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死国。それは常識外れの戦艦にして難攻不落の要塞。
搭乗者は皆首輪を外し、戦闘力も野球力も高い面々が揃っている。
さらに悪魔将軍にストライダー、理不尽の権化たちまでがここに降り立った。

カオスロワちゃんねるでは、リアルタイムで彼らの危険性が書き込まれていく。
だが誰も、死国を止めようとはしない。
それは何故かと聞くのは野暮ってもんである。勝てるわけがないからだ。

今現在、このカオスロワの会場では多くのグループが出来上がっている。
殺戮を繰り返す凶悪なグル―プ、打倒主催者を目指すグループ……
そして野球。

死国組は、この全てに当てはまるグループであった。
ある時は罪のない塁審をぶっ殺し、ある時は県を焦土に変え、ある時は大阪にサテライトキャノンをぶっ放した。
ある時は仲間の死を悲しみ涙を零し、ある時は主催者を倒すために新たな仲間を集め、ある時は主催陣営への奇襲も考えた。
ずっと野球の練習と試合をしてきた。紅白戦も行った。

死国は、間違いなく全てのグループの中で最強と言うにふさわしい。
これまでの行いから危険視こそされているが、一部の参加者はこうも考える。
この最強の布陣が揃った最強の要塞に招いてもらえれば、このロワでは生き残ったも同然なのではないだろうかと。
首輪すら一瞬で外せるのだから、怖いものは何もない。

ああ、保護してもらいたい。でもそこにいくまでが怖い。

ハイリスクハイリターンといったところだろうか。
カオスロワちゃんねるでは、ごく一部ではあるが死国に近寄ろうかと考え始めるものが出ていた。
もっとも、大阪での食料略奪行為に対するバッシングでその手の書き込みはすぐさま潰されているのだが。

ところで、このカオスロワにおいて非常に重要な役割を果たしているカオスロワちゃんねるではあるが……
お気づきだろうか。ここも決して万能ではないということを。
書き込んでいるのは匿名の者であり、書かれた情報の真偽は実際に確認しないことにはわからない。
そして書き込んでいる者の多くは、戦えない者達である。彼らは、遠巻きでしか状況を確認できない。
命知らずのクレイジーな者はこんな時でも激戦のすぐそばでカメラ撮影し、掲示板にアップして優越感に浸っていたりするが。
それでも、そんな実況に命を燃やす者どもでも限界はある。

東京の都庁がいい例だろう。
その外見、住む魔物の巨大さ、風鳴翼やDMCとの戦争からここの戦力がカオスロワ全体でも最強クラスなのは誰もが認めるところだ。
しかしながら、生み出された世界樹の内部がどうなっているのか、構成員が何人いるのかまでは情報が出てこない。
当然だろう。時間経過と共に門番担当がどんどんと強くなっており、誰一人として近寄れていないのだから。

同じことが死国にも言える。
都庁以上に危険視されており、実際やってることも危険なここの内部情報は外に出回っていない。
実況魂よりも、近寄りたくないという本能が優先されてしまう。
だからこそ流される情報は、ただただ死国の連中が危険であるということだけ。


そう。


「……」
「――」


死国の中で死人が出ていても、その情報は決して流れることはない。

【デューク渡邊@新テニスの王子様】 緑間に首を捩じり切られて死亡

「……この感覚なのだよ」

誰もその現場を目撃することなく、デューク渡邊は仲間であった緑間真太郎に殺されていた。
あまりに突然だったのだろう。もがれた彼の頭部は、苦悶というよりも呆けた顔をしている。

「――コレをもう一度、富士山に入れたい――」

対する緑間の顔は、笑っていた。いつも通りの冷静な彼のまま、口の端を僅かに吊り上げて。
彼は狂気に――テラカオスに浸食されていた。それも、かつてのジョン・フレミングと同じ位に。

「投げたい、投げたい、投げたくてうずうずするのだよ。ああ、マウンテンシュートを決めたい……!
 そういえば最初に投げた『球』の名前はカミジョーだったか。ならば今の上条が帰ってくるまで待つのも……」

あくまで彼は大きく表情を崩すことはしない。しかし見る人が見れば、彼の狂気を一発で感じ取るだろう。
なにしろいきなり仲間を殺しただけでなく、次の殺す相手まで考えているのだから。

拳王も誰も知らない。緑間は、ロワ開始直後から既にテラカオスに蝕まれていたことを。
少年少女の首をちぎっては投げを繰り返し、協力者であった教授すら殺害してみせた緑間。
彼はその時から、テラカオス化の影響である残虐さと身体能力の向上が加速していた。

そんな彼が、どうして今の今まで症状を進ませないどころか沈静化させていたのか。
その答えこそ――野球だ。

野球には、不思議な魅力がある。
寄せ集めで作られていたイチローチームは、いつの間にかチームの絆で結ばれていた。
その際に、残虐非道であったナッパさえもが影響を受けたのか、野球を続けることを願った。
今では相手チームの死にすら反応し、激怒する程にまで至っている。
どう考えても野球に不向きなドラゴン達も野球を始めた。
動機こそ不純であるが、彼らは真面目に練習をこなし、真面目に試合を行った。彼らは紛れもない野球選手だ。
かなりへたれな聖帝が率いるチームもある。
彼は野望の男だ。しかしそれでも、試合前にはまるで少年のように心を躍らせ、それを台無しにされた時は憤慨した。
チームを結成しようとし、志半ばで死んでしまったオーバーロードがいた。
人間を見下していたが、彼は野球を通してその認識を改め、かつての敵の身を案じて散った。

野球は時に辛いこともある。死人がでるのも当たり前である。
それでも野球は――多くの者の心を動かした。

悪い言い方をしてしまえば、野球脳。
野球に夢中になることで、殺意や敵意などの余計な感情を洗い流して野球で染めて忘れさせる。
それがたとえテラカオス化であったとしても、野球が持つ魅力は時にカオスすら超えることがあるのだ。

「クク……やはり野球よりも、バスケなのだよ」

だが逆もまたしかり。野球脳を覆い尽くす程の混沌の波動を受ければ、またテラカオス化は再発してしまう。
そして皮肉なことに、緑間のテラカオス化を再発させた原因は、紅白戦だった。
紅白戦で疲れた体に水分補給――それがテラカオス化促進ナノマシン入りであることも知らずに。
元々重度の進行だったのだ。駄目押しでさらにナノマシンが入ってしまえば、野球で抑えるのにも限界があった。

外に情報が漏れない死国内では、緑間がこうなってしまった理由は誰にもわからないであろう。
このナノマシン飲料水に関しても、今や主催者の介入に書き込みがブロックされてしまっているのだから。
緑間がテラカオス化に対して極めて適合性が高かったことも、誰も知ることはできない。

「野球なんて――もういらないのだよ」

風鳴翼とは異なり、静かに、静かに混沌の狂気を渦巻かせながら緑間は堕ちていく……

二日目・6時00分/大阪府・『死国』内部】
【緑間真太郎@黒子のバスケ】
【状態】冷静にして狂気、首輪解除、テラカオス化再発&加速中
【装備】ハンマーブロスの無限ハンマー@マリオシリーズ
【道具】支給品一式、ホワイトボードとサインペン、ヴァンガードのデッキ、デューク渡邊の生首、空のペットボトル
【思考】
0:赤司に勝つ
1:やはり人の首が投げていて一番しっくりくるのだよ
2:どうして野球をしていたのか思い出せないのだよ……
※野球により封じ込められていた狂気がナノマシンの影響で解き放たれました
※再び野球をすれば抑えられる可能性がありますが、相当野球をやる必要があります
※マウンテンシュートはテラカオス化により手に入れた能力でした。他にも能力があるかは不明
最終更新:2014年09月11日 23:20