「ったっく、あいつにゴールを叩き込むにはどうすりゃいいんだよ」

ベンチで水分補給しているチームの中、5/は投げ捨てるように言う。
こっちにまだ点が入っていないことはいい。
しかし、守っているだけでは戦いに勝利することはできない。
身を守る盾はあっても、相手を傷つけるだけの剣がないのだ。

「とにかくシュートを焦るよりも、ゴールを守ることを考えた方がいい。
今、点を入れられたら、どうしようもないですから」
「現役のお前が言うなら間違いないよな・・・・・・」

一瞬、守りを考えない捨て身の戦法を提案しようとした5/だが、
鬼道の発言で即座にその考えを捨てる。
サッカーに関してはド素人の5/達が、超次元サッカーでイプシロンを張り合えたのは、
りせの解析能力で聞いた情報を元にした彼の指示があってのことだ。



「しかしこのままではイプシロン達の少年少女達は戻らない」
「そうね、クライシス帝国、なんてやつらなのかしら!」
「己、クライシス帝国め、許ざんっ!!」
「許さないわ!」
「光太郎、春香・・・・・・」

本郷は怒りに震える二人を見ながらも、思案する。
自分だってイプシロンの子供達を解放してやりたい。
そのためにこんなところで足止めされているわけにはいかない。
だとすれば、いっそのことサッカーではなく実力行使で倒してしまえば良いのではないか。

(いや、何を考えているんだ俺は)

本郷は、脳裏を過ぎる悪魔の考えを払うかのように首を振り、自分の両頬を叩く。
仮にここで実力行使でイプシロンを倒したとしても、彼らの心が晴れることは無いだろう。
イプシロンは『戦士』ではない。 『選手』なのだ。
サッカーという絶対の自信が、彼らの心の中にある。
よって、それを負かさない限りは彼らはまた立ち上がって手当たり次第に勝負を挑んで町を破壊する。
だから、この戦いは『サッカーの試合として』決着をつけないといけない。

(しかしあのキーパー技を破るにはどうしたら・・・・・・)

「ん? りせ、お前どうしたんだ? 珍しく黙り込んで」
「いや、ブッチギルンジャーボールあるでしょ?
あれにもっといっぱい力を入れられたらなぁ・・・・・・って思ってたの」
「おいおい今の俺達だとさっきと変わらない8人分しか込められねえぞ」
「うん、だから一人二役すればできるかなーって」
「一人二役ってどうするんだよ」

(一人二役・・・・・・そうか!)


『えと、タ、タイム終了です。 これから後半が始まるので選手達は速やかにフィールドに集まってください!』

アツコの声が聞こえてくると、5/達は皆一斉に立ち上がり、フィールドに向かって歩いていった。



☆ ☆ ☆

『さて、未だに先取点が入らぬまま後半を迎えてしまいました。
とここでライダーイレブンは陣形が随分様変わりしましたね』


          てつを(FW)   

           5/(FW)  

         鬼道さん(MF)

本郷さん(MF)              りせ(DF)

       スーパー1(MF)   J(DF)


           姉さま(GK)



『人数が減った影響だと思います。 あ、イプシロンが!?』
「なんであいつが前に出てるんだよ!?」

5/達が驚きの声を上げるのも無理はない。
イプシロンの陣地の最先端に、前半終了までゴールキーパーを勤めていたデザームが立っていたのだ。

「驚いたぁ? デザーム様は元々はFWなの」
「その強い脚力を封印するために、普段はゴールキーパーをなさっているのだ」
「ブッ潰す・・・・・・」

「そいつらの言っていること、嘘じゃないよ・・・・・・
だって、そいつのこと調べてみたら、足の力がすっごい強かったんだもん」
「以前俺の仲間達と戦ったときも、やつはFWだった・・・・・・」
『なななんとデザームは実はFWだったという驚愕の真事実が発覚しました! 己ディケイド!』

チーム最強のFWを前衛に持ってくるというということは、それだけこれからの攻撃も激しくなることである。
だが幸い今回のキックオフはライダーイレブン側だ。
それに、相手のゴールキーパーがデザームでなくなったということは、
逆に言えば相手の守りが脆くなった可能性も出ているのだ。


「じゃあいきなり行くぜ」

RXがキックオフで蹴ったボールを、5/が繋ぎ、ゴールキーパーである春香にパスをする。
りせが調べてみると、今のゴールキーパーはデザーム程の能力を持っていない。
キックオフ後、いきなりブッチギルンジャーボールを放てば、もしかしたらゴールに入れることができるかも知れない。
しかし、その考えが甘かったということを彼らはすぐに思い知らされることになった。

「遅いな」
「何!?」

ボールが5/を離れた直後、春香に渡るはずのそれはデザームの元にあった。
すぐに1号と、スーパー1、そして鬼道とJがディフェンスに入るも、
デザームは彼らを飛び越え、イプシロンの陣地の中央に着地する。

「不味い、あれが来るぞ!」
「あれって何だって!」


    _人人人人人_
    > グングニル!<
     ̄^Y^Y^^Y^Y^

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デザームがボールを右足で踏みつけると、
彼の足元からブラックホールのような紫色の穴が出現してその中にボールごと
吸い込まれていったのだ。

「あいつは何処に行ったんだよ!」
「え、と・・・・・・う、宇宙!?」



宇宙。
それは、無限に広がる闇。
その中に点在する星は、少しでも光を絶やすまいと懸命に命を燃やして輝いている。
限りなく続く星の海の広さに比べたら、人というのはどうしてこんなにもちっぽけなのだろう。
しかし、サッカーに対する情熱しか持たぬデザームにとっては、
そのようなことでさえ、ちっぽけだと思ってしまう。

「宇宙か・・・・・・まあどうでもいいことだ」

デザームのオーバーヘッドキックがボールを打つ。
すると、ボールはどの星にも負けぬ極光を放ちながら、宇宙を駆ける矢となって突き進んでいく。
深い闇を超えた先にあるのは、彼が先ほどまで、そしてこれからも立ち続けるであろう、フィールドだ。



『ゴォォォォォォォォル!!!!! なんとデザームとんでもない隠し球を持っていたぁ!!!
文字通り、フィールドの矢となって、ライダーイレブンのゴールを貫いたぁぁぁぁぁ!!!
ここに来て先制点はかなり痛いぞライダーイレブン! ここで巻き返すことはできるのかぁ!?』

「そんな・・・・・・見えなかった・・・・・・」

光速にして強力。
流石のブッチギルンジャーである春香も、異空間から急に現れた光の矢に反応することはできなかったのだ。

「気を落とさないでください春香さん。 この先俺達が点入れてみせます!」
「ありがとう光太郎さん・・・・・・」

気を落としていた春香であったが、光太郎の一言で立ち上がる。
そして、ブッチギルンジャーボールをしようとするが、デザームが睨みを効かせているため、
スーパー1にパスをするだけで終わる。

「スーパー1、パスの感覚は出来る限り短くするんだ!」

鬼道の言葉に頷いたスーパー1は、デザームを警戒しつつ、ボールを隣のJへ回す。
そしてJに向かって接近してきたデザームを1号とともにマークし、Jが鬼道にパスしたボールのパスカットを防ぐ。

「ブッ潰す・・・・・・」
「攻められるなんてマキュア嫌い!」
「甘い、イリュージョンボール!」

迫ってくる二人の選手を前にした鬼道だが、彼は特に動じることも無く、
必殺技によりボールを分身させる。
いくつものボールの幻は、選手達の周囲で回転をし、鬼道が素早くカットされたボールだけが実体となって残りは消えていった。

『ここで鬼道、マキュアとクリプトのブロックを必殺技のイリュージョンボールで乗り切った!
このままイプシロンのゴールに突っ込むのか!?』

鬼道の前に更にイプシロンの選手が立ちふさがる。
不利だと判断した鬼道は、近くの5/へとパスをした。

「だから甘いと言っている!」
「それはどうかな?」
「何だと?」

パスカットをしようと割り込んだデザームであったが、背後の5/はそれがどうしたと言わんばかりに問いかける。
直後、ゲル状の物体が更にデザームの前に割り込んできた。

「RXバイオライダー!」

ゲルに変化したバイオライダーはボールをカットすると、
そのままボールと同化して敵陣ゴールまで突っ走・・・・・・しろうと思ったが、
流石にそれはサッカーで邪道と感じたバイオライダーはゴール前までドリブルし、上空にパスをした。

(俺一人の力ではワームホールを確実に敗れるという保証はない。
だが鬼道君から聞いたあの技を使えば、ブッチギルンジャーボール程ではないがパワーを出せるはずだ)

「ライダーキィィィック!!」

バイオライダーがパスをする直前に飛び上がっていた仮面ライダー1号は、
ボールをゴールではなく、そのまま地面に向かって蹴りだした。

「任せたぞ鬼道君!」
「ああ! このボール無駄にはしません! ツインブースト!」

地面に衝突する直前に鬼道がボールを蹴りだす。
ライダーキックに更に力が加えられたシュートが放たれたのだ。
炎を纏ったボールは、容赦なくイプシロンのゴールキーパーに襲い掛かる。

「ワ、ワームホール!」

異空間のゲートはボールを受け入れるも、中のボールがワープする気配はなく、
ゲートからガラスが割れていくような音が聞こえてくる。
ゴールキーパーのゼルは、額に汗を浮かべ、じりじりと自らの体がゴールネットに近づいていくことを知る。
しかし、急にボールを抑える苦痛が軽減したことを感じた。

「ゴール入れられるのってマキュア大嫌い!」
「ブッ潰す・・・・・・」
「お前ら・・・・・・!」

『なんとマキュアとクリプト、ゴールキーパーのゼルの背中を押して踏ん張っているぅぅぅ!!!
なんというチームワークだぁぁぁ!!!』

ワームホールの中にボールが収まり、直後に現れた別のワームホールから射出されたボールが地面にめり込む。

「へへ、ゼルの癖に一人に踏ん張らないでよ」
「マキュアお前・・・・・・」
「か、勘違いしないでよ! 私はデザーム様一筋なんだからね!
というわけでデザーム様、やっちゃってください!」
「任せとけ」


    _人人人人人_
    > グングニル!<
     ̄^Y^Y^^Y^Y^

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☆ ☆ ☆



「止められるのかしら・・・・・・?」

デザームがまたさっきのシュート技を使った。
春香の脳裏に不安が過ぎる。
自分はあの流星を止められるのだろうか。
一点目、流星のごとくフィールドを駆ける光の槍を前に、反応することさえできなかったのだ。
ある意味不意打ちではあったが、そうだと気づいた時は既にボールはゴールの中に入っていた。

「いいえ、そんなこと言っている場合じゃないわ!」

止められるかどうかではない。
止めるのだ。
これ以上点を入れられたら逆転は極めて困難なものとなってしまう。
だから絶対止める! 悪の野望を握りつぶすために盾となっても止めてみせる!

だが無常にも、彼女にはボールの速さを捉えるには未熟すぎる。
仮に自分自身に向かってきたのであったら話は変わるが、生憎今回はサッカーだ。
ボールは自分に向かってくるとは限らない。
自分の右に現れることもある。 左に向かってくることもある。
ジャンプしなければ届かない距離に襲い掛かってくることだってある。
言わば、サッカーのゴールとは、がら空きの門。
入ってしまえばこっちの勝ち。 ボールはいちいち門番を倒す必要なんてない。
だからゴールキーパーは、自身を掻い潜ってゴールに侵入しようとするボールを、
自身の手で捕まえなければならないのだ。

「来た! でも・・・・・・」

虚空に突如穴が空き、そこから光の槍がゴール目掛けて襲い掛かる。
左に来るのか、それとも右か。 もしかしたらパンチングで弾かなければいけないのか。
しかし彼女は迷うことを許されず、ボールは瞬時にゴール前まで現れる。

「え!?」

それは一瞬の出来事だった。
グングニルがゴールを射抜こうとする瞬間、春香の前に二つの影が現れたのだ。

「スーパー1! J!」

本郷の叫びを聞きながらも、二体の仮面の戦士はともに右足を突き出してボールを逆に蹴り飛ばそうとしている。
銀色の足と深緑色の足が、光となったボールに衝突して、激しい火花を撒き散らす。
だが、二体の右足は悲鳴を上げるようにみしみしと割れていく音がして、
ついにスーパー1とJは消えてしまった。

「二人とも・・・・・・でもこれで!」

いくらカードで作り出された虚像とはいえ、春香は仲間が消えることに対して何も感じないわけがない。
今は消えていった彼らのことで物思いに耽っている暇はないのだ。

「これで何処に来るかわかる!」

ダブルライダーキックにより、威力を減衰させられたボールは、
春香の真正面に来るように進路を変更させられている。
自身にシュートが打ち込まれるかがわかっていれば、後はそれを掴むことだけを考えればいい。
視界に映るボールに重ねるように掌を突き出し、五指に神経を集中させる。

「ぶっち・・・・・・」

唱えるのは己の全ての力を解放する呪文。
心に巣食う迷いや悲しみを全て粉砕し、闘志に変えるための呪文。

春香の手にグングニルが突き刺さる。
同時に彼女の五指がボールを捉える。
これまでの必殺シュートとは比較にすらできないほど強力な一撃。
春香の体が徐々にゴールに押されていく。

だが、ここで入れられるわけにはいかない。
彼らが遺した軌跡の道標を無駄にするわけにはいかない。

「ぎるわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

『止めたぁぁぁぁぁぁ!!!
なんと春香、グングニルを止めることに成功しました!
ダブルライダーの犠牲は無駄じゃなかった! ついでにボールは破裂したぁぁぁ!!!』
「止めた! 止めたんだよ!」
「やったぜ!」
「フッ・・・・・・ここからが俺達の反撃開始だ!」
「イレブンでなくても最後まで諦めない、ライダーの底力見せてやるぞ!」
「ぶっちぎるぜ!」

5/達は春香に歓声を送り、彼女も笑顔を浮かべる。
止められたイプシロンの選手達は唖然としていたが、
直ぐに目の前のライバル達に闘志をむき出しにする。
彼らを見据えた春香は、アツコから渡された新たなボールを抱えてライダーイレブンに言い放った。

「ブッチギルンジャーボール、いくわよー!」



☆ ☆ ☆



「ブッチギルンジャーボール、いくわよー!」

春香の声に従い、5/達はフォーメーションをとる。

「ふん、その技は8人でさえ破られたものだ。
6人となったお前たちがどうできると?」
「そう言ってられるのも今の内だ」
「ほう、面白い」

挑発するデザームだが、1号は毅然とした態度で返す。
スーパー1とJを欠いた今、ブッチギルンジャーボールの威力が下がっていることは明確である。
内心、5/達は不安を感じられずにはいかなかったが、
1号の、本郷猛の言葉を聞いていると何故だか勝利への確信が持てた。

「りせ!」
「今度は私からぁ!?」
「させん!」

りせがボールをパスしようとしたとき、デザームが彼女からボールを奪おうとする。
だが今のりせには通用しない。
デザームの妨害が来ることは予め想定できていた彼女は、
彼がボールに蹴りを入れるタイミングに合わせて自分の足を突き出したのだ。

「む!?」

このまま彼女の足を蹴ってしまってはファールになってしまう。
一瞬の迷いがデザームの動きを止める。 その間にりせは鬼道に向かってパスをした。

「鬼道くん!」
「はい、本郷さん!」
「ああ、5/号!」

イプシロン選手の妨害を避けながらも、ライダーイレブンは次々とボールを回していく。
そして5/がボールを足で踏みつけた。

「だからその呼び名やめろ! てつを!」
「ぶっちぎるぜぇぇぇ!!!」

空に上がったボールを捉えるのは緑の影。
勝利に繋ぐため、仮面ライダー1号は必殺の名を叫ぶ。

「ライダーキィィィック!!」

地面に垂直に落ちていくボールの着地点に、鬼道有人が駆け出す。
そしてその力を保ったままゴールに向けて思いっきり蹴りだした。

「ツインブースト!!」


「またその技か・・・・・・ワームホール!」
「ゼル、マキュアも加勢するよ!」
「ブッ潰す・・・・・・」

イプシロンゴールキーパーの背中を二人の選手が抑える。
そして、ワームホールがボールを捉え、悲鳴を上げながらもボールを吸い込もうとしている。

「RXキック!」

だが、直後彼らの視界に映ったのは黒い仮面の戦士がボールを更に蹴りだしている姿であった。
シュートの威力だけで限界だったワームホールにライダーキックが襲い掛かり、
ワームホールは完全に破裂し、ゴールキーパー達はボールごとゴールに押し込められた。

『ゴォォォォォォル!!!!!!
ついに、ついにライダーイレブンのシュートが決まりました!。
今試合で初の得点です! これでライダーイレブンがイプシロンと並びました!
しかし残り時間は15分を切っています! 最早両者絶対に得点をとられるわけにはいきません!
先に入れたものがこの試合を制することになるでしょう!』



☆ ☆ ☆



「グングニル!」
「「ダブルライダーキック!」」
「ぶっちぎるわぁぁぁぁぁ!!!」
『ここで春香、グングニルを止めたぁぁぁ!!! ついでにボール割れたぁぁぁ!!!
一度止めてパターンわかったのかぁ!?』

「ほう」

必殺の一撃が止められて、デザームは感心する。
出現したグングニルに、横からライダーキックを放つことにより、威力を減退させて
ボールの軌道を春香の取れる位置に誘導する。
正面からではなく、真横から打つので自身に力が跳ね返ってくることもない。
これならば、最小限のリスクでグングニルを止めることが可能だ。

「そろそろ頃合だな」

もう一度ブッチギルンジャーシュートがくる。
そしてそれは、今やゴールキーパーのゼルでは止められない。
ならばここは守りに力を入れる時であろう。

「ハーフタイムだ。 いいな?」
『あ、はいどうぞ』
「そうか。 ゼル、代われ」
「はい」

実況であり、一応審判の一人、アツコの許可が出たのでデザームは胸のスイッチを押し、
ユニフォームをゴールキーパーの色へと変える。 同時にゴールキーパーも、ゼルとタッチをし、
自分のユニフォームをフィールドプレイヤーの色へと変えた。



「ついに来るぞ・・・・・・」

鬼道が警鐘を鳴らすように呟く。
デザームがゴールキーパーに代わるということは、
ゴールの守りが今以上に堅くなるということだ。
グングニルが来る危険性は無くなるのだが、自分達が攻めという立場ではそのメリットは意味をなさない。

「諦めるな! このシュートを入れたら俺達の勝ちだ!」
「はい!」
「ブッチギルンジャーボール、いくわよー! りせ!」

1号の一喝でライダーイレブンは各々のポジションにつく。
そして、春香はまずはりせにボールをパスし・・・・・・

「わか・・・・・・ってなにこれぇ!?」

突如、4人のイプシロン選手達がりせを包囲したのだ。
イプシロンはブッチギルンジャーボールそのものを防ぐつもりである。
個々を相手にするならカンゼオンの力を駆使して突破は可能かも知れないが、
りせはペルソナ使いだということ以外は普通の女子高生なのだ。
一度に4人ものの超人を捌ききれるはずがない。

「りせさん、こっちだ!」
「鬼道くん!」

りせの上空に鬼道が現れる。
彼女がそこにボールをパスしたが、そのとき一つの影が鬼道を覆い隠すようにして出現した。

「ブッ潰す・・・・・・」
「なんだと!?」

パスカットをしたイプシロンの選手は、ボールを足に挟んだまま着地し、
FWに向かってパスをする。

「させるか!」
「マキュア、邪魔されるの大嫌い!」
『おおっとここで1号がスライディングして、イプシロンの選手からパスカットし返したぁ!
そして1号は器用なボール裁きで、5/にボールをパスだぁぁぁ!!!』

「残念だがこのまま行くしかない! 5/号、繋いでくれ!」
「やらせない!」
「それこそやらせるわけにはいかん!」

宙に舞ったボールをイプシロン選手が取りに行く。
だがその前にゲル化したバイオライダーが現れ、RXへと形を成した。

「受け取れ、5/号!」
「おらよ!」

ボールを受け取った5/は、一旦周囲の様子を確認する。
前にはイプシロンの選手達が自分目掛けて襲い掛かってくる。
そして、背後には着地し終えたばかりのRXと鬼道。
1号は彼らよりも更に後ろの位置にいる。

「ちっ!」

この態勢でボールを宙に上げ、ツインドライブの準備をしても途中でパスカットされてしまうのは明白だ。
悩んでいる間に、イプシロン選手が横からブロッキングを仕掛けてくる。
5/は、前方からのスライディングをボールをリフティングさせて跳躍することで避ける。
そして、そのまま空中まで跳び、右足にファイズポインターを装着後、それにミッションメモリーを挿入し、
ベルトのファイズフォンのENTERボタンを押す。

  • Exceed Charge-

電子音声とともに、ファイズの体の紅いラインに閃光が走り、足のファイズポインターに収束していく。
ファイズの右足から出された紅い円錐が、サッカーボールを突き出してデザームの前で静止する。

「でやぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

繰り出されるはファイズの伝家の宝刀。
紅い一撃を受けながら、ファイズはボール向けて己のライダーキックを放った。

「それが貴様の全力か、ならば俺も全力を持って答えさせてもらおう。 ドリルスマッシャー!」

ドリルスマッシャーとクリムゾンスマッシュがボールを挟みながらぶつかり合う。
その場に居合わせた者の視線が皆、火花を散らしながら回転し続ける二つの円錐に釘付けになる。
紅が押し出したかと思えば黒金が押し返す。
力はほぼ互角。 それ故にこの均衡が崩れることはない。
しかし、それはどちらかに少しでも力をかければ、簡単に崩れさってしまうことでもある。

「なにをするお前たち」
「デザーム様が苦しむの、マキュア大嫌い!」
「ブッ潰す・・・・・・」
「俺も!」
「俺もデザーム様助ける」
「・・・・・・勝手にしろ」
『なんということだぁぁぁ!!! イプシロン達の選手が次々とデザームの背中を押している!
なんという友情パワー! そのせいか、クリムゾンスマッシュの勢いはだんだん衰えているぞぉ!』

デザームの背後に全イプシロンの選手が集まる。
どうしても勝ちたいという執念がここまで彼らを動かしているのだ。
だが、それはイプシロンだけではない。

「俺だってなぁ・・・・・・」

勝利への執念は5/にも、そして彼の仲間にもあった。
人数足りないけど想いの強さは誰にも負けない。
イプシロンの選手達をエイリア学園から解放したい。
そして、彼らを破壊のためにサッカーをするのではなく、
ただ楽しむためにサッカーをする健全な子供に戻したい。

「負けるわけにはいかねえんだよぉぉぉぉぉ!!!」
「「よく言ったぞ、5/号!」」

二つの声が5/の耳に響く。
そして彼の両隣に、それぞれ仮面ライダー1号と仮面ライダーBLACK RXが現れる。
彼らもまた、5/と同様に、ボールに向けて放たれる。

「ぶっちぎるぜぇぇぇぇぇ!!!」

RXのキングストーンが極光を放つ。
5/達の思いに呼応して、クリムゾンスマッシュを虹色へと変化させていく。

「これが!」
「俺達の!」
「ぶっちぎりの!」
「「「トリプルライダーキックだぁぁぁぁぁ!!!」」」

「まさか・・・・・・」

巨大なドリルは砕け散り、ボールごと3人がゴールに突っ込む。
倒れたイプシロンの選手とデザームに映ったのは、ゴールネットを突き破ったライダー達の姿だった。

『ゴォォォォォル!!!
ファイズ、1号、RXのトリプルライダーキックが炸裂だぁぁぁ!!!
その力は最早、イプシロン11人の力を超えてドリルスマッシャーを打ち破るううう!!!
トリプルライダーキックが3人分の力だと誰が決めた!?
彼らの力は足し算で測りきれるものではない! 掛け算の強さなのかぁぁぁ!!!』



☆ ☆ ☆



「私達の負けだ・・・・・・」

2対1と、僅差で試合が終了し、デザーム達は敗北を認めて地に座る。

「さあ好きにするがいい」

敗北はエイリア学園には許されぬ行為。
そして彼らは命令とはいえ、数々の破壊活動を繰り広げてきたのだ。
それにより死者まで出てしまっている。
だが、本郷猛は彼らの予想に反してデザームに握手を申し出た。

「いい試合だった。 全力を出し尽くして気持ちよかっただろう。
君たちを保護する当てある。 だから俺達について来るんだ」
「いいのか? 我らは許される行為をしたのだぞ」

イプシロンの選手は、自分達が受け入れられることに戸惑っている。
そんな彼らの前に5/とりせが歩み寄る。

「ったくガキが大層な言葉遣いしてんじゃねえよ。
鬼道のやつから聞いたぜ? お前らだってサッカー大好きなんだろ?」
「試合中はとても考えられる時間はなかったけど、今思い出してみると君たちすっごい楽しそうだったよ」
「そうか・・・・・・」
「さあ立てよ」

5/がデザームを立ち上がらせるために、肩を組もうとする。
しかし、急にデザームが本郷の手を振り払い、5/を突き飛ばした。

「っ! 何すんだ!」

突き飛ばされたことに激昂する5/だったが、
デザームは明後日の方角を見て言い放つ。

「どうやら名残惜しいがここでお別れのようだ」

デザームの視線の先には黒いサッカーボールを持ったローブの男。
彼の姿を視認したイプシロン選手は、皆、諦めた、それで満足した顔色を浮かべた。

「おいお前っ!!」

5/がローブの男に掴みかかろうとするが、それよりも早くボールがイプシロンの選手達に向けて打ち出される。
すると、黒いサッカーボールは破裂し、そこから生まれた黒い空間がイプシロン選手達を包み込む。
驚き惑う5/達であったが、黒い空間は一瞬にして消えてしまった。
同時にローブの男も闇に包まれて消えていく。

『これが、敗北者の末路だよ』

デザームが最後に遺した言葉だけが、5/達の耳から消えることがなかった。



☆ ☆ ☆


「ねえ5/さん」

イプシロンの消滅後、気まずい空気を残したまま、
ライダーイレブンの仲間達は次々と去っていった。

妹を、そして苦しめられている人を助けるために、南光太郎と南春香は再び秋葉原に向かい、
本郷猛は行方不明の一文字隼人と、鬼道の仲間と妹を探すために彼とともに去ってしまった。

今ここに残っているのは、最後まで落ち込んでいた5/と彼を見守るように本郷から頼まれたりせだけである。
ほとぼりも冷めたかも知れないと、りせは5/に問いかけるが、彼は俯いたままだ。

「辛いのはわかるけどさ、いつまでもこうしていたって仕方ないよ」
「・・・・・・」
「5/さんってば!」

一向に反応しない5/に、最初は憐憫の情を抱いていたりせも、苛立ちを見せる。
そして彼の肩に掴みかかろうとしていた時だった。

「うるせえよ!」
「きゃっ!」

5/はりせを乱暴に弾き飛ばしたのだ。
りせは思わずバランスを崩して尻餅をつく。
しかし、彼女は5/を睨む。

「何だよ・・・・・・」
「さっきからうじうじしてバッカみたい!
私だってあんなことがあって悲しいよ!
私だけじゃない、本郷さんだって鬼道くんだって、光太郎さんや春香さんだって悲しいに決まっているよ!
でもみんな立ち上がって前に進んだんだよ?
悪い人に立ち向かうために苦しくたって戦っているんだよ?」

「それなのにあんただけうじうじしちゃってどうするの!?
あんたを先輩と比較するつもりはないけどさぁ、先輩はこんなときも前を見て私達を引っ張ってくれたのよ!
あんただってせめて、あいつから言われた私を『守る』って命令ぐらい守ったらどうなの!」
「!」

守る。
その一言に5/の心は揺さぶられる。
自分がりせを守ったことは、別にマーラ様の人に命令されたからではない。
『守りたい』と思ったから守っただけだ。
理由はわからない。 だが、どうしても目も前で傷ついていく人を見たくないのだ。
だからディアボロに襲われたりせを見たとき、彼女を助けたいと思った。
ディアボロの拳からりせを守り、彼を撃退するに至った。

「・・・・・・ってやるよ」

彼の心に、再び熱い感情が戻っていく。
そして5/は、その感情を湧き上がらせているのは何なのか、今はっきりわかった。

「誰かが傷つくならみんな俺が背負ってやるよ!
その痛みも苦しみも全部俺が背負ってやる!」

守りたい。 救いたい。
極めてシンプルではあるが、それが5/の戦う理由だ。
宣言をして立ち上がる5/に、りせは満面の笑顔を浮かべたのであった。



三日目・0時30分/新惑星東京】
【5/@現実?】
【状態】健康、オルフェノク化
【装備】ファイズギア
【道具】ファイズアクセル
【思考】基本:りせと苦しんでいる人を守る。
     1:小早川ゆたか、南春香を発見した場合は、マーラ様の人に報告する
     2:マーラ様の人の指示を待つ。 その際にマーラ様の人に南春香のことを報告する。

【久慈川りせ@ペルソナ4】
【状態】健康
【装備】ペルソナ(カンゼオン)
【道具】支給品一式、PSP
【思考】基本:先輩(ペルソナ4主人公)と仲間を探して殺し合い打倒
     1:5/と行動する
     2:先輩(ペルソナ4主人公)の名前を思い出す

※ペルソナ4主人公と恋人になってからの参戦です
※ペルソナ4主人公の名前が、「ああああ」によって消されています
※マーラ様の人を警戒しています


「どうやらあいつらは大丈夫みたいだな」
「ですね」


離れながらも、V3ホッパーで5/達の様子を見ていた本郷と鬼道は、
V3ホッパーを閉まって仲間の捜索にあたるのだった。


【本郷猛@仮面ライダー】
【状態】健康
【装備】
【道具】支給品一式、V3ホッパー(投影機付き)
【思考】
1:人々を守り、バトルロワイアルを止める
2:失踪した一文字隼人を探す
3:鬼道の仲間探しを手伝う

【鬼道有人@イナズマイレブン】
【状態】健康
【装備】変なゴーグルとマント
【道具】支給品一式、サッカーボール
【思考】
1:仲間を探す(ただし妹最優先)
2:エイリア学園の謎を探る
3:本郷と行動する



「エイリア学園もクライシス帝国の一派だな!」
「許さないわっ!」


ぶっちぎりの二人は、またどっかに走っていった。

【南春香@みなみけ おかわり】(マスター)
【状態】おかわりモード
【装備】拳銃
【道具】支給品一式、不明支給品、かがみのデイバッグ、ハッピーセット×3
【思考】
基本:クライシス帝国を倒す
0:ぶっちぎるわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
1:悪を全て滅ぼす
※ブッチギルンジャーのマスターとして、多少なりともRXの影響を受けているようです
柊かがみ織田信長、彼女、イチロー空気王、赤鬼、鷹の爪団、
 クラス:マスターのサーヴァントとマスター、カーネル・ブロリー・サンダース、泉こなた
 ヤマダ電機社長、キングギドラの中に入っていたおっさん、岩鬼正美、里中智、それも私だ、
 エイリア学園をクライシス帝国の手先だと認識しました(根拠ゼロ)

【南光太郎@仮面ライダーBLACKRX】(クラス・ブッチギルンジャー)
【状態】てつを
【装備】キングストーン
【道具】不明
【思考】
基本:クライシス帝国を倒す
1:マスターである春香と行動する
2:悪に生きる道はないと知れ!! (悪を全て滅ぼす)
3:ぶっちぎるぜええええええええええええええええ!!
4:士たちとはぐれた!?己、クライシス許 ざ んッ!
※柊かがみ、織田信長、彼女、イチロー、空気王、赤鬼、鷹の爪団、
 クラス:マスターのサーヴァントとマスター、カーネル・ブロリー・サンダース、泉こなた、
 ヤマダ電機社長、キングギドラの中に入っていたおっさん、岩鬼正美、里中智、それも私だ、
 エイリア学園をクライシス帝国の手先だと認識しました(根拠ゼロ)


「というかいつのまにかサッカーは超人のスポーツとなってしまったのだ!」
「鳴滝さん、それ言うの遅すぎです」
「こうまでできるディケイド、貴様は一体何者なんだ!?」
「むしろ貴方が何者なのかを知りたいです」
「己ディケイド! かくなる上は、キュアノービス覚醒させるしかない!」
「っていつのまにか私の衣装変わっている!?」

【アツコ@みなみけ】
【状態】健康、キュアノービス(仮)ブランク体
【装備】リンクルン@フレッシュプリキュア
【道具】支給品一式、不明支給品
【思考】基本:知り合い(南春香、マキ、保坂、速水優先)を探す
    0:マスコットでも探せばいいんじゃないかなぁ!
    1:鳴滝と行動する
    2:マスコットを探す

※プリキュアになりましたが、マスコットがいないので本家ほどではありません。
※なんか知らないけど、服のベースがハートキャッチプリキュアのものになったみたいです。


【鳴滝@仮面ライダーディケイド】
【状態】健康
【装備】不明
【道具】支給品一式、不明支給品
【思考】基本:ディケイド(門矢士)を倒す
   0:おのれディケイド!
   1:アツコと行動する
   2:Wの枠をプリキュアの枠にする
   3:マスコットを探す

※次元を操作できる能力は制限されているみたいです(少なくとも遠距離移動は不可能)
※世界融合をディケイドの仕業だと思っています。




一方ここは主催施設。

「信長様、イプシロンの選手が消去されたようです」
「そうか。 まあ原作でもあったことだけどなんで消しちゃったんだろうね」
「さあ・・・・・・現エイリア学園の首領は気まぐれですね」
「もったいないと思うが、エイリア学園はやつの管轄だしまーいいや。
じゃ、お前もう下がっていいよ」
「は!」

【主催本部】
【織田信長@戦国時代】(マスター※)
【状態】不明
【装備】不明
【道具】不明
【思考】
(本来の人格)
1:ああああ復活を阻止する
2:イナバ物置破壊法が知りたい
3:鏡音リンから、ボーカロイドたちのことについて聞き出す
(ああああに操られた人格)
1:聖杯戦争で優勝し、ああああの肉体を復活させる※ああああに操られた人格のみがイチローのマスターです

【ああああ@主人公に命名可能な全てのRPG】
【状態】怨霊、肉体無し、Lv99、全パラメータMAX
 あらゆるRPGのあらゆる魔法と技を習得している
【装備】不明
【道具】不明
【思考】1:信長を聖杯戦争で優勝させ、自分の肉体を復活させる
2:とにかく強敵と闘いたい


※エイリア学園の首領が誰だかはお任せします。


野比玉子ドラえもん 死亡確認】
【タケシ@ポケモン 死亡確認】
【ミニドラ×8@ドラえもんシリーズ 死亡確認】
死因:ゼルのガニメデプロトンくらって吹き飛んだ

【イプシロンの選手達@イナズマイレブン 異空間消滅?確認】
最終更新:2010年02月01日 00:35