神戸港。
既にその場所は、物言わぬ死体の散乱する、
地獄絵図と化していた。
そんな中で、立っている者が二人。
小柄な青年と、中学生くらいの少年。
青年は、歌っていた。
それは、死んでいった者達に対するレクイエムなのだろうか。
殺伐とした地獄に響き渡る、歌声。
それはあまりに哀しい、孤独な男の詩。
「青~ぃ春 してぇ~るのに オ~トコがいっぱい♪
一度くぅ~らいは 結婚して マンボ マンボ♪」
小柄で、鼻と髪の毛のない青年。
彼の名は、クリリン。
あまり知られていないが、実は彼の歌唱力は底知れぬ破壊力を秘めている。
かつて花見の席を恐怖と絶望のどん底に陥れ、あのベジータを本気で激怒させたという歌声。
現に、平和だった港を地獄へと変貌させてしまった。
……そう、この死体の山は、彼の歌によって築かれたものであったりする。
そんな大勢の死体の中で、少年は彼の歌声を物ともせずに聴き続ける。
「歌はいいねぇ……」
海を眺め佇みながら、彼は誰にともなく呟いた。
「出~会いがないよ 出~会いがないよ
カ~ワイイ女の子 どこどこォ~♪」
「歌はいい。歌は心を潤してくれる。
クリリンの生み出した文化の極みだよ……そうは思わないかい?」
彼の名は渚カヲル。
最後のシ者。
「サンキュー。カヲルっつったっけ。どうだった、俺の歌?」
歌い終え、清々しい表情でクリリンはカヲルに感想を求めた。
「素晴らしいよ。君がこれほど歌えたなんて、盲点だった。
君の歌には、世界を救う力があるんだ」
「おいおい、大げさだなぁ。まあ、本当に歌でこんな殺し合いを止められるならいいんだけどな……」
周りの死体を一瞥し、クリリンの表情は沈む。
二日目にして、これだけの人々が物言わぬ死体と化してしまった。
なんという残酷な――自分の無力さを痛感する。
――何が地球人最強だ。普通の人間を凌駕する力を持ちながら、何一つ守れないなんて――
……もっとも、この死体の山は全て彼自身の手、いや歌によることに彼は気付いていない。
「行こうぜ!こんな殺し合いなんて、やっぱ許しちゃおけないよな」
空元気で、無理矢理重い空気を振り払い、歩き出す。
しかし、カヲルは海を眺めたまま動かない。
「おいカヲル?どうした?」
「新たな勇者が、この地に足を踏み入れた。
君の歌に誘われたのか、それとも運命が互いを引き寄せたのか……」
突然、意味不明な言葉を紡ぎだすカヲル。
そして、クリリンのほうへ振り返り、微笑みかける。
「でもこれでは、カルネアデスの箱舟だね……」
「カヲル?おい、何を言って……」
そこまで言って、クリリンは港に新たな気を感じ取った。
「誰だ!?生存者なのか!?」
気は二つ。一つは小さな気だ、恐らく子供だろう。そしてもう一つは……得体の知れない感じがあった。
「俺達は
ゲームに乗っちゃいない!心配しないでくれ!」
そう言うと……物陰から、二つの影が飛び出した。
「やいやいやいやい!そんな嘘信じるもんか!!ここにいる人たちを殺したのはお前だろ!!」
「パヨ!!」
「このジャイアン様が、許さないぞ!!」
魔神と、ピンク玉が姿を現した。
「お、おい待てって!これは俺じゃなくて……」
「問答無用!お前
みたいな奴は、この俺様の歌声で改心させてやる!!」
「ポヨ!!」
「う、歌だぁ?……よーし、望む所だ!!」
そして――港は。
いや、大阪全土が、さらなる地獄へと化した。
「僕は、君達を待っていたのかもしれない。
無限力にも匹敵する、純粋な歌声を持つ君達を。
さあ、聴かせてくれ。君達の歌を」
史上最大の、殺人歌合戦。
ジャイアンと
カービィの歌声が悪い意味でハモり、狂気と化す。
クリリンもまた、それに対抗し熱唱。
海は荒れ、空は暗雲に包まれ、雷が鳴り響く。
大地に亀裂が走り、次元すら歪め、大阪の地を破壊していく。
(こいつら、まさかこれほどの歌を歌える奴がいたなんて……俺に匹敵、もしくはそれ以上か!?)
「やるじゃねぇか、ハゲのおっさん!でも、歌なら俺達には絶対かなわないぜ!!」
「パヨパヨ!!」
やはり、1対2では分が悪い。
もはやこれまでか……そう思われた、その時。
「大丈夫。諦めることはない」
3人の歌を静かに聴いていたカヲルが、口を開いた。
「運命は、君達を引き寄せようとしている。
また一人、勇者がこの地に導かれた……黒い、勇者が……」
その時!!不思議なことが起こった!!!!
光がスパークし、暗雲の隙間から太陽の輝きが差し込む。
それは神秘的とすら呼べる美しさをかもし出し。
「待てっ!!そこまでだ!!!」
そして――さらなる悪夢への誘いでもあった。
「さあ、君の歌声を聴かせてくれ……」
悪夢の渦巻く港に、今、正義のヒーローが降り立った。
時を越え、空を駆け。この星のため――
「俺は太陽の子!!
仮面ライダー、ブハァッ!!アーッ!!エッ!!!」
己の名を、高らかに叫ぶ!気合が入りすぎて、最後のほうは上手く聞き取れない。
通訳するならば、彼の名は仮面ライダーBLACK RX。
「そこの少年、そしてピンク玉怪人!!殺人音波で殺戮の限りを尽くすなどと……人間を何だと思っているんだ!!
おのれゴルゴム、許さんッ!!!!」
「へ?いや、俺達は」
ジャイアンの言葉など聞く耳持たず。
RXは彼らを自分の宿敵の手先だと勝手に確信し、闘志を燃やす。
「ゴルゴムめ、かつて俺が滅ぼした敵……まさか復活するとは!!
だがたとえ子供であろうと、悪の組織についたことがお前達の不幸だ!!
悪に生きる道などないものと思い知れ!!!!」
伊達に、怪魔界の民50億人を虐殺していない。その言葉には一切の容赦がなかった。
「パヨ!?」
「う、うわぁ冗談だろ?」
「待ってくれ、RX」
口を開いたのはカヲルだった。
「彼らは敵じゃない。彼も、君達と志を同じくする勇者なんだ」
「なんだと!?」
「だから、君の心を伝えてあげればいい。そう。君の想いを、その歌声に乗せて……」
「そ、そうか!そうだよ!!」
カヲルの言葉に、クリリンも同意する。
「あいつら、きっと悪い奴じゃない。
こうして歌っててわかったけど……あいつら、純粋に歌が好きなだけなんだ」
だからこそ、タチが悪いわけだが。
「そうか……わかった!俺の歌で彼らが正気を取り戻すなら!」
「ああ!一緒に歌おう!!」
何やらわけのわからぬまま、意気投合する二人。
そして。
ついに、伝説の歌が発動する。
『胸のざわめき 花吹雪
寄せ打つ波に 歌がある
落ち葉に書こうラブレター
胸の温もり 雪の下♪』
音程のズレきった歌声が、絶大な破壊力を持って全てを壊す。
既に港は、その原形を留めていない。
「ポヨヨ~~!?」
「で、できる……くそっ、こっちはそろそろ喉が限界だぜ……」
ゲームが始まってから丸二日、ずっと歌い続けていればそうもなるだろう。
だがそれはある意味、幸運でもあった。もし彼ら4人が全力でぶつかり合っていたら……
神戸は、いや西日本全土がどうなっていたことか。想像するだけでも恐ろしい。
「ちっくしょう、覚えてろー!」
「パァァーイ!」
ジャイアンとカービィは、捨て台詞と共に尻尾を巻いて逃げ出した。
「最高だったよ。素敵な歌だった」
渚カヲル。
ずっと彼らの歌を聴き続けていた少年は、歌い終えた二人ににっこりと微笑みかけ。
そして……地面に崩れ落ちた。
「カヲル――――ッ!!!」
「ありがとう……僕は君達に歌って欲しかったんだ。
そうしなければ、彼女と生き続けたかもしれないからね」
息も絶え絶えに、カヲルはクリリンとRXに語りかける。
使徒である彼のATフィールドを持ってしても、魔神達の歌声の前にはあまりに無力だったのだ。
「カヲル、しっかりしろ!くそっ、一体誰がこんなことを!!」
「まさか……ゴルゴムの仕業か!!おのれ……こんな子供までも手にかけるとは!!」
怒りと悲しみに震える二人に、カヲルは慈しむように微笑む。
「心配することはない。この世界に歌がある限り、僕は君達の心に生き続ける。
君達も、そして今の子供達も、同じなんだ。
この作られた、偽りの世界をも変える歌声を持っている……
君達が手を取り合えば、殺し合いも止められる」
カヲルは、ザックの中から二つのマイクを取り出し……クリリンの手に握らせる。
「これが、僕に与えられた支給品……“魔神のマイク”さ。
これを使って、これからも歌い続けて欲しい。そうすれば、運命は君達を導いてくれる。
この世界には、もっと多くの歌い手達がいるから……
彼らと手を取り合って……」
「カヲル!!何を言ってるんだ、しっかりしろ!」
「遺言だよ。滅びの時を免れ、未来を与えられる生命体は一つしか選ばれないんだ。
そして、君達は死すべき存在ではない……」
――君達には未来が必要だ。
ありがとう。君に会えて嬉しかったよ――
最後のシ者は、涙を流す青年の腕の中で、その息を引き取った。
少年の亡骸を埋葬し、クリリンは立ち上がる。
「行くのか……」
「ああ……こいつの遺志を継いでやらなきゃな。
このふざけた殺し合いを止めるためにも……」
RX……いや、人間の姿に戻った南光太郎の問いかけに、クリリンは確固たる意思を持って答えた。
「俺達の歌に、それだけの力があるって言うなら……俺は、その可能性を信じてみるさ。
そして、俺達と同じように歌える奴らがいるなら……
そいつらと一緒に、このゲームに立ち向かおう」
魔神のマイクを握る手に、力が込められる。
「ジャイアン、とか言ったっけな、あの子。それにあの変なピンク玉……
あいつらも、話せばきっと俺達に協力してくれるさ」
「クリリン、俺にも協力させてくれ」
マイクを手に取り、光太郎もまた力強く頷いた。
「俺達の歌で……このゲームを止め、世界を救うんだ!!」
「ああ……行こうぜ!!」
【兵庫県・神戸港 2日目:20時】
【クリリン@ドラゴンボール】
〔状態〕健康
〔装備〕魔神のマイク@
ドラえもん・ギガゾンビの逆襲
〔道具〕支給品一式
〔思考〕カヲルの遺志を継ぎ、歌の力でゲームを阻止する
ジャイアン達、及び歌の上手い(主観)者を捜し、味方に引き入れユニットを結成。当面は、日本中で歌いまくる
【南光太郎@仮面ライダーBLACK RX】
〔状態〕健康
〔装備〕魔神のマイク@ドラえもん・ギガゾンビの逆襲
〔道具〕支給品一式
〔思考〕クリリンと共に、歌の力でゲームを止める。当面は、日本中で歌いまくる
〔備考〕黒幕はゴルゴムまたはクライシス帝国であると確信(ただし根拠ゼロ)
【ジャイアン@ドラえもん】
[状態]:健康。やや歌い疲れ。
[装備]:マイク
[道具]: 不明
[思考] :クリリン達から逃げる。喉を休めた後、日本中で歌いまくる。
【カービィ@星のカービィシリーズ】
[状態]:健康。やや歌い疲れ。
[装備]:マイク
[道具]: 不明
[思考] :クリリン達から逃げる。喉を休めた後、日本中で歌いまくる。
【渚カヲル@新世紀エヴァンゲリオン 死亡確認】
【神戸港周辺に在住の住民約50万人の死亡確認】
※神戸港周辺が壊滅、兵庫県全土に大規模な被害が発生しました。
最終更新:2006年12月21日 16:03