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「「頭が痛い……」」
「どうしましたお二人?」

とりあえず人が集まりそうな場所へ移動するのが定石。
そう判断した古戸ヱリカ達は東京を目指していたのだが、夫婦の二人が頭を抱え込んだ。

「いえ……今の放送主のニアラとはちょっとばかり縁がありまして……」
「最終的に塵になったはずなのに、全然懲りた様子がないな……
でも厄介な敵なのは変わりない。竜殺剣がない今、別の対策を考えないと……」

補足放送をしていたのは紛れもなく幾度となく相手にしてきた竜だった。
しつこさとタフさを兼ね備えたいやらしいあの竜を再び葬るのはかなり骨の折れる話である。

「そういえば、ヱリカさんは誰か知っていますか?厄介そうな敵とか」
好敵手ならいますけど…………あ、いましたね、厄介な化け物、右代宮楼座が」
「楼座……ですか」
「ええ。こいつらを楽にほふる力を持っています」

ヱリカがぱちんと指を鳴らすと、彼女の後ろに屈強な山羊の戦士が3人現れた。
彼女の支給品扱いにされていた、魔女の家具のひとつ、山羊の皆さんだ。
顔も服も全く同じで見分けがつかないが、右から順に仕える年数が長いらしい。
寡黙であまり喋ろうともしないが、実はみんな個性豊か。
例えば一番左の山羊さんの好物はサバのカレー煮込み。
戦闘力は左腕一本で1000。そして他の山羊さんよりも少し賢いそうだ。
かわいい妹に苦労をかけたため、次の任務が終わり次第足を洗うことを決めている。
しかも故郷にはしっかり幼なじみの婚約者もいて……

「……すみません、さっきからどこからかピンポーンって音が聞こえるんですけど」
「気のせいでしょう。え……なんですって?」

山羊さんの解説をしていたヱリカに、真ん中の山羊さんが何かを慌てて耳うちした。
直後、彼女の顔が青ざめた。

「不味いです……山羊ネットワーク情報によると岡山県に右代宮楼座の姿を発見。
この山羊の後輩二人を惨殺後、移動しているようです。まさか、本当にあいつも来てるなんて……」

ヱリカは下唇を血がでるまで噛み締める。
右代宮楼座には口の中に銃をねじ込まれたり、万年筆で目を潰されかけたりとろくな思い出がない。
そして恐ろしいのは、その人間をやめている戦闘力だけではない。
黄金を手に入れるためならいかなる手段も用いる冷酷さも持ち合わせている。
彼女の不安定な性格上、ロワで取る行動は大きく二つ考えられる。
その1、自分の娘を守るため、立ち塞がる全てを皆殺し。
その2、黄金と愛(男)を手に入れるため、立ち塞がる全てを皆殺し。
結論、どう転んでも立ち塞がる奴は皆殺し。

「だだだ、大丈夫です!敵は人間!この真実の魔女古戸ヱリカ、今度こそ遅れはとりません!
むしろ楽しみです!岡山から遥々やってきた右代宮楼座をぐちゃぐちゃの挽肉にしてやるのが!」

ピンポーン

何か妙な音が聞こえた。山羊さんを含め、誰もが耳にした。

「えっ……なn

直後、ヱリカの体がメキャメキャと嫌な音をたてて、くの字に折れ曲がった。

「なっ……!?」

何が起きたかわからない。
夫婦も山羊さんも、本能的に危機を感じて身構えた。

「誰を……挽肉にするですって……?」
「ひ……ひいぃ……!?」

強烈な一撃を受け、血を吐き出すヱリカは、あり得ないものを見てしまった。

嵐の中、ウィンチェスターライフルを鈍器として扱う鬼が……

ここにはいるはずのない右代宮楼座が

いた。






真実の魔女にして探偵であり変態の異名を持つ奇跡の魔女の駒、古戸ヱリカは考えた。
何が起きた?
答えは簡単、目の前に右代宮楼座、そして腹部に奔る激痛……黒き魔女の一撃を食らったのだ。
グッド、第一の謎は解けた。続いて第二の謎に入ろう。
山羊ネットワークによれば、右代宮楼座がいるのは岡山県ではなかったのか?
山羊が馬鹿で県名を間違えた?答えはノー、こいつらもそこまで馬鹿じゃない!
右代宮楼座の支給品に加速装置があった?これも違う。加速装置を使っても不可能な距離!
だが現実に右代宮楼座が目の前にいる!
これはなんのミステリートリック?それともファンタジー魔法?

いいえ、ファンジターです。

「んなわきゃねぇだらァああああああああああああああああッ!?
こ、このゲロカス亡霊ッ!どうしてここにいるッ!?」

ヨロヨロと立ち上がり、ヱリカは口汚なく罵り楼座を睨む。


「はがっ……!?」

だが楼座は答えない。答えずにヱリカの口の中にウィンチェスターを叩き込む。
歯が砕けた痛みを忘れ、ヱリカはある一つの仮説に辿り着いた。

「くっ……」
「無駄よ、あんたの残像回避の技はEP8の時に見切った!」

そして楼座の言うとおり、回避行動を取ったはずのヱリカは両肩関節を砕かれ、地面に転がされていた。
激痛などという言葉では済まない痛み、それでも楼座は両足の骨も砕きにかかる。
そして、その圧倒的な暴虐行為を受け、ヱリカは己の推理の正しさを確信した。
だがそれは、最悪の真実。

(ま、間違いない……!私としたことが、自分のいた世界を忘れてしまうなんて……
右代宮楼座はゲーム盤の上で、現実で死んでいる!でも全ては深い海の底の猫箱の中に封じられた!
そうなったら真実はわからないまま、無限の可能性が生まれてしまう!
つ、つまり【EP2無双楼座】がこの世界に飛ばされてしまう可能性!
そして同時に【EP8超無双楼座】にもこの世界に飛ばされる可能性が生まれる!
そして……【二人同時にこの世界に飛ばされる】可能性も……!
そしてこのゲロカス野郎の参戦時期は【私との戦いを終えた後】の最悪最強時……!
ああそして思い出しましたよ、ピンポーン、も!死亡フラグ数警告音!
死亡フラグの合計数は山羊と私のが合計されてしまっておよそ10本!
そして死亡フラグの数はそのまま相手の戦闘力の倍数となる、これも常識……!
つまり今、私に対して超無双楼座の戦闘力は10倍!
もともと押されていた私が10倍の相手に勝てる道理もありません!
……いかがですか皆さま方。古戸ヱリカはただここに楼座が現れただけで、この程度の推理が可能です!

た、助けてください我が主いいいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃッ!!!)



嵐の音に掻き消され、発砲音は聞こえなかった。
いや、それとも撃たずに足先で頭を穿ったのか。
どちらにせよ、【右代宮楼座が古戸ヱリカの頭を潰した】という真実には変わりない。

【古戸ヱリカ@うみねこのなく頃に】頭部粉砕により死亡




「うふふ……怖がらなくていいのよ?あなた達に危害を加える理由はないもの」

ヱリカを肉塊に変えた楼座は、うってかわって優しげな声で振り向く。

振り向かれた側……一組の夫婦と三人の山羊は体を動かせない。
ことラグナは、その優しげな声を聞いた瞬間、さらに恐怖を覚えていた。
似ている。自分の命の恩人にして、絶対に逆らえない恐怖の地主に。
彼女は一部から白い悪魔とまで呼ばれていた。ならば目の前の女性は黒い悪魔が相応しい。
彼女は動かず、言葉で超圧力をかけてきたいわば静の魔女。
目の前の女性は、物理的超圧力をかけてくるいわば動の魔女。
タイプは違うが、声だけでなく抗い難さまで似ているとは。

そんな黒き悪魔が優しげになった。つまりもう敵意はない?
違う、白い悪魔と同じだ。無警戒で近寄ったら、もう手遅れだ!

「……目の前で人を虐殺したあなたを、どうすれば信じれると?
せめてその構えたままの銃をおろし…ッ!」

対話余地は最初からなかった。
提案をしている最中に、脳天を狙った発砲。殺意の一撃。
こちらもあらかじめ剣を構えてなければ弾けなかった。

「ふぅー……大人しくしていればすぐに楽になれたのに」
「……撃ってきたということは、僕たちも邪魔ってことですか」
「ええ。あんた達みたいなガキにわかるかしら……?」

形相を黒き悪魔のそれに戻した楼座は、ウィンチェスターを腰に刺して


「愛した男に逃げられてッ!子供にパパはどこに行ったのなんて聞かれ続けるッ!
仕事も軌道に乗らなくてッ!新しい恋も子供がいるせいでできなかったッ!
そんなバツイチ女の苦労と悲しみと絶望と怒りなんてッ!!!
あんた達みたいなリア充(ピー)野郎になんてわかるはずないでしょうがッッッ!!!
私の前で愛だ結婚だの言ってんじゃねえぞこの(ピー)(ピー)!!!
私はこの歳まで苦労し続けて出会いも無かったのに、なんであんた達はその若さでエェェェッ!!!
うオオぉオオッ!くたばれやこの(ピー)(ピー)(ピー)(ピー)野郎どもォォォォオ!!!」

もはや完全に八つ当たり状態だが、放送禁止用語を乱発しながら楼座は狂ったように飛び掛かった。

「っ!ラグナさん、山羊さん、下がって!」

エリスが両手を広げ、バリアを展開する。
直後、現れた障壁と楼座の拳がぶつかり合い、辺りに嫌な音が響いた。

「この(ピー)の(ピー)があああぁぁぁ!こざかしい真似をウッオオオオアア!
【装甲付与】【貫通付与】【炎熱付与】【対魔付与】……砕けちれよああぁぁぁぁ!!!」
「っまさか、エンチャント能力!?」
「まずいっ!出でよ地幻竜プロテグリードッ!」

楼座の強化された右腕が結界を貫くのと、地竜が現れるのはほぼ同時だった。
だが結界を破った楼座の拳はそのまま地竜の鱗まで砕く威力。
誰が見ても一目瞭然、勝ち目のある戦いではなかった。

「くっ……!飛べるか、プロテグリード!」
「逃がすかああああァァァァァ!!!」

竜に飛び乗り、一同は空へと逃れ楼座から逃げようとする。
しかし、僅かに間に合わない。楼座の拳が、竜もろとも全てを砕かんと振るわれ……




ガギィッ!!!


「「ここは、俺たちに任せて先に行け!」」
「先輩!?」

振りぬかれた楼座の拳を……
山羊さん(右)と山羊さん(真ん中)の山羊ブレードがかろうじて受け止めていた。




竜から飛び降り、再び地を踏んだ二人の山羊。
一人残された山羊さん(左)は先輩も早く乗ってくださいと叫ぶ。
しかし、叫ぶ彼にもわかっている。何故先輩が死地に残ったのか。

――先に行け!お前の家には妹の山羊子ちゃんが待っているだろ!
――見知らぬ世界の人、後輩のことをよろしくお願いします。強く生きろよ……

憧れだった先輩の背中が、無言でそう語っていた。

「……っ!飛べ!」
「先輩ーーーっ!」

竜は、地上に二人の山羊を残して飛び立つ。


地上の山羊達は、目の前の化け物に果敢に挑む。
彼らの脳裏に、ありし日の記憶が蘇った……



『本日未明、幻田山羊介さん(550)と幻田山羊香さん(520)の遺体が……』
『親父……お袋……どうして……!俺、まだろくに親孝行も……!』

『先輩先輩!俺、先輩のおかげで昇進試験に受かりました!』
『おめでとう!頑張ったもんなあ!お祝いは何がいい?遠慮せずなんでも言ってみろ。
確か前に、初めての旅行がしてみたいとか言ってたよな……』
『えへへ……実は、いつか母さんと一緒に岡山辺りに行けたらなー、と……』

「親父とお袋の仇……!」
「後輩とその母上の仇……!」
「これ以上、俺たち山羊から犠牲者を出してたまるか……!」

「「右代宮楼座、覚悟!!!」」







グジャッ………

【山羊さん(右)@うみねこのなく頃に】
【山羊さん(真ん中)@うみねこのなく頃に】
それぞれ楼座の手にかかり死亡



「――――――ぅぅ」
「山羊さん……」
「彼らの思いを無駄にしてはいけない……なんとか、あの黒い悪魔を止める方法を探すんだ……」

【一日目・1時00分/富士山上空/天候・嵐】
【ラグナ@ルーンファクトリー】
【状態】健康、疲労、恐怖、もう一人の楼座も警戒
【装備】覇邪聖皇剣、プロテグリード
【道具】支給品一式、回復薬
【思考】
基本:主催者の討伐或いは封印
0:まずは右代宮楼座の危険性を参加者に伝える
 1:困っている人は助ける

【エリス@ルーンファクトリー】
【状態】健康、疲労、恐怖、小ダメージ、もう一人の楼座も警戒
【装備】不明
【道具】支給品一式、山羊さん(左)、その他不明
【思考】
基本:主催者の討伐或いは封印
0:まずは右代宮楼座の危険性を参加者に伝える
 1:困っている人は助ける






「ち……逃げられたか。まあいいわ。こいつらで少しはストレス発散できたし」

足元でぐずぐずになった赤い何かを踏みつけながら、楼座はひとつ息を吐く。
そして……

ジャラリとその手に持った鎖を手繰り寄せた。

「終わったわ。もう出てきて大丈夫よ」
「は……はい……」

鎖の先は首輪(主催者製ではない)に繋がっていた。
首輪をつけられているのは、楼座よりもだいぶ若い全裸に剥かれた青年。
彼にとって災難だったのは、自分が愛する女性の名前がローザだったこと。
ロワ開始直後、ひたすらその名前を叫び続けた彼は楼座に出くわし……勘違いをされた。
自分が愛しているのはローザだと言っても楼座には伝わらない。
そして、顔がよかった青年は……男に飢えた楼座に捕獲されてしまったのだ。

「無事でよかったわ。何しろこの戦いが終わったら真里亞のパパになるんですものね。
主催者をぶち殺れば首輪も止まって盗難解禁、宝石店や銀行から根こそぎ奪えばお金はOK……
あとは真里亞さえ見つければ、私は幸せな家庭を築きあげられる!あーっはっはっはっはっ!」


【一日目・1時00分/富士山近辺/天候・嵐】

【右代宮楼座@うみねこのなく頃に】
【状態】EP8無双状態、エンチャント体得
【装備】ウィンチェスターライフル、万年筆
【道具】支給品一式、予備弾、鎖付き首輪
【思考】
基本:セシルと一緒に真里亞を探し、幸せな家庭を復活させる
1:生活が充実していたり、幸せそうな奴らは全員ぶち殺る
2:真里亞に手を出しそうなロリコンも全員ぶち殺る
※岡山県の楼座とは別人です

【セシル・ハーヴィ@FF4】
【状態】全裸、楼座に恐怖
【装備】楼座の首輪
【道具】なし
【思考】
基本:楼座に従わざるをえない
1:仲間がいたら誰でもいいから会いたい
最終更新:2011年01月29日 01:01