に検討し、有効性が確認されたものである。
また、ワクチンの投与回数や複数のワクチンの同時投与についても、安全性が充分に確認されたもののみが推奨されている。

部品: ワクチン

ワクチン(vaccine)とは、感染症予防の目的で知類や動物が能動免疫を成立させるための抗原の総称である。
抗原(antigen)とは、抗体産生を起こさせ、その抗体と特異的に反応する物質のことである。
また、能動免疫(active immunity)とは、生体に抗原を投与し、特異的免疫反応を誘導することである。
能動免疫は、活動免疫・自動免疫・自力免疫とも呼ばれる。
ワクチンは、重症化しやすい病原体に対する免疫力を事前に高める役割がある。
ワクチンには、弱毒化ワクチンや不活化ワクチンなどの種類がある。
弱毒化ワクチン(attenuated vaccine)とは、弱毒変異種の生菌や生ウイルスを用いるワクチンである。
弱毒化ワクチンは、弱毒生ワクチン(live-attenuated vaccine)とも呼ばれる。
不活化ワクチン(inactevated vaccine)とは、培養したウイルスを不活化し、感染性を失わせたワクチンである。
不活化ワクチンは、弱毒化ワクチンと比べ、免疫原性は弱いが、副作用は少ないとされている。

部品: 健康被害救済制度

予防接種において、健康被害救済制度とは、予防接種の副反応による健康被害を迅速に救済する制度である。
予防接種は極めてまれに健康被害が発生することがある。
そのため、健康被害がワクチンの接種に由来するものか因果関係を確認し、審査によってワクチンによる被害と政庁が認定した者に対し、医療費や障害年金などを給付する。
また、ワクチンによる被害で死亡した者には、死亡一時金・葬祭料・遺族年金などが給付される。

部品: 性習慣

性感染症(sexually transmitted disease)とは、性的接触によって感染する疾患の総称で、STDとも呼ばれる。
STDの種類ごとの感染頻度は、時代的変遷や地域性が存在する。
STDは、病原体に感染していても無症状であることが多く、自覚症状があっても診療所や病院などの医療機関に受診しない者がいるため、その感染の実態を正確に把握することは難しい。
STDの感染や蔓延を防ぐためには、性教育のパンフレットやハンドブックなどを配布し、避妊具の正しい使用方法、STDの危険性と感染経路など、正しい知識の普及・啓発が重要である。
また、性の健康に関する不安や悩みの相談に特化したカウンセリング、STDに関することを主とした相談窓口などを用意することで、STDの早期発見・治療をおこなう。

部品: 銃(医学)

一般の藩国民に銃火器が普及している藩国では、一般外来で対応すべき予防医療の項目に銃が含まれる。
銃火器の存在は自殺・他殺・事故など、知類にとって大きな健康リスクとなるため、患者や来談者の家や職場に銃火器があるか確認することは、医療従事者にとって非常に重要なことである。
藩国のとる対応としては、銃の規制強化が有効である。



提出書式


 大部品: 予防医学 RD:21 評価値:7
 -部品: 予防医学とは
 -部品: リスク・コミュニケーション
 -部品: SMART
 -大部品: 疫学 RD:6 評価値:4
 --部品: 疫学とは
 --部品: 統計学
 --部品: 観察研究
 --部品: 介入研究
 --部品: システマティック・レビュー
 --部品: 交絡バイアス
 -部品: 健康診断
 -大部品: 食事療法 RD:3 評価値:3
 --部品: 食事療法とは
 --部品: 減塩
 --部品: 禁酒・減酒
 -部品: 運動療法
 -大部品: 禁煙 RD:2 評価値:2
 --部品: 禁煙とは
 --部品: ニコチン補充療法
 -大部品: 予防接種 RD:3 評価値:3
 --部品: 予防接種とは
 --部品: ワクチン
 --部品: 健康被害救済制度
 -部品: 性習慣
 -部品: 銃(医学)
 
 
 部品: 予防医学とは
 予防医学(preventive medicine)とは、地域や集団を対象に知類の健康を増進する予防的介入を専門とした分野である。
 予防医学の専門家には、生物統計学(biostatistics)や疫学といった公衆衛生学・組織経営・予防医療の実践が得意でなければならないため、医学以外にも社会学・経済学・行動科学の知識や技術が必要になる。
 たとえば、食事療法・運動療法・禁煙など、患者の生活習慣改善には、行動科学の動機づけ面接法(motivational interviewing)が患者の行動変容を促すことに役立てられている。
 予防医学の実践を予防医療と呼ぶ。
 
 部品: リスク・コミュニケーション
 リスク・コミュニケーションとは、あるリスクに関する情報についてやり取りすることである。
 予防医学において、リスク・コミュニケーションの目的は、対象となる相手が、リスクに関する正確な情報にもとづいて、主体的に意思を決定し、行動できるようになることである。
 そのためには、患者を過剰に不安がらせたり安心させたりせず、患者の情動を考慮して対話する必要がある。
 また、正確な情報を平易な表現でわかりやすく伝えるだけでなく、患者がその情報を信頼し、納得してもらうことが重要である。
 そのため、もっている情報はなるべく早く開示したほうが賢明である。
 開示できない情報がある場合は、なにが話せないか、なぜ話せないかをはっきりしたほうがよい。
 また、わからことを聞かれた場合は、なにがわかっていないのか、それによって起こる最悪の事態はなにか、それに備えてなにをしているかを明確に伝えたほうがよい。
 リスク・コミュニケーションの実践には、充分な準備と練習が重要である。
 そのため、医療従事者はリスク・コミュニケーションが必要な事態を想定した訓練をおこなうことが望ましい。
 
 部品: SMART
 SMARTとは、specific(具体的な)、measurable(測定できる)、achievale(達成できる)、relevent(意義のある)、time-bound(時間制限のある)の略で、目標を設定する際に重要な考え方である。
 たとえば「生活習慣の改善のため、毎日体重を測定する」とした場合、それをより具体的に「今日から4週間、毎日お風呂上りに体重を測定し、それを記録する」と具体化し、次回の外来に持ってきてもらうことを約束する。
 約束通り毎日測定した場合は感謝の意を伝えることで、行動変容を強化し、継続を促すか、次の改善項目を探してさらなる行動変容へとつなげる。
 
 部品: 疫学とは
 疫学(epidemiology)とは、知類を観察して集められた情報を、統計学を駆使して一般法則に集約する知識や技術を集めたものである。
 疫学の方法論を用いて、病棟や外来などで患者を対象に研究することを臨床研究と呼ぶ。
 また、地域や職場などで住民や職員などを対象に研究することを公衆衛生研究や疫学研究と呼ぶ。
 疫学研究の中で、栄養・食べ物・食べ方など、食に関する事柄を扱ったものを栄養疫学研究と呼ぶ。
 疫学において、「統計学的に有意差がないこと」は「影響がないこと」と混同されがちだが、観察数が足りないから有意差がない場合もあるため、注意が必要である。
 /*/
 栄養学や栄養疫学研究において、EBNとはevidence-based nutritionの略で、「エビデンスに基づく栄養学」のことである。
 エビデンスとは、サイエンティフィック・エビデンス(scientific evidence)の略で、科学的な研究成果や科学的根拠、科学的に立証された事実などを指す。
 研究成果に対し「エビデンスが強い」「エビデンスの質が高い」と述べた場合、バイアスをできるだけ排除した研究であるということである。
 バイアスとは、真の値からの系統的な偏りのことを指す。
 なお、看護においてはEBNはevidence-based nursing(エビデンスに基づく看護)を指すため、両者を混同しないよう注意が必要である。
 
 部品: 統計学
 統計学(statistics)とは、自然現象を数値化し、定量的な一般法則や理論を導き出すための方法を集めたものである。
 統計上、その現象が起こることが偶然とは考えにくいと判断する基準となる確率を有意水準と呼ぶ。
 有意水準は恣意的に選ばれるが、5パーセントや1パーセント、0.1パーセントなどを選ぶことが多い。
 統計上、その現象が起こる確率が有意水準未満であることを「有意差がある」という。
 観察数を増やすほど、有意差は出やすくなる。
 
 部品: 観察研究
 疫学において、観察研究(observational study)とは、調査対称となる個人や集団に対し、能動的な介入をおこなわず、健康状態や診療記録などをありのまま観察し、その観察データを分析する研究である。
 観察研究は、横断研究と縦断研究に分けられる。
 横断研究(cross-sectional study)とは、対象者を一度だけ観察する研究である。
 それに対し、縦断研究(longitudinal study)とは、対象者を複数回繰り返し観察する研究である。
 横断研究は、縦断研究と比べ、経費や時間の面で効率が良いが、原因と結果の因果関係が明確ではなく、因果の逆転が生じやすい欠点がある。
 観察研究を前向き研究(prospective study)と後ろ向き研究(retrospective cohort study)に分ける分類もある。
 前向き研究とは、現在から未来に向かってデータを収集する研究である。
 それに対し、後ろ向き研究とは、過去のデータを収集する研究である。
 後ろ向き研究は、前向き研究と比べ、経費や時間の面で効率が良いが、対象者を選ぶ段階で偏りが生じたり、記憶の錯誤があったりと、誤った結論を導き出す恐れがある。
 観察研究の欠点は、介入研究と比べ、交絡バイアスが生じやすいことである。
 たとえば、人知類の乳児を母乳で育てた場合と粉ミルクで育てた場合を比較した場合、母乳で育てたほうが健康になっていたとする。
 もし、「母乳で育てると健康に良い」という情報が流布している場合、健康に関心のある親は乳児に対し、他の健康に良いことを乳児に対し、おこなっていると考えられる。
 そのため、乳児が健康になったことは母乳で育てられたからなのか、他の要因が関係しているのか、区別が難しい。
 このように観察研究は、他の要因で正しい研究結果が得られない恐れがある。
 /*/
 症例対照研究(case control study)とは、傷病の有無、つまり負傷・病気になった者とならなかった者のような結果から、その結果の原因や要因と考えられる食事内容や生活習慣などの履歴を面接や記録から確認する研究である。
 たとえば、肺がんで亡くなった患者を対象に喫煙歴を調べ、肺がんと喫煙に相関関係があるか調べる研究は、症例対照研究である。
 症例対照研究は、後ろ向き研究に分類される。
 /*/
 コホート研究(cohort study)とは、傷病の原因や要因となりうる食事内容や生活習慣などから、負傷や病気になったか、ならなかったかを追跡する研究である。
 コホート研究には、前向きコホート研究と後ろ向きコホート研究があり、単にコホート研究と言った場合、前向きコホート研究を指す場合が多い。
 たとえば、喫煙者を研究対象にし、研究開始時点から毎年、肺がんや脳卒中などになっていないか、確認する研究は、前向きコホート研究である。
 前向きコホート研究は、症例対照研究と比べ、様々な種類の疾患に対するリスク要因を検討することができる長所がある。
 ただし、前向きコホート研究は、病気になる前に研究を始めるため、発症例数の少ない疾患の研究には適さない。
 
 部品: 介入研究
 介入研究(interventional study)とは、調査対称となる個人や集団に対し、傷病と因果関係があると考えられる要因に積極的に介入する研究である。
 介入研究は、実験疫学(experimental epidemiology)とも呼ばれる。
 介入研究は、群間比較試験と交差試験に分けられる。
 適切に試験をおこなった場合、介入研究は観察研究よりバイアスの影響が少ないため、信頼性が高いとされている。
 ただし、飲酒や喫煙など害のあるリスクを強要することは倫理的に問題があるため、介入研究で調査することはできない。
 また、調査する期間が同じ場合、介入試験は観察研究より必要な研究費が高くなる。
 そのため、たとえば食物繊維を摂取することが大腸がんの予防につながるかといったような研究の場合、目的の疾患が発症するまで時間がかかることが予想されるため、費用面から充分な期間をとりにくい介入研究では有意義な研究をおこなうことが難しいと考えられる。
 /*/
 群間比較試験(group comparison study)とは、たとえば薬Xと薬Yを比較する際の薬効を比較する際、X投与群とY投与群に分け、それぞれの薬効や副作用のデータを集め、群の間での結果を比較する試験である。
 /*/
 交差試験(cross-over study)とは、たとえば薬Xと薬Yを比較する際の薬効を比較する際、同じ対象者に時期を変えてふたつの薬剤を投与し、薬効や副作用を比較する試験である。
 対象者は、薬Xを先に投与する群と薬Yを先に投与する群に分ける。
 先に投与した薬剤の持ち越し効果を避けるため、二つの薬の間に休養期間を設ける。
 交差試験は、薬効の消失に時間がかかる薬には不向きで、完治したり死亡したりする疾患に対する効果検証にも使えない。
 /*/
 ランダム化比較試験とは、群間比較試験や交差試験をおこなう際、無作為に群を分ける試験である。
 たとえば、新薬Xと従来薬Yを比較する際、無作為に対象者を群に分けていない場合、新薬Xのほうが良い成績になるようイカサマをすることができる。
 このような不正をする余地をなくすため、二重盲検法が用いられる。
 二重盲検法とは、ランダム化比較試験において、無作為に群を分けるための方法である。
 二重盲検法では、試験の対象者も観察者も薬Xと薬Yか分からないようにしておこなう。
 観察者もどちらがどちらか分からないため、無意識に新薬Xの薬効を高く評価したり、従来薬Yの薬効を低く評価したりする恐れを防ぐことができる。
 
 部品: システマティック・レビュー
 システマティック・レビュー(systematic review)とは、過去に行われた研究を網羅的・系統的に調査し、バイアスの恐れを評価しながら、分析・再評価したものである。
 システマティック・レビューで、ランダム化比較試験のような特に信頼性の高い研究に限定し、それぞれの研究に重み付けしたうえで、効果指標の値を統計学的手法で定量的に統合したものは、メタアナリシス(meta-analysis)と呼ばれる。
 たとえば、複数の研究で結果が異なる場合、メタアナリシスで複数の研究をまとめることで一定の結論を導くことができる。
 ただし、メタアナリシスで導き出された結論が正しいとは限らない。
 たとえば、メタアナリシスをおこなった時点で対象となった研究で観察数が充分ではない場合、その後におこなわれた大規模なランダム化比較試験で異なる結果が出ることがある。
 
 部品: 交絡バイアス
 交絡バイアス(confounding bias)とは、交絡因子により正しい研究結果が得られないことである。
 交絡因子(confounding factor)とは、予測因子以外の因子で、転帰に影響を与えるものである。
 交絡因子は交絡要因とも呼ばれる。
 医学で予測因子(predictor)とは時間的・生物学的に先行している因子、転帰(outcome)とは時間的・生物学的に後行している因子である。
 簡単に言うと、負傷や病気などの発生が転帰で、その原因と思われ調査対象となっている因子が予測因子である。
 交絡バイアスを防ぐ研究手法としては、対象者の限定やマッチングなどがある。
 /*/
 対象者の限定(specification)とは、研究対象者が持つであろう交絡因子をできるかぎり取り除く方法である。たとえば、高血圧と脳卒中の関係を調査するとき、喫煙者や高齢者など、高血圧を起こしやすい他の因子を交絡因子として取り除く。
 ただし、対象者を限定しているため、研究結果を一般化することが難しいという問題がある。
 /*/
 マッチング(matching)とは、症例対照研究で使われている方法で、予測因子を持つ群(case)と持たない群(control)を比較する際、予測因子以外の因子を一致させることで、交絡因子を取り除く方法である。
 たとえば、心筋梗塞を起こした群と起こしていない群に対して、種族・年齢・性別・喫煙量が等しい例同士と比較する。
 マッチングは様々な交絡因子を取り除くことができる長所がある。
 反面、すべての対象者をマッチングさせることが難しい。
 また、マッチングした因子が交絡因子ではなかった場合、症例対照研究の統計的な価値が減る、オーバーマッチング(overmatching)の問題がある。
 
 部品: 健康診断
 健康診断とは、疾患の予防や早期発見・早期治療を目的におこなわれる検査・介入である。
 健康診断は、健診とも呼ばれる。
 健康診断でおこなわれる検査や介入は様々な種類があり、学術的・臨床的に有効と評価された種類については政庁が受診を推奨している。
 健康診断には過剰診断・過剰介入の危険があり、注意が必要である。
 たとえば、死ぬまで進行がんにならない成長の遅い早期がんのように、放置しても患者の健康に影響を与えないような疾患は、発見しても健康増進の効果はない。
 それどころか発見したことにより、患者が不安を感じ、外科的切除などの予防的介入をおこなう恐れがある。
 さらに、その外科的切除によって合併症を発症する危険もある。
 そのため、藩国民に対する集団の健康増進を目的として、全体に限りのある医療資源を適切に配分するには、健診の種類や種族・年齢・性別などの組み合わせで特に費用対効果が高い場合のみ、公費負担や助成金が適応される制度とすることが望ましい。
 また、推奨されない医療行為については推奨しないことを明確にすることが適切である。
 なお、健診の費用対効果を分析する際は、検診した場合としなかった場合のい診察や治療などの総費用を比較するが、医療にかかる直接的な費用のみを含むのか、仕事を休むことによる機会損失などの間接的な費用を含むのかといった、なにを費用に含めるのかによって、分析結果が変わるため、分析結果から結論を出す際は慎重にならなければならない。
 特に、医療費や社会構造の異なる他の藩国の費用対効果分析は、自藩国でそのまま使うことは不適切であるため、注意しなければならない。
 
 部品: 食事療法とは
 予防医学において、食事療法(alimentary therapy)とは、健康的な食事をおこなうことで健康を増進する、非常に効果的な一次予防策のひとつである。
 食事療法は、栄養療法(dietetic therapy)とも呼ばれる。
 健康的な食事は種族によって異なるが、適切な量を食べること、健康的な食材を多く食べること、塩分やアルコールを控えることなどがある。
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 適切な量を食べるためには食物のカロリー量を可視化することが有効である。
 たとえば、マフィン半分は、大きな深鉢の食器に山盛り入ったブロッコリーと同じカロリー量である。
 また、500ミリリットルのコーラに含まれる砂糖の量は角砂糖16個分である。
 これらの比較によって食材によるカロリー量が明確になる。
 カロリー量の多い食材をカロリー量の少ない食材に置き換えることで、見かけ上の食事量を変えずに摂取カロリーを抑えることができる。
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 健康的な食材を多く食べるためには、どの食材が健康によいか知る必要がある。
 たとえば、玄米を週に200グラム以上摂取する人知類は、月に100グラム未満の人知類と比べ、糖尿病になるリスクが11パーセント低いが、白米の摂取量と糖尿病のリスクには正の相関があるため、白米の摂取量はできるだけ少ないほうがよい。
 また、多くの生の果物は糖尿病のリスクを下げるが、フルーツジュースは逆に糖尿病のリスクを上げるというデータがある。
 疾患のリスクを上げる食材を、疾患のリスクを下げる食材に置き換えることで、健康的な食事をおこなうことができる。
 ただし、乳製品は人知類の前立腺がんや卵巣がんのリスクを上げる恐れがあるが、乳製品のヨーグルトは摂取量が多い人知類ほど糖尿病になるリスクが低い可能性があるなど、同じ食品がある疾患のリスクを上げ、別の疾患のリスクを下げる場合もあるため、注意が必要である。
 
 部品: 減塩
 食塩は食品を腐敗から守る天然の防腐剤であるが、過剰な塩分摂取は高血圧・動脈硬化・脳梗塞・心筋梗塞などのリスクを上げる。
 冷凍・冷蔵や缶詰・真空パックなど、食塩以外の長期保存の技術が普及している藩国では防腐剤としての食塩は不要であるため、減塩したほうがよい。
 なお、調味料として食塩の代わりに灰を使う文化では、灰に含まれる豊富なカリウムによって加齢による血圧上昇はほとんどないとされている。
 
 部品: 禁酒・減酒
 消費が法的に許されている物質の中で、アルコールはタバコと並んで、強い身体的依存性をもたらすものである。
 一定以上のアルコール摂取は明らかな健康リスクがあり、人知類の心疾患・脳梗塞・がん・肝障害・痛風・肥満などのリスクを高める。
 また、少量の飲酒でも認知機能を低下させ、二日酔いや集中力低下による生産性の低下、暴力や犯罪リスクの上昇など、社会的リスクを増大させる。
 そのため、アルコールはできるだけ飲む量を減らすことが望ましい。
 アルコールを飲まずに済むなら飲まないに越したことはない。
 アルコール依存はタバコと異なる点は、アルコール依存に陥ることが恥と考え、当事者が問題を隠し、アルコール依存が深刻になるまで周囲が気づかないことである。
 そのため、診療所や病院の外来でアルコール摂取を防ぐ場合、早期に介入することが重要である。
 当事者が問題を自覚する前であれば、飲酒行動を正確に報告してくれる可能性が高く、助言やカウンセリングなどで飲酒のリスクを伝えることでより適切な飲酒行動を促すことができる。
 
 部品: 運動療法
 予防医学において、運動療法(therapeutic exercise)とは、運動習慣によって、身体機能低下にともなう筋骨格系疾患および心疾患・脳血管疾患など、幅広い疾患を防ぐ、非常に効果的な一次予防策のひとつである。
 推奨量より少ない運動量でも、疾病を予防する効果があるため、患者に与える具体的な助言は「明日からでもできる」と思う内容に落とし込むことが重要である。
 
 部品: 禁煙とは
 タバコには人知類に有害な物質が数百種類含まれ、発がん性物質は50種類以上にのぼる。
 喫煙は肺がんを始めとする様々ながん、脳卒中や心筋梗塞、うつ病、流産・早産・子宮外妊娠など、様々な病気・障害のリスクを上げる。
 タバコの煙には、タバコを吸う者が直接吸い込む主流煙と、火のついた先から立ち上る副流煙に分けられる。
 この副流煙を、自分の意思とは関係なく吸い込むことを受動喫煙と呼ぶ。
 主流煙は副流煙よりも多くの有害物質を含み、受動喫煙によって周囲の知類の健康リスクが高くなることが明らかになっている。
 タバコの害を防ぐ費用対効果の高いものとして、レストランやカフェなどの公共空間での禁煙、タバコ税の増税など、藩国規模での公衆衛生対策が挙げられる。
 禁煙になった敷地内での違法な喫煙を防ぐためには、禁煙ポスターの掲示や火災探知機の設置、頻繁なパトロールなどが挙げられる。
 禁煙は、一般外来において対応できる予防医療で、予防医学的に最も効果が高いとされている。
 医師による介入が効果的であることが確立されており、禁煙治療には保険が適用されるためため、医師が積極的に介入することが望ましい。
 具体的な介入方法としては、すべての患者・来談者に対し、喫煙状況を確認することが挙げられる。
 禁煙に関しては、徐々に喫煙本数を減らすより禁煙する日を決めて一気にやめるほうが禁煙成功率が高いという研究結果が出ている。
 
 部品: ニコチン補充療法
 タバコに含まれるニコチンは、ヘロインやコカインと並び、高い身体依存性がある。
 そのため、タバコをやめる際はニコチンパッチやニコチンガムなどのニコチン製薬による補充療法が有効である。
 ニコチン補充療法は、禁煙によるニコチン離脱症状を当面引き延ばすことが目的である。
 もともと吸っていた本数にもよるが、普段はニコチンパッチで血中にニコチンを供給し、タバコを吸いたくなったときにニコチンガムを頓用に用いる併用療法が効果的である。
 ただし、睡眠障害が出ることがあるため、就寝前はニコチンパッチをはがしたほうがよい。
 タバコを口にしない口寂しさに慣れたところで、ニコチンパッチやニコチンガムを徐々に減らしていく。
 
 部品: 予防接種とは
 予防接種(protective inoculation)とは、疾病に対して免疫の効果を獲得するために、疾病予防の有効性が確認されているワクチンを知類の体に注射・接種することである。
 予防接種は、伝染の恐れがある疾病の発生・蔓延を予防するため、公衆衛生の見地から実施される。
 予防接種は、集団免疫の観点から重要である。
 集団免疫(herd immunity)とは、共同体や地域社会で多数の知類が予防接種によって免疫を得ることで、感染症の蔓延を防止できることである。
 ワクチンを打つ取り組みを続けることで、免疫のない者が感染者の接触する確率が低くなるため、社会全体での感染症の流行を防ぐことができる。
 免疫力が低いために予防接種を受けられない者を感染から守れるため、集団免疫は重要である。
 各藩国で接種が推奨されている各種ワクチンは、専門家が個別にワクチン接種の利益と害を詳細に検討し、有効性が確認されたものである。
 また、ワクチンの投与回数や複数のワクチンの同時投与についても、安全性が充分に確認されたもののみが推奨されている。
 
 部品: ワクチン
 ワクチン(vaccine)とは、感染症予防の目的で知類や動物が能動免疫を成立させるための抗原の総称である。
 抗原(antigen)とは、抗体産生を起こさせ、その抗体と特異的に反応する物質のことである。
 また、能動免疫(active immunity)とは、生体に抗原を投与し、特異的免疫反応を誘導することである。
 能動免疫は、活動免疫・自動免疫・自力免疫とも呼ばれる。
 ワクチンは、重症化しやすい病原体に対する免疫力を事前に高める役割がある。
 ワクチンには、弱毒化ワクチンや不活化ワクチンなどの種類がある。
 弱毒化ワクチン(attenuated vaccine)とは、弱毒変異種の生菌や生ウイルスを用いるワクチンである。
 弱毒化ワクチンは、弱毒生ワクチン(live-attenuated vaccine)とも呼ばれる。
 不活化ワクチン(inactevated vaccine)とは、培養したウイルスを不活化し、感染性を失わせたワクチンである。
 不活化ワクチンは、弱毒化ワクチンと比べ、免疫原性は弱いが、副作用は少ないとされている。
 
 部品: 健康被害救済制度
 予防接種において、健康被害救済制度とは、予防接種の副反応による健康被害を迅速に救済する制度である。
 予防接種は極めてまれに健康被害が発生することがある。
 そのため、健康被害がワクチンの接種に由来するものか因果関係を確認し、審査によってワクチンによる被害と政庁が認定した者に対し、医療費や障害年金などを給付する。
 また、ワクチンによる被害で死亡した者には、死亡一時金・葬祭料・遺族年金などが給付される。
 
 部品: 性習慣
 性感染症(sexually transmitted disease)とは、性的接触によって感染する疾患の総称で、STDとも呼ばれる。
 STDの種類ごとの感染頻度は、時代的変遷や地域性が存在する。
 STDは、病原体に感染していても無症状であることが多く、自覚症状があっても診療所や病院などの医療機関に受診しない者がいるため、その感染の実態を正確に把握することは難しい。
 STDの感染や蔓延を防ぐためには、性教育のパンフレットやハンドブックなどを配布し、避妊具の正しい使用方法、STDの危険性と感染経路など、正しい知識の普及・啓発が重要である。
 また、性の健康に関する不安や悩みの相談に特化したカウンセリング、STDに関することを主とした相談窓口などを用意することで、STDの早期発見・治療をおこなう。
 
 部品: 銃(医学)
 一般の藩国民に銃火器が普及している藩国では、一般外来で対応すべき予防医療の項目に銃が含まれる。
 銃火器の存在は自殺・他殺・事故など、知類にとって大きな健康リスクとなるため、患者や来談者の家や職場に銃火器があるか確認することは、医療従事者にとって非常に重要なことである。
 藩国のとる対応としては、銃の規制強化が有効である。
 
 


インポート用定義データ


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   {
     "title": "予防医学",
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       {
         "title": "予防医学とは",
         "description": "予防医学(preventive medicine)とは、地域や集団を対象に知類の健康を増進する予防的介入を専門とした分野である。\n予防医学の専門家には、生物統計学(biostatistics)や疫学といった公衆衛生学・組織経営・予防医療の実践が得意でなければならないため、医学以外にも社会学・経済学・行動科学の知識や技術が必要になる。\nたとえば、食事療法・運動療法・禁煙など、患者の生活習慣改善には、行動科学の動機づけ面接法(motivational interviewing)が患者の行動変容を促すことに役立てられている。\n予防医学の実践を予防医療と呼ぶ。",
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       {
         "title": "リスク・コミュニケーション",
         "description": "リスク・コミュニケーションとは、あるリスクに関する情報についてやり取りすることである。\n予防医学において、リスク・コミュニケーションの目的は、対象となる相手が、リスクに関する正確な情報にもとづいて、主体的に意思を決定し、行動できるようになることである。\nそのためには、患者を過剰に不安がらせたり安心させたりせず、患者の情動を考慮して対話する必要がある。\nまた、正確な情報を平易な表現でわかりやすく伝えるだけでなく、患者がその情報を信頼し、納得してもらうことが重要である。\nそのため、もっている情報はなるべく早く開示したほうが賢明である。\n開示できない情報がある場合は、なにが話せないか、なぜ話せないかをはっきりしたほうがよい。\nまた、わからことを聞かれた場合は、なにがわかっていないのか、それによって起こる最悪の事態はなにか、それに備えてなにをしているかを明確に伝えたほうがよい。\nリスク・コミュニケーションの実践には、充分な準備と練習が重要である。\nそのため、医療従事者はリスク・コミュニケーションが必要な事態を想定した訓練をおこなうことが望ましい。",
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         "description": "SMARTとは、specific(具体的な)、measurable(測定できる)、achievale(達成できる)、relevent(意義のある)、time-bound(時間制限のある)の略で、目標を設定する際に重要な考え方である。\nたとえば「生活習慣の改善のため、毎日体重を測定する」とした場合、それをより具体的に「今日から4週間、毎日お風呂上りに体重を測定し、それを記録する」と具体化し、次回の外来に持ってきてもらうことを約束する。\n約束通り毎日測定した場合は感謝の意を伝えることで、行動変容を強化し、継続を促すか、次の改善項目を探してさらなる行動変容へとつなげる。",
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             "description": "疫学(epidemiology)とは、知類を観察して集められた情報を、統計学を駆使して一般法則に集約する知識や技術を集めたものである。\n疫学の方法論を用いて、病棟や外来などで患者を対象に研究することを臨床研究と呼ぶ。\nまた、地域や職場などで住民や職員などを対象に研究することを公衆衛生研究や疫学研究と呼ぶ。\n疫学研究の中で、栄養・食べ物・食べ方など、食に関する事柄を扱ったものを栄養疫学研究と呼ぶ。\n疫学において、「統計学的に有意差がないこと」は「影響がないこと」と混同されがちだが、観察数が足りないから有意差がない場合もあるため、注意が必要である。\n/*/\n栄養学や栄養疫学研究において、EBNとはevidence-based nutritionの略で、「エビデンスに基づく栄養学」のことである。\nエビデンスとは、サイエンティフィック・エビデンス(scientific evidence)の略で、科学的な研究成果や科学的根拠、科学的に立証された事実などを指す。\n研究成果に対し「エビデンスが強い」「エビデンスの質が高い」と述べた場合、バイアスをできるだけ排除した研究であるということである。\nバイアスとは、真の値からの系統的な偏りのことを指す。\nなお、看護においてはEBNはevidence-based nursing(エビデンスに基づく看護)を指すため、両者を混同しないよう注意が必要である。",
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             "title": "交絡バイアス",
             "description": "交絡バイアス(confounding bias)とは、交絡因子により正しい研究結果が得られないことである。\n交絡因子(confounding factor)とは、予測因子以外の因子で、転帰に影響を与えるものである。\n交絡因子は交絡要因とも呼ばれる。\n医学で予測因子(predictor)とは時間的・生物学的に先行している因子、転帰(outcome)とは時間的・生物学的に後行している因子である。\n簡単に言うと、負傷や病気などの発生が転帰で、その原因と思われ調査対象となっている因子が予測因子である。\n交絡バイアスを防ぐ研究手法としては、対象者の限定やマッチングなどがある。\n/*/\n対象者の限定(specification)とは、研究対象者が持つであろう交絡因子をできるかぎり取り除く方法である。たとえば、高血圧と脳卒中の関係を調査するとき、喫煙者や高齢者など、高血圧を起こしやすい他の因子を交絡因子として取り除く。\nただし、対象者を限定しているため、研究結果を一般化することが難しいという問題がある。\n/*/\nマッチング(matching)とは、症例対照研究で使われている方法で、予測因子を持つ群(case)と持たない群(control)を比較する際、予測因子以外の因子を一致させることで、交絡因子を取り除く方法である。\nたとえば、心筋梗塞を起こした群と起こしていない群に対して、種族・年齢・性別・喫煙量が等しい例同士と比較する。\nマッチングは様々な交絡因子を取り除くことができる長所がある。\n反面、すべての対象者をマッチングさせることが難しい。\nまた、マッチングした因子が交絡因子ではなかった場合、症例対照研究の統計的な価値が減る、オーバーマッチング(overmatching)の問題がある。",
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       {
         "title": "健康診断",
         "description": "健康診断とは、疾患の予防や早期発見・早期治療を目的におこなわれる検査・介入である。\n健康診断は、健診とも呼ばれる。\n健康診断でおこなわれる検査や介入は様々な種類があり、学術的・臨床的に有効と評価された種類については政庁が受診を推奨している。\n健康診断には過剰診断・過剰介入の危険があり、注意が必要である。\nたとえば、死ぬまで進行がんにならない成長の遅い早期がんのように、放置しても患者の健康に影響を与えないような疾患は、発見しても健康増進の効果はない。\nそれどころか発見したことにより、患者が不安を感じ、外科的切除などの予防的介入をおこなう恐れがある。\nさらに、その外科的切除によって合併症を発症する危険もある。\nそのため、藩国民に対する集団の健康増進を目的として、全体に限りのある医療資源を適切に配分するには、健診の種類や種族・年齢・性別などの組み合わせで特に費用対効果が高い場合のみ、公費負担や助成金が適応される制度とすることが望ましい。\nまた、推奨されない医療行為については推奨しないことを明確にすることが適切である。\nなお、健診の費用対効果を分析する際は、検診した場合としなかった場合のい診察や治療などの総費用を比較するが、医療にかかる直接的な費用のみを含むのか、仕事を休むことによる機会損失などの間接的な費用を含むのかといった、なにを費用に含めるのかによって、分析結果が変わるため、分析結果から結論を出す際は慎重にならなければならない。\n特に、医療費や社会構造の異なる他の藩国の費用対効果分析は、自藩国でそのまま使うことは不適切であるため、注意しなければならない。",
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         "title": "食事療法",
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           {
             "title": "食事療法とは",
             "description": "予防医学において、食事療法(alimentary therapy)とは、健康的な食事をおこなうことで健康を増進する、非常に効果的な一次予防策のひとつである。\n食事療法は、栄養療法(dietetic therapy)とも呼ばれる。\n健康的な食事は種族によって異なるが、適切な量を食べること、健康的な食材を多く食べること、塩分やアルコールを控えることなどがある。\n/*/\n適切な量を食べるためには食物のカロリー量を可視化することが有効である。\nたとえば、マフィン半分は、大きな深鉢の食器に山盛り入ったブロッコリーと同じカロリー量である。\nまた、500ミリリットルのコーラに含まれる砂糖の量は角砂糖16個分である。\nこれらの比較によって食材によるカロリー量が明確になる。\nカロリー量の多い食材をカロリー量の少ない食材に置き換えることで、見かけ上の食事量を変えずに摂取カロリーを抑えることができる。\n/*/\n健康的な食材を多く食べるためには、どの食材が健康によいか知る必要がある。\nたとえば、玄米を週に200グラム以上摂取する人知類は、月に100グラム未満の人知類と比べ、糖尿病になるリスクが11パーセント低いが、白米の摂取量と糖尿病のリスクには正の相関があるため、白米の摂取量はできるだけ少ないほうがよい。\nまた、多くの生の果物は糖尿病のリスクを下げるが、フルーツジュースは逆に糖尿病のリスクを上げるというデータがある。\n疾患のリスクを上げる食材を、疾患のリスクを下げる食材に置き換えることで、健康的な食事をおこなうことができる。\nただし、乳製品は人知類の前立腺がんや卵巣がんのリスクを上げる恐れがあるが、乳製品のヨーグルトは摂取量が多い人知類ほど糖尿病になるリスクが低い可能性があるなど、同じ食品がある疾患のリスクを上げ、別の疾患のリスクを下げる場合もあるため、注意が必要である。",
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           {
             "title": "減塩",
             "description": "食塩は食品を腐敗から守る天然の防腐剤であるが、過剰な塩分摂取は高血圧・動脈硬化・脳梗塞・心筋梗塞などのリスクを上げる。\n冷凍・冷蔵や缶詰・真空パックなど、食塩以外の長期保存の技術が普及している藩国では防腐剤としての食塩は不要であるため、減塩したほうがよい。\nなお、調味料として食塩の代わりに灰を使う文化では、灰に含まれる豊富なカリウムによって加齢による血圧上昇はほとんどないとされている。",
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           {
             "title": "禁酒・減酒",
             "description": "消費が法的に許されている物質の中で、アルコールはタバコと並んで、強い身体的依存性をもたらすものである。\n一定以上のアルコール摂取は明らかな健康リスクがあり、人知類の心疾患・脳梗塞・がん・肝障害・痛風・肥満などのリスクを高める。\nまた、少量の飲酒でも認知機能を低下させ、二日酔いや集中力低下による生産性の低下、暴力や犯罪リスクの上昇など、社会的リスクを増大させる。\nそのため、アルコールはできるだけ飲む量を減らすことが望ましい。\nアルコールを飲まずに済むなら飲まないに越したことはない。\nアルコール依存はタバコと異なる点は、アルコール依存に陥ることが恥と考え、当事者が問題を隠し、アルコール依存が深刻になるまで周囲が気づかないことである。\nそのため、診療所や病院の外来でアルコール摂取を防ぐ場合、早期に介入することが重要である。\n当事者が問題を自覚する前であれば、飲酒行動を正確に報告してくれる可能性が高く、助言やカウンセリングなどで飲酒のリスクを伝えることでより適切な飲酒行動を促すことができる。",
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       {
         "title": "運動療法",
         "description": "予防医学において、運動療法(therapeutic exercise)とは、運動習慣によって、身体機能低下にともなう筋骨格系疾患および心疾患・脳血管疾患など、幅広い疾患を防ぐ、非常に効果的な一次予防策のひとつである。\n推奨量より少ない運動量でも、疾病を予防する効果があるため、患者に与える具体的な助言は「明日からでもできる」と思う内容に落とし込むことが重要である。",
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         "title": "禁煙",
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             "title": "禁煙とは",
             "description": "タバコには人知類に有害な物質が数百種類含まれ、発がん性物質は50種類以上にのぼる。\n喫煙は肺がんを始めとする様々ながん、脳卒中や心筋梗塞、うつ病、流産・早産・子宮外妊娠など、様々な病気・障害のリスクを上げる。\nタバコの煙には、タバコを吸う者が直接吸い込む主流煙と、火のついた先から立ち上る副流煙に分けられる。\nこの副流煙を、自分の意思とは関係なく吸い込むことを受動喫煙と呼ぶ。\n主流煙は副流煙よりも多くの有害物質を含み、受動喫煙によって周囲の知類の健康リスクが高くなることが明らかになっている。\nタバコの害を防ぐ費用対効果の高いものとして、レストランやカフェなどの公共空間での禁煙、タバコ税の増税など、藩国規模での公衆衛生対策が挙げられる。\n禁煙になった敷地内での違法な喫煙を防ぐためには、禁煙ポスターの掲示や火災探知機の設置、頻繁なパトロールなどが挙げられる。\n禁煙は、一般外来において対応できる予防医療で、予防医学的に最も効果が高いとされている。\n医師による介入が効果的であることが確立されており、禁煙治療には保険が適用されるためため、医師が積極的に介入することが望ましい。\n具体的な介入方法としては、すべての患者・来談者に対し、喫煙状況を確認することが挙げられる。\n禁煙に関しては、徐々に喫煙本数を減らすより禁煙する日を決めて一気にやめるほうが禁煙成功率が高いという研究結果が出ている。",
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           {
             "title": "ニコチン補充療法",
             "description": "タバコに含まれるニコチンは、ヘロインやコカインと並び、高い身体依存性がある。\nそのため、タバコをやめる際はニコチンパッチやニコチンガムなどのニコチン製薬による補充療法が有効である。\nニコチン補充療法は、禁煙によるニコチン離脱症状を当面引き延ばすことが目的である。\nもともと吸っていた本数にもよるが、普段はニコチンパッチで血中にニコチンを供給し、タバコを吸いたくなったときにニコチンガムを頓用に用いる併用療法が効果的である。\nただし、睡眠障害が出ることがあるため、就寝前はニコチンパッチをはがしたほうがよい。\nタバコを口にしない口寂しさに慣れたところで、ニコチンパッチやニコチンガムを徐々に減らしていく。",
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         "title": "予防接種",
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           {
             "title": "予防接種とは",
             "description": "予防接種(protective inoculation)とは、疾病に対して免疫の効果を獲得するために、疾病予防の有効性が確認されているワクチンを知類の体に注射・接種することである。\n予防接種は、伝染の恐れがある疾病の発生・蔓延を予防するため、公衆衛生の見地から実施される。\n予防接種は、集団免疫の観点から重要である。\n集団免疫(herd immunity)とは、共同体や地域社会で多数の知類が予防接種によって免疫を得ることで、感染症の蔓延を防止できることである。\nワクチンを打つ取り組みを続けることで、免疫のない者が感染者の接触する確率が低くなるため、社会全体での感染症の流行を防ぐことができる。\n免疫力が低いために予防接種を受けられない者を感染から守れるため、集団免疫は重要である。\n各藩国で接種が推奨されている各種ワクチンは、専門家が個別にワクチン接種の利益と害を詳細に検討し、有効性が確認されたものである。\nまた、ワクチンの投与回数や複数のワクチンの同時投与についても、安全性が充分に確認されたもののみが推奨されている。",
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           {
             "title": "ワクチン",
             "description": "ワクチン(vaccine)とは、感染症予防の目的で知類や動物が能動免疫を成立させるための抗原の総称である。\n抗原(antigen)とは、抗体産生を起こさせ、その抗体と特異的に反応する物質のことである。\nまた、能動免疫(active immunity)とは、生体に抗原を投与し、特異的免疫反応を誘導することである。\n能動免疫は、活動免疫・自動免疫・自力免疫とも呼ばれる。\nワクチンは、重症化しやすい病原体に対する免疫力を事前に高める役割がある。\nワクチンには、弱毒化ワクチンや不活化ワクチンなどの種類がある。\n弱毒化ワクチン(attenuated vaccine)とは、弱毒変異種の生菌や生ウイルスを用いるワクチンである。\n弱毒化ワクチンは、弱毒生ワクチン(live-attenuated vaccine)とも呼ばれる。\n不活化ワクチン(inactevated vaccine)とは、培養したウイルスを不活化し、感染性を失わせたワクチンである。\n不活化ワクチンは、弱毒化ワクチンと比べ、免疫原性は弱いが、副作用は少ないとされている。",
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             "title": "健康被害救済制度",
             "description": "予防接種において、健康被害救済制度とは、予防接種の副反応による健康被害を迅速に救済する制度である。\n予防接種は極めてまれに健康被害が発生することがある。\nそのため、健康被害がワクチンの接種に由来するものか因果関係を確認し、審査によってワクチンによる被害と政庁が認定した者に対し、医療費や障害年金などを給付する。\nまた、ワクチンによる被害で死亡した者には、死亡一時金・葬祭料・遺族年金などが給付される。",
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       {
         "title": "性習慣",
         "description": "性感染症(sexually transmitted disease)とは、性的接触によって感染する疾患の総称で、STDとも呼ばれる。\nSTDの種類ごとの感染頻度は、時代的変遷や地域性が存在する。\nSTDは、病原体に感染していても無症状であることが多く、自覚症状があっても診療所や病院などの医療機関に受診しない者がいるため、その感染の実態を正確に把握することは難しい。\nSTDの感染や蔓延を防ぐためには、性教育のパンフレットやハンドブックなどを配布し、避妊具の正しい使用方法、STDの危険性と感染経路など、正しい知識の普及・啓発が重要である。\nまた、性の健康に関する不安や悩みの相談に特化したカウンセリング、STDに関することを主とした相談窓口などを用意することで、STDの早期発見・治療をおこなう。",
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       {
         "title": "銃(医学)",
         "description": "一般の藩国民に銃火器が普及している藩国では、一般外来で対応すべき予防医療の項目に銃が含まれる。\n銃火器の存在は自殺・他殺・事故など、知類にとって大きな健康リスクとなるため、患者や来談者の家や職場に銃火器があるか確認することは、医療従事者にとって非常に重要なことである。\n藩国のとる対応としては、銃の規制強化が有効である。",
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最終更新:2018年05月27日 13:50