それは、まさしく死闘だった。
白銀の鎌は幾度となく少女たちの柔肌を切り刻む。
黄金の暴力は幾度となく元英雄を打ちのめす。
戦闘経験――敵対者を殺した数――の埋めようない差、そして人間と魔物という種族の差。
さらに戦うことができない少女を守りながらという極めて重いハンデ。
それでも、彼らは諦めるということをしなかった。
この殺し合いで多くの仲間や友人を殺され、そしてまた目の前で仲間を殺されて。
これ以上、誰かを殺させてたまるかという強い思いがそこにはあった。
その意地が、格上の相手にも必死で食らいつく原動力となる。
二体の死神は、獲物のしぶとさに心底驚く。
彼らは確かに絶妙なタイミングで仲間を裏切った。結果として、多数の獲物を先制して狩ることができた。
しかし、同時に大きなミスを二つおかしていたのだ。
一つ。戦場が回復の泉であり、獲物であった魔法少女は耐久力と回復力が持ち味であったこと。
彼女は幾度切り刻まれても、まるで痛みを感じていないかのように攻め込み、その分白銀の死神は後ろに下がることなる。
二つ。攻め込んだタイミングが、放送まで1時間もない時刻だったこと。
少女たちと元英雄が、泉の恩恵もあり粘ったことにより……その時は訪れた。
定時放送。
無数に呼ばれる死者の中には、自分たちが殺した象と少女の名前も当然含まれる。
首輪を外したという危険人物、魅力的な報酬の情報も流れたが、そんなものはここに住む魔物にとっては二の次であった。
『総員、至急まどかを守れ!』
巨体故に救援に駆けつけられない氷竜は、代わりに配下の魔物に緊急指令を下す。
確かに氷竜と雷竜が駆けつけられないという読みは、死神たちの思惑通りだった。
しかし逆に言ってしまえば、他の魔物はこの場所に来れるのである。
それも、戦闘現場は既に割れているのだ。
雷竜が生み出す移動磁軸で、瞬時に大量の魔物が泉の部屋周辺になだれ込んだ。
『グオオオォォォォウ!』
仲間の危機には真っ先に駆けつける骨竜が、金色の死神の腕に齧りつく。
氷の蟷螂は、親友の裏切りに驚きつつも……次の瞬間にはお互いの鎌がぶつかりあっていた。
その隙に、他の魔物は少女たちと元英雄、そして守るべき希望を逃がした。
金色の死神が吐き出す破壊光線からも、その身を犠牲にして守り抜く。
『ど、どうして……』
逃がされる最中、魔物を悪だと決めていた魔法少女は思わず零していた。
目の前で、金色と銀色の死神はさらに暴れ狂っている。生贄だ、血祭りだと叫びながら。
骨竜の腹部が、金色の拳に打ち抜かれる。氷の鎌の一つが砕け散る。それでも彼らは止まらない。抵抗を続ける。
『……ニゲロ』
確かに、骨竜の言葉が聞こえた。
人間であり、ここを訪れたばかりの者には決してわからないであろう。
かつて食人鬼に一人果敢に挑んだ熊のように、ここの魔物はみな強い思いを持っている。
生きたい。自分にそれが無理ならば、仲間が生きられるようにしたい。自分の犠牲で他の仲間を助けられるならばそれで構わない。
ある種の自己犠牲精神、最大多数の幸福思想。
『ムシケラどもがぁぁぁぁぁぁ!』
『逃がすかよぉ雌豚どもがあああぁぁぁ!』
金と銀はかつての仲間を振り払い、本来の獲物を狙おうとする。
しかし――
『――覚悟はできているか、裏切り者よ』
『これ以上、あの方に負担はかけられない。だから、私が貴方を倒します!』
立ち塞がるは双璧、魔王と麒麟。
死神たちは僅かにたじろいだ。
魔王の実力はもはや説明不要。麒麟も怒りによるものなのか、まるで金色の死神と同じように髪を荒ぶらせ、雷を纏っていた。
『へ、どの道お前もSATSUGAIしてやるつもりだったんだ! この世に魔王は、クラウザーさん以外いらねェ!」
『真似をしたところで、この俺を超えることなどできぬぅ!』
――そして――
『ガ……』
白銀の死神、デスマンティスは満身創痍の状態で大広間に晒し者となっていた。
その体はいたるところが石化し、もはや己の意思で動かせるのは頭部のみ。
魔王ダオスの拳は石化の力を有しており、その体は物理攻撃を受けつけない。
物理攻撃しかできず、石化に対する耐性を有さないデスマンティスには最初から勝ち目などなかったのである。
「気分はどうだ?」
『いい気になるなよ……まだアイツが、ラージャンが……』
「極光連撃ッ!」
「ば、馬鹿なあああぁぁぁぁ……!?」
天井が崩れると同時に、金色の魔獣が金色の聖獣の一撃を受けて地面に叩きつけられる。
なんとか起き上がろうとするラージャンだが、巨大な鉄球による追撃を受けてそのまま動かなくなった。
『う、嘘だろ!?』
顔面への棘鉄球直撃。抉られ潰されたその凄惨な光景は、頼みの綱であった相棒の死を嫌でも認識させた。
「……石化した貴方に、この鉄球をぶつければどうなるでしょうね」
二つの巨大な鉄球を従え、サクヤはデスマンティスに歩み寄る。
聖煌天――その角と尻尾は得物と同じくさらに攻撃的な形状となっており――彼女の本気の姿に、デスマンティスは僅かな恐怖を覚えた。
「待てサクヤ。この裏切り者を砕くのはもう少し後だ」
今にも石化粉砕の一撃を繰り出そうとするサクヤを宥めるダオスではあるが、彼の眼の方が遥かに冷徹であった。
そして大広間に集った、多くの生き残った魔物たちの憎しみの言葉と視線が、一人残されたデスマンティスの身に突き刺さる。
まだ風鳴翼の強襲から大した時間も経っていない状態で、信頼を裏切った彼に対しては当然の対応だろう。
どう足掻いても、デスマンティスの生はここで終わりを告げる。それは揺るがない。
『クハ……ハハハ、ハハハハハハハ!』
それでも、デスマンティスは笑った。
『俺とラージャンを倒したくらいでいい気になるんじゃねえぞ……お前らは全員、クラウザーさんの生贄! それは絶対だ!』
『まさかお前が、DMC信者に寝返っていたとはな……』
雷竜が苦々しげに呟くと、さらにデスマンティスは笑う。
『わかってねえなぁリーダー? 俺は寝返ったんじゃない。正気に戻ったんだ。森の中での刺激の少ない生活なんて真っ平だ!
SATSUGAI、SATSUGAI、SATSUGAI! 獲物の首をただただ刎ねる! この最高の快楽を、そしてあの素晴らしい歌を教えてくれた!
クラウザーさんこそが! この世で! 何よりも大切なものなんだよぉ!
ハハハハハハ、俺らが殺して、お前らが俺たちを殺す。なんの問題もない、俺のこの魂もクラウザーさんの役に立つのかと思うと……
興奮せずにはいられねえよなあ! お前らも、死んだ奴ももっと喜べよ! あのクラウザーさんの役に立てるんだぜぇっ!?』
――狂っている。
その場にいた誰もが、そう思った。
生き残り、魔物と同じようにこの部屋に集められた人間たちも、同じ感情を抱く。
蟷螂の言葉は普通の人間にはわからない。しかしその表情が、纏う空気が、全てが普通ではない。
心の底から殺戮を好み、メタルの魔王に心酔した狂気の、文字通りの魔物。
『確かに、我ら竜や魔物は多くの生を奪う存在。お前達の一族が特に闘争本能が強いことも知っている。
特定の人間に肩入れをしてしまう気持ちもわかる。だが……何故ここまで無差別に命を刈り取る必要があった?』
『クラウザーさん復活のためには、多くの生贄が必要だ。質じゃなくて、量がな……
今、この世界樹には俺の見知った顔が、見知らぬ顔が、数え切れない程沢山いる。それはとっても生贄向きだとは思わないか?』
『其れほどまでに、クラウザーという人間に――』
『さんをつけろよリーダーァァァァァ!』
噛み合わない、理解の出来ない会話と思考。
デスマンティスに飛びかかろうという魔物はいなかった。怒りよりも、困惑の感情が大きい。
代わりに、二人の人間がデスマンティスの前に歩を進めた。
「まだ状況を飲み込めてないっすけど……要するにこいつは
DMC狂信者で、みんなを殺したってことっすよね?」
「私たちもDMCのファンだから、クラウザーさんが死んじゃったのは辛いよ。でも……」
『黙れメス豚がぁ! お前に俺たちの、クラウザーさんの何がわかる!』
「……誰か通訳お願いするっす」
「は、わかってないのはそっちっすよ! あんたたちの方が、DMCファンの面汚しっす!」
「なんでクラウザーさんが、こんな殺し合いの中でもライブを開いてくれたかわからないの?
クラウザーさんの歌は、歌詞はちょっとアレだけど、とにかく盛り上がれる。嫌な気分を吹き飛ばしてくれる。
弱い私の心さえ震わせて、勇気づけてくれる。クラウザーさんは――
『真にクラウザーさんを想うならSATSUGAIするっきゃねぇだろぉがっ! そうすりゃ、クラウザーさんの歌をもう一度……!』
DMCのファンであった桃子とまどかに対し、狂信者のデスマンティスが吼える。
ファンと信者は紙一重というが、ことこの三人に関しては永劫交わることのない平行線だろう。
それを察したダオスは、二人を下がらせる。
「やめておけ。こやつとお前たちの思想は相容れぬもの。こやつはもう手遅れだ」
『ははっ! 手遅れなのはお前たちの方だよ! 俺たちは既に目的を果たした! お前達の戦力を削り、同時に外への警戒も緩んだ!』
そう叫ぶと同時に、デスマンティスの口から薄い板が吐き出された。
粘液のようなものがかなりまとわりついているが、それが何かはすぐにわかる。
桃子やサクヤが持つものと同じ、スマートフォンだ。他の魔物に気づかれないよう、隠し持っていたものだろう。
都庁の軍勢が咆哮やテレパシーで仲間達とやりとりをするように、DMC信者は全員これら文明の利器を利用していた。
その伝達速度、範囲は都庁のものとは比較にならない。この場にいながら、デスマンティスは他の信者たちからメッセージを受け取っていたのだ。
時 は き た !
都 庁 を レ イ プ せ よ ! ! !
「っ貴様!」
『ははははははは! クラウザーさん! 今、俺の魂も――
デスマンティスが喋り終える前に、ダオスの鉄拳がその身体に打ち込まれる。
まさに一撃粉砕。デスマンティスの命は刈り取られ、石化したことによる稀少な素材を死に際に落とした。
だが滑るスマートフォンは既にDMC信者全体にメッセージを送信済み。いまさらデスマンティスを殺したところで事態は何も変わらない。
『こいつらは所詮は使い捨ての工作員、これからここに向かってくるのは本隊か、或いは質は低くとも大軍勢か。
磁場操作で撒ける相手ではないな……戦闘可能な者は、準備を頼む』
雷竜の言葉を受け、魔物達はすぐさまに散った。
しかし、当初の万全な態勢ではない。
風鳴翼の襲撃により、4体の樹海守護者の中でも強者であった海王と鳥王が捕食されその数は半分に。
デスマンティスらの裏切りにより、大王は戦死しアイスシザースと骨竜も負傷。裁断者は病み上がりの状態。FOE軍団も半壊状態だ。
さらに被害は魔物だけではない。人間側にも出ている。
門番であったレストが負傷し、さらに一時的に同盟を組んだばかりの魔法少女組からも三人もの死者を出してしまった。
いくら回復の泉があったとはいえ、泉一箇所を飲み干す程に残った面々も消耗している。
「な、なにがなんだか、もう……」
特に、盾の役目も果たしたさやかは限界が近かった。魔力の使いすぎでソウルジェムは濁り、これ以上の戦闘は不可能というのがほむらの判断である。
残る日之影とラヴも、さやか程ではないが消耗が激しい。
「これから敵襲ってか……どうにも休まる時がないぜ……」
「あたいら、なんだかんだでずっと戦いっぱなしだったからねぇ……」
小町は思わず苦笑いを浮かべるが、事実彼女の言う通りである。
サボりを目的としていたロワ開始直後から現在に至るまで、彼女ら影薄組は強敵と出くわしてぶっ続けで戦闘と負傷を繰り返していたりする。
しかもその相手は
- 超一級のズガンマスター、ルーファウス
- チート&カオスの塊、長門
- 主催幹部、幻想郷でも指折りの大妖怪、風見幽香
- 死人が出るぞぉ! ベン&ゴゴ
- 強大な力を持つと言う古龍の一人、オオナズチ
- 四神を束ねる黄龍より格上とされることもある、麒麟サクヤ
- 都庁が誇った最強の門番、レスト
- 絶賛警戒警報発令中、風鳴翼&ぼのぼの
- ショッカー軍団を一瞬で蹴散らした、デスマンティス&ラージャン
という、極悪なラインナップである。これを相手に休み無しで戦い続けるなど正気の沙汰ではない。
病院での治療→メガザル→ヒール→回復の泉と、肉体の傷だけはその度に回復しているとはいえ、精神や疲労までは回復しないだろう。
ほむらと小町は他のメンバーと比べれば比較的休めているが、前者は魔力の問題があり、後者はうかつに能力を使えば衰弱死コースだ。
つまるところ、流石の彼女たちも、これから起こるであろうDMCとの戦闘を切り抜けるだけの余力は残されていないということである。
「風鳴翼の問題を話し合おうと思った矢先に……いや、これが奴らの狙いか?」
自身も戦闘準備を進めながらも、ダオスは思わずぼやく。
あのレストが負傷したということにも驚いたが、彼らが差し出したメモ、そして放送の内容にはさらに驚いた。
『あれは風鳴翼じゃない。僕が戦った時には首輪をつけていたし、髪の色も違ってる。あえて言うなら、風鳴翼だった何かでしょうか。
僕らの仮説が正しければ、あれに考え無しの人間が下手に挑んだら逆に喰われて、より手のつけられない化物になりますよ……』
放送直後、レストはそう言っていた。時間帯から考えて、おそらく最後に翼と戦ったであろう彼の言葉は説得力がある。
もしそれが本当であれば、風鳴翼を生み出した大元の原因は主催者であり、それを討伐しろというのは建前にすぎないのだろう。
覚醒させた怪物に、何も知らない欲に眩んだ参加者を餌として与え、さらに強化していく。それが主催者の目的だろうか。
だとすれば何故そのような存在を生み出したかが疑問となってくるが、それを話し合う余裕はなかった。
そのレストは自身の負傷よりも放送で呼ばれた、フレクザィードの名を聞いた瞬間から引きこもってしまったのだから。
そしてこの騒動である。まだまだ、風鳴翼について議論をする時間はなさそうだ。
「今は、目の前に迫る敵を迎え撃つことだけを考えるとしよう。私が前線にでる。残った樹海
守護者は念のため内部を固めてくれ」
『了解致しました。しかしどうかこちらをお持ちください。我ら樹海守護者の想いの結晶、七王のグリモアでございます』
「……確かに受け取った」
出し惜しみするほどの戦力は、もう残っていない。
しかしこれ以上の犠牲を出さない為にも、あえてダオスは他の守護者たちをさげた。
想いは今受け取った。世界樹の力により、マナに溢れたこの場所であれば自分が負ける理由などない。
「来るがいい、DMC信者共。――我も全身全霊を賭して戦おうではないか!」
マントをなびかせながら、魔王が今、出陣する。
「どうしてこんなことに……やっぱり、あかりのせいなのかな?」
「どうしてそうなるっすか! と、とにかく折角和平が結べたんすから、私たちもなにかしないと!」
「さすがに、今の僕らの残ったスタミナじゃ足手まといですよ、モモさん」
話し合う影薄三人は、傷らしい傷を負ってはいない。
とはいえ本業は全員学生であり、戦闘経験も皆無だ。スタミナ不足でステルスさえ不安定となってはただの村人Aである。
足手まといという黒子の言葉は、残酷ながらも確かであった。
「レストさんも、あかり達を庇ったせいで……」
「むしろあの超人さん、さっきの放送を聞いてた時の方が辛そうだったっす……」
「目に見えて落ち込んで、部屋に閉じ篭っちゃいましたからね」
「……やっぱり心配っすね。この緊急事態に、まさかとはおもうっすけど自殺なんてしてたら――
桃子の言葉を遮り、罪悪感に苛まれていたあかりはたまらずその扉を開けた。
そして、彼女たちは恐ろしい光景を目の当りにすることとなる。
「――村雲剣継承アレンジ完了グリッタグリッタグリッタ確認グリッタ倍鉄歌小瓶10倍鉄歌小瓶愛結晶遮光石主鱗、世界樹剣完成。
胴体継承完了物体Xリンゴリンゴ確認リンゴリンゴ物体X左岩破片10倍鉄赤コア青コア黄コア緑コア、四幻服完成。
頭部継承完了物体Xリンゴリンゴ確認リンゴリンゴ物体X真実石版10倍鉄赤コア青コア黄コア緑コア、王冠完成。
腕盾継承完了物体Xリンゴリンゴ確認リンゴ物体X地龍鱗右岩破片10倍鉄赤コア青コア黄コア緑コア、魔盾完成。
脚部特殊アレンジ水蜘蛛ロケットゴースト確認三相胞子伝説布倍鉄大カブ10倍鉄赤コア青コア黄コア緑コア、妖精靴完成。
装飾特殊アレンジ草原イルカシールド確認伝説布倍鉄三相胞子左岩破片10倍鉄赤コア青コア黄コア緑コア、魔道極意完成――」
「「何かやばそうな呪文唱えてる!?」」
「――ああ、なんだ君たちいたのか……悪いね、片腕だとどうしても装備の再練成は面倒で。
まったく自分が嫌になるよ、僕は強いからと自惚れて、半端な装備で戦いにのぞんだ結果がこのザマさ。
友達は殺されて、守るべきここの魔物も次々に殺されて、そして一緒に大災害を生き延びたフレクまで殺されて……
この力は大切なものを守るために手に入れた筈なのに、僕はまた何一つ守れていない……」
ゆらりと立ち上がるレストの体には、以前は見られなかった装備が身につけられている。
かつて影薄たちと戦った時は透明化させ、相手の油断を誘うかたちであった装備群なのだろう。
両手剣であった天ノ村雲ノ剣も片腕となった現在にあわせるように、世界樹の素材を用いた片手剣へと変貌している。
「あの風鳴翼は得体の知れない怪物だけど、さっき僕が確実に殺していればそれで済んだ話だった。
君たちのステルスで殺されかけもした。僕は甘すぎたんだ。
それでも、僕にはまだ守るべきものが残っている。だから、もう一片の容赦もしない。風鳴翼も、ここを狙う全ての参加者も……僕が殺さなくちゃいけない」
「ま、待ってよレストさん! あかりたちも――」
「……君たちは戦う必要はない。これ以上僕らに肩入れするところを誰かに見られると、きっともう元の生活には戻れなくなるよ」
「いいよ別に! モンスターさんと一緒に暮らせる生活は、元とは違うでしょ?」
「やれやれ、本当に調子狂うなぁ……その気持ちだけ貰っておくよ。君たちは僕と違って、本当にただの人間だ。いい加減少しは休まないと。
それに――きっと後で戦場を見なければよかったと後悔することになる」
ぞくりと、あかりたちの全身が震え上がる。
紛れもない殺気。しかしそれは自分たちに向けられたものではなく、これから戦うのであろう相手に向けられたものなのだろう。
これまで既に多くの血や人の死を見てきた。死線を潜ってきたという自信もあった。
それでも、今の気配は……風鳴翼とはまた違った意味で恐ろしいものであった。
「……こっちの不注意で、停戦を結んだ君たちの仲間にも犠牲者が出たんだ。僕らの戦いよりも、彼女たちを弔う方がいいと思うよ」
そう言われては、誰も言い返すことはできなかった。
殺された美希たちとは、短い間だったとはいえ確かに同じ志を持った仲間であった。
いくらいつ誰が死んでもおかしくない世界とはいえ、その死に無関心でいることができるほど薄情ではない。
せめて、埋葬ぐらいは行うべきだろう。ここは土と樹木に溢れており、簡素でも墓標は作れるはずだ。
「そう、これは僕らの戦いであって、一つのケジメだ。君たちの誰の力も借りない。
もし本当に僕らに力を貸してくれるつもりなら、一段落したあとで風鳴翼のことを話し合う時にでもお願いするよ」
そう言って、レストは部屋を後にした。
向かう先は、都庁の入り口。これまでそうしてきたように、敵を迎え撃つために。
◆ 都庁・世界樹の入り口 ◆
「遅れました、ダオスさん」
「レストよ、傷の具合はどうだ」
「問題ないですよ。さすがに片腕な分、攻撃の手数は減ってしまいますけどね」
『そこは我らが補おう。さて――来るぞ』
『この気配、まさかとは思うが……』
明け方の世界樹は、陽の光を浴びて美しく輝いていた。
そこを目指してやってくるは、巨大な塊。
夥しいという言葉でも足りない程の、圧倒的なDMC狂信者の軍勢。
都庁が抱え込む魔物の総数、非戦闘員を含めても凌駕するほどの量だ。あれでも恐らく、敵勢力の一部に過ぎないのだろうが。
「全員が狂信者か……クラウザーという男は、確かに多くの者を惹き付ける存在だったようだな」
『……信じられない奴まで惹きつけているようだがな』
『アレが自分以外の誰かを信仰するとは……』
徐々に、塊が大きくなる。近づいてきているのだ。
そのたびに彼らが口にする歌も嫌でも耳にするが、迎撃する都庁精鋭軍はひるまない。
その塊の中に一際目立つ――雷竜や氷竜すら凌ぐ漆黒の竜がいても。
『フハハハハハハハハ! 赤竜はあの忌々しい火幻竜とやらのせいで逃したが、貴様らは逃がさぬぞ雷竜、氷竜!
その後ろの世界樹もろとも……クラウザーさんを中心とした新たな世界の礎になるがいい!』
漆黒の竜――冥闇に堕した者。
その身体の大きさは赤竜を遥かにしのぎ。
その悪魔の知恵は氷竜も及ばぬほど。
その黒く輝く鱗は雷竜の鱗よりも美しい。
その戦闘力は、三色の竜の比ではない。
そのクラウザーさんへの心酔具合は、DMC狂信者の上層部にだって劣っていない。
そんな冥竜を筆頭としたDMCの軍勢が、ついに都庁を射程圏内にとらえた。
都 庁 を レ イ プ せ よ ! ! ! レ イ プ せ よ ! ! ! レ イ プ せ よ ! ! !
S A T S U G A I せ よ ! ! ! S A T S U G A I せ よ ! ! ! S A T S U G A I せ よ ! ! !
圧倒的な轟音。他の全てを塗り潰さんとするほどの狂った叫び声。全てを信仰するクラウザーさんに奉げた信者たちの、歓声。
『奴らをSATSUGAIせよ! そしてその血と肉で、この世界樹を穢しつくすのだ!』
冥竜が吼える。
『冥竜よ……私たちと貴様に因縁があるのは確かだが……今はそんなことはどうでもいい。
我らが森を穢し、多くの同胞を命を奪ったDMC狂信者どもよ! その罪、死をもって贖うがよい!』
雷竜が吼える。
『『 総 員 か か れ ! 』』
それと同時に、決戦の火蓋が切っておとされた。
――その光景を、なんと喩えればいいのだろうか。
信者の言葉を借りるならば聖戦<ジハード>か。都庁にとっては防衛戦か。
どちらにしろ、双方にとって絶対に譲ることのできない戦いである。
信者からすれば、ここを落とすだけでクラウザーさんの復活はぐっと早まる。
都庁からすれば、ここを落とされた瞬間に後ろに控える仲間たちも含めて全員が殺される。
ただ。双方には決定的な違いがあった。
冥竜の力は都庁でも最高位に位置する雷竜たちよりも上である。
多くの信者たちは、上層部たちのしごきにより様々な異能を体得している。質も量も、都庁に遅れはとっていない。中級FOEなら秒殺可能だろう。
決定的な違い、それはDMC信者たちにとって無縁のものだった。彼らはただ、圧倒的な力と数で全てをゴリ押し蹂躙する。
――戦略というものを、知らなさすぎた。
『受けよ、我が奥義』
誰よりも先に動いたのは、この都庁を最初に乗っ取る計画をたてた雷鳴と共に現る者。
彼はその長い胴体を唸らせながら、雷を纏って空を泳ぐ。否、踊っていた。
「「うおおおぉぉぉぉ!?」」
――呪縛の円舞。雷竜の持つ補助スキルであり、誰よりも速く行動して敵対者全員の全身を一定確率で縛り上げる。
敵の数が多ければ多いほど、その妨害力は大きくなる。開幕から行動を大きく阻害されたDMC信者は、後手に回ることとなった。
それがそのまま、明暗を分けることになるとも知らずに。
『お、おのれ! ならば我も呪縛を――』
「させません、護光陣!」
なんとか雷の呪縛に全身を封じられることは避けた冥竜だが、そちらにばかり気をとられて足元を見ていなかった。
直後、陣から伸びる光の魔力に今度こそ全身を絡め取られて完全に身動きを封じられる。
サクヤが仕込んでいた護光陣は、雷竜のものよりも有効範囲が狭いが闇の者を確実に封殺する力を秘めていた。
「冥竜さんが滅茶苦茶に縛られた!?」
『――ウッ、ふぅ……///』
「しかもちょっと気持ちよさそうだと!? ええい、怯むな! クラウザーさんのための生贄を前に――」
『散れ、有象無象が』
『赤竜とやらの代役、我が引き受けよう』
身動きのとれなくなった冥竜に代わり最前線に出てきた信者たちは、直後高空からの吹雪と豪火球を受けて一瞬で蒸発した。
氷嵐の支配者の名の通り、その三つ首から吐き出される氷嵐は無対策であれば確実に敵対者の命を奪う。
叫帝竜ウォークライの吐き出す灼熱の豪火球も同じくであり、仮に耐え切ったとしても深い火傷により攻撃力と防御力を下げられ悶え苦しむこととなる。
「飛行部隊、あのトカゲどもをSATSUGAIせよ! SATSUGAIせよ!」
「ほう、私を前に余所見とはいい度胸だな。死ぬがいい、テトラスペルッ!」
無詠唱で繰り出されるは、魔王ダオスが最も得意とする高速四連魔法。
たかが下級術の連発と侮るなかれ。魔王の魔力から繰り出される魔法は、基礎のファイアーボールであっても致命傷たりえる。
そしてそんな四色の魔法の残照を吸い寄せながら、サクヤは舞を始めていた。
かつてレストに挑んだ際は破られたが、本来であれば絶大な火力を発揮する麒麟の美しき四源の舞。その恩恵は、彼女が仲間と認めた者全員に発揮される。
――その恩恵とは、攻撃力の5倍化だ。
「ドラゴンは好きだけど、君さっき火幻竜って言ったよね? フレクのカタキなら、尚更容赦はしない。
この剣で状態異常まみれにして、嬲り殺しにしてあげようか。……とも思ったけど、サクヤの踊りが綺麗でいくらか気分がよくなったからね。
――ひと思いに一撃で生まれてきたことを後悔させてあげるよ。勿論状態異常フルコースの
おまけつきでね」
『ふ、ふごぉぉぉ……///!?(な、なんだと……!?)』
仲間たちが冥竜の取り巻き信者たちを掻き乱しているなか、レストはゆっくりと未だ縛られている冥竜の前に立ち、身構えた。
これでも人間である彼は、竜や魔王のように超広範囲を殲滅するような規格外の大技は扱えない。
鍛えられた肉体と装備が本領を発揮するのは1対1。面を攻めるのではなく点を攻めることの方が得意であった。
その集大成が、呼吸を整えて、力を溜めてから放たれる中段の正拳突。あらゆる敵の防御を完全に無視したうえで無慈悲な鉄槌を与える、まさに必殺の一撃。
「チェストオオオォォォォォォッ!」
信じられないような爆音の後には、そこに冥竜の姿は残っていなかった。
「ん、これはあのドラゴンの核かな。まだサクヤの魔法に封じられたままだし、いい武器の素材になりそうだ」
冥闇に堕した者という存在が確かにいたことを示す唯一の品も、すぐさま拾われてデイバックへとしまい込まれた。
「……………は?」
そのあまりにも異常な光景に、叫び続けていた信者たちも思わず間抜けた声をあげてしまう。
都庁の三竜には必ず勝てると豪語していたあの冥竜の姿が、一瞬にして消えた。この軍勢の指揮官が、消えてしまったのだ。
狂気に染まった彼らでさえ、混乱せざるをえない状況であった。
「やれ――ステルスロック」
そしてそうしている間に、彼らの周りを鋭利な岩が取り囲んでいた。
おたけびをあげて岩を飛ばしたのは、ダオスのポケモンとなったメガボスゴドラである。
圧倒的な殲滅力を誇る都庁の軍勢において、彼は決して火力が高いとはいえない。
しかしながら、長丁場の戦いであればあるほどその力、ステルスロックは威力を発揮する。
「と、とにかくSATSUGAIうぐぅ!?」
交代、この場合は誰かの代わりに前線に出た者全員に鋭利な岩が突き刺さる。
強力な風などで早急に岩を吹き飛ばし、メガボスゴドラを沈めるのが対処法なのだが、信者たちはその戦法を取れないでいた。
これは正式なポケモンバトルではない。トレーナーダオスは次から次へと魔法を発動し、誰もメガボスゴドラに手出しができない。
そして別の信者に交代、ステルスロックに刻まれ、追撃のブレスや魔法ですぐさま消し飛ぶ。
『グオオオオォォォォォウ!』
さらには上空で吼える雷竜も自重せずに恐怖と呪いの状態異常をばら撒き、この最悪の循環を加速させる。
氷竜が劈く叫び声をあげれば、強烈な睡魔に襲われた信者は戦場の真ん中で爆睡し始める。
叫竜が大きく息を吐き出せば、信者たちの魔法やスキルは封印され、麻痺状態に陥る。
四源の恩恵を受けたステルスロックは通常時の5倍の威力。
なかにはそれだけで絶命する信者もおり、耐え切っても余波による火傷や凍傷の持続ダメージが襲い来る。
それらを凌いでも、まだまだまだまだ攻撃の嵐は止まない。
徹底的に状態異常漬けにして、縛り上げて、阻害して、億に一つの勝ち目すら潰す。
それぞれの力を最大限発揮できるよう連携を意識して動く。
都庁の魔物の強みは、とれる戦術の豊富さにある。
対する信者たちは、何もわからないまま倒れ続け、血を流し続けた。
――ギャァァァァ!
真下から聞こえる悲鳴を聞きながら、戦いを見守っていた死神、小町はやれやれとため息をついた。
「下手すりゃ、あたいらが……いや、多くの参加者があの信者たちと同じ目にあってたと思うと、ぞっとするよ。
黒子やモモたちには見せなくて正解だねこりゃ。こんな、戦いなんていえない虐殺なんて……」
ひとりごちる間にも、信者たちは魔物の連携攻撃の前に次々と沈んでいく。
「くそ、くそ! 何故死なない! アギダイン!」
「なんで、俺の拳がぁぁ……」
「ク、クラウザーs
おそらく必死になって習得したのであろう魔界魔法は、吸収されるだけ。
魔王に打ち込んだ拳は逆にひしゃげ、使い物にならないだろう。
乱射した銃器の弾丸は全て、氷竜の生み出した盾に反射されて自分の首を絞めている。
「堕ちろ、堕ちろぉぉぉぉ!」
『貴様がな、蚊トンボ』
人型機動兵器も、雷でまとめて薙ぎ払われて空中で爆発四散していく。
「「¢$&#%¥℃$£⊂⊆>、ΦζЭё~!」」
さらに途中からは、長い間都庁の屋上にぶら下がり続けていた怪生物、ミザールまでもが信者を敵と判断したのか攻撃し始める始末。
その能力はどうやら分裂と巨大化、そして触手を用いた強烈な物理攻撃の嵐のようだ。
十八番であった物量作戦すらミザールに奪われ、DMC信者たちは次々にその数を減らしていく。
戦況が安定してからは、世界樹内から魔物の援護射撃も繰り出され、殲滅力は時間経過と共に増していた。
「死ぬがいい! ダオスコレダー!」
再び魔王の放つ円範囲爆撃が信者の群れを容赦なく消し飛ばしていく。
「ワルプルギスの夜が滅んだ理由がよくわかるわ。私もあの魔女も、世界を知らなかっただけなのね……」
「おやほむら、なんであんたまでこんな凄惨な光景見てるんだい?」
「あらためて、彼らの力を知りたかったのよ。……私、これから本当にちょっと自然保護頑張ってみようと思うわ」
「あはは、あたいも同感だねぇ。この様子なら、あと3分もしないうちにDMCは全滅確定だよ」
「彼らの協力を得られたのは、やはり大きいわ。だからこそ、私たちも動かないと……」
小町は無言で頷く。
あくまで都庁の軍勢との関係は一時的な協定である。ここでサボろうものなら、それは即刻破棄される。
そうなれば、この凶悪な軍勢の矛先は再び人類に向く。それをさけるためにも、働かなければならない。
幸いにして、これからすべきおおまかなことは決まっているのだから。
「さっきの地震は、話にあったフォレストセルが起きた衝撃らしいわ。
まどかの力があれば制御できるそうだけど、念のために護衛をつける……これは、私が適任ね。
まさかグンマーの巫女の術を教える役目が、あのオオナズチになるとは夢にも思わなかったけど」
「あれでも一応グンマーの古参らしいし、通訳が必要ないのは大きいからね。
さてと、じゃああたいはあの風鳴翼とかいうやばそうなの対策をみんなと考えるとするよ」
いつの間にか戦闘の音は止んでいた。
少なくとも、第一波は全滅したのだろう。これから動くべきは、さらなる厄介ごと。
魔物も人間も手を組み、考える必要がある。
果たして彼らは、森の細胞を引き入れ、混沌の歌姫の正体とその裏に潜む計画を見抜くことができるのか……?
【デスマンティス@世界樹の迷宮4】 死亡確認
【ラージャン@モンスターハンター4】 死亡確認
【冥闇に堕した者@世界樹の迷宮4】 死亡確認
【大量の強化DMC信者@色々】 死亡確認
※かなりの数が死んでいますが、まだDMC狂信者全体の活動には影響ないようです
【都庁の軍勢】
【雷鳴と共に現る者@新・世界樹の迷宮 ミレニアムの少女】
【氷嵐の支配者@新・世界樹の迷宮 ミレニアムの少女】
【ダオス@テイルズオブファンタジア】
所持品追加→七王のグリモア
【メガボスゴドラ@ポケモン】
→判明技、ステルスロック追加
【レスト@ルーンファクトリー4】
所持品変更→最大練成防具、世界樹の剣、封じられた闇核
【極光の麒麟・サクヤ@パズドラ】
→【聖煌天の麒麟・サクヤ@パズドラ】へと変化
【ウォークライ@セブンスドラゴン2020】
共通思考:風鳴翼とフォレストセル問題に対処。DMC信者は殺す
【FOE軍団@新・世界樹の迷宮 ミレニアムの少女】
共通思考:全員負傷しているため、早く傷を治す
【鹿目まどか@魔法少女まどか☆マギカ】
思考:フォレストセル制御へと向かう
【セプテントリオン・ミザール@デビルサバイバー2】
思考:都庁に攻撃する者を殺す
【影薄組】
【小野塚小町@東方Project】
【日之影空洞@めだかボックス】
【黒子テツヤ@黒子のバスケ】
【東横桃子@咲-Saki-】
【赤座あかり@ゆるゆり】
共通思考:休憩した後、都庁の軍勢に協力
【オオナズチ@モンスターハンターシリーズ】
思考:仕方ないので、氷竜に協力する
※影薄組は特に休憩が必要です
【魔法少女・プリキュア組】
【暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ】
【桃園ラブ@フレッシュプリキュア!】
【美樹さやか@魔法少女まどか☆マギカ】
→ジェムをなんらかの手段で浄化しないかぎり、戦闘続行不可
【ケルベロス(小)@カードキャプターさくら】
共通思考:休憩した後、都庁の軍勢に協力
最終更新:2014年07月30日 10:55