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「邪ッッ!!」

「……ごふ、っ」
主催、アドルフ・ヒトラーに、範馬勇次郎渾身の一撃が突き刺さった。
のみならず、それはあっさり胴体を貫通し、致命的な損傷を与える。
「ちっ……案外あっけねぇな、こんなもんかよ……」
毒づきながら、範馬勇次郎はアドルフの腹から右腕を引き抜く。
支えが無くなり、既に息の絶えたアドルフはその場に崩れ落ちる。
明らかに、死んでいた。

今この場にいるのは、実に72時間以上もの地獄を潜り抜けてきた猛者達。
鉄壁のガードを誇るベア。
不死身の野比玉子
冥府から蘇ったMMR、しんのゆうしゃ。
ノロウィルス撲滅部隊の面々。
恐竜の末裔、ガチャピン。
生徒を守るため、その力を振るう先生。
戦斧「ディアボリックファング」を駆る会社員、アナゴ
ゴルゴムと戦い続ける戦士、南光太郎。
かつてはマーダーだった暗殺者、シマリス
史上最強の小学生、野比のび太
魔法老人リリカルかみなり
首輪を解除してのけた紋章術師、レナ・ランフォード。
強力なポケモンを使役する幼稚園児、野原しんのすけ。
対主催の旗の下に集まった者達のうち、五体満足な者が国会議事堂に集結し、最終決戦を開始したのだ。
そして、戦いは酷くあっさりと終る。
突如現れた軍団に狼狽したアドルフを、一斉攻撃。それが全てだった。

「これで本当に終わった……のかな?」
ガチャピンがアドルフの躯を前に、ぽつりと漏らした本音。
「なんかしっくりこないけれど、案外そんなもの。かもしれないのでぃす」
血で真っ赤に染まったクルミを携えつつ、シマリスが自分の意見を述べる。
しかし、心中では皆等しく疑問を抱いていた。
――――あっけなさすぎる。
確かに今までは倒された主催が新たな主催に、という流れだったため、それは断ち切られたことになる。
この場において、主催に成り代わろうとする者がいるはずがない。よって新たな主催は生まれない。
理屈の上では、そうなるのだが――
「……黒幕だ」
やけに重い沈黙の中、それを破った者がいた。
マガジンミステリー調査班の隊長、キバヤシである。
「ノストラダムスは、あの人は最後に言っていた。『ワシは……見た。人類が滅亡するのを』と」
その言葉と前の発言に関連が見られず、沈黙が困惑に置き換わり始める。
「そして主催……安部晋三、織田信長、羽柴秀吉、徳川家康、服部半蔵、ノロウィルス、
モヒカン頭、フレイザード、ヒトラー……これに共通する一点……間違いない!」
「どういうことだ、キバヤシ?」
MMR隊員、ナワヤはいつものように隊長へ問いかけた。
恐るべき答えが返って来るのを、薄々感づきながら。
「最初の主催……安部晋三は『美しい国』を作るため、BR法を施行した。
人間が醜い、という考えに支配され、人類を根絶やしにするために。
次の主催、織田信長は、戦乱の中でこそ人が輝くという、己の真理を具現するために。
秀吉と家康は、戦乱の先にある天下を求めて。服部半蔵は主の意を引き継いで。
ノロウィルスは『繁殖する』という本能、モヒカン頭は汚物……人間を消毒するため。
フレイザードにいたっては言うまでもない……これらに共通している点が、一つあるんだよ!」
「い いったい どこが おなじなんだ キバヤシくん?」
一瞬の溜めの後、キバヤシはゆっくりと、その口を開き――

「それらの意志が続く先には――――人類への災い、という未来しか存在していない!
これはもはや、偶然ではない……必然……そうとしか考えられない……!」

いつもの馬鹿げた論理とは違い――それには、一笑に付すことができない要素が、多分に含まれていた。
言われてみれば、どれも人類を脅かす可能性ばかりでしかない。ノロウィルスあたりが特に顕著である。
何故、こうもそこばかりが共通しているのか?
「そして、あの人が残した言葉……近々起こる人類滅亡の予言……いる。確かに、人類を滅ぼそうとしている者が!
その悪意をもって、未来過去現在全てを操り、陰で暗躍する黒幕の存在が、オレには見える!」
「そ、そいつが存在したとして、誰なんだよ一体!?」
主催を倒し、もしもボックスを使えば全て解決する。そう思っていたのび太は、怯えを隠そうともせず喚く。
まるで名探偵の亡霊にでも取り付かれてしまったようなキバヤシは、再度口を開いて、
「オレにだって……わからないことぐらい……ある…………」
やはり所詮キバヤシでしかなかった、という事実を一同に再確認させた。
緊張と、落胆が混じった空気で満ちる国会議事堂、放送室。
中にいる者は、誰も言葉を発しようとはしない。

「……恐るべきものだな、その頭脳は。私の存在に気付いてしまうとは」

だからこそ――その声は、部屋の入り口から聞こえてきた。
全員が、一斉にそちらを向く。
「しかし、気付かれたからにはやむを得まい。君達にはここで消えてもらおう」
そこには、対主催の旗が下、集まった誰も知らない人物が姿を現していた。
……約一名を除いて。
「カザマ……くん?」
しんのすけが、友の名でそいつに呼びかけた。
「違うな――――今の私は『魔王オディオ』。全ての愚かな人間を憎む者だ……」
風間トオルの姿をしたそいつは、まるで幼稚園児とは思えない口調で、名乗る。
「この子供の『憎しみ』……私が意識を移すことができる程に強く、人間を憎んでいた。
今までは『憎しみ』の志向性を操り、主催を勤めさせる程度の奴しかいなかったが、こいつは別格だった……」
風間トオル……いや、魔王オディオは、つらつらと語り続ける。
「本来なら、もっと数が減ってから動きたかったのだが……お前達は気付いた。気付いてしまった。
故に、生かしておく訳にはいかん」
魔王オディオはそこで言葉を切ると、その全身から禍々しいオーラを立ち上らせた。
「ぶるああああああ!! 貴様のせいで、貴様のせいでマスオ君は! 海山商事は! 決して許さんぞ!」
「ムックの仇……取らせてもらうよ……」
「俺たちは諦めない! 人類が滅びるなんて認めない!」
「よく判らねぇが……テメェ、喰うぜ」
「ほう、ヒューマンにしては楽しめそうだ、せいぜい足掻くがいい!」
「ワシはただの老いぼれじゃが……こうして戦う力がある以上、貴様を見過ごすわ訳にはいかん」
「このクルミ+99の力を思い知らせてあげるのでぃす」
「ぼく達は……帰るんだ! 元の世界に!!」
その殺気にも動じず対主催組は、それぞれ思い思いの言葉を叩き付ける。
「所詮は人間と、その愚かさを判らん者共か……思い知れ、罪深きその人生を!!
来たれ、我が同胞達よ! この場に推参するがいい!」
魔王オディオが軽く手を振れば、何処からともなく七つの影が現れた。
ガトリング砲を構えた大男、インコ顔の大仏、蛙と蛇を足して二で割ったような化物、
筋骨隆々の格闘家、巨大な肉食恐竜、ポリゴンで構成されたプログラム、カンフーファイター。
どいつもこいつも並の強さではないことが、彼らにははっきりとわかった。
しかし新たにあらわれた敵を前に、彼らは退かない。退くわけがない。
「ほう……覚悟を決めたか。ならば、その希望ごと儚く散らせ!」
「望む所だ! やれるもんならやってみろ!」
その会話を契機に。
正真正銘の最終決戦が、今まさに幕を開ける――――!!




……かに思われた。


どこからか、地響きが届いてくるのを聞き、両サイドとも動きを止めた。
地響きは少しずつ、少しずつその大きさを増していく。
よくよく聞けば、わかったのかもしれない。
それが地響きではなく、数万人単位の足音であるということに――――



「「「「「「「HAHAHAHAHA!!!! なにやらみなさんお困りのようですね!!!!? スープでも飲んで落ちついて下さい!!!!!」」」」」」」



いきなり無数の筋肉男(一部女を含む)が襲来し、様子を見るなりそう一斉に叫んだのだ。
『……………………』
張り詰めていた空気が、呆気なくはち切れんばかりの筋肉にかき消された。
魔王側も、対主催側も、同時に押し黙った。
なんと言えばいいのか……敵とも味方とも分類できない、いやしたくない人物が、交戦中に現れたような、そんな奇妙極まりない感覚。
「「「「「「「HAHAHAHAHA!!!! 聞こえませんでしたか!!!!? このスープを飲みませんか!!!!!」」」」」」」
一々感嘆符が入る上、全員で一斉に喋るため、五月蝿いことこの上ない。
ぐったりしながら、魔王オディオは、それらを一言で切り捨てる。
「……要らん。帰」
れ、と言う前に、魔王オディオは、その全身を筋肉軍団に拘束された。恐るべき早業である。
「何ッ!? くそ、離せ! 同胞よ、まずはこいつらから排除して――!?」
叫びかけて、魔王オディオは絶句した。自分の同胞達も、同じく筋肉軍団に捕らえられていたのだ!
何故か、恐竜、プログラム、大仏、蛇蛙の四名は殺害されてしまっていたが。
筋肉軍団のリーダー格(らしき立場)の女が、全身を震わせて絶叫する。
「そんなひどぉぉぉぉぉい!!!!!!!!!!!!!!!!」
『そんなひどぉぉぉぉぉい!!!!!!!!!!!!!!!!』
「そんなひどぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉい!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
『そんなひどぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉい!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』
叫ぶ度に、周りにいる筋肉集団も等しく絶叫を重ねる。
鼓膜が破れかねない音量……もしかしたら、あの殺人音波集団に匹敵するかもしれない、それ程のものだった。
現にガトリング男、格闘家、カンフーファイターは気絶し、口から泡を溢している。
「そんなひどぉぉぉぉぉい!!!!!!!!!!!!!!!!」
『そんなひどぉぉぉぉぉい!!!!!!!!!!!!!!!!』
「そんなひどぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉい!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
『そんなひどぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉい!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』
かけ声のリズムに合わせ、どこから取り出したのか、出来立て黄金のコンソメスープを……拘束している魔王達に近づける。
「や、やめろ、離せ、待て、それを、それをこっちに近づけ――」
問答無用で口に流し込まれた。
飲み込んでしまった者は、魂が抜けたように気絶していく。
……こうして、人類抹殺を図った魔王、オディオとその一派は壊滅したのであった。
しかし、事態は終わりを見せることはない。
儀式を終えた筋肉軍団のリーダー……ローラ姫が、対主催の面々を向いて、問いかける。
「「「「「「「HAHAHAHAHA!!!! 危ない所でしたね!!!!!! とりあえず、スープでも飲んで小休止しませんか!!!!?!」」」」」」」





三分後。
国会議事堂周辺を埋め尽くす、400万以上の筋肉軍団が、新たな仲間の誕生を祝福した。
「「「「「「「「「「「「「「「ドォーーーーピングコンソメスーーーーープ!!!」」」」」」」」」」」」」」」




それから五年の月日が流れ――――
世界地図は、大きな変化を遂げていた。

まず、かつて『日本』と記されていた場所には、『食の千年王国』という国名が記されている。
そして、BR法の混乱に乗じ日本を侵略しようとした某国は、DSC人間に逆襲され、本土を侵食されてしまっていた。
宗主国であるT国からも、急遽作成された隔壁で侵入を拒まれ、あっさりと見放され、半島全体が『食の千年王国』と化す。
しかし隔壁程度で『食の千年王国』が押さえられるはずもなく、一ヶ月と持たず、T国は陥落した。
そこから『食の千年王国』の、まさに“怒涛”と形容できる進撃――後世に伝わる『スープスクラム』が開始される。
T国陥落から三ヶ月、R連邦がその全土を『食の千年王国』に掌握され、更にモンゴル、インド、ネパール、カザフスタン、そして
石油大国サウジアラビアまでもが『食の千年王国』の支配下となった。この間、わずか二ヶ月という驚異的な進撃速度である。
ヨーロッパEUはこれに対し全力交戦を試みるも、六ヶ月の長き戦いの末に、力尽きる。
事実上、これでユーラシア大陸全土が『食の千年王国』となってしまった。
アメリカを初めとする国連首脳は対策会議を開き、その結果出された結論は、
“外部から入ってくる食物、人物に最大限の警戒を行いつつ、食の千年王国と一切の関わりを持たないようにする”
という、消極的極まりない、しかし脆弱な人間が取ることができる、唯一の策であった。

時は西暦2011年。
地球の半分以上を支配する超大国『食の千年王国』。
彼らの文化はコンソメスープに始まり、コンソメスープに終わる。
もはや、彼らは『人間』ではなく、別に誕生を果たした新生物と呼んでいいだろう。
果たして人類に未来はあるのか――――それは誰にもわからない。




――Everything was filled of Muscle.
“Millennium nation of eating”was built on the Earth.

《Terachaos Battle Royale》is the DCS end.
……Happy end?


最終更新:2007年02月16日 10:17