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トントントン……
小気味良い包丁の音が響く。
その横では魚が焼かれ、食欲をそそる匂いを漂わせている。
皿にはおにぎりが盛られ、端には野菜の漬物が。
早めの朝食が、もうすぐできあがろうとしていた。

「ま、簡素すぎるけどこんなところかな」

その朝食を作っているのは、都庁の軍勢が一人であるレストであった。
片腕を失ってなお、彼の卓越した技術は料理においてもいかされている。
たった一人で、瞬く間に大量の料理を完成させていくのだから。
そう、たった一人。
DMC信者の内通者、そこから始まった信者の軍団との激戦を終えた都庁は休息の時に入っているのだ。
フォレスト・セルの制御に向かったダオス達を除けば、全ての者が仮眠をとっている。
入口の番人にはウォークライもサクヤも他のFOEもついていない。門番役も休ませた。
地下に潜ったため、雷竜の磁場操作も今は行われていない。
完全に無防備になっている都庁の中で、レストはただ一人起きて作業を続けていた。

「お風呂はさっきいれておいたし、後は……」

そんな彼に疲れの色は一切見えない。
鍛え続けた結果彼は寝不足による体調不良が……いや、あらゆる理由で体調を壊すことがなくなっている。
眠るよりも入浴するか料理を食べるだけで瞬時に全快する体質とあいまって、彼はとうの昔に睡眠という行為を放棄していた。
だからこそ、仲間が全員休む中で彼は一人で作業を続ける。


バトルロワイアルの中でマーダーの次に問題となるのが、食料問題。
ほとんどの参加者は飲み食いをしないことには、いずれ衰弱してしまう。よく言う腹が減っては戦はできぬというやつだ。
関西の方では食料の略奪行為が始まったというが、この都庁に限ってはその必要はなかった。
既に都庁は世界樹として完成されており、内部には様々な果実が実っている。
さらに一画を整地し、畑に作り替えて野菜の安定供給をはかっており、薬と世界樹の力で野菜は異様に早く成長してすぐ収穫。
内部にできた川で釣りをすれば様々な魚も釣れ、タンパク源も確保可能。
何故か一部は不思議のダンジョンのようになっており、そこに行けば確率だが大きなパンやおにぎりが手に入ることもあった。
そう、まったくもって食料に困っていないどころか余裕すらあるのだ。
牛肉や猪肉などが食べられない(そういう姿の魔物もいて、なんともいえない気分に陥るため)ことを除けば、天国とも言える。
さらに天然の樹を削って造られたお風呂も完備。お湯は炎と水の魔法で作られたもののため特殊な効能こそないが安らげるだろう。
大自然も全身で体感できるし、まったくもって素晴らしい場所である!




注意事項その1・なお、認められた者以外が都庁に入ると自分が魔物のご飯になります
注意事項その2・立地場所に難があります。敵対勢力から狙われる可能性が極めて高いです。というか既に狙われてます
注意事項その3・機械類の持ち込みは厳禁です
注意事項その4・屋上に管理人もよくわからない生物がひっついてます


「――それでもいい物件だと思うけどなぁ。鉄筋コンクリートなんかより断然いいのに」

誰に言うでもなく、レストは小さく呟いた。
流石の彼も、一人で退屈だという感情までは捨てれないのである。

「――!」
「ひいっ!?」

そんなレストが、作業を中断して背後に剣を向ける。

「ってなんだモモか。わざわざステルス状態で来ないでよ」
「いきなり剣向けるってどういうことっすか!? 今度こそ死ぬかと思ったっすよ!?」

しかしそこにいたのは、都庁と休戦協定を結んだ影薄組が一人、モモこと東横桃子であった。
その姿を確認するやレストは何事もなかったかのように作業に戻るが、桃子は手で自分の心臓辺りをおさえている。

「全員休むようにダオスさんから指示出されてるはずだけど?」
「さすがにあの時間まで起きてたらもう眠れないっす。大丈夫っすよ、先輩と徹夜で麻雀して慣れてるし。
 それに、もしまた狂信者のやつらが来たらと思うと……」
「少なくとも、さっきそれなりの打撃は与えた。また来るにしても、しばらく時間を置くと思うよ」
「……元は同じDMCファンの筈なのに、なんであんなに狂っちゃったんすかね?」

驚きの表情から悲しみの表情へ。
それはクラウザーさんが死んでしまったからではなく、一部の信者が暴走して罪もない人々を虐殺しているせいである。
全国に無数に存在するDMCファンの全てが狂信者ではなく、桃子やまどかといったまともなファンもいるのだ。
彼女らからすれば、狂った信者の存在は許しがたいものであった。

「クラウザーさんの歌は、過激っすけどとっても揺さぶられるんすよ。嫌な気分も恐れをなしてどっか逃げてくっす。
 さらになんと、この存在感皆無な私でも街中で歌ったら周りの視線一気に集められるっす! あれは最高っすよ!」
「……ちなみにその歌詞は?」
「オレの前にひれ伏せ女ども~オマエの下半身を突き出し「よしストップ」え、まだ始まったばっかりすよ?」

レストが頭を押さえるなか、桃子はきょとんとした表情を浮かべる。

「そりゃ嫌でも注目集めるよ。君がこれじゃあ、まどかの方は……」
「ああ、さっきちょろっと話したっすけど、彼女は『あの娘をレイプ』がお気に入りだそうっす。
 わかるっすよ~、やっぱりクラウザーさんを語るうえでレイプ連呼は欠かせないっすからね!」
「伏せて伏せて! ああもう、これが自然をないがしろにして都会に行った人間の末路か!?」
「あはは、長野は都会とは言えないっすよー」
「君らの相手をする方が、あの狂信者と戦った時以上に疲れるよ……」

深いため息をつきながら、レストは適当な場所に腰かける。
あかりといいまどかといい桃子といい、何故この都庁に生きて入ってきた人間の相手はこうも疲れるのか。
黒子はそれらと比べれば非常に大人しいが、魔物の大軍を見ても特に恐怖することもなく「大きいですね」で済ませる猛者だ。
顔面の皮をもがれた時すら大人しかったというし、ある意味で一番すごい。

(でも……嫌いじゃない疲れだ。癖の強い子と馬鹿みたいなことを語って聞かされて、そう……昔と同じだ。
 もう随分と久々な気がする、他愛のない――けれど大切な、人と人の会話……)
「レストさん?」
「っなんでもないよ。それより、ほら」
「わっと……これ、おにぎり? いただいちゃっていいんすか?」
「元々そのために用意してるんだよ。このまま起きてるつもりなら、先に食事を済ませとくといいよ。
 それこそ、いつ狂信者が来るかわからないからね」
「さっきは来ないって言ってたのに?」
「自称まともなファンの君らでさっきの有様だ。狂信者ならもう何をしでかしても不思議じゃないと考えを改めたのさ」
「あれ? もしかしなくても私ちょっぴりまともじゃないって言いたいんすか?」
「うん」
「ひどいっす!?」

そんなやりとりをしつつも、二人は朝食を食べていく。

「なんすかこの料理……むちゃくちゃおいしくて、女としてはかなり複雑な気分っすよ……」
「一応、宮廷御用達料理人程度の腕前はあるつもりだからね。ホットケーキとかは神の域って評価をもらったことあるよ」
「戦闘以外の面でまで人間を超越してるっすか!? 他にもすごい能力があったりとか?」
「うーん、後は強いて言えば投げることかな。僕の住んでた街のお祭りでよく投げたからね。カブを」
「カブ!?」
「スペインでトマト祭りってあるでしょ。それのカブ版。採れたての新鮮なカブを住人同士でぶつけあって点数を競うんだ」
「バイオレンスっすね!?」
「うん、実際痛かったよ。あと逆に何故か高速飛行するカブを射抜く祭りもあってね。苦労したけど技術は上がったよ」
「意味不明っす!?」
「僕の投げスキルレベルは9999です」
「インフレ!?」





「あ、あのー……」





「――!」
「ひいっ!?」

レストが箸を置き、剣を抜き、声のした方に剣を向ける。
先ほどと似たような状況であるが、今度は桃子は同じ食卓についている。
となれば今度の声の主は別人であり、さらにいえば都庁の誰にも当てはまらない声だった。

「――敵か」

故に、先ほど以上に剣先を相手の喉元、首輪を刺し貫ける位置にまでもっていっていた。
予想通り、声の主は見知らぬ少女。だがDMC信者は老若男女を問わず大量に存在するため、油断はできない。
レストが纏う空気は、数瞬前までのそれとは別物であり、明らかな殺意が込められている。

「ち、違う違う! 私らは争う気はないんや! 信じて、というかせめてもう少し剣離してくれへん!?」

それに対する侵入者の少女は、あまりのできごとにガタガタと震えつつも両手を上げて敵意がないことを示した。
入口に積まれた膨大な数の屍、門番も巡回役もいなくなった都庁、そして激しい爆発エフェクトの起こる公園……
これは都庁になんらかの異変があったのではないかと思い乗り込み、そして話し声を聞き……
つい先走ってしまった結果このような仕打ちを受けたのは――

「私は本当に、本当に怪しい者じゃないんや!」
「まず鏡を見たらどうかなぁ?」

なんともふざけた格好の狸娘が一人、八神はやてであった。


……

「寿命縮まったでほんま……さっきまでの会話の様子と全然別人やんか……」
「いや、流石に一人突っ走ったはやて殿にも問題あると思うぞ?」
「都庁は危険だとほざいていたのは、どこのどいつだ?」
「まあまあ殺生丸君、抑えて抑えて」
「要するに君達は、空腹でいたところ、いい匂いがして誘われてやってきたと?」
「わかるっす。私も正直それに引き寄せられて起きたっすからね」
「その魚の塩焼きは特にうまそうじゃな。どうか、少しでいいから分けてもらえんかのう?」
「やれやれ……命知らずな君らに敬意を表して、少しは恵んであげるとするか」

はやて達、通称狸組は目の前の食卓に目を奪われていた。
やはり彼女らも空腹には勝てない……などというころではない。

『とりあえずおにぎり食べながら筆談続けてください。食事中なら多少言葉が減っても怪しまれない』
『先に見せた紙に書いた通り、俺達は対主催だ。主催陣営の情報もある程度握っている』
『すごいっすね。こっちは騎士様とレストさんの話を併せた、大気中の危険物に関する情報程度っす』
『それも気になるが、まずは首輪や。これさえ外せば普通に会話できるで』

その裏では筆談が行われており、卓上ではお互いの軽い情報交換が行われていた。
双方とも既に筆談を経験済みであるため、その動きは実に慣れたものとなっている。

『首輪の解除、もし本当に可能なら横で見せてもらえませんか? 回収したというサンプルのやつでいいんで』
『構わぬよ。わしらは安全地域を探しておったんじゃ。それじゃあ早いとこ、作業にかかろう』

「うまい、うまいでー!」『少し騒がしくして、博士の首輪解体音消しとこ』
「ワシ狸妖怪じゃし、ここに住めんかの!?」『了解じゃ』

「その隙の無さ、貴様本当に人間か?」『風鳴翼を倒したのが貴様なら、何故奴は生きている?』
「そんなことよりその尻尾もふっていいですか?」『それは首輪を外した後に』
「断る」『わかった』

そうこうしているうちに、ブリーフ博士が首輪の解体に成功した。
博士の予想通り、爆破の威力以外の作りは比較的簡素なものであった。
これは装備者の能力制限、規格外の相手でも殺せる爆破、盗聴、膨大な識別番号等々色々オプション詰め込みすぎたせいらしい。

『やはり盗聴器はあったが、カメラはないみたいじゃな』
『盗聴だけでも管理が大変でしょうし、カメラまであったら主催陣営の人員どれだけ必要になるんでしょうかね』

『これで10個目。思ったよりも楽じゃな』
『見たいですね。これ以上サンプルを解体する必要もないほどに。次、僕の首輪を外してくれませんか?』

そしていよいよ、首輪が機能している状態……生者の首輪を解除しにかかる。
ここで失敗すれば、どれだけレストがラスボスも真っ青な耐久力を持っていようが絶命する。
確かに都庁の良い噂は聞かなかったが、博士は先ほどまでのやりとりでレストを信じていた。
姿がぼやけて見えるが、一般人であろう女子高生を匿い、自分達にもこの場所を提供してくれている点も加味したうえで。
少なくとも、主催者を討つ力にはなってくれるだろうと。だからこそ、慎重に、慎重に工具を扱い……

そして


――カラン


小さく軽い音と共に、首輪は地に落ちた。

そしてそれと同時にレストが動く。
鞄の中から取り出したのは、氷漬けにされた人間の腕。風鳴翼との戦いで失った、レスト自身の腕だ。
あの時は蹴り飛ばしたものの、内部では氷竜がしっかりと回収し、保管していたのだ。
氷を火炎で溶かすと同時に、最大威力の治癒魔法も施す。

(よし、これで……!)

切断面にかけられる生命の息吹。
程なくして、右腕はくっついた。軽く拳を握っては開きを繰り返し、正常に機能することも確認する。

(次だ!)

蘇った右腕の感慨にふける間もなく、レストはすぐさま両手に道具を持ち、博士の首を狙う。

「!?」

用済みになって消されるのかと博士は一瞬考えたが、直後に響いた軽い音で現実に引き戻される。
今の一瞬の間で、博士の首輪をレストが外してみせたのだ。
そのまま彼は無言のまま手招きし、影の薄い少女にこっちにくるよう指示を出している。
あっけにとられるが、博士も同じようにはやて達を手招きした。


そして、複数の小さな音がすぐに響くのであった。


……


「驚いたのう。まさか、ワシよりも早くあんなに簡単に首輪を外して見せるとは」
「技巧、手先の器用さに関しては元々自信ありましたからね。
 機械の仕組みはわからなくても、正しい手本を一回でも見ることができればそれを真似すればいいだけです」
「都庁の門番が色々と規格外とは書かれておったが、ここまでとは驚きじゃな」
「なんにせよ、これで盗聴されることはなくなったで。早速本格的に情報交換や! ちょっとパソコン貸してや」
「出端をくじくね、僕らがそんなもの持ってるわけないだろ? ってそういえばサクヤが一台だけ持ってたっけ……」

しぶしぶといった様子ながらレストは一度席を外し、しばらくして麒麟の角と尻尾を生やした少女、サクヤを連れてきた。
眠っていたのか少しだけ目を擦っているが、既に首輪を外されており、脇にはノートパソコンをしっかりと抱えている。
世界樹と化した都庁において、最後の文明機器がこれだったりする。

「レスト様から事情は聞きました。レスト様の首輪を外してくださったお礼等色々と言いたいことはありますが……
 今は手短に情報交換と行きましょう。私が電源役になりますので、その間にパソコンをお使いください」

サクヤがパリパリと電気を流せば、パソコンが起動する。
そこにはやてがUSBメモリを挿し込み、主催者本部から持ち帰れた情報を曝け出していく。
九州ロボが粗悪品の塊であったことは過去の話なので、ここで主に役立つのは主催者陣営の情報と、TC観測値だ。

「ワシらが知っておる中で、バーダックは勿論として風見幽香は特にお主らにとっては強敵じゃろう。
 奴が持つ能力は植物を操る程度の能力、規模はわからんがもしかしたら、ここの世界樹も操作されてしまうかもしれんぞ」
「能力を使う前に潰してやればいいさ。バーダックの能力は?」
「彼らサイヤ人のエリートは、戦闘の規模が惑星破壊レベルじゃ。
 いくら力を加減したところで、普通の人間じゃまず歯が立たぬよ。もしかしたら戦闘力を50倍に上げるスーパーサイヤ人やも知れぬしな」
「元がどれだけの強さかで、大きく変わってきますね。まあ僕も瞬間攻撃力の底上げなら……
 装備品で常時2倍+食事の追加効果で2倍+いつもの正拳突きで4倍+ダオスさんのグリモアで1.4倍+サクヤの舞でさらに5倍。計112倍までいきますけど」
「なにそれこわいわぁ……」

今後主催陣営と戦うことになっても、仲間の援護さえあれば決して勝てない相手ではないと言ってのけるレストに、はやては思わず素直な感想を漏らす。
首輪を外した瞬間から感じ取っていたが、この青年の戦闘能力は底が知れない。
だからこそ余計に、あの風鳴翼への恐怖も増してしまうが。

「このTC値についてはワシらもわからなかった。しかし今回の事件で何らかの鍵となっているのは確かじゃろう」
「聞いたことのない単位っすね。実は、私達も謎の物質について調べているんすけど……」

狸組から情報が渡され、そして今度は影薄と都庁から情報が渡される。
混沌の騎士の最期の言葉からその存在を知り、都庁で放置できない危険物だとわかった謎の物質。
そのおおまかな効果にこそ辿りついたが、それに対する対処法までには至っていない。

「レストさんの予想では、その物質を溜め込みすぎた存在があの風鳴翼ってことみたいっす」
「これもあくまで僕の予想だけど、それは大気中だけじゃなくて飲み水にも入ってる。誰が狂ってもおかしくないよ」
「生物を狂暴化させ、最終的に怪物にする物質か……その情報は俺達も持っていないな」

その情報は、主催者本部に侵入した狸組ですら初耳のものだった。
しかしあの風鳴翼に関係しているとなると、わざわざ彼女を指名手配した主催者とも因縁がないとは言い切れない。
持ち帰れた情報も全てはないのだから、実は謎の物質についての情報もあったかもしれないのだが、今となっては確認はできないだろう。

「指名手配された彼女は、髪の毛の色が変わっていたし首輪もなくなっている。進化した元、風鳴翼と考えた方がいいだろうね。
 僕が戦った時点で、能力はあらゆる属性への強い耐性、龍に匹敵する牙、無数の剣の召喚、捕食行為による能力略奪と超再生があった。
 今なら報酬に釣られた参加者が喰われ続けて、より強くなっているのは確実かな」
「既に埼玉県庁付近は根こそぎそいつに殺されてしまったそうやからな……」
「水と空気に毒に近い物質を混入されているとなると、俺達も含めて全ての参加者の体内に少なからずそれは溜まっていることになるな。
 腰抜けの雑魚共を適当に喰い殺すだけでも、風鳴翼は物質の体内総量を増やし、どんどんと手のつけられない怪物になるわけか」
「そんな危険人物にバーダックや風見幽香をぶつけないで、ただの参加者を報酬を餌にぶつけさせるのは……」
「十中八九、主催者の本当の目的は風鳴翼の討伐ではなく、強化じゃな」

マミゾウの言葉で、その場の空気は重たくなった。
予想はしていたが、やはり風鳴翼の指名手配は罠であり、そもそも彼女の存在が主催者の計画の一部。
大災害と殺し合いで疲弊した生き残りたちを間引くためだけにしては、手が込みすぎている。
主催者の、本当の目的までたどりつけないという事実がもどかしくてたまらないと、全員が心の中で歯噛みした。

「TC値をその謎の物質の値と考えた場合、唯一数値の低かった日本の数値を上げるためと考えることはできるのう。
 じゃがTC値が高い場所はどこも大災害に呑み込まれておる。これでは、最後の日本も九州ロボもろとも沈んでしまう」
「謎の物質とTC値は別物と考えるなら、さらに謎が深まるばかりやで」
「なんにせよ、もたもたしている余裕はないということだ。戦力を整え、主催者を叩くのが一番早いと思うがな」
「確かに首輪がなくなった以上、禁止エリアの九州ロボには近寄れる。けど本拠地がその謎の物質で一杯やったら?
 最悪の場合、乗り込んだ仲間が狂って同士討ちって可能性もあるってことやろ? まずは謎の物質の正体をつかまんと」
「むぅぅ、せめてサンプルがあれば……「ありますよ、サンプル」なんじゃと!?」

床の上に乱暴に、何かの塊が投げ捨てられる。
それは、切断された右腕だった。しかし先ほどのレストのものではなく、彼が切り落とした別の人間のもの。

「――その風鳴翼の右腕。油断したとはいえ僕の腕を落とす程の力を手に入れた後の腕だから、件の物質はたっぷりかと」

「うっぷ……!? わざわざとっといたんかこんなもの!?」
「少し落ち着いたら、僕もこの腕にあれこれして調査するつもりだったからね。
 ただ予想外に僕らは忙しくなってしまって、今はこっちまで手が回せないんだ」
DMC狂信者か」
「その通り。彼らにとって一ヵ所に多くの生命が集まるこの世界樹は絶好の狩場だそうで。
 そのための迎撃、機を見て相手の本拠地を潰すとなると、ゆっくりと実験や解析をしている余裕はない」
「そのサンプルをワシらにくれる代わりに、解析も頼むということでいいのかの?」
「ええ。不本意ながら、その物質に関しては僕らの魔術よりもあなた方の科学の方が適任でしょうからね……
 流石にこの世界樹内だけじゃ、そういったものを調べるのには限界もあります」

すぐに首輪を外してもらう代わりに、そちらの首輪もすぐに外す。
貴重なサンプルを渡して邪魔なDMC信者は始末するから、謎の物質の調査は任せる。
情報交換の果ての、取引であった。

「それじゃあ、これは責任を持って扱わせてもらおうかの」
「ありがとうございます。それでは早速行動に移ってもらいたいので、出口へとご案内しましょう」
「うえ!? そこのご飯くれたり休ませてくれたりはしないんか!?」
「侵入者を始末しないで中に入れたとなれば、血の気の多い魔物が僕が説明するよりも早く君に噛みつくかもよ?
 僕はリーダーのダオスさんと違って、統率力はないからね。というか基本、自由にのびのび放任主義で個人の意思を尊重する。
 だからここの魔物がみんな人類抹殺を望んだら僕はそれに手を貸すし、逆に彼らも共存を願うなら……その場合はあの子の出番か」
「やれやれ、さすがにまだお主らを警戒しておるのはばれておったか。
 まああまり深くは考えないでもらいたいの。首輪を外したお主の力を警戒するなというのは無理な話じゃろ?」

半ば強引に、狸組は都庁の入口へと連れて行かれる。
しかしそのことへの文句はほとんど出てこず、あっという間に出口へと辿り着く。

「DMC狂信者がいつ来るかわからないんで、ここに次に来るにしても連中を壊滅させた後の方が安全でしょうね。
 あ、これは殺生丸さんへの餞別であげますよ。僕はもう新しく世界樹の剣を作ってあるんで」
「む……ほう、これは。ありがたく貰っておこう」

抜き身の大剣が殺生丸へと投げ渡され、それを受け取った殺生丸の口の端が和すかに上がる。
それを見届けると、用は済んだといわんばかりにレストは世界樹の中へと消えていった。



「ふぅ……なんとか無事首輪は外せたし、色々と情報も手に入ったけども、少しはゆっくりしたかったわ……」
「ワシもまたお茶会をしたいところじゃが、これを託されて主催者の目的がわかった以上はのんびりもしておられんの」
「奴程の実力者が、端々で焦りの感情を抱いていた。侵入者であった俺達を殺さずに支援までするとなると……」
「あの青年ももう気づいておるんじゃろ。しかしDMC信者のせいで本当に身動きがとれないと。
 だからこそワシらはまた託されたんじゃ。謎の物質の正体を探ることと、そして――第二第三の風鳴翼の誕生の阻止をな」

二日目・6時50分/東京都・東京都庁付近】
※情報交換により、風鳴翼(テラカオス・ディーヴァ)の能力の一部を知りました
※情報交換により、謎の物質(ナノマシン)の存在および危険性を知りました

【八神はやて@魔法戦記リリカルなのはForce】
【状態】健康、タヌキはやて、死んだ仲間たちへの悲しみ、首輪解除
【装備】シュベルトクロイツ@魔法少女リリカルなのは、タヌキスーツ@スーパーマリオシリーズ
【道具】基本支給品一式、夜天の書@魔法少女リリカルなのは、携帯電話、USBメモリ
【思考】基本:死んだ仲間たちや赤い翼のMSのパイロットの為にも主催を倒す
1:都庁は大丈夫だったけど、首相官邸はどうやろ?
2:主催者打倒のため、情報と仲間を集める
3:TC値に謎の物質に、まだまだわからんことばかりやな……
4:それにしてもこのスーツ、実に馴染むで!
※主催側が大災害について何か関与していると考えています(細かい部分は分かっていません)
※PSP版の技も使えます。
※カオスロワちゃんねるより、風鳴翼の情報を少し入手しました

【二ッ岩マミゾウ@東方project】
【状態】健康、主催たちへの憤り、首輪解除
【装備】なし
【道具】基本支給品一式、ギンガスパーク@ウルトラマンギンガ、
スパークドールズ(ザラブ星人、ババルウ星人、ダークガルベロス)
【思考】基本:殺し合いを止める
1:やはり首相官邸の黒いの(神樹)が気になる……
2:殺し合いを打破するために仲間を集める
3:大陸沈没の謎や謎の物質、TC値の正体を探る
4:一応都庁はまだ警戒対象
5:殺し合いによって博麗の巫女を殺した幽香は許さない
※主催側が大災害について何か関与していると考えています(細かい部分は分かっていません)
※霊夢が複数いることに気づいていません

【ウルトラマンタロウ(SD)@ウルトラマンギンガ】
【状態】健康、スパークドールズ状態、マミゾウのデイパックの中
【装備】なし
【道具】基本支給品一式
【思考】基本:殺し合いを止める
1:デイパックからまた出して欲しい。切実に
2:殺し合いを止めるために仲間を集める

【殺生丸@犬夜叉】
【状態】健康、首輪解除
【装備】天ノ村雲ノ剣
【道具】基本支給品一式 、不明支給品、回収した首輪×40
【思考】基本:自分に首輪をはめた主催者を葬る
1:主催者本部を攻めるため早急に戦力を整えたい
2:風鳴翼を警戒

【ブリーフ博士@ドラゴンボール】
【状態】健康、首輪解除
【装備】なし
【道具】基本支給品一式、機材一式、風鳴翼の右腕
【思考】基本:対主催
1:TC値と謎の物質の調査のために、自分以外の科学者とも合流したい
2:対主催参加者と出会えたら、首輪を外す
3:主催打破のためにベジータ君と合流したい
4:見た目はそっくりだったが、バーダックは孫くんの血縁者?
※首輪解除が可能となりました
※風鳴翼の右腕は四条化細胞とナノマシンの塊です。うまくいけば抽出できるかもしれません
※現在所持している道具では抽出不可。どこからか調達するか設備のある場所を訪問する必要があります

……

「帰しちゃってよかったんすか、博士さん達」
「いくら情報提供してくれたとはいえ、こちらをかなり警戒していたからね。
 博士以外は全員が戦えるし、デイパックからは不思議な力を感じる人形まではみ出ていた。
 割と冗談抜きで、誰かが襲いかかる可能性はあったと思うよ。まあ今の僕なら楽に捻れはするんだけど……
 彼らには、生きて頑張ってもらわないと困るんだよ」
「謎の物質のことっすか……」
「僕らは動けないし、世界樹は住居であって研究所じゃない。そしてあのブリーフ博士の科学者としての力は本物だった。
 世界樹の浄化能力で謎の物質を凌ぐのは時間稼ぎにしかならない以上、誰かが早く正体を突き止めないと……僕らは皆死んでしまう」

右腕を動かし続けていたレストが拳を握る。
震えるその拳は、武者震いなどではなく悔しさからくるものだ。
首輪の制限がなくなった彼の力は、神の域すら踏み越える程。それでいてなお、彼は己の無力を悔やんでいる。

「で、でもレストさん異様なまでに強いっすよね? 本当に腕も元に戻ったし、首輪だってない。主催者陣営の誰が相手でも……」
「ああ。確かに僕は強いと自負できる。装備も本気で作ったし、もう誰であろうと油断はしない。レベルも50000だ」
「ごまっ!?」
「逆に言ってしまえば、僕はこれ以上は強くなれない。対して風鳴翼は恐らく限界がないだろう。
 今は勝てても、時間が経てば経つほど誰も太刀打ちできなくなるだろうし、彼女の同類が増える可能性もあるからね……」

風鳴翼の進化、そしてさらに生まれる可能性のある同類の怪物。それこそが謎の物質を放置できない最大の理由だった。
いつか誰も敵わない途方もない怪物が生まれるよりも先に謎の物質の正体を突き止め、それの特効薬を作る。
そのためにはなりふりなど構っている余裕はなく、だからこそ狸組に重要な証拠であろう風鳴翼の右腕を託したのだ。

「レスト様、どうかお一人でお悩みにならないでください。私も、微力ながら手助けをさせていただきます」
「サクヤさんの言うとおりっすよ。私や小町さん、重火器魔法少女さんもいるっすよ!」
「……ありがとう。しかしサクヤはともかくモモ、君は首輪を外した状態の僕を見ても恐怖を感じはしないのかい?」
「んー、多分私が戦闘はからっきしなせいもあると思うんすけど、一種の慣れもあるかもしれないっす。
 元々ここの魔物も言うほど怖くは感じなかったんすけど、それは清澄の嶺上さんのせいかもっすね。
 麻雀やってると魔物のような人に結構でくわすんすけど、あの人はクラウザーさんとは違った意味で魔王って言葉が相応しかったっすから」
「長野もグンマ―とは違った意味で魔境のようだね……」


                 その時、地面が激しく揺れた

「きゃっ、この揺れは……!?」

揺れは激しさを増し、不定期に発生した。
ほぼ真下から広がるこの揺れの正体はフォレスト・セルのものに間違いない。
都庁の守りを手薄にしてまで、制御のために主力を向かわせてこの揺れが発生するということは……

「……最悪、風鳴翼とかよりも先にこっちの問題を解決する羽目になるかもね」

【二日目・7時00分/東京都・東京都庁内部】
※情報交換により、主催者陣営の情報を取得しました
※情報交換により、TC値の存在をしりました。

【レスト@ルーンファクトリー4】
【状態】健康、全属性攻撃吸収、物理&無属性攻撃88%軽減、攻撃無効化率50%、サクヤの飼い主、首輪解除
【装備】最大錬成世界樹ノ剣、最大錬成防具、草原のペンダント
【道具】支給品一式、不明品、封じられた闇核
【思考】
基本:都庁の軍勢を守りつつ星の自然環境改善
0:フォレスト・セルが暴走した際に備える
1:影薄三人は助ける
2:謎の物質への対抗策を早く見つけたい
3:機械っぽい外見の奴とDMC信者は問答無用で潰す
4:鬼灯を警戒。協力はするが、狸組も一応警戒
5:フォレスト・セル対処後、他の仲間の首輪も外す
6:あわよくば竜と結婚できる世界を作りたい
※都庁の世界樹はナノマシンの浄化も可能ですが、限度があります
※ブリーフ博士の技を覚え、首輪解除が可能となりました

【東横桃子@咲-Saki-】
【状態】健康、混乱、首輪解除
【装備】斬鉄剣@ルパン三世
【道具】支給品一式、スマホ、謎の物質考察メモ、筆記用具
【思考】基本:仲間と共にカオスロワを終わらせる
0:自分も役に立ちたいが、この状況はどうしようもないっす……
1:加治木先輩や友人たちと生き残る
2:スマホを使ってネットで情報を探る
3:DMCファンだけど信者の暴動にはドン引き

【聖煌天の麒麟・サクヤ@パズドラ】
【状態】健康、調教済み、首輪解除
【装備】巨大棘鉄球×2
【道具】支給品一式、スマホ、都知事のパソコン
【思考】
基本:レストに服従
0:戦闘の際はレストの援護を心がける
1:ネットに疎い主に代わり情報収集
2:オオナズチにはいずれお返しする
※パソコン等の電気機器の電源代わりになります
※パソコン内に、主催者陣営の情報とTC値を示す動画が保存されました
最終更新:2014年09月23日 16:50