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拳王連合軍が一部例外を除いて誰もいなくなった死国。
その内部ではネオクライシス帝国御一行の一人と一匹、拳王連合軍に取り残された複数のデカオが探索していた。
ロリの霧切は、祐一郎ならばカオスロワの謎、予言の謎、ひいてはこの世界に起きている謎について何か知っているのではないかと思い、医務室にいる友紀にクライシス皇帝を任せて探索に踏み切ったのだ。

まずは手近な個室から調べたが、ここまで収穫はなし。
これから入るのは死国の格納庫である。
格納庫――そこは拳王連合軍の主力兵器であるバスターガンダムが配備され、高速艇が作られていた場所。
……そして祐一郎ら漢達が果敢に戦い、散っていった場所でもある。


「「「ううううう……」」」

格納庫にはバラバラになった死体やパーツがいくつも転がり、凄惨を極めていた。
放送で既に知っていたとはいえ、知り合いである祐一郎・シュトロハイム・アドラーの死にデカオ達は改めて大いに悲しむ。

「デカオくん……悲しんでいるところで悪いんだけど、手がかりを探すのを手伝って」
「泣いたりしてる時間が勿体ないよ」
「「「うん、わかった!」」」

霧切は酷だとは思いながら、キュゥべえは特に何とも思わず、デカオに泣くのを止めさせて探索を手伝わせる。
デカオも思考速度が6倍になっているので、立ち直りの速さも6倍になっていた。
あまりに早すぎて霧切がちょっと呆れたのは秘密である。

そして霧切達は探索を始める。
これから兵器や道具を作るために集められた資源やガラクタ。
先刻破壊されたバスターガンダムに積む予定だったMS用新兵器の数々。
翔鶴の他に建造される予定だった新型艦むすの設計図数枚(ほとんど焼失)。
後は焼死体とジャンクになった漢達の亡骸。
色々なものが目を引くが残念ながら、ここにも霧切の求める手がかりはなしかと思われた。

「ん……何かしらコレ?」

しかし、霧切の観察眼が祐一郎と雷電が爆死してクレーター状になった床の上に光るものを見つけた。
黒くて小さな箱であり、霧切がそれを手に取る。
見ると箱には『祐一郎の大事な黒箱(はぁと)』と書かれている。

「え……なにこれ?」
「「「ああそれ、祐一郎さんのブラックボックスじゃん!」」」
「ブラックボックス!?」

箱を拾って見た霧切は困惑したが、デカオによるとこれは旅客機や戦闘機に積んでいるものと同じ記憶収集装置であるブラックボックスだそうだ。

「「「祐一郎さんが俺に言ってたよ!
保険として脳内にブラックボックスを仕込んでおくって。
そうすれば万が一自分が死んだ時に、自分の技術や記憶を後世に残せるんだってね」」」
「へぇー」
「な、なるほど……」

祐一郎はサイボーグ化していたが故に脳にブラックボックスを仕込むことができた。
自分が死んでも技術と記憶は遺せるようにするために。
雷電に脳みそを真っ二つにされて自爆した祐一郎だが、このブラックボックスだけは奇跡的に破損を免れたようだ。
残念ながら息子の熱斗やラオウ達は脱出で忙しかったために見逃してしまったが、巡り巡って霧切に発見されるのだった。

「なんにせよ記憶を内包しているってことは私の知りたい情報もあるかもしれないってことよね」
「「「拳王連合軍の無実も証明できるかも?」」」
「とりあえずの目的は達成だね」

ブラックボックスには祐一郎の記憶が詰まっている。
ということはこの殺し合いの謎を解く鍵になるかもしれないのだ。
それだけでなく祐一郎の記憶を再生してネットに流せれば対主催の拳王連合軍がマーダー扱いを受けている誤解や風評被害を解くことができるとデカオ達は大いに期待する。

「響子、よく見て。このブラックボックスの端子になっている部分が持っているノートパソコンに繋がりそうだよ」
「本当ね、これなら……」

祐一郎はブラックボックスをどんな端末でも繋げるように端子をUSBと同じものを用いていた。
霧切の所持しているノートパソコンと繋ぐことも不可能ではない。
さっそく情報をみるために霧切はディパックからノートパソコンを取り出し、ブラックボックスと繋ごうとする。



その時である。
死国の外で凄まじい轟音が鳴り響いたのは。

「なに?!」
「外からだ」
「「「嫌な予感がする。ユッキおばさんのいる医務室まで戻ろう」」」

突然の轟音に霧切はノートパソコンとブラックボックスを繋ぐ作業を中断する。
外で何かが起きている。
そう、確信した一人と一匹とデカオ達は大急ぎで医務室、及び、死国の甲板に作られたドームに向かった。






時間は少し遡り、甲板に作られた死国ドームに付随された医務室。
そこではハクメンによって傷を負い、患部に包帯が巻かれ、未だに眠っているクライシス皇帝を看病している一人のデカオ(霧切と一緒に死国探索に出かけたデカオ達と分離した個体)がいた。

「……ユッキおばさん、どこまで行っちゃたんだよ」

その医務室にはいるはずのユッキこと友紀の姿はなかった。
なんでも霧切とは違う探し物があると言って、クライシス皇帝の介抱をデカオに押し付けて医務室から勝手に出かけてしまったのだ。
十数分経っても戻ってこないユッキに愚痴をたれるのも無理はなかった。

「おまたせーー! はぁ~重かった」
「遅いよ、どこまで行ってたんだよ」

愚痴を漏らしていたらすぐにユッキは戻ってきた。
手に大きなバズーカらしきものを抱えて。
それを見た瞬間、デカオの目が見開く。

「ゆ、ユッキおばさん、それ持ってきちゃったの?」
「なんで? これからのことを考えたら武器は必要でしょ?
てゆーか、おばさんゆうな。まだ二十歳よ」
「いや、それは……」

ユッキは予言にある歌姫や最良の戦士のみならず、風鳴翼(テラカオス・ディーヴァ)を倒して予言の不屈の勇者になる野望を抱いていた。
翼は仲間である弦十郎が必死に止めようとしている姪なのに殺しても大丈夫なのかというツッコミは彼女は聞かない。正当防衛を言い訳に殺す気なのだから。
そのために死国で強力な武器を探し求め、霧切達には秘密で探索した。
だが、主砲はホワイトベース組のラーメンマン達の手によって全て大破しており、使用不能であった。
しかし艦橋の隅っこで一つのやたら大きなバズーカを発見した。
何やらテープで厳重にグルグル巻きされていたが故障している様子もなく、ユッキは巻かれていたテープを全部外して艦橋から持ち出したのだった。
デカオはその武器に何やら見覚えがあるのか、何やら口どもっているが。

『二人共』
「ん? どうしたガッツマン?」
『静かに身を潜めているでガス。奴がくるでガス』
「奴って?」
『……風鳴翼でガス』
「「!?」」

ユッキが戻ってからすぐだろう。
上空を飛んでいた風鳴翼をガッツマンが捕捉したのは。
ガッツマンの指示通り、二人はクライシス皇帝ごと医務室の壁に身を隠す。

「おい、ガッツマン。風鳴翼が飛べるなんて聞いてないぞ!?」
『いや、ワガハイに聞かれても……』
「でもあの顔と貧乳っぷりは弦十郎さんから聞いていた通り……食人鬼の風鳴翼ちゃんで間違いないわ」

上空を優雅に、そして飛んだあとの地上にフロワロという毒花を撒き散らしながら風鳴翼――テラカオス・ディーヴァは翼をはためかせて大阪の上空を飛んでいた。

「……こっちに気づいてないのか?」
『あるいはあえてこっちを無視しているでガスな』

ディーヴァは死国にいるこっちに見向きもしている様子がなかった。
彼女の探知能力なら捕捉自体はできているだろうが、デカオやユッキ達の戦闘力が低すぎるのとメインディッシュである拳王連合軍を急いで追わなくてはならないので、あえて無視しているのだ。
それは戦闘力の低いデカオ達にとっては都合が良かった。
上手くいけばこのままやり過ごせるだあろう。
彼女の通った後に咲いている花が気になるが、屋内である死国に引きこもっていればおそらく害はないだろう。
デカオは安全のためにひたすら目立たず隠れていることに決めた。

「熱斗もラおじさんもいないし、無視してくれるならありがたいぜ。
後はアイツの気を引かないように……」
「よ~し、今だ!」
「って、ユッキおばさん何やってんの!?」

隠れてやり過ごそうとしたデカオに対し、ユッキは拾ってきたバズーカを手に持って医務室から屋外の野球ドームへと飛び出した。

「やめるんだユッキおばさん! そのバズーカは撃っちゃいけない!」

デカオは食人鬼に見つかる危険(ついでにバズーカの危険性を知っていたために)を考慮してユッキを医務室へ戻そうとするが、彼女は一切聞く耳を持っていなかった。


(私が予言の中にある勇者になれるこのチャンスを逃してたまるもんですか!
志半ばで散ったハラサンのために……






そして! アイドルの私が救済の予言を完遂して世界から敬われ、知名度急上昇大人気アイドルになるために!!)

ユッキが予言の内容を完遂しようとしているきっかけは、彼女が大正義巨人軍及びハラサンのファンであり、この殺し合いで死んでしまったハラサンの意思を引き継ぐためであるのは間違いではない。
だがそれはきっかけに過ぎなかった。
彼女の真の目的は救済の予言の完遂して世界を救った偉業による、知名度と人気爆上げである。
確かに世界を救ったと救世主であれば敬われるのは間違いではない。

実は彼女は現役アイドルの中では知名度・人気共に低く、そのことに悩んでいた。
売上や実力などでは諸星きらりの1/10にも満たないと言われ、ボーカロイドの中では歌の実力と素行が最低クラスに位置するMEIKOにすら人気で劣ると言われていた。
ついでに彼女の同人誌も手が二本あれば数え切れるほどしかない。
このままでは事務所をクビになるか枕要員になるのは自明の理であるとわかった彼女は救済の予言に縋ったのである。
要するに彼女は世界を救いたいのではなく、世界を救った実績が欲しいのである。

そのような野望を胸にユッキはそれを飛ぶ風鳴翼をロックオンし、気合と共にバズーカを発射した。

「かっ飛ばしていこーーー!!」

ちなみに彼女の持っているバズーカ砲の名前は『チサオ砲』。
ダイアーさんの波紋を込めた大山チサオを弾丸にしたことで、実は死国では最強の威力を秘めた兵器だった。
しかし「威力が高すぎる」という理由で祐一郎自らが封印していたのである。
その封印はユッキに解かれ、最凶のマーダーである空飛ぶ食人鬼に使われた。
ちなみに弾丸にされて飛んでいく弟の姿を見てデカオは絶叫する。

「チサオおおおおおおおおおーーーッ!!」


マッハを超える速度で上空の風鳴翼に向かっていくチサオ弾。
風鳴翼ことディーヴァは突然発射されたチサオを避けられ



ひょいッ

「あれ?」



――ないわけがなかった。
ただでも多くの参加者を喰らって運動能力が増してる上に人類を遥かに超越した嗅覚や聴力による索敵能力を持つ彼女には戦闘の素人が撃った弾を体をちょっとひねって躱すぐらい簡単だった。


しかし、飛んでいったチサオ弾はそのまま京都方面に落ち。


「「「あ」」」


轟音と共に大阪からでも見えるくらいの大きなキノコ雲が京都から上がった。
京都消滅の瞬間。
それを見た三人は思わず開いた口が塞がらなくなった。

【京都】 消滅
【京都にいたモブ参加者】 全滅


「あちゃー……やっちゃった」
「やっちゃったじゃないでしょ!? どうすんの!!」
「姫川さん! 何があったの?!」
「あそこで上がっているキノコ雲、なんだか嫌な予感しかしないんだけど」
「「「あー! チサオ砲を使いやがったな!?」」」

チサオ砲の威力に呆気にとられるユッキに、騒ぎを聞きつけた霧切とキュゥべえにデカオ軍団が探索を中断して医務室に駆けつける。

「それよりもヤバいよ!
ファッキューユッキのせいでこの場所が食人鬼にバレた!」
「なんですって!?」
「ファッキューユッキって何よ!」
「「「正当な評価だろ!!」」」
「喧嘩してる場合じゃないよ、奴が空にいる内に逃げなきゃ」

ユッキの奇襲失敗のせいで死国に潜伏している自分達の所在がバレてしまった。
風鳴翼は自分を殺そうとした霧切達に対して報復してくるだろう。
ここには南光太郎もお空も矢車も弦十郎のような戦える者がいない。
戦闘要員のクライシス皇帝は未だに気絶中である。
デカオ? 何匹いても戦力にならん。
霧切達にできるのは逃げるだけであった。


「ええい、まだ予言の一つも成してないのにこんなところじゃ死ねな……がはッ!?」
「「「!?」」」

一目散に逃げようとしたユッキだったが、その首根っこが後ろから何者かに掴まれた。

「さっきから聞こえてきた会話からして、私を撃とうとしたのはおまえか?」

ユッキの首根っこを掴んだのは風鳴翼――テラカオス・ディーヴァであった。
彼女が目の前に現れた瞬間、動けないユッキを除いた全員が彼女から距離を取った。


「風鳴翼!?」
「馬鹿な! 今さっきまであそこにいたハズ……」
「「「超スピード!?」」」

上空にいたディーヴァがいつの間にか自分達の目の前に現れたことに霧切達は驚く。
ディーヴァには一秒間ずつだけ時と時の狭間を移動できる能力を持っている。
そこに捕食で爆上げした機動力が備われば、常人が瞬するほんの僅かな時間の間に上空から地上の死国へ降り立つことも可能であったが、霧切達はそれを知らない。

「あの……ひょっとして怒ってます?」

首根っこを掴まれているユッキの体から大量の冷や汗が床に落ちる。
自分の行動のせいでディーヴァが怒らせたと思ったからだ。
本能的な自分の死の予感を感じて冷や汗が止まらなかった。
しかし、ディーヴァの抱いている感情は怒りでは決してなかった。

「怒ってはいないさ……グスッ……」
(……え? 泣いてる?)
「私が先に京都の人間を救ってやるべきだったか、それともさっきの弾丸を避けずに切り裂いていれば京都の人間達を救えたのか……どちらにせよ私が救えなかった者達が増えてしまったことに変わりはない」

ディーヴァは泣いていた。
チサオ砲の直撃で蒸発した京都の者達を救えなかったことに。
テラカオスと化した彼女のこと知らない霧切達には全く意味のわからない話であったが、彼女にとって捕食とは喰われた者が救われる手段だと信じている。
しかし、喰らう前に死体が消失した者や食えない状態になってしまった者は捕食することができない。
食えなかった者は永久に救われることがないと思い込んでいるのだ。
自分を救世主と信じてやまない彼女にとって、自分が殺されかけたことの怒りより、二度と助けられない者が増えたことによる悲しみの方が遥かに心痛かった。

「それじゃあ、私めを見逃してくれたりは……」
「ああ……良いだろう。





なんて、言うわけないだろうに」
「ですよねー」

殺されかけた怒りより救えなかった悲しみの方が勝っていた。
だからといって、目の前の獲物達を見逃す理由がディーヴァにはなかった。

「私にも問題があったが、軽はずみに私に挑んだ貴様にも問題があった」
「ひいいいい! 許してぇ!」
「許してるさ。だが喰う。喰って救う」

先ほどの威勢は何処へやら。ユッキは泣いて懇願するが、ディーヴァは彼女を喰う気満々であった。

「「「そうはさせるかあ!」」」

仲間のユッキを救うためにデカオ軍団はディーヴァに吶喊する。

「邪魔」
「「「ぎゃああああああああああ!!!」」」
「くッ……」
「きゅっぷい!?」
「おまえ達は後で喰うからちょっと待っていろ」

だが、ディーヴァの蹴り、及びそれによって発生した衝撃波によってデカオ軍団は蹴散らされ、それどころか彼らの後ろにいた霧切やキュゥべえまで余波で吹き飛んで全員ドームの壁に叩きつけられた。
そして、ディーヴァはユッキの食事に取り掛かろうとする。

「しかし、このまま救っても先に救った者達の魂が納得しない。
だからおまえはただ救うのではなく、オシオキする」
「お、オシオキって、何をするの!」
「こういうことさ」

そういうとディーヴァは、ユッキの纏っていたユニフォームを

下着ごとビリビリと破いた。

一糸まとわぬ姿のユッキが白日のもとに曝される。

「ッ!?」
「何を……する気なんだ?」
「「「うッ!」」」

ディーヴァの突然の行動に眉をひそめる霧切とキュゥべえ。
思わず前屈みになるデカオ集団。

「きゃあああああああああああ!
もうアイドルとして食べていけないじゃない!
エロ同人みたいな真似はやめて!!」

剥かれたユッキは赤面してディーヴァの手の中でジタバタ暴れる。
きっとディーヴァは自分を殺す前に在り来りな陵辱ものエロ同人みたいに辱めるつもりなんだろうと彼女は思ったからだ。

だが、彼女はこの直後に後悔することになる。
同人誌のような陵辱展開の方がまだ救いはあったのだから。



これから起こるのは有害図書指定級の処刑である。



「いただきます」

ブチッ


「え」
「肉が麦汁臭い……ビールの飲みすぎであまり質の良くない肉だな、モグモグ」
「い、いぎゃああああああああああああ!!!」

ディーヴァは最初にユッキの右腕を素手で引きちぎり、食らった。
右肩から先から鮮血を吹き出し、恐怖と激痛で顔を歪ませ、絶叫するのはユッキ。
肉を食い、口元を赤く染め上げるのはディーヴァ。

「しかし旨い。
狩りの際、獲物を恐怖させた方が肉が美味しくなるとどこかで聞いたことがあるが、正にその通りだな」

ユッキを食い殺すだけなら、一秒足らずでできる。
だがディーヴァは軽はずみな行動で結果的に京都の参加者を虐殺したユッキを「ゆっくりと」喰らうことで、恐怖させて食い殺すことにした。
服を脱がしたのも辱めるためではなく、食べるのに邪魔だからである。
ディーヴァ本人としては悪ガキのお尻を叩いてペンペンするのと同じ感覚であったが、ユッキにとっては拷問そのものだった。

「姫川さんが殺される……!」
「「「うおおおおおおおーーーッ! ユッキおばさんを離せー!!」」」

仲間が喰い殺されかかっているのを霧切達が黙って見過ごせるわけがなかった。
デカオ達が再度、ディーヴァに向けて突撃する。
先ほどと違い、食事中ならディーヴァでも隙だらけという判断であった。
が。

「「「ぎゃああああああああああああ!!」」」
「トラップ!?」
「これは……電気の壁だ!」

デカオ六人のうち、最前列を走っていた三人がディーヴァの能力の一つである電撃技……それの応用である電磁防壁に当たって人型の焼肉になってしまい、それを見た残るデカオ達は突撃を中止する。
ディーヴァはあらかじめ周囲に電磁防壁を張って食事の邪魔をさせないようにしていたのだ。
少なくともデカオ程度の実力では何人束になっても、この壁は突破できない。
防壁に守られたディーヴァは外野に構わずに食事の続きをする。

ブチブチブチと、ユッキの肉体を取っては口に運ぶ食人鬼。
腕の次は足、足の次は乳房が喰われた。
しかもギリギリまで死なない程度に計算されて。

「も……もうやめて…助け、て。
予言なんて……勇者や歌姫になんてなれなくていいから……」

もはやユッキの心は耐え難い痛みの中で、救済の予言で名声を得る野望などどうでもよくなっていた。
その心はとうに折れていたのである。
ただただ、助かりたいとだけ願った。

「ぐぎゃ! げぎゃあ!!」

だがディーヴァはユッキの懇願を無視。
乳房の次には眼球を、眼球の次には性器を食らった。

「う……ッ」
「「「おええええええええ!」」」
(あ~あ、まどかや響子には遠く及ばないけど貴重な資源(魔法少女候補)が……)

ユッキのあまりにも惨い拷問処刑に、流石の霧切も吐き気を覚え、デカオ達は嘔吐する。
感情のないキュゥべえだけが対して動じなかった。
しかし彼らにはユッキを救う手立てはなかった。

「さてとメインディッシュだ」

ディーヴァはそう言うと、ユッキの腹部に爪を突きたて、ズボリと肉を抉って中を探るようにかき回す。

「ひぎゃああああああああああああああ!」

ユッキの一番大きな悲鳴が死国のドームに響き渡った。
そしてディーヴァの手には腹から引き抜かれた彼女の柔らかい腸が握られており、ソーセージでも食べるような感覚で、口に運ばれた。
ディーヴァはご満悦な様子で微笑む。

「やっぱりこの歯応えが最高だな。何度食べても飽きが来ない……ん?」
「――」
「おや、もう死んでしまったか。まあ、救われる前に反省はしてくれただろう」

腸を喰われた瞬間と同時にユッキは痛みでショック死していた。
抱いていた野望とともに彼女の命は潰えたのだ。
これ以上は食事に時間をかけるだけ無駄だと思ったディーヴァは一瞬でユッキの骸をたいらげた。


「ごちそうさまでした。さて、次はおまえ達だ」
「く……ッ」
「「「ちくしょう……」」」

ユッキが処刑されれば次の獲物は霧切達五人である。
しかし、彼らは基本的に戦闘力は微々たるもの。
それどころから彼女らの足では逃げることもできない。
ディーヴァには絶対に敵わないだろう。

「響子! 今こそ契約で魔法少女に……」
「遅いな。この世のすべての救済者(しょくざい)に感謝をこめて――――――い た だ き ま」

キュゥべえは現状を打開できるかもしれない策として今まで断られ続けてきた契約を響子に迫るが、それよりも早くディーヴァの牙が五人に迫る。

その時であった。
時速1500キロで誰も乗っていない大型バイク――ジェットスライガーがディーヴァに向けて、突っ込んできた。

「――ッ!」

ディーヴァは自分に向かってきたジェットスライガーを剣で四分割して対処する。
分割されたジェットスライガーの部品は慣性でディーヴァの横から背後まで走った後に大爆発を起こすだけで終わったが、これによって彼女の行動が阻害され、霧切達は九死に一生を得た。

「今のは……!」

霧切がバイクが走ってきた方角を見ると、そこには二人の男女がいた。

「光太郎さん! 霊烏路さん!」

南光太郎――仮面ライダーBLACK RXと霊烏路空であった。



前回の話で光太郎達は霧切の残した書置きを、ジェットスライガーの風で飛ばしてしまって読んでいない。
なのにどうして霧切らが死国にいることがわかったのか?

答えはユッキが放ったチサオ砲によって京都が吹き飛ぶ瞬間を目撃したからである。
チサオ砲が発射された死国には危険集団・拳王連合軍がいると思い、霧切とユッキを合流するのもまず大事だが、拳王連合軍を止めなくてはならないと思った光太郎は急いで死国に向かうことにした。
皮肉にもチサオ砲は撃ったユッキ自身に死を招いただけでなく、頼れる仲間を呼び寄せる狼煙となったのだ。

ちなみにお空はチサオ砲が放たれる寸前に気絶から醒め、ちょっとお腹が空いたので、レモングミ(状態表でその他不明になっていた支給品)を食べた。その結果、ハクメンに負わされた傷の大半が回復した。
お菓子喰って回復とか意味わからねーと思うが、グミとはお菓子のことではなくテイルズシリーズにおける薬品のことである。
そのうちレモングミはHPを60%回復する効果があるのだ。
お空はレモングミをオヤツだとばかり思っていたので今まで気付かなかったが、これにより空は戦えるレベルまで回復したのである。


「響子ちゃん、キュゥべえ。これは一体……拳王連合軍は?」
「ユッキは? ユッキはどこにいったの?!」

死国は霧切達やディーヴァを除く人間がおらず、拳王連合軍の面子はいない状態で放棄されていた。
そしてあからさまに危険な気を放っているディーヴァの存在とユッキの姿が見えない件や同じ顔の少年が三人もいる件などが、光太郎とお空を混乱させていた。

「拳王連合軍はもういない。放送のあとにここを放棄したらしい」
「姫川さんは今さっき死んだわ……彼女に食べられて……」
「なに!?」
「そんな……ユッキ!」

キュゥべえと霧切の言葉に光太郎とお空は少なからずショックを受けた。
拳王連合軍の不在はまだしも、仲間であるユッキの死に。
そして仲間を食い殺した下手人であるテラカオス・ディーヴァを見る。
よく見ると牙や翼が生えている相違点を覗くと放送で指名手配され、仲間である弦十郎が探し求めていた風鳴翼の特徴そのままであった。

「その顔立ちや弦十郎さんの言っていた貧乳ぶり……まさか、おまえが風鳴翼なのか?」
「風鳴弦十郎……まさか司令にして私の叔父だった男を知っているのか?」

OTONAである弦十郎の名前が出た瞬間、ディーヴァも流石に驚いていた様子であった。
そして、そのディーヴァの反応から光太郎も彼女が風鳴翼であると確信する。
弦十郎の願いのためにも、風鳴翼ならば食人行為を止めさせる必要があった。

「ああ、食人鬼と化した君を止めるために、あの人は俺達と一緒に大阪にやってきたんだ」
「そうか……だが残念だが、風鳴翼は既に死んでいる。
ここにいるのは風鳴翼の魂をベースにして生まれた救世主、喰らうことで全てを取り込み救う存在、混沌の歌姫(テラカオス・ディーヴァ)だ」
「なんだって!」

だが、ディーヴァの返答は風鳴翼の死であった。
全容が掴めていない光太郎達の視点からだと意味のわからない話だが、実際に風鳴翼の肉体はディーヴァ誕生の瞬間と同時に弾け飛んでいる。
彼女にとって風鳴翼は卵の殻に過ぎないのだ。


「……彼女の説得は考えない方がいいよ光太郎」
「キュゥべえ、しかし……」
「彼女は完全に狂っているわ……食人を救済と同列に考えている時点で」
「エントロピーもさっきのハクメンには及ばないけど、かなり危険なレベルだよ。
強力な電磁防壁や矢車のようなクロックアップ紛いの能力まで持っていた。
少なくとも君が手加減して勝てる相手じゃない」
「!!」
「弦十郎さんには悪いけど、彼女はもう……」

彼女の実力と狂気を目の当たりにしたキュゥべえと霧切は、ディーヴァの説得を諦めるように光太郎に促す。

「ふむ、おまえ達の肉もとても美味そうだな。
拳王連合軍のカオスさに勝るとも劣らぬその力、私がいただこう。
おっと、私に救済の道(ロード)を妥協させるなんて生ぬるいことは考えるな。
全力で来い。手を抜かれてもつまらないからな」

ディーヴァ自身も光太郎が何を言っても食人行為を止める気はなかった。
剣を引き抜き、次の標的を弱い霧切達から強者である光太郎とお空に向ける。

「……わかった。
できれば殺さずに済むのがベストだが、説得も通じず、手加減できない相手なら仕方ない。
風鳴翼……いや、テラカオス・ディーヴァ! おまえはこの仮面ライダーBLACK RXがここで倒す!!」
「弦十郎には悪いけどマーダーなら殺す! ユッキを殺した奴は殺す!」

光太郎とお空もディーヴァと戦うことを決めた。
そして第五回追加放送がゴングの代わりに鳴り響き、両サイドが敵を討ち取るべく駆け出した。
この死国ドームにて混沌の歌姫と二つの太陽の力を持つ者達の戦いが始まった……


一方、光太郎達がディーヴァを引き受けている間に霧切達は医務室まで後退する。
戦えない自分達は光太郎達の戦いの邪魔をしないためにも気絶しているクライシス皇帝を連れて、死国から脱出する必要があった。

「ねえ、響子。今、契約すれば光太郎達の戦いが有利に……」
「しないわよ。
デカオくん、悪いけど寝ているクライシス皇帝を運び出せない?」
「「「待っててくれ、今減った分を補充するから。そうすれば皇帝のおじさんも運びやすくなるハズ」」」

デカオは大災害の折に浴びたエネルギーTCによって分裂する能力を得ている。
その力でさっき死んだデカオ三人分を補うために分裂して数を増やそうとしていた。
力持ちのデカオが六人揃えば、蟻が大きな食べ物を巣に運ぶ要領でクライシス皇帝を速やかに運ぶことができるからだ。
そしてアメーバのように三人から六人に増殖するデカオ。

しかし、デカオが増えきるよりも早く、クライシス皇帝は気絶から覚めた。

「う~ん、むにゃむにゃ……ここはどこだ?」
「クライシス皇帝!」
「目覚めたみたいだね。ここは死国だよ皇帝」
「死国……拳王連合軍の拠点に私達はいるというのか!?」
「「「熱斗やラおじさん達はもういないけどね。てか、俺達ってひょっとして増え損?」」」

医務室での治療の甲斐もあり、クライシス皇帝は自力で立ち上がれるまでは復活したのだ。
そのクライシス皇帝はまだ覚束無い足で、医務室の窓から死国内で戦いを繰り広げる光太郎とお空と風鳴翼らしき女の戦いを見ていた。

「光太郎達と風鳴翼が戦っているのか?」
「ええ」
「ハクメンに刺されてからずっと気絶していたから状況が飲み込めていないみたいだね」
「悪いけど細かく説明している暇はないわ。
逃げながらでも教えるから、今は退きましょう」
「……」

霧切達よりは遥かに強いとはいえ、クライシス皇帝は病み上がりだ。
とてもディーヴァのような強敵と戦わせられる状態ではなかった。
響子は窓ごしに見える戦いの光景をぼんやりと見つめいるクライシス皇帝の手を引っ張った。

最終更新:2016年11月13日 19:07