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時刻は9時前。
ここは巨大な世界樹と化した東京都庁の地下北部。
影薄組がセルベリア・トキを中心としたDMC狂信者の陽動部隊と戦闘を繰り広げていた頃、こちらでもDMC狂信者の一団による襲撃を受けていた。
地下から侵入した部隊はセルベリア・トキの一つだけではなかったのである。

「「「SATUGAIセヨ!! SATUGAIセヨ!!」」」

ざっと見て50人以上は確実にいるであろう人数の狂信者達が地下北部に侵攻してきていた。
それぞれが武装した銃、もしくは死に物狂いで鍛錬を積んで覚えた魔法や格闘技でダンジョンに破壊をもたらしている。
だが、これに対して黙って見過ごす都庁の軍勢ではない。
世界樹に爆弾を仕掛けんとする貴虎捜索に出ていた者達の中である三匹が騒ぎを聞きつけ、狂信者討伐のために北部に現れたのだ。


『シャアアアアア!! ブラインドブレード!!』
「目が、目が~!?」

FOEの一角にして、都庁の守護者の一匹、アイスシザース。
デスマンティス達につけられた傷もとうに癒え、万全の状態でモブ狂信者達を死に誘う大鎌を振るう。

『力溜め……からの荒れ狂う爪牙だクマッ!!』
「うおおおおお!? クラウザーさん万~歳!!」

さらにFOEの一角であり、かつて都庁の門番であった熊、魂の裁断者。
風鳴翼とぼのぼのに深手を負わされ一時的に戦線を引いていたが、レストの治療の甲斐もあり、つい先ほど復活を果たす。
門番の役目こそレストに譲ったが、世界樹を守る役目は現在も同じであり、世界樹を侵さんとする狂信者達をその爪で容赦なく裁断していく。

そして。

『我が吐息で灰になるがいい! サンダーブレスッ!!』
「「「ぎゃああああああああああ」」」

大量の狂信者を雷撃のブレスで宣言通りに灰にしたのは、都庁の軍勢の元リーダーである雷竜。
雷鳴と共に現る者、雷竜クランヴァリネである。
今でこそ純粋な実力や指揮能力の差、そして信頼に値する者としてリーダーの座をダオスに譲ったが、その実力は今でも都庁の軍勢上位クラスである。
少なくとも、メギドを覚えた程度のモブ狂信者に敗れることはないであろう。

雷竜、アイスシザース、裁断者。
この三匹が現場に駆けつけ、狂信者達の進軍を押し止めていた。

『こいつら、クマを喰おうとした貧乳の女やラッコほど強い奴はいないみたいクマ! いけるクマー!!』
『油断するな裁断者! おまえは復帰したての病み上がりなんだからな』
『だが、我々にとって大切な住処である世界樹である都庁に土足で足を踏み入れたこやつらの罪は重い。
この中にはどうやら貴虎に該当する輩はいないようだが、破壊工作を手伝おうとしているのは明らかだ。
みすみす見逃して被害を拡大させるわけにもいかん。
アイスシザース! 裁断者! 必ずや、こやつらを皆殺しにするぞ!!』
『『応ッ!!』』

長の声に応じ、二匹のFOEは士気を上げた。
それに比例して地下の一角に狂信者の死体が次々と積み重なっていった。


狂信者側は数こそ圧倒的に多いが、三匹の実力に及ぶ戦力は持っていないようだ。
こちらには南部側に出現したセルベリアやトキのような実力者はいないようであり、三匹による駆逐は容易に可能と見られていた。




そう……何事も起こらなければ。




それは、彼らと狂信者との戦闘中……唐突にやってきた。


『次は呪縛の円……なに!? こんな時に地震だと!?』

突然に、彼らのいる世界樹の地下が揺れだした。
知らぬ者、魔力の動きがわからぬ者にはただの地震と思うかもしれない。
実際には同時刻に大和の召喚した龍が世界樹に攻撃を仕掛け、世界樹そのものが攻撃を受けたことによる余波が地下に響いているのである。

『……いや、違う。これは地上が攻撃を受けているのか!?』
『わかるのですか雷竜様?!』
『地上が攻撃を受けているですとクマ?!』
『この魔力の大きさ……まずい!! これは果たして地上に戻るべきか?』

地上から磁波もしくは多大な魔力の動きを読み取り、雷竜は地上が攻撃を受けていると結論づけた。
フォレスト・セルに結界やミザールなど、二重三重の防衛手段があるにも関わらず世界樹が打撃を受けた事実は、三匹を戦慄させるには十分であった。
狂信者側もこの地震に対して何か思い当たる節があるのか、退却を始めだした。
それを踏まえて、雷竜の脳裏に地上に引き返すべきであろうか、という疑問符が頭をよぎる。
しかし、彼らが行動を起こすより早く、ダンジョンの天井から大量の土砂と落石が三匹の頭上に降り注いできた。

『危ない!! 落盤だ!!』
『うおおおおおおお!!』
『クマァーーーーーーーーーーー!?』

防御手段を持たない三匹と、逃げ遅れた狂信者が落石と土砂に飲み込まれていった……





『……ようやく収まったか』

やがて大地震は収まり、土砂と落石の雨が止んだ。
その雨を雷竜はその身に受けたが、命に別状はなく、大したダメージは受けなかった。
落石によってダメージは受けはしたものの雷竜の防御力と耐久力でこれを凌いだのである。
土砂崩れや落盤程度で命を落とさなかった点は流石は都庁の軍勢を率いていただけの存在であると言えよう。

『くッ、怪我は大したことはないが……身動きがとれん……!』

しかし、ダメージこそ少ないものの、完全に無事で済んだとは言えなかった。
頭を除いた全ての部位が、不運にも土砂に巻き込まれて埋もれてしまったのだ。
今の雷竜は首以外は動かすことができないでいる。

『せめて私にも氷嵐の支配者のようなミラーシールドが使えれば……こんなことにはならなかっただろうに……
たらればを吐いてもしょうがないが……フンッこのッ動けッ! ……ダメか』

必死にもがいて脱出を図ろうとするも、爪一つ動かすこともできない。
相当な量と重さの土砂が積もっているのか、雷竜の力をもってしても自力脱出は不可能であり、抜け出すには他者の手を借りる必要がありそうだ。

『うむ、一緒にいたアイスシザースと裁断者は無事だろうか?
死んでるとは思いたくはないが……ん?』

するとそこへ、ダンジョンの闇の奥から一匹の熊が現れた……裁断者だ。
どうやらあの落盤の中で雷竜同様生き残れたらしい。

『魂の裁断者! 無事でだったか!』
『……』
『すまぬが助けてくれまいか? この通り身動きがとれんのだ』

雷竜は部下である魔物に助けを請う。
何をするにしても埋もれた体を出す必要があり、そのためには裁断者の協力が必要であるからだ。

『……』
『裁断者……?』

しかし、助けを求められた裁断者は返事をしない。



そして、僅かな間の後に、雷竜は裁断者の異常にいよいよ気がつくのであった。

『!!?』

よく見ると裁断者の頭部が凹の形にヘコんでいた。
二つの目からは眼球と脳漿が飛び出している。
裁断者は既に死んでいた……


【魂の裁断者@新・世界樹の迷宮 ミレニアムの少女 死亡確認】




「やったDEATH! クラウザーさんに生贄を更に一匹捧げることができたDEATH!」

裁断者の巨体がズシンと前のめりに倒れると、そこから血のついたギターを抱えた黒髪ツインテールの女子高生が現れた。
ギターによる48の殺人技の使い手にして狂信者の一人、中野梓だ。
ギターに真新しい血糊がついているところからして、裁断者を殺害した下手人は彼女であることを示していた。
更に先ほど雷竜達と戦っていたモブ狂信者達が数人ほど梓のバックについていた。

『狂信者共……まだ残っていたか!』
「おや、首から下が埋まっているようDEATHね。
都庁の軍勢のリーダーらしい竜を討ち取ったとあらば、大功績DEATH!
逃げ道が塞がった時はヤバイと思いましたが、怪我の功名って奴DEATHね!」

この北部に現れた狂信者の部隊も、セルベリアが率いていた部隊同様、ディーから与えられた任務は陽動であった。
本当ならば、狭間と大和が配置についた時点で退却する手筈だったが、梓と数人のモブ狂信者達は逃げ遅れてしまった。
しかし、引き返してみれば傷ついたFOEと動けなくなった雷竜を討ち取るまたとない機会に遭遇したのだ。
雷竜にとっての不運は、梓ら狂信者達にとっての僥倖であった。

『おのれ! よくも裁断者を! サンダーブレスで灰燼に帰すがいい!!』

雷竜は首以外身動きが取れない状態でも臆すことなく、狂信者達に雷のブレスを吹きつけようとする。
しかし……それより早く、梓のギターが雷竜の顎に強烈な一撃を放って口を強引に閉じさせ、ブレスを阻止した。

『グガアアアッ!!』
「ふう……危ない危ない。
事前にモブ狂信者の人にタルカジャとスクカジャを目一杯かけてもらって正解でした」
『こ、これだからロリは嫌いだ……!』

梓やモブ狂信者は狭間から教わった攻撃力を上げる魔法・タルカジャと、素早さを上げる魔法・スクカジャによって肉体を強化していた。
機動力は雷竜がブレスを吐くより早くなり、一撃一撃が雷竜に通用するほどの威力を獲得していた。
逆に雷竜は埋もれていて身動きができず、敵の攻撃を一切回避することができず、首以外の部位に依存する「竜の鉄槌」や「呪縛の円舞」などの技で反撃することができないでいた。
首があれば「サンダーブレス」と「古龍の呪撃」は使えるが、攻撃する前に梓達に阻止されてしまうのだ。

雷竜が万全であれば、梓+モブ狂信者のひと束程度など苦もなく駆逐できるだろう。
しかし今の雷竜は本来の実力を発揮できない不利な状態で戦わなければいけないのだ。


それからの展開は至極一方的であった。


「さあ皆さん! クラウザーさんのためにこの雷竜を生贄に捧ぐのDEATH!!」

拳や蹴りなどの狂信者の鍛えられた格闘技が雷竜の頭部にクリーンヒットする。

『ぐがッ!』

マシンガンやライフルなどで武装した狂信者より放たれた銃弾が雷竜の頭部に降り注ぐ。

『ふぐッ!!』

「アギダイン」「ブフダイン」「メギド」という狂信者の詠唱と同時に魔法による一斉射撃が雷龍に襲いかかる。

『があッ!!』

一方的に攻撃を受け続けた雷竜は苦くるしい顔で狂信者達を睨みつけ、諦めずにサンダーブレスで反撃を試みる。

「お口は閉じてなさい!!」
『ぐああああああああッ!!』

だが、反撃は許さんとばかりに、攻撃をしようものなら梓のギターが叩きつけられる。
もはや、これは戦いではない。リンチか拷問と言った方が正しいだろう。
一撃一撃を食らうたび、雷竜の体力がゴリゴリと削られていった。


『この私がこの程度の輩に何もできないだと? おのれぇ!!』
「さて、そろそろトドメといきますか」

最後に梓が雷竜の頭に向けてギターを振り上げ、腕一杯に力を込めた。
そして、振り下ろす直前にボソボソと呟く。


「……唯先輩も澪先輩も死んじゃって、ムギ先輩は悪い奴らとつるんじゃって……
こんな最悪な世界、クラウザーさん無しじゃもう私、生きていける気がしないんですよ。



だから……クラウザーさん復活のために死んでください!! DEATHゥッーーーーー!!」
『うぐああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁ……』



タルカジャで強化され、なお威力を増した梓の最大限の一撃が、雷竜の脳天に振り下ろされた。

その一撃が、雷竜の中で切れてはいけない糸を、プッツリと切ってしまった……
雷竜の目から生気が急速に失われ、その長い首がぐったりと地面に横たわった……



「殺った! やりましたよクラウザーさーーーん!!」

雷竜とは対照的に狂信者側は歓声に湧く。
都庁の軍勢の元リーダー格である雷竜を、偶然が重なったとはいえこの手で討ち取ることができたのだから、当然と言えば当然であった。





しかし、その歓声もまた、一瞬の出来事であった。

『氷鎌……乱舞!!』

モブ狂信者達の首や胴がスパパパパーンと、一瞬にして宙を舞った。

「DEATH?」

仲間の歓声が突然消えたのを不思議に思い、梓は振り返った。

そこにはFOE・アイスシザースが自分に向けて鎌を向けていた。

『凍土の大鎌!!』

次の瞬間には、即死属性の一撃が梓の首を捉えた。
梓は己の死を理解する暇もまま、絶命し、はねられた首がバレーボールのように宙を舞った。

【中野梓@けいおん! 死亡確認】



『雷竜様ッーーー!!』

狂信者を全て斬殺したアイスシザースは大急ぎで雷竜に元に詰め寄った。
アイスシザースは雷竜同様、土砂に埋もれていたが、自力で脱出できたのだ。
さらに土砂に埋もれていた結果、今まで狂信者達に感知されなかった。
だが土砂から脱出した矢先に見たのは、殺害された裁断者と虫の息の雷竜、勝利に酔っていた狂信者達であった。
そして彼は敵が自分に気が付いてない点と勝利に酔ってる最大の隙をつき、狂信者達を奇襲で全滅させたのだ。

『アイスシザース……生きていたのか……』
『申し訳ございません、私が落盤に巻き込まれず、もっと早く脱出できていればこんなことには……』
『そう…自分を責めずとも良い……』

息も絶え絶えの状態で、アイスシザースに語りかける雷竜。
アイスシザースは自分の救援が遅れたことを強く後悔していたが、雷竜はそんな彼を恨むことはせず、むしろ生きていたことを喜び、微かに微笑んでいた。

『ア、アイスシザース、私はもうダメなようだ……』
『そんな……!』

雷竜は頭部に致命傷を受け、もうすぐ己の命が限界を迎えようとしていることを悟っていた。

『すぐに怪我を治せる者をお呼びします! 世界樹の巫女やレストなら一瞬で治せるでしょう』
『間に合わんよ……それに先ほど感知した魔力の動きから察するに、巫女とレストは地上で戦っているようだ』
『なんと……』
『彼女らの戦いを……邪魔するわけにもいかんしな……』

超大な回復魔法持つまどかとレストはエリカと歪みし豊穣の神樹の回復のために地上に戻り、そのまま狂信者の大軍団との戦闘に入ってしまった。
さやかはおそらくまだ地上に残っており、地下で貴虎捜索に向かった者達の中に回復魔法を使える者もいない。
仮に使えても、周囲には雷竜とアイスシザースしかおらず、まず治療は間に合わないだろうというのが雷竜の見解だった。

『せ、せめて最期に一度くらい……美しい人妻熟女を見ながら、熟女に注がれた酒を飲みたかったが……な……』
『馬鹿なことを言わないでください!
トップの座は他者に譲ったとしても、あなたは我らが軍勢に必要な方なのですから!』
『その言葉を聞けただけでも嬉しいぞ……アイスシザース……』

雷竜の声が徐々に力をなくし、弱まっていく。

『親友たる氷竜や赤竜、ダオ…ス殿達には本、当に申し訳ないが、私はここまでだ……
……魔物と、共に生きてくれる良き人、間の未来のためにも、世界樹だけは絶対に守ってくれ……』
『雷竜様?』
『…………』
『雷竜様ァァァァァーーーーーッ!!!』


そして、人妻熟女と酒が大好きな誇り高き魔物の長、雷鳴と共に現る者は永遠の眠りについた。


【雷鳴と共に現る者@新・世界樹の迷宮 ミレニアムの少女 死亡確認】




『……雷竜様……この世界樹を守る役目、必ずや全うして見せます! この命に代えても!』

雷竜の死はショックではあるが、だからと言って踏みとどまっているわけにもアイスシザースはいかなかった。
今こうしている間にも、この地下ではどこかで爆弾を仕掛けようとする輩が侵入し、地上では大規模な戦闘が行われている以上、自分だけ立ち止まっているわけにもいかないであろう。

『本当は今からでも墓の一つでも建てて上げたいところですが、申し訳ありません雷竜様。
裁断者もスマン、後で必ず建てるから許してくれ』

事態が切羽詰まっている以上、雷竜と裁断者の死体は野晒しにするしかなかった。
今は単純な死体処理ですらやる時間がないのである。
死者を悼む時間すら与えられてない現状にアイスシザースは歯噛みする。

(落盤で多少のダメージは受けたが、戦う分には問題あるまい。貴虎捜しに戻ろう。
地上もとても気になるところだが、地上にはフォレスト・セルや巫女殿達もいる……きっと大丈夫、というよりフォレスト・セルですら止められないなら俺が行っても足でまといだろう、今は勝利を信じるしかない)

幸いにも落盤でダンジョンの部屋に閉じ込められてしまった影薄組とは違い、こちらには退路が残っていた。
その道からアイスシザースは貴虎捜索に戻っていった。

(仲間達は無事だろうか……特に骨竜には無事でいて欲しいが)

目の前で雷竜と裁断者が死なれたこともあり、仲間の身を案じるアイスシザース。
しかし、不幸なことに、既に地上・地下共に少なくない犠牲者が出ており、FOE仲間である死を呼ぶ骨竜は貴虎一行に既に討ち取られていることを、彼はまだ知らない。



二日目・9時30分/東京・都庁地下北部】

【アイスシザース@新・世界樹の迷宮 ミレニアムの少女】
【状態】ダメージ(中)、疲労(中)
【装備】無し
【道具】ちりとり、支給品一式
【思考】
基本:都庁を住処にしたモンスター達と協力して生き残る
0:引き続き貴虎を探す
1:雷竜様(雷鳴と共に現る者)の意思を引き継ぎ、都庁の世界樹は死んでも守る
2:魔物を奴隷にする人間は嫌いだが、同盟の人間なら一応は信頼する
3:デスマンティス達の裏切りに未だにショックを受けてるが、戦いに私情は挟まないようにする
4:他の仲間は大丈夫だろうか?(特に死を呼ぶ骨竜)
※雷鳴と共に現る者より、地上が攻撃を受けていることを知りました
最終更新:2016年01月15日 18:18