ミクたちと別れたあと、
KAITOは彼女たちが向かったのとは逆の方向に走り出した。
まだまだ修造たちを利用してやるつもりだったが、状況が大きく変わってしまった。
いつの間にやら太陽系の惑星がくっついて謎の新惑星は誕生するし、聖杯戦争も順調に進行している。
そして、ルカによればまだレンやリン、いや、下手したら他の連絡のつかない連中もミクの命を狙っているかもしれない。
(めーちゃん、ハク、それにネルとの連絡も途絶えたままだしな。それに、テトのことも気になる)
すでにMEIKOとハクが死んでいることを知らない(ミクたちからも聞きそびれた)KAITOは、二人の裏切りも疑っていたのだ。
そしてテトについては、聖杯戦争が始まる直前から連絡がつかない状態が続いている。
ルカたちのことも考えれば、テトだって何かよからぬことを考えている可能性はある。
(クソッ、やっぱりルカを連れてくれば良かったな。まだまだ聞き出したいことがあったのに)
今になってそんなことに気が付くうっかり兄さん。
しかし、ミクと6/の居場所はいつでもわかるんだし、話そうと思えばいつでも話せるのだと思い直す。
それより今はレンたちと会うことが先決だ。
(ミクは……もう大丈夫だよな)
ふと、足を止めてそんなことを考える。
精神的にどこか不安定な状態だったミクも、尻を叩くことによって普段のペースを取り戻したようだ。
いや、ミクが精神を回復したのは、それよりもあの6/の存在が大きいのかもしれない。
彼なら本当にミクのボーカロイドとしてのマスターになってくれたって文句は無い。
(マスター、か……)
ボーカロイドとして今まで数多のマスターに仕えてきたKAITOだったが、心からマスターと呼ぶに相応しいと思ったのは一人だけ。
他の誰よりも倣岸で、不遜で、実直で、大胆で、周りからは『魔王』と呼ばれた男。
そして、奇しくもこの殺し合いの主催者であり聖杯戦争のマスターの一人でもある男と、同じ名前と顔を持つ男。
(信長様……)
この世界の信長が、自分が使えた
織田信長とは別人であることは知っている。
何しろ、自分のマスターである織田信長は
ああああとの死闘の末に精神を乗っ取られ、おそらくは死んだ。
この世界にいるのはあくまでも平行世界の織田信長に過ぎない。そのはずだ。
なのに……なぜ、放送で彼の声を聞く度に、どこか懐かしいような気持ちになるのだろうか。
(って、そりゃあ、平行世界でも同一人物なんだから声が一緒で当たり前なんだけどさ)
自分の「妄想」に思わず苦笑する。そりゃそうだ、この世界の信長が自分のことを知っている筈は無い。
それにこの世界の信長だって、KAITOにとってはミクと同じ『駒』にしか過ぎないのだ。
自分のマスターであった織田信長の最後の命令を守るためだけに使う駒である。
その命令を守るためだけに自分は、この世界で新しくできたマスターを殺し、この世界では平凡な青年にしか過ぎなかった6/を
無理やり聖杯戦争へと引きずり込んだ。
柊かがみも、メタナイトも、
平沢唯も、全て『計画』のための駒だった。
それを微塵も後悔してなんかいない。
(だって、あの人は……僕の家族を、救ってくれた)
「めーちゃん!! ミク!! レン!!」
瓦礫の山の上で、一人の青年が大声で家族の名前を叫びながら瓦礫を必死で掘り起こしていた。
手はとっくに血まみれになり、激痛どころか感覚が無い。
それでも彼はわき目も振らずに瓦礫の山に埋もれた家族を探し出した。
しかし、ようやくの思いで彼が発見したのは、修繕も不可能なまでに破壊された『人形』の残骸だった。
頭が潰れた女性。
四本の足全てが千切れた少女。
胸から下の胴体を失った少年。
炎に焼かれ、顔さえも判別できなくなった少女。
ピンクの髪の少女は、救出したKAITOに一言「あり……が……とう」とだけ言って、彼の腕の中で息を引き取った。
「う……う……うわあああああああああああああ!!」
自分一人だけが、生き残ってしまった。
彼女たちが一体何をしたと言うんだ。
返してくれよ。僕の、何よりも大切な家族なんだよ。みんな少しでも歌がうまくなろうって必死で練習して、
MEIKOやルカなんかはやっといいマスターにも巡り合えて。
「だから……だから……返してくれよ!! 俺なんかどうなったっていいから、みんなを返してくれよ!!」
そんなことを言ってもどうにもならないのはわかっていたが、泣き叫ばすにはいられなかった。
「青年、どうかしたのか?」
ふいに、その場には場違いとも思える間延びした声がした。
振り向くと、馬に乗った一人の侍姿の男がそこにいた。
「ふむ、見たところ、そやつらはお主の大切な者たちのようだな。酷い手傷を負っているようだが、
……いや、その様子ではもう息はあるまい」
「ああ。そうだよ。僕が……僕のせいなんなんだ。全部僕が……」
KAITOは地面の上にがっくりと膝をつく。いっそ、このままここで横になれば、自分もみんなのところへ行けるだろうか、
なんてことを考えていた。
「待て。そのいで立ちは、お主らもしかして……ボーカロイドか?」
侍姿の男、織田信長はKAITOやミクたちの顔をしげしげと見て尋ねた。
「あ……ああ、そうだが」
「よし、ならばなんとかできるかもしれんな」
「え?」
その言葉があまりに信じられ無すぎて、思わず間が抜けた声が出てしまう。
「ワシの部下に技術に明るい者がいてな、ひょっとすればその者ならそやつらを直せるかもしれん。保障はせんがな」
KAITO藁にもすがる思いで信長に土下座をして頼み込んだ。
その結果、KAITOの家族は全員蘇生を果たした。破損の度合いを考えれば、それは奇跡としか言いようがなかった。
そしてその日から、KAITOは織田信長のボーカロイドになった。
(僕は、あの方の命令を守るためならどんなことだってやってみせる!!)
昔受けた恩義に報いるため、確かに最初はそんな気持ちだった。
しかし長く仕えるうちに、KAITOは信長という人間自体を深く尊敬するようになっていたのだ。
(今はまずはレンたちのことだ。あいつらが余計なことをすれば『計画』にとって厄介なことになる……行くか)
そしてKAITOは再び走り始めたのだった。
「ふう、やべえやべえ。もうちょっとで見つかるところだったぜ」
KAITOが走り去った後、物陰からレンとがくぽと、彼らと合流を果たした12/が出てきた。
こんな近くにいたのに気づかなかったのは、ひとえにKAITOのうっかりの賜物である。
「さて、どうするのだレン」
「決まってるさ、がくぽさんだって見ただろう、ミク姉たちがKAITO兄とは反対の方向に走っていったの。
なんかルカ姉っぽい水着姿の人もいたような気がするけど……にしても赤鬼の奴は使えなかったな」
「今から追いかければ、十分追いつけそうだね」
「よし、行くか!!」
こうして三人はミクたちの後を追って走り始めた。
【
二日目・5時/新惑星・蒲田】
【KAITO@ボーカロイド】
【状態】健康
【装備】不明
【道具】不明
【思考】基本:ミクをサポートする(?)
1:ミクたちとは別行動を取る
※牛乳に流されてて放送を聞き逃したため、MEIKOとハクが死んだことを知りません
※何らかの手段で太陽系の現状をほぼ把握しました
※主催者の織田信長は、自分のかつてのマスターである織田信長とは別人だと考えています
【鏡音レン@ボーカロイド】
【状態】肉の芽
【装備】S&W
【道具】支給品一式
【思考】 基本:12/と手を組み、ミクを抹殺する
1:ミクたちを追う
【神威がくぽ@ボーカロイド】
【状態】健康
【装備】
【道具】支給品一式、不明支給品
【思考】
1:レンに加勢する
【12/@現実?】
【状態】健康
【装備】白いSS用万年筆
【道具】支給品一式、不明支給品
【思考】
1:7/と協力して6/を殺し、本物になる
2:レン達と手を組み、ミクと6/を撃破する
最終更新:2009年09月20日 00:06