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主催本部内での戦いは佳境を迎えていた。
赤い仮面ライダーは黒い仮面ライダーの力押し、時には形態の変化を生かしたトリッキーな戦法を必死に捌く。
天上王の剣術と様々な魔術に機械皇帝はその身をすり減らしていく。
彼は股間のマグナムやナイフによる妨害もものともせずに、邪魔だと言わんばかりに機械皇帝ごと術で薙ぎ払った。
純粋な戦闘民族は二人の魔法少女の攻撃を、更なるエネルギー弾の弾幕で掻き消していく。
そして、金髪の騎士の前についに紫の侍の剣にヒビが入った。

劣勢だった。
ミクトランの力は以前戦った時とは比べ物にならないほど強く、
引き連れてきた仲間達も彼に劣らぬ実力者ばかりだ。
幸い一番厄介そうな巨大兵器は乱入者が相手をしてくれているため、
今は考える必要は無いが、だからと言って有利不利が変わるわけではない。

(このままじゃみんなが・・・・・・)

リンは覇邪聖皇剣を握り締める。
自分に残された唯一の武器であり、兄が使っている刀よりも強力な物だ。
がくぽは自分達の安全を考慮していたため、剣を受け取ることはなかったが。
今のリンが持っていても宝の持ち腐れになるだけだ。

プラシドさん、お姉ちゃんにお兄ちゃん・・・・・・)

力があると言うのに、自分は一体何をしているのだろう。
彼らのように腕っ節が強いわけでも、特別な能力を持っているわけでもない。
だがそれでも力を持っているのだ。
人を殺せるだけの、殺してでも大切な人を守れる力を持っている。

「今、助けに行くよ!」

大切な人をもう失いたくない。
背中にいる家族達にだって、これ以上泣かせたくない。
そのための覚悟は既にしていたはずだ。
護られるだけではなく自分も戦うと、あの日彼女を殺した時に決めたのだ。

「リン!」
「リンちゃん!」

リンを呼ぶ姉達の声が聞こえるが、振り返る事なんて出来ない。
自分が人殺しになろうとその結果死んだとしても、彼女達には生きていて欲しいから、
いつまでも自分や散っていった家族の代わりに歌っていて欲しいから、仲間達の元に走ることを止めはしない。






「何やってんのよあいつ!」
「リンちゃん! リンちゃん戻ってきて!」
「二人とも、気持ちはわかるけど落ち着くんだ!」

徐々に小さくなっていくリンを追いかけようとする妹達を、KAITOは必死になって引き止める。
Lilyは彼に罵声を浴びせるものの、KAITOの表情を見るとすぐにそれも治まった。
ルカはただ切なそうにリンの背中を見送る。
二人だってわかっている、リンが仲間達を助けたいということも、
KAITOがこれ以上家族に危険なことをさせようとしないことも。
だからどうすることもできなかったのだ。
そして吉良吉影は彼らに聞こえぬように舌打ちする。

(リンが・・・・・・あの手が消えるだと!?)

吉良吉影の人生の中で、美しい手を持つ女性はそれなりにいたものの、
『少女』に絞り込むとその数は途端に少なくなる。
子供は大体親が傍にいるため、二人っきりの状況に持ち込むのは難しいし、
最近児ポ法が絡むから碌に声もかけられない。
その好機が消えると思うと、冷や汗が流れる。

(いや落ち着け! ここにもまだ綺麗な手はあるじゃないか。
 そうだ、手に入るかどうかわからない手より、確実に手に入る法を狙うのが賢い選択だ。
 そのためには・・・・・・)

リンが飛び出して驚いてしまったため、KAITOを殺し損なってしまったが今度は失敗させるわけには行かない。

「あのぅ皆さん・・・・・・」

動揺しているLily達と沈めるように、控えめに声を出す。
当のLilyは不機嫌そうに彼の方を向いた。
KAITOとルカの注目も今は自分にある。

「ここから逃げだしたいのですが」
「あ"」

吉良はまず自分達の身の安全を確保しようと提案する。
こんなところにいつまでもいては、いつ自分が殺されるかわかったものじゃない。
それに美しい手の持ち主をここで殺すわけにはいかない。
後で死体から回収する方法もあるが、ちゃんと手が残っているかわからないし、できる限り新鮮な方がいい。
案の定Lilyは睨み付けてきたが、これは想定の範囲内だ。

「家族が心配な気持ちはわかりますが、いつまでもここにいては私達も危険です。
 彼らとてあなた達が死ぬのは嫌でしょう。
 だから今の内に私達だけでも安全な所・・・・・・とはわかりませんが、とにかくここを離れるべきです」
「確かに、あなたの言う通りかも知れない・・・・・・」
「ちょっと兄さん!」

計画通りと内心、吉良は微笑する。
このままでは、戦っている仲間どころか傍にいる家族まで失ってしまうであろう。
彼はリンとは違って家族の長という立場にある。
自分が死ねば、Lilyとルカはほとんど無防備にされてしまうであろう。
彼自身、会って大して時間も経っていない吉良に妹を預けるほど信用もしていない。

「わかって頂けましたか・・・・・・それではまずはここを出て宿屋に戻りましょう。
 そこにいれば後で合流することも可能です」

もっとも吉良自身は生きて彼らに出会えるとは考えていない。
最悪、リンやマミの手は死んだ後に回収することで妥協したからだ。
しかし、VOCALOID達の目の焦点が自分に合わさっていないことに気づく。
KAITOとLilyは呆然としているが、ルカは目を輝かせている様子だ。

「待たせたの、ルカ」
「君は行方不明になっていた信長さんじゃないか!」
「私もいるぞ」
「君は誰だい?」

なんか侍と巫女がいた。







「これでも喰らえ、とミサカは攻撃します」
「雷とはこうやるものだ! インデグニション!」
「!? エンゴシマス!」

ミクトランのインデグニションはミサカ妹の電撃を飲み込み、
そのまま彼女を包み込もうとするが、ワイゼルが庇う。
幸い彼女には電気に耐性があったことも影響して、軽い衝撃を受けただけで済んだが、
ワイゼルは既に限界であった。
ボディの表面が焼け焦げて各パーツから火花が吹き出しており、
モノアイは弱々しく点滅している。

「どうやらその機械は限界のようだな」

ミクトランの言葉とともにワイゼルの手足は崩れ始める。
力を失い次々と地面に落ちていくパーツは、もう接合されることはない。
プラシドは奥歯を噛み締めながら、ワイゼルをカードに戻す。
ここまで損傷が激しいと、防衛システムの修復機能があっても当分は召喚できないであろう。
今の彼らには、そこまで生き延びる猶予など残されてはいないかも知れないが。

「マサキによってソーディアンをさらに強化したからな、
 今更お前達如きに遅れはとらん・・・・・・そこだ!」

背後に忍び込んでいた阿部さんを、ミクトランは切り払った。
なんとかクリティカルヒットは避けたものの、両腕に残ったダメージに眉を顰める。

「こうならば新たなモンスターを・・・・・・」
「させるか!」

プラシドはデュエルディスクにカードをセットしようとするが、ミクトランの斬撃によって遮られる。
カードを掴んだままの右腕が地面に落ち、プラシドはそのまま膝を崩した。

「プラシド!?」
「すかさずプラシドの援護することを、ミサカは提案します!」
「言われなくてもな!」

ミサカ妹、黒、阿部の三人は左右後ろから同時にミクトランに攻撃を与えようとするが、
一閃、それぞれが地面に斬り落とされる。
辛うじて防御には成功したものの、片腕で体を起こすのにやっとの状態だ。
と、ミクトランの視界にリボンをつけた少女の姿が入った。

「プラシドさん、今助けるよ!」
「リン!? 何故ここに来た!?」

自分の前に立つ少女の姿を信じられないとばかりに、プラシドはリンを叱咤する。
持てる力全てを出しても、ミクトランの前には手も足も出ないのだ。
まだ年端も行かないリンでは、どんな力を持っていても生き残ることなどできない。

「保護者を殺したら見逃してやろうと考えていたのだがな・・・・・・仕方ない」
「リン、避けろ!」
「え?」

ミクトランの剣がリンの覇邪聖皇剣を弾き飛ばす。
達人の剣捌きの前では、ただの少女でしかないリンが反応できるわけがなかったのだ。
振るうことも適わず、唯一持っていた力が遠くの地面に突き刺さる。
呆然とするリンだったが、しかしすぐにプラシドを庇うようにミクトランの前に仁王立ちする。


「小娘どういうつもりだ? 何故逃げない。
 何の力もお前はこの先殺されるしかないのだぞ」

ミクトランは不思議で堪らなかった。
ソーディアンマスターを始めとし、王である彼の前に立ち塞がって来た者は多くいる。
いずれも愚か者達であったが、同時に彼らは戦士でもあった。
中途半端に力を持っていたため、自分との力の違いがわからず戦いを挑んできたのだが、
目の前の少女は明らかに彼らと違っていた。

(しかし何故だ? 何故そんな目をしていられる?)

しかしそれでもリンの眼は、スタン=エルロンや仮面ライダー達のような、
誰かと守るために戦う人種と同じ物であった。

「力が無いのに何故守ろうとする。 自分の命も守れない人間が!
 今なら土下座して謝ればお前は・・・・・・」

これはミクトランの最後の勧告であった。
べジータ達に影響されたためか、彼にも多少の人並みの情が芽生えていた。
無知なリンは恐らくプラシド達に騙されていただけ、と考えている。
主犯であるプラシドと阿部さえ殺してしまえば、一先ずの憎しみは消えるのだ。

「嫌・・・・・・です」

リンの声は震えていた。
恐怖を内に留め切れずに、瞳を濁らせながらもリンが引くことはなかった。

「死ぬのは怖いけど、私が逃げたら、プラシドさん達が殺されちゃう・・・・・・
 ミクお姉ちゃんもMEIKOお姉ちゃんも、別のネルお姉ちゃんもみんな殺された」

ミクトランは剣を止める。
家族など自分が既に捨て置いたものだ、顔を思い出せるかどうかさえ怪しい。
だが、仲間に家族を思う者がいたことも事実。
かつて共に戦った少女に、姉妹の死を悲しむ者がいた。
リンの顔は、確かにその時の彼女と同じ表情をしていた。

「それだけじゃない、今ここにいないハクお姉ちゃん達だって殺されちゃうかも知れない。
 これ以上私の好きな人が殺されるのなんて、耐えられない!」

目の前の少女を切り捨てるか否か、迷っていた矢先に見慣れた影が飛んでくる。

「おい、リンとか言ったなお前!
 お前の家族について詳しく聞かせろ!」







(あ・・・・・・ありのまま 今 起こった事を話すぜ!
 『おれは筋肉女達をぶちのめしていたと思ったら、いつのまにかDIOが倒れていた』
 な・・・・・・何を言ってるのか わからねーと思うがおれも何が起こったのかわからなかった。
 頭がどうにかなりそうだった・・・・・・
 超スピードだとか瞬間移動だとかそんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ
 もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ・・・・・・)

べジータは、突然目の前にボロ雑巾となって現れたDIOに、驚愕の表情を表す。
一瞬DIOの気配を感じたと思ったら、見るも無残の姿に変貌していたのだ。
DIOの危険性と能力については、条太郎から十分聞いている。

「やれやれだぜ」
「貴様いつのまに!?」

ふと横に、学生帽の男が姿を現す。
彼の対面側には金髪の壮年の男の姿もあった。

「ありがとよ、あんたのお陰でDIOの野郎をとっちめることができた」
「何、エジプトへの旅先でたまたまこっちに来てしまっただけだ。
 旅の扉って言うのか? そのせいでまた日本に逆戻りだぜ」
「そいつは悪いことしたな」
「おいてめぇら、さっきから何わけわかんねえこと言ってやがる!」

DIOと同じタイミングで現れた二人に対し、べジータは質問する。
すると彼らは、DIOがこの主催本部で何かを企んでいることを知って駆けつけたと答えた。

「そうか・・・・・・それはわかったからさっさとそこどきやがれ!」

べジータは魔法少女達との戦いを続行すべく、二人に立ち退くように命令する。
だが二人はネルを一瞥し、新たに口を動かし始めた。

「そうしたいところなんだが、お前は何かとてつもない勘違いをしているぞ」


条太郎は話し始める。
べジータから聞いた二人のミクトランと、その一方に従うハクの情報を元に、
彼らに関する噂話を調べたのだ。
DIOの情報を調べるついでだったのだが、口コミやインターネットでVOCALOIDに関する状況の把握も行った。
その結果、ミクトランがハクを襲ったこと、家族を裏切ったハクがルカ達を殺そうとしたことによる、
ネルとハクの対立、そしてリン達が誤解で7期のミクトランを殺してしまったことと、新たな因縁の発生、
その全てをべジータに話した。

「なん・・・・・・だと・・・・・・?」
「それだけじゃない。 お前ちゃんとハクに家族の特徴を聞いたか?
 少なくとも大きなリボンをつけた少女に紫色の侍、
 それからあそこでこそこそしている青マフラーと黒ドレスと露出狂は見事にぴったりなんだがな」

べジータの額から大量の冷や汗が流れる。
と同時にミクトランのいる方を見てみると、彼は今にもリンに向かって切りかかりそうだ。
条太郎の指摘通り、自分はとんでもない勘違いをしているかも知れない。

「くそったれー!」

べジータは早速リンに確認を求めるべく、ミクトランらの仲介に入ろうと飛び込んだ。



「・・・・・・なんか解決したみたいね。 ネルさん?」

べジータを見送り、事態が収拾することを確信したマミは銃を消し、友人の顔を覗き込む。
すると彼女は条太郎に対して警戒心を顕にしていることに気づいた。
臨戦態勢を解かないネルに条太郎はため息を吐く。

「てめぇが改心したって情報も既に聞いている」

そう一声掛けると、ネルもまたマミと同じように力を抜いて地面に倒れこんだ。
疲労が限界を迎えたのか、全身から汗を噴出して息も荒くなっている。
べジータはミクトラン達を説得している最中だ。
また事態の変化に気づいたためか、戦闘を行っていた者達はみんな彼らの元に集まっている。
そして条太郎は一人呟いた。

「やれやれだぜ」



(馬鹿な、条太郎だと!?)

周囲の人間が安堵しているのにも関わらず、吉良だけは焦っていた。
空条承太郎といえば、自分の平穏を奪おうとしている憎きスタンド使いの一人ではないか。
彼と接触するのはできる限り避けたい。

「どうした吉良、顔色が良くないぞ?」
「ちょ、ちょっとトイレに・・・・・・」
「一人じゃ危ないじゃろ。 厠ならワシが着いていってやるからそんなに慌てるな」

信長が手を差し伸べようとするが、吉良は大丈夫だと彼に手のひらを向けた。
綺麗な手の持ち主ならともかく、こんな男と一緒に来られても全然うれしくない。
どうせなら気をかけてくれた巫女服の少女(の手)を連れていきたい。

「信長さんの言う通り一人じゃ危ないよ? 誰かと一緒じゃないと」
「わ、私は貴女となら良いかなぁ・・・・・・」
「はぁ!? 何言ってんだこの変態。 何処に女とトイレ行く男がいるんだし?」

駄目元でルカを誘ってみるが、Lilyにより邪魔される。
そして信長達の自分を見る目が疑わしい物になっている。

(不味い! このままでは美しい手どころか、安全さえ確保できなくなる!)

周りには自分を茶化すVOCALOIDとか戦国武将、そして少しずつ大きくなっている足音。
このまま逃げるか? いや掴まって終わりだ。
掴まったら自分は・・・・・・

「おい」
「あ」

不意にかけられた声に吉良は振り向く。
そこに立っていたのは紛れも無く、ジョジョの姿であった。

「てめぇ何モンだ?」
(だ、誰だこいつはぁぁぁぁぁぁ!?)

金髪の男、所ジョージが吉良の前に現れた。
吉良は所さんに会ったことは無いが、だからと言って彼は油断はできなかった。
条太郎でなかったことを幸運に思いながらも、すぐに弁論を考える。

(落ち着け、普段通りに取り繕えば何の問題も・・・・・・)
「所、何を話しているんだ?」
「ああ条太郎、なんかこいつがこそこそしてて怪しいんだが・・・・・・」
(詰んだぁぁぁぁぁぁ!!!)

全てを観念した吉良は、そのまま気絶して倒れこんだ。
しかし吉良は別に焦ること無かったのだ。
今回の条太郎の参戦時期は『DIO戦で承太郎が時の止まった世界に入門した事にDIOが気づく前』なのだから、
いつも通り振舞っていれば向こうが気づかずにやり過ごせたはずなのだ。

まあ後日、正体がばれてフルボッコにされた後に刑務所送りになるのだが。







「エントロピーの流れが止まったか・・・・・・おっと」

グランワームソードを出現させ、フォルカの拳を受け止める。
歪曲フィールドを突き破ってもなお勢いを殺すことないパンチの前に、
剣はすぐにへし折れてしまう。

「フン、化け物め」

フォルカを見下ろし彼に向かってネオ・グランゾンの拳を叩き込むが、紙一重でかわされてしまう。
ワームスマッシャーを相手の四方から叩き込もうと試みてみたものの、一発も当たることはなかった。
ビームの余熱による蒸発など彼には通じないらしい。

「スパロワのリベンジを今こそ果たすぞ!」

フォルカがマサキと戦う理由はそれだ。
ネタバレ等気にせず話すと、



木原マサキは、スパロワでどう見てもマーダーとしか思えない行動を取り巻りながら、
対主催の自分を倒したのだ。
それさえ無ければフォルカ無双は完成し、彼は最後の勝利者になることができたはずなのである。
クロススレでよくマサキに絡むのとあんまり変わらない。

「一人でやってろ。
 ノアの力とやらは興味深いが、今の貴様にはそれほど興味はない」

マサキはフォルカを一蹴し、ブラックホールクラスターを発動させようとする。
小型のマイクロブラックホールで全てを吸い込んでしまう、ネオ・グランゾンの兵装の一つだ。

「止めろ! こんな所でそんな物を使ったらここいる人々が・・・・・・」
「知ったことか!
 最早こいつらは用済みだ、ノアの力がどこまでの物か見せてもらうぞ!」
「!?」

この一撃で勝負を終わらせようとしているのだろう。
周りで戦っている仲間のことなどまるで考えていない。
残ったノアの力を最大まで使えば、ネオ・グランゾンを倒すことも可能だ。
しかし、それをやってしまえばもう主催と戦うことができなくなるかも知れない。

(確かにこのままにしておけば他の対主催は死ぬ。
 だが・・・・・・他の参加者はどうなる?)

対主催は元から見捨てる予定であったが、そうでない参加者も巻き込まれてしまう。
力無い者は暴力に振舞わされ、命を落としていくのは本心ではない。
むしろ彼はその、弱き者達のために戦っているのだ。
今ある命を助けて勝利への可能性を捨てるか、
それとも最終的な勝利のために目の前の命を見捨てるか。
迷いながらも、フォルカはネオ・グランゾンに立ち向かう。






「やめだ」
「は?」

マサキの声とともに、ネオ・グランゾンに展開されていたブラックホールが消えていく。
フォルカが気づいた時には、彼らの周りに他の参加者達が集まっていた。

「マサキ! 貴様は周りが見えていないのか?」
「マサキ殿、もう戦いは終わっています。
 ですがどういうつもりですか? 敵ならず私達までも殺すつもりですか?」

ミクトランやべジータといった彼の味方もマサキに怒りを向けていた。
説得され、戦う理由が無くなったのにまだ戦闘を続けている上に、
最大兵装で自分以外の全てを消し飛ばそうとしたのだ。
しかしマサキは彼らの怒りを物ともせず、フォルカに向かって語り掛ける。

「ところで貴様、エントロピーというのは知っているか?」
「エントロピー、確か人間が発生させる感情エネルギーに関係した物、だったな。
 インキュベーダーが非倫理的な方法で集めているらしいが・・・・・・」
「安心してよ! 今の僕はSM以外に興味はないから!」

フォルカの足元に突如、ウサギみたいな生物が沸いてくるが、マミによって狙撃された。
恍惚の表情を浮かべたそれは、別の同種に食われるが、そんなことフォルカは気にしない。

「ああそうだ。 絶望の感情がもっともエネルギー量が多い。
 そしてこのバトルロワイアルにもそういった物が発生している」
「だからどうした?」
「いや何、それらのエネルギーは最終的に何処に行くか・・・・・・気にならないか?」
「何を言って・・・・・・おい!」

フォルカが引き止める間も無く、ネオ・グランゾンは転移する。
ちなみに中に乗っていたマティウスは、いつのまにか現れた仮面の男と盛り上がっている。
『ロリの定義』だとか『リンと神楽、嫁にするならどっち?』とか、
世間一般では大変犯罪臭い会話が聞こえてきたが、フォルカにはどうでも良かった。
さらにそんな二人にモジモジしながら頬を赤らめている女性がいたが、どうでも良かった。

『ミクトラン!』
「ついに見つけたぞ!」
「その声は・・・・・・ディムロスか!」

CVが勇者王な男としゃべる剣持った男が現れて、
またミクトラン絡みで争いが始まったが、それもどうでも良かった。
周りが慌てている中、酢昆布をかじっていたチャイナ娘がいたけど本当にどうでも良かった。





「こんなことしている場合じゃないな!」

ミクトラン騒動で大分時間をとった。
混乱の中抜け出したのはともかく、他の対主催には大きな遅れをとっただろう。



「初手火炎地獄ゴレンダァ!」
「爆☆殺」

具現化した灼熱の波は闇AIBOを包み込もうとする。
しかし彼が起こした爆発は炎全てを巻き込み、逆に闇遊戯を焼き尽くそうとした。
すかさず闇遊戯は獏良を盾にして熱波から身を守る。

「なぁにこれぇ」
「なぁにこれぇ」
「うはwww東映版マジ半端ねえwww」
「俺あっちに転職するわ」

闇遊戯(ATM)と闇AIBOの闘いは、最早デュエルに納まることなくリアルファイトにまで発展していた。
後からきた闇遊戯(ATM)と十代は余りの衝撃に放心しているが、
下僕であるドラゴン達は逆にハイテンションである。
だがフォルカは無視。



「プリキュアはどこだ!」
「魔法少女は殺す!」

血塗れた少女二名が対峙するのは、二人の魔法少女とバズーカー持った男と猫だ。

「リア充は殺す! アンコお前は協力しろ!」
「アンコじゃない、アンコじゃなぁぁい!」
「俺も戦うのか・・・・・・?」
「にゃーん(あきらめろ)」

だがフォルカは無視。



「海老の脱皮! 海老の脱皮!」
「まだまだぁ! 今回は凄い仲間が着いているんだ!」
「遊星、私達の愛の力を見せてあげましょ!」
「ああ! マサル、アキ、力を貸してくれ!」

変態達もバトルを繰り広げている。
一人が「こんなんじゃ満足できねえぜ・・・・・・」とか言っている。
先輩がすぐ傍にいるのだが、そんなこと突っ込む暇なくフォルカは無視。

「強くなった貴様の力を見せてみろ!」
「上等だぁ!」

変な親父が白髪の少年(少女?)と向き合っていたが、関わりたくないので無視。



「カオスロワンアイドルどうする?」
「碌なやついねーな」
「じゃあもう中止ってことで」

真っ赤な服着た少女と男は、企画中止にため息を吐く。
一方提案した男は脱衣させる相手を選別していた。
脱がされたくないので無視。



「我、マーダーなり・・・・・・」
「俺こそ参加者を間引く・・・・・・いややっぱりその前に女王様を守る」
「だな!」
「本心漏れているわよぉ?」
「もう駄目ねこいつら」

血塗れのナックルをつけた主婦の前には、上半身裸の忍者とそのパートナーがいた。
ノーパンとゴスロリの女性は彼らを冷ややかな目で見つめている。
勝手にやってろ、とこれも無視。



「よし!これから君の名前は(ry

目の前に現れた壮年の男に悪寒を感じたため、
全力でダッシュしながら無視。



「お姉さぁぁぁん!」
「レンきゅんしゅきしゅき超愛してる!」

金髪の少年がグラマーな目隠ししている女と(性的な意味で)くっついている。

「レンお兄ちゃん!」
「これが家族愛これが家族愛ブツブツ」
「これがチンチン列車というやつですな」

少年の後ろには、緑色髪の園児と眼鏡の教師らしき男性が(性的な意味で)連結している。
さらに赤いモジャモジャとした生物が関心していた。
ミクトラン絡みで苦労していた方の家族が見たら泣くぞ、と思ったフォルカであったが、
やっぱりこれも無視。



「やっぱり面白いなこいつら」

どこかの王族のような男が、彼らを日記に書きとめていたけどフォルカは無視。



(まともな参加者はいないのか!?)

どうやら普通の参加者は全員ミクトランの方に流れてしまったらしい。
だがフォルカは内心ほっとしていた。
先にいるのがこんなのばかりだから、主催打倒しようとしている連中はミクトランの所で足止め喰らっているからだと、
思ったからである。






「うわぁぁぁぁぁぁ!!」
「朝倉!? ・・・・・・く、だが俺達が死んでもまた新たなバトルロワイアルが・・・・・・ぐは!?」
「貴様の辞世の句など、その程度だろうよ」


【主催陣営@カオスロワ8期 全滅確認】



「なん・・・・・・だと・・・・・・?」
「やった! ついに主催者を倒したわよ!」
「これで解放される・・・・・・」
「やったね玉子さん、僕達はこれで自由だ!」
「主催ども、お前ら人間じゃねえ!」
「まあまあタケシ、もう死んでいる相手に叫んだって仕方ないですよ」

地に伏せるフォルカを気にせず、野比玉子達は主催部屋の外に出て行く。
フォルカは遅すぎた。
木原マサキの相手をしなければ間に合ったのかも知れないが、
今更もしものことを考えても仕方が無い。
自分は英雄になり損ねたのだ。

「よし、この達成感をおかずにして」
「「○○○ーだ!」」

全身クリスタルボディの男の言葉に反応し、
少年と幼女は○○○ーを始める。
烏賊臭いが漂い始めたため、フォルカは重い足を動かして部屋を出て行った。






「糞! 何故だ、何故俺が遅れを取る!」

誰もいなくなった廊下の片隅で、フォルカは壁を叩く。
主催は倒され、殺し合いの恐怖に人々が脅かされることが無くなった。
フォルカもノアも望んでいた結果のはずだ。
ただ、その中心に自分がいないことだけが彼らを怒らせた。

(あの飛竜というやつらを倒すか?)

一瞬過ってしまった悪しき考えに、首を振って否定する。
ノアの力ならば彼らを倒すことは簡単だ。
しかしそれをやってしまえば自分は倒されるべき『悪』になってしまう。
それは修羅としても、ウルトラマンの力を持つ者としても許せないことである。

「・・・・・・少し頭を冷やすか」

過ぎてしまったことは仕方ない。
この世界が駄目ならば、また別の世界で英雄を目指せばよい。
並行世界を巡っていた時に、バトルロワイアルによって荒廃した世界があった。
ならばまだ、バトルロワイアルによって苦しめられている世界があるのかも知れない。

(さて、その前にだ)

だがこの世界でまだ行うべきことがある。
神夜やアクセル達への誤解を解かなければならない。
彼らからの憎しみは激しい物であるが、自分にも協力者がいる。
殺し合いが終わった今ならば、彼らとともに自分の疑いを晴らすこともできるはずだ。
そのために神夜達の気配を探り始めた。

(もしかしたらまださっきの所にいるかも知れないが・・・・・・!?)

ノアの力で気配を主催本部に残っている人間を探していた時だ。
この通路の地面の方から数名の人間の気配を感じ取ったのだ。
主催のいる部屋に行くまでの道で、地下への通路は見当たらなかった。

(となると隠し通路か。 面倒だ、このまま行くか)

フォルカは闘気を拳に圧縮させ、地面に向かって振りかぶる。
今更通路を探すのは面倒に尽きる。
誰もいない通路に爆音が響いた。









「私達これで助かるんですね・・・・・・」
「ああ、先にいる者達が私達を受け入れてくれたら、の話だがな」

薄暗い小部屋の中で、金髪の男は大型のパソコンを操作していた。
彼を気遣う白髪の女性の視線の先には、機械で作られた円形のお立ち台がある。

「ここから先はどの世界に繋がっているかわからない。
 だからもしかしたらまた一人ぼっちかも知れない」
「貴方がいるから大丈夫です」
「想像以上に過酷な環境かも知れないぞ?」
「貴方の傍で死ねるなら怖くありません」
「・・・・・・すまぬな、巻き込んでしまって」

何処までもまっすぐに見つめている女を、男は抱きしめる。
誰もいない部屋の中、彼女の心臓の音だけが男を支配していた。
次第に聞こえてくる機械の作動音にも耳を傾けず、女の体温を享受し続ける。
が、その静寂も束の間であった。


「やあ、お二人さん」

聞こえてきた第三者の声に男は立ち上がり、女を自身の背後に下げた。

「ミクトラン様!?」
「貴様一体何者だ!?」

そこに立っていたのは赤い鎧を纏った少女であった。
背後には眼鏡をかけた男がいる。

「キングドラゴンくん、つまりこれはどういうことなんだ?」
「僕はブギーホップ。 ただこの世界を守るだけの自動的な存在だよ。
 この娘の体は借りているだけ」
「な、なんだってー!」

左右非対称な笑顔を浮かべる少女は、ミクトラン達に警戒心を与えるのに十分であった。

「そこまで警戒しなくていいさ、君達は世界の敵とは程遠い存在だからね」
「それってどういう・・・・・・」

白髪の女性が質問を投げかけるが、ブギーホップと名乗った少女は次々と言葉を発していく。

「この世界を支配しようとしていたミクトラン(8期)。
 だが自分の限界に気づき、愛する者を守ろうとしたが既に周りは敵だらけだった。
 ここまではいいかい?」
「ああ・・・・・・」
「世界全てを敵に回してしまった君達はもう居場所がない。
 愛する弱音ハクも既に、家族との間に大きな溝を作ってしまった。
 そこでこの主催本部だ」
「つまり・・・・・・どういうことなんだキングドラゴン!?」

眼鏡の男が大げさなリアクションをする。
それに応じたのかどうか伝わらぬまま、ブギーホップは言葉を続ける。

「何故だかこの主催本部には並行世界へ旅立つ装置があるんだ。
 最初の主催者もこれを使ってどこかに行ったね。
 それで君達も別世界に逃げようとしたわけだ」
「・・・・・・その通りだ」
「な、なんだってー!」

ミクトランはハクを守るようにして、ブギーホップから後退する。
しかしブギーホップは彼らに身構えるわけでもなく語り掛ける。

「別に君達を止めやしないさ。
 できるだけ安全な世界に行くように願うから、早く何処にでも行けばいい。
 ほら、もう装置は動いているよ」
「信じて、いいんだな?」

ブギーホップを警戒しながらも、ミクトランとハクは転送装置まで近づいていく。
そして台座に乗った時、電子音とともに二人はこの世界から姿を消した。






「これはどういうことだ?」
「おやフォルカ、また会ったね」

天井をぶち破ってきたフォルカに、ブギーホップは左右非対称に表情を表し、
フォルカはすかさず戦闘態勢を取った。

「ちょうどカップルの駆け落ちに加担していたところだよ。
 君もどこかに旅立つ予定かい?」
「そうだ。 もっともそれは少し後になるがな」
「じゃあ君にはもう用は無い」

ブギーホップの変貌を見て、フォルカは戸惑った。
かつて宣戦布告してきたというのに、手のひらを返したようにフォルカに対する興味を失ったのだ。

「別の世界に行ってくれるなら僕も本望さ。
 じゃあ証拠にいいこと教えてあげようか」
「なんだ? 言ってみろ」
「この殺し合いの黒幕が何処に行ったか知りたくないかい?」

殺し合いの黒幕という単語に、フォルカは耳を疑った。
バトルロワイアルは既に終了したのではなかったか。
主催が倒されて苦虫を噛み締めた思いはまだ残っている。

「殺し合いはまだ終わっていない。 これとかね」

そう言ってブギーホップは自分の首を指差す。
そこにはまだ未解除である彼女の首輪があった。
直後、フォルカは首に異物感を感じる。

(首輪だと!?)

フォルカの首に新たに首輪が巻かれていたのだ。
確かに首輪は外したはず。
爆発しないのは主催側の禁止エリア設定がOFFになっているからだ。

「バトルロワイアルは終わらないさ。
 首輪は外れても自動で転送されるからね」
「馬鹿な!? 主催は倒したんだぞ?」
「いいや、主催なんてまたすぐに新しいのが出てくる。
 君だって知っているだろ? 何度も主催者が入れ替わっていることなんて。
 この世界はそう作られている」
「なんだってー!」

野心ある者、元から主催の人間だった者、あらゆる者が主催者の座を得ようとして、
結果的に何度でも新しい主催者が誕生する。
そして首輪は決して外れる事が無い。
最悪の結末がフォルカの脳内に蘇る。

(このままではそう遠くない内にこの世界は・・・・・・俺はどうしたらいい?
 ノア、俺を導いてくれ!)
「知りたいかい?」

ブギーホップの言葉にフォルカは彼女の方を見る。
非対称の顔など今更気にならない。
前の肉体を殺したことも気にしない
だから早く答えを教えてくれと、フォルカは彼女に懇願した。

「簡単さ。 黒幕を捕まえればいい。
 この転送装置の履歴を見れば、どの世界に行ったかなんてすぐわかる」
「頼む」

そしてブギーホップに頭を下げる。
すると彼女は端末を動かし始め、フォルカに台座に乗るように促した。

「出来る限りこっちには戻ってこないことを願うよ」
「ああ、なるべくそうする」

実際は神夜絡みで戻る必要があるのだが、
面倒なことになりそうなのであえて口には出さない。
だがそれでも今はブギーホップに対する感謝を忘れないフォルカであった。
最終更新:2011年08月13日 00:38