墨田区、スカイツリー前。
ここでは狂信者の一派であるカギ爪団によって
聖帝軍が窮地を迎えていた。
聖帝軍の
残存戦力は10人と巨大ロボ一機、ガンダム二機。
対するカギ爪団の戦力は、カギ爪の男の乗るバースデイを中心にガンダム三機、大妖怪であるとらを筆頭にヨロイ70機、兵隊約2000人以上。
西武ドームを襲撃してきた数とひと握りの強者の力任せに物を言わせた烏合の衆とは違う、本物の戦闘力そして結束力に聖帝軍は大いに苦しめられる。
ボロボロの聖帝軍に対し、カギ爪団にはまだまだ余裕がある印象だ。
「へ、下の毛も生え揃ってねぇような娘っ子なんてこんなもんよ」
地上ではとらと兵隊に囲まれた、イリヤ、キュアハート、金色の闇が倒れ伏していた。
先の戦いでターバンのガキとガタックを一辺に失ったことが戦力にとって痛手になっていた。
辛うじて全員まだ生きているものの全員が流血しており、早々に治療しないと命が危険である。
それでもなんとか命を繋いでいたのは一重に悪魔超人である魔雲天が守護っていたおかげである。
「貴様は絶対に許さん! この魔雲天が粉々に打ち砕いてくれる!」
「チッ、この硬い岩っころめ! 爪も槍もまともに入りゃしねえ」
魔雲天の防御力が三人の少女をとらや兵隊の攻撃から守っていた。
とら側も岩に対しての電撃は当然として、爪も獣の槍もなかなか貫徹しない。
しかし……
「マウンテンドロッ……クソッ、また躱された!」
「のろいのお、儂はまだ一撃足りとも喰らってないぞ」
数多の人外の中で比較すると防御力と引き換えにスピードは決して早い方ではない魔雲天。
素早い挙動をするとらとは相性が悪かった。
また、飛び道具を持っていないこともとらを捕まえられないことに繋がっている。
さらにいくら防御力が高いとは言え、1ダメージも千発喰らえば1000ダメージ。
岩が削れていくようにダメージは徐々に蓄積していった。
「いいかげん早く死ね、そして儂の心の中で生き続けるのじゃ!」
「意味のわからんことを……仮に死ぬにしても悪魔超人はタダじゃ死なないんだぜ」
悪魔超人と妖怪が死闘を繰り広げている中、空中で粘っていたガンダム組も窮地に陥っていた。
ホモの乗るデストロイモードのユニコーンとバンシィ、そしてアルケーガンダムとそれに乗るベクターの召喚したデュエルモンスターに四方を囲まれており、そんな実力と数の相手をたった二機で相手どる様はまさにアラモ要塞のようであった。
「クロスディメンションのボルク大尉の気持ちがわかった気がする……」
「なに弱気なことを言ってんだ! 俺たちが粘らないときらりんロボが危ないぞ」
「うん、そうだねレイジ! あんなホモたちにガンダムを汚されたくない!」
「ビルドファイターズ魂を見せてやろうぜ!」
鼓舞によって立ち直ったイオリと共に、レイジは自分たちやきらりんロボに近づくモンスターをビームライフルやバルカンで掃射していく。
ところが、あるモンスターを倒したところで彼の乗るビギニングガンダムのスラスターが爆発した。
「レイジ!」
「なに!? 攻撃は食らってないはずだぞ!」
「バカめ、おまえが今破壊したモンスターの中には『ジャイアントウィルス』がいた。
こいつの効果は戦闘によって破壊された時、 相手ライフに500ポイントダメージを与えること。
倒せば倒すほどダメージが入るんだよ!」
レイジは敵の罠にはまり、遊戯王特有の俺ルールによってガンダムにダメージを与えさせてしまった。
スラスターを失って飛行能力を失い、地上に落ちていくレイジ機をイオリ機が支えようとしたが、それこそが致命的な隙になってしまった。
「今だ! 殺るぞホモたち!!」
「発射するよ……」
「この一撃で終わり! 閉廷!!」
「ファングル!」
「「ツイン・ビーム・マグナム!!」」
ベクターが援護にファングルを放って二機の退路を立ち、身動きできなくなった二機のガンダムがユニコーンとバンシィによる連携技による攻撃を浴びせる。
容赦ない二条のビーム・マグナムはビギニングとMk-Ⅱに命中し、爆散させた。
しかし、その直前に二機はコアファイターでガンダムから分離し、正太郎の二の舞になることだけは防いでいた。
「……おや? 寸前で脱出したか」
「やりますねえ」
だが。
「フフン、エンジンから火が吹いてやがる。待ってればすぐに獲物は落ちるな」
男狩りのレザーモヒカンのような口調で道下が嘲笑したように、二機のコアファイター自体もビーム・マグナムの余波を受けたのか機体から火を吹いており、そのまま機動を失って地上へと墜落した。
仮に二人が生きていてもモブのカギ爪団の兵士が処理してくれるだろう。
こうして聖帝軍ガンダムが一掃されて制空権はカギ爪団が握り、聖帝軍はますます窮地に追い込まれた。
「イオリとレイジが!」
「おのれ!」
きらりんロボの肩の上で憤るサウザーと高津。
彼らも投球とバット投げ、きらりんロボの砲撃で味方を援護している。
……しかし、それも限界が近づいてきた。
きらりんロボに備蓄していたバットとボールがそこを尽きかけている。
きらりんロボ自体も幾多のダメージで機能が大幅に落ち込んでおり、出力が上がらないのか、ビームの一撃でヨロイ軍団を倒すことも困難になっていた。
「皆さん、もう少しですよ~! 頑張りましょ~う!」
ボロボロの聖帝軍に対してカギ爪団の頭目であるカギ爪の男はバースデイの中から鼓舞しつつ、光線攻撃――G-ER流体を雨のように降らした。
一撃でも
機動力の低下したきらりんロボや、傷つき倒れたターバンのガキどもでは避けることは叶わない。
「うおおおおおお!?」
「サウザー!?」
きらりんロボにG-ER流体が直撃し、各所から爆炎を上げる。
サウザーと高津は直撃自体は避けたものの、足場にしていたロボの肩が崩れたことによりサウザーが地上に落下してしまった。
一方、地上では。
「まずい!」
とらと構成員と戦っていた魔雲天であったが、流体が倒れていている闇たちに降り注ごうとしていたのに気づいて戦いを中断して、彼女たちの盾になるように高くジャンプし、流体から庇ったのだ。
魔雲天の献身の甲斐もあり、三人の少女に流体が落ちることはなかった。
……引き換えに流体が魔雲天の岩の体を貫き、決して小さくないダメージを与えた。
「グッ……だが味方は守れ――」
血を吐き、傷による己の死を覚悟しつつも味方を守れたことを飛んでいる中で確認しながら、魔雲天は瓦礫の中へと突っ込んでいった。
「くッ……この聖帝サウザーと聖帝軍が敗れるというのか……」
地上に落下したサウザーはうまく着地し、死を免れていた。
だが戦況は絶望的であり、機動部隊は全滅して制空権を奪われ、地上部隊は皆瀕死。
きらりんロボも沈黙し、将である自分自身もここまでの戦闘で大ダメージを負った。
敗色濃厚である。
そんな聖帝軍を囲うようにカギ爪の構成員とヨロイ、三機のガンダム、そしてバースデイが迫る。
「皆さんの犠牲でクラウザーさんは生き返る。世界は彼の歌で平和になり、あなたにとってもこの星にとっても、素晴らしくご都合のよろしい世界になるのです。
彼が復活した後にはきっと苦しみのない世界が待っているでしょう。
さあ、祝福を受け入れるのです!」
まるでカルト宗教の教祖のように、聖帝軍に死刑宣告をするカギ爪。
「ふざけるなよ……キサマらの宗教に付き合って死ねるか!」
その宣告を真っ向から否定するのはサウザーであった。
「大丈夫、死者蘇生ができなくなった世界らしいですが、皆さんの魂は私たちやクラウザーさんの歌の中に生き続けます。永遠に」
「好きでもないキサマらやクラウザーさんの中に俺たちが生き続けるなど、御免こうむる!
いいか……俺は愛という言葉が大嫌いだ! そして!貴様らの愛は俺が嫌いな愛の中でも最低の部類だ!!」
聖帝は吠える。カギ爪団の愛を否定するために。
「大好きなクラウザーが死んだから、大切な人を失ったから、この世界に絶望したからクラウザーに縋り、復活のために本当にあるかどうかもわからない儀式のために生贄を捧げるだと?
殺した生贄が誰かの大切な人であることを考えたことはないのか!?
貴様らの押し付けがましい愛のせいで多くの人間が迷惑しているのだよ!
狂信者ども、そしてカギ爪、貴様の掲げる愛はただの依存だ!」
「なにを……ですが、クラウザーさんの歌で人間や人間以外の種族もひとつになり、彼が復活した後に平和な世界が来るのは事実なのです!
そうすれば未来の悲しみや苦しみも――」
「愛ゆえに 人は悲しまねばならぬ! 愛ゆえに 人は苦しまねばならぬ!!
愛や情は哀しみしか産まぬ!!
失うのも愛なのだから、耐えられるなら受け入れろ!
受け入れらないなら俺のように捨ててしまえばいい!
だが……
受け入れることもできない捨てることもできない、おまえら
みたいな迷惑なカスは、ただの最低野郎だ!」
彼は慕っていた師であり父親代わりであったオウガイを南斗聖拳の継承のためにこの手で殺してしまい失ったために「愛など要らぬ」という境地に達していた。
サウザーもまたオウガイの愛から逃げているとも言えるが、師への敬いの心は残っていても依存はしていない。
オウガイの墓である聖帝十字陵も己の愛や情といった感情と決別するための手段である。
悲しみや苦しみから逃げるために生贄を殺してクラウザーを復活させようとする、言い換えればクラウザーを免罪符にしており、罪をクラウザーに擦り付けているのと同じなのだ。
狂信者が参加者を殺すたびに関係ない筈のクラウザーの名声は落ちるのである。
そんななかで仮に復活できてもクラウザーは嬉しくもないだろう。
愛嫌いな彼にとって、狂信者の、特にカギ爪の掲げる愛はもっとも唾棄すべき最低の愛であると見たのだ。
「そうか、わかりました!君はつまり、バカなんだ!」
サウザーの罵りをカギ爪の男は理解などしていない。
ただ自分にはない要素であり相容れない「バカ」であるとだけわかり、喜々として言い放つ。
そしてめいっぱい愛そう(=殺そう)と決めた。
カギ爪団の聖帝軍へのトドメの総攻撃が始まろうとしている。
この攻撃を喰らえば瀕死の聖帝軍は確実に全滅するだろう。
(金色の闇……まだ動けるか?!)
総攻撃が始まる前にサウザーは倒れていた少女たちの中でただ一人、少し前に意識を取り戻していた闇に小声で呼びかける。
(かなり痛めつけられました……でも、なんとか動ける……)
(そうか……俺が囮になる。
余力があるならばイリヤと亜久里を連れておまえたちだけでも逃げろ)
サウザーの口から出たのは逃走の指示であった。
闇はこれに対して反対するが……
(サウザー、私はまだ戦ます!)
(ダメだ。仮に俺やおまえが総攻撃を凌げたとしても気絶している残りの二人は助からん。
四人とも死ぬか二人生き延びて二人死ぬより、四人中三人は生き延びた方がマシだろう?)
(だったら、サウザーも一緒に……)
(この状況では誰かが囮にならねば誰も逃がすことはできん!
それに……例え負け戦でも帝王に逃走はないのだ。これは宿命……仮に逃げれば俺のために命を散らしたお師さんに泥を塗ることになる!
俺は退かぬ、媚びぬ、省みぬ……だが、仲間を逃がすことは帝星として最低限の名誉にはなるはずだ)
闇にはわかった、サウザーは戦いの中で死のうとしていることを。
仲間である彼には死んでもらいたくないが、状況的にも彼のプライド的にも許されないだろう。
それを理解できるからこそサウザーの悲壮な覚悟が悲しく、悲しくても受け入れるしかなかった。
(悔しいがこいつらに挑むには戦力差がありすぎた。先の戦いの勝利から敵を過小評価した俺のミスだ。
正太郎、加賀美、姉帯、ついでにターバンのガキの死の責任は俺にある。
せめてもの償いとしておまえたち三人だけでも生き延びてくれ……)
(サウザー……わかりました)
(そんな顔をするな、俺の底力でひょっとしたらここから奇跡の大逆転できるかもしれんぞ?)
(勝てる要素もないのに、どこまでも馬鹿な人……)
口では罵りつつも、サウザーの想いを受け取った闇は腕をカギ爪団に悟られないように伸ばしてイリヤと亜久里を掴み、退路に目星をつける。
闇の撤退準備は完了だ。
聖帝軍の無念は彼女らが引き継いでくれるだろう。
惜しむらくは高津やきらりんロボの搭乗員は逃げきれないだろうが、せめて最期まで戦ってくれるだろう。
そして、ヨロイやガンダムたちの砲撃が始まったと同時にサウザーと立ち上がった闇は駆け出した。
サウザーは敵の集団へ、闇はイリヤと亜久里を抱えて包囲が薄いところへ向けて走る。
「心残りがあるとするならば聖帝軍で一試合ぐらい野球がしたかったな……」
敵の砲撃の雨が降り注ぐ寸前に、サウザーはそう呟いた。
その時である。
金色の闇の耳に確かに声が聞こえた。
聖帝軍のものではない、人ならぬ者の声が。
『噂に偽りはなかった』
『負け戦と知りながらも自分は敵から退くことも、敵に媚びることもせず、後悔ばかりを省みることで足を止めることもしない』
『そして自分を囮に幼子を逃がすその勇ましさ』
『まさに紳士の中の紳士、漢の中の漢!!
サウザー、聖帝の名はおまえにこそ相応しい!!』
「「!?」」
聖帝軍の、そしてカギ爪団の誰もが、驚いていた。
無数の砲弾が届く寸前にサウザーと闇の前には巨大な三つ首の青い竜が、きらりんロボの前には同サイズの白い巨大ロボが、盾を展開して砲撃を防ぎ、聖帝軍を守ったのだ。
青き竜――氷嵐の支配者の姿を見てサウザーとカギ爪は同じ言葉を呟いた。
「こいつは……」
「彼らは……」
「「都庁の魔物!!」」
サウザーとカギ爪の言葉通り、都庁からの救援部隊が到着したのだ!
『間一髪』
「間に合ったね」
ミラーシールドを展開していた氷嵐の支配者と、A.Tフィールドを展開していた白いロボ――エヴァ四号機に乗っていたカヲルは新たなる仲間を守れたことに笑顔になる。
四号機は原作エヴァだと実験の失敗で消滅してしまうが、こちらはPS2ゲームのエヴァンゲリオンで人類の味方になったルートでカヲルが召喚して呼び出して乗り込む機体である。
これまでは首輪による制限と、マーラ戦では狭すぎる地下だったので召喚できなかったが、屋外に出て満を辞して召喚が可能になったのだ。
さらに二者に続いてカギ爪団による包囲網を外側から崩すように赤竜とそれに乗ったキュアピーチ、ミクダヨーもといフェイ・イェン、ラゴンも現れる。
『今こそドラゴンハートの真価を見せるときだ!』
「シャー!」
「いくよ! フェイ・イェン!」
「うん、巨大化&開幕エモーショナル・モード!」
空挺隊のように赤竜の背中からキュアピーチとフェイが上空へと飛び出す。
空中でキュアピーチはドラゴンハートの恩恵により強化フォームであるキュア・エンジェルピーチへと変身。
白き翼を生やしたそれはまさに天使のようであった。カワイイ。
一方でフェイは巨大化し、元のヴァーチャロンサイズに戻り、さらにオーバーブースト「エモーショナル・モード」となり、金色の姿になる。
……がなぜか、ミクダヨーの着ぐるみも一緒に巨大化したせいで、無駄に威圧感を出している。コワイ。
そして二人は着地していくと同時に闇たちに襲いかかろうとしていた構成員やヨロイをパンチやビームで蹴散らしていく。
そこに上空から赤竜の炎のブレスが落ち、カギ爪団を次々と灰に変えていった。
「すごい……なんて力なの……」
救援隊の戦いぶりを見て闇は思わず感想を漏らした。
カギ爪団は確かに西武ドームの狂信者よりは格段に強かった。
だが、首輪解除による制限撤廃とドラゴンハートによるレベルキャップ開放&パワーアップの恩恵を受けた救援隊はそれ以上の実力を誇っていた。
戦闘の最中、彼らの力に驚く闇の前にラブことキュアエンジェルが降り立つ。
「そこの子、聖帝軍の人だね、大丈夫?」
「都庁の人たち……助かりました」
「そこにいるのはキュアエース!?
それにみんな、怪我をしてるんじゃない! すぐに治療をしなきゃ!」
傷ついた聖帝軍と何度か共闘したこともあるプリキュアの怪我に気づき、キュアエンジェルはすぐに飛行中だった赤竜を呼び、彼に乗っていたラゴンによって世界樹産の傷薬がきらりんロボに乗っている者を除いた全員に使われると、見る見るうちに傷は治っていき、亜久里ことキュアエースとイリヤも目覚め、感謝の言葉を述べる。
「キュアエース!」
「指一本動かせなかった体が動く……ブラボーですわ、キュアピーチ」
「本当にありがとう。
紘汰たちによる交渉が成功したのね……本当に良かった~」
「こうた? 誰それ?」
「「「え」」」
「え」
イリヤの言葉から紘汰という知らない人物の言葉を言われて頭上に?マークを浮かべるキュアエンジェルと、彼女らが紘汰たちを知らないことに?マークを浮かべる聖帝軍の三人娘。
それもそのはず、都庁と同盟を組むために遣わした紘汰ら先遣隊は不運によって都庁へ向かうことができず、都庁側は先遣隊の存在など知らない。
それでいて都庁が聖帝軍の一部勘違いも混ざった良き噂から自発的に助けにきたことなど思って夢にも思ってないのだから。
「何か行き違いがあるようだが、まあいい。とにかく俺たちの味方であることには変わりないようだ。
都庁も畜生ではないことは十分にわかった」
「サウザー、無事だったんですね」
『ウホッ、これは良いロリ天国!』
サウザーが敵をかき分けて鼻の下を伸ばした氷嵐の支配者と共に闇たちの元に歩み寄る。
さらにもうひとつの嬉しいニュースが聖帝軍にやってきた。
赤竜が二人の傷だらけの少年を口に咥えてやってきた。
『おい! 壊れた戦闘機の中に二人の小僧どもを見つけたがおまえたちの仲間で間違いないな?』
「レイジとイオリ! 生きていたのか!」
「……死ぬかと思ったが運良くな」
「コアファイターを作ったテム・レイ氏万歳!」
死んでいたと思われたビルドファイターズ組も運とコアファイターの安全性に助けられて死を免れていた。
サウザー・レイジ・イオリもまたラゴンが持っていた薬で全快まで回復する。
『ラゴン! 彼らの首輪を解いてやれ! やり方はレストから教わっているな?』
「シャー!」
『これはお嬢さんたちとのお近づきの印に……ドラゴンハート蒼!!』
『そしてドラゴンハート紅!!』
それでだけでなく、六人の首輪の解除をし、これから共に戦いゆく聖帝軍にドラゴンハートの恩恵を授けた。
死線をくぐり抜けた聖帝軍は恩恵を受ける条件は満たしており、本来の実力を越える力を得られた。
「凄まじい! 体の奥から力が漲るようだ!」
サウザーの闘気が大幅に膨れ上がる。
キュアエースのパワーが急上昇する。
プリズマ☆イリヤの魔力が溢れ出る。
パイロットであるレイジとイオリは流石に生身での戦闘力はさしたるものではなかろうが、機体があればニュータイプやSEED並みの操縦技術を発揮するだろう。
最後に残った金色の闇は――
「……大人になってしまいました」
『うわああああああああ! ドラゴンハートが裏目に出ちまったーーーッ!?』
『うおおおおおおおおお! これで鎧をつければ金髪美女騎士の完成だ……フヒヒヒヒヒヒ』
「なんか後ろから凄まじく邪な、落胆とえっちぃ視線を感じますが、抹殺してもいいですかサウザー?」
「お、抑えろ闇」
ドラゴンハートの影響によって彼女の中のトランス能力に変化が現れたのか、幼児体型から一気にクローン元であるティアーユに似たボンキュッボン体型になっていた。
パワーアップと引き換えにロリが減ったことを後悔する氷竜と、興奮で鼻息を荒くする赤竜。
なんにせよ、聖帝軍は復活しパワーアップを果たしたのだ!
「すごい!お友達がいっぱいですね!!」
予期していない援軍にカギ爪は慌てるでもなく、ただただ喜んでいた。
夢であるクラウザーさんの歌による世界平和へ邁進するための生贄が増えるのを喜んでいるのか、本当に遊び相手が増えるのを喜んでいるのか。
「笑っていられるのも今のうちだぞカギ爪! 首輪を外しパワーアップした俺たちの力を見せてやる!! 聖帝軍!! 突撃せよ!!」
『我ら都庁同盟軍も奴に続け!!』
カギ爪の男へ啖呵を切ったサウザーを筆頭に聖帝軍と同盟軍が突撃を開始する。
大群・猛者ぞろいであるカギ爪団相手に先程までの戦力であれば、それは無謀とも言えただろう。
だが今は違う。
物語を戦いの結末を迎える一時間後まで飛ばそう。
◆
「馬鹿な! たったの十数匹だぞ!?
それなのに二千はいた兵隊はもう数えるぐらいしか残っちゃいねえだと!?」
とらは驚愕していた。
首輪を外し、竜の力の恩恵を受けた敵の力は想像以上であった。
サウザーが北斗無双ならぬ南斗無双で次々とヨロイや地上の兵士をバラバラにしていく!
ドラゴンハートというバーターを得た氷竜と赤竜の息吹が凍死体と焼死体を増やしていく!
キュアエンジェルとキュアエースの拳が兵隊を彼方へとぶっ飛ばしていく!
金色の闇が引き裂き、プリズマ☆イリヤの魔力が蒸発させる!
エヴァ四号機と巨大ミクダヨーが蹂躙する!
もちろんカギ爪団も黙ってやられていたわけではない。
とらもベクターもホモ二人もカギ爪の男だって応戦している。
だが彼らの攻撃はあまり敵に届くことはなかった。
「攻撃が当たらねえし届かねえ!」
「道下さん、まずいですよ!」
「(敵が)死ーにましェーン!!」
ベクターとホモどもが慌てるのも無理ではない。
戦術面の話をするとフェイ・イェンはエモーショナル・アタックという技を持っておりこれは命中・回避・格闘・射撃ダウンの効果を持っている。
少しでも被弾すれば能力が下がるのだ。
次にエヴァ四号機によるA.Tフィールド。
カヲルはドラゴンハートの恩恵で四号機とのシンクロ率を%にしており、その分だけフィールドが強固になっている。
それはビーム・マグナムでさえ弾き、I・フィールドと違って実弾・ビーム関係なく弾くのである。
敵の攻撃力が下がっているので尚更鉄壁である。
これが沈黙していたきらりんロボを守っていた。
トドメは氷竜によるミラーシールド。
万能攻撃すら跳ね返すチートカウンタースキル。
ここまで来ると正攻法で勝つ方法はない。
グレイモヤのようなチートカードを加賀美に使ってしまったことがここにきて仇になってしまった。
以上の戦いを一時間繰り返した結果、カギ爪団は壊滅寸前にまで追い込まれていた。
地上で戦い続けていたとらもボロボロである。
「せめて大将首だけでも……!」
とらは
最後の力を振り絞り、聖帝軍を牽引している指導者のサウザーだけでも殺そうとする。
さすれば戦況は好転、最悪カギ爪の男だけでも撤退させられると睨んだのだ。
魂を削られる覚悟で、槍に巻かれた赤布を解くとらだった。
「サウザーは!」
「やらせない!」
「砲撃(フォイア)!」
「エースミラーフラッシュ!」
「な!? こいつら!!」
しかしとらがサウザーを襲うよりも早く、イリヤが砲撃で足止めをし、その隙にキュアエースが三昧の鏡を召喚してとらを囲う。
「こいつら邪魔を……だが! 儂と獣の槍を舐めるなよ!」
とらは赤布を開放した獣の槍を振るい、攻撃される前に強引に鏡の檻を破壊する。
脱出そのものは可能だった。
「!?」
鏡を破壊した先に待っていたのは大人になった金色の闇であった。
彼女は鏡の裏側でずっと身構えていたのだ。
とらは檻を脱出するために鏡を壊す必要があるが、その際の槍を振った直後の僅かな硬直時間を闇は狙ったのだ。
対するとらは鏡の裏側までは見ることができず、敵は手練の暗殺者故に気を辿れなかったために待ち構えることもわからず。
「いかん、これは罠――」
「終わりです」
とらが反撃のために槍を振り戻すより早く、闇は髪の毛で作った鎌でとらの首を切断し、念を押してその首をさらに縦に両断した。
首輪も外れてない以上、大妖怪とてこれほどのダメージを受けていれば死なない道理はない。
「加賀美、ターバンのガキ、仇は取ったよ……」
「私たちナイス連携だったね!」
「野球で学んだ仲間に合わせることの大切さ……あの練習は無駄じゃありませんでした」
とらを討てたのは単に首輪解除とドラゴンハートのおかげではない。
野球を通じて培った連携が生きた故であった。
闇らは獣の槍を回収し、再び戦場に舞い戻った。
カギ爪団の切り込み隊長であるとらが討たれた時と同じくしてロボットバトルもまた決着が尽きかけていた。
モブヨロイの掃討はエヴァとフェイの力を持ってすればワケもなかったが、ガンダム相手となるとそうはいかない。
エヴァがパレットライフル、フェイ・イェンがビーム、高津が投球を発射するが、ユニコーンとバンシィのサイコフィールドによって弾かれる。
「ところで僕のアクシズを見てくれ。こいつをどう思う?」
「すごく……大きいです」
「攻撃が入らない。せめてあらゆる防御を貫くロンギヌスの槍があれば……
それにしても男同士で気色の悪い連中だ」
「……なんとなくあなたが言うと『おまいう』って言いたくなる」
カヲルとフェイ・イェンが呆れるほど硬いバリアが道下と遠野の乗るユニコーンとバンシィが張られているのだ。
向こうの攻撃も効かないがこちらの攻撃も届かないと、互いに消耗を強いられる泥仕合になっていまう。
「どうにか突破する方法はないの?」
「ユニコーンとバンシイは想いを力にするサイコフレームで作られている。
あのホモたちがどれだけのNT能力を持っているか未知数だけど、サイコフレームによって放出されるアクシズショックは全力なら一機で巨大隕石を押し返したり、大量破壊兵器のコロニーレーザーさえ防いでしまうほど……」
「くッ……どうすりゃ良いんだ」
エヴァの足元でキュアエンジェルがイオリ・レイジと共にチートガンダムへの打開策を探すが、打つ手なしという結論に至りかけた。
「想いを力にする……だったら!」
「キュアエンジェルさん、なにを!」
『想いを力にする』という言葉にピンと来たエンジェルは翼をはためかせてユニコーンとバンシィの元に飛び立ち、必殺のビームを放つ。
「ラビングトゥルーハート!!」
すると、今まで弾かれるだけだった攻撃が、バリアを押しだしたのだ。
「えっ、それは…(困惑)」
「は、はひっ!」
「効いてる?! こりゃあ一体どういうことだ!?」
驚くレイジに対し、しばらくしてキュアエンジェルの思惑に気づいたイオリが回答を出す。
「そうか! 『ソフトチェストタッチ』」
「俺に分かるように説明してくれ!」
「いいかい? サイコフレームは人の想いを力にできるけど、逆に言えば他者からの思念の影響を受けやすいんだ。
つまり、想いを力に変える技なら奴らに届く!」
そこまでくればレイジも理解したようであり、暴力ではなく想いの力こそがホモのガンダムを攻略する方法だと気づいた。
「じゃあ、あいつはそれに気づいて……」
「たぶん……!」
ラビングトゥルーハートは想いを力にする技であり、単純な破壊力よりもサイコフレームには有効であった。
だが、プリキュア一人ではまだ足りないようだ。
バリアを押し出すことはできるが、それ以上はできない。
そこでキュアエンジェルと同じく心の強さを武器にできる2機のロボットが加勢する。
「心の強さが鍵ならば、心の壁であるA.Tフィールドで!!」
「心にエモーショナル・チャージ!」
キュアエンジェルを援護するように四号機は高くジャンプしてA.Tフィールド全開で突撃し、フェイは桃色に輝きつつ歌姫L9で最大威力の心を秘めたハートビーム エモーショナル・ウェーブ IBSを放つ。
二つの心と三つの心、勝敗を分けるのは心の強さ。
勝ったのは――
「阿部さん、愛しておりました……」
「アン!アン!アン!アッーンン!!」
三人の心がサイコフィールドを破り、ユニコーンとバンシィに攻撃が直撃。
ホモを乗せたガンダムはスパークを上げながら明後日の方向へと墜落していき、遠くで爆煙を上げた。
三人(の心)に勝てるわけないだろ!
「畜生、ホモたちが……!」
盟友である道下と遠野がやられ歯噛みするベクターにも、いよいよ引導が渡されようとしていた。
『あの赤いガラクタを落とすぞ氷竜』
『応! 赤竜』
ベクターの乗るアルケーガンダムを落とそうとする氷竜と赤竜の前に無数の召喚モンスターが現れる。
その中には聖帝軍のガンダムを落とすきっかけを作ったジャイアントウィルスなど混ざっており、倒すと氷竜のミラーシールドを無視してカード効果によりダメージを与えた……が、氷竜と赤竜は全く意に介していない。
『ダメージは数字に換算すると500そこいら』
『そんなダメージなど今の我らには豆鉄砲も同然!
……しかし、倒すと特殊な効果を持つ敵は厄介だな。
なのでここで一曲……クラウザーなんてくだらねえぜ! 我の歌を聞けーーーッ!!』
『えっ? 歌をおまえが!? ちょっと待ってくれ』
突然歌いだすと言い出した赤竜の言葉を聞くと氷竜は慌てて前足と首を器用に使って耳を塞いだ。
すると……ジャイアンソングが周辺に鳴り響いた。
『ボ エ ー ー ー ~ ~ ~ !!!』
解説しよう。
赤竜の歌、もとい唸りには攻撃力を著しく低下させた挙句錯乱させるという強烈な効果があるのだ!
それによって唸りを聞いた召喚モンスターの大半が錯乱し、同士討ちを始めたのだった。
「なにい!? モンスターたちが命令を受け付けない!?」
倒すと怪我を負うなら倒さねばいい状況を作り出す。それが竜の答えであった。
勝手に自滅していくモンスターたちに焦るベクターに、二匹の竜とドラゴンハートが迫る!
『『墜ちろガンダム!!』』
「しまっ……」
慌てて回避行動を取ろうとするベクターだったが、せめて馬鹿にしていたクラウディウスほどの腕があれば良かったのだが、残念ながら彼程度の技量では竜たちの攻撃を凌ぐことなどできなかった。
『二匹の仲良しドラゴンによるコンビネーション新必殺技!』
『名づけて』
『『超 ・ 竜 ・ 神!!!』』
氷竜の口から氷のブレスが、赤竜の口から炎のブレスが、ダメ押しに二つのドラゴンハートが二種類のブレスを放つ。
その威力は戦闘を一時間以上も続けたこともあってとてつもないものになっており、アルケーガンダムの装甲をを容易く溶かし、もしくは絶対零度で破裂させた。
「うああああああああ遊馬ああああああああああああ!!!」
熱と冷気に耐えられずに爆発を上げるコクピットのコンソールやモニター。
ここまで破壊されるとコアファイターによる分離脱出もできない。
同時にデュエリストの生命線であるディスクも破壊され、カードが燃えていく。
そうして真月零ことベクターを乗せたアルケーガンダムは撃墜され、地上へと落下した。
『即席で考えた技にしては良い出来じゃないか氷竜』
『先のマーラとの戦いで思いついんだ、名前も厨二じみててイカスだろ?』
『ああ、イカスイカス。今後もどんどん使っていこうぞ!』
合体技の出来栄えに満足する氷竜と赤竜。
ちなみに技名はとある勇者ロボの名前と被っていることは秘密にしておこう。
『皆の衆! 制空権を奪ったぞ!!』
赤竜が声たかだかに宣言する。
残るは大将であるカギ爪が乗るバースデイと僅かな雑兵だけであり、勝利は目前に迫っていた。
「あとは全員の総攻撃で一気にカタを……」
「いや、闇、みんな。奴は俺が討つ」
「サウザー?」
「……他の誰でもなく、俺が討たねばいかんのだ。
先に死んだ者たちを安心して眠ってもらうために、帝王たるこの俺が示しをつけなければならん」
全員で攻撃をしかければ確実に勝てる戦いであった、聖帝はそれを良しとせずに一人でカギ爪を討つことにこだわった。
単なる我儘ともとれるが、彼の背中には威圧めいたオーラを放っており、それが都庁同盟軍や聖帝軍を止めた。
少なくともこの前までのイチゴ味なヘタレではない、漢がそこにいた。
「……やるなら徹底的に、お願いします」
「ああ、わが拳にあるのはただ制圧前進のみ!!」
闇の信頼と思わしき微笑みを背中に、サウザーは制圧前進を始めた。
その速度はドラゴンハートの補正もあって、文字通り目にも止まらぬ速さであった。
「シャ!?」
「早い!?」
「本当に人間の早さなのか!?」
「この早さ、レストよりも上?!」
バースデイから放たれたG-ER流体の雨すらスイスイと躱し、質量を持たぬ残像すら残した。
ラゴン、カヲル、フェイが驚愕するほどであったが、特にラブはかつてレストと一線交えたことがあり、記憶にあるそれ以上の速度をサウザーは持っていたと確信する。
ドラゴンハートの加護によるものだとしても、向こうがレベルカンストしているのに対してこちらは伸びしろがより多く残されている発展途上であることを考えたら速度の才能はサウザーの方が上だ。
そして瞬く間に距離を詰めて巨大なバースデイに肉薄したサウザーは、次の行動に移る。
「この距離ならばアレが使えるな!」
闘気を高め、南斗鳳凰拳の裏ワザと言える技をサウザーは解き放った。
「 雷 霆 !!」
それは闘気を高め、周囲の敵に雷を落とす。オウガイ殺害直後に雷が轟いた光景の再現した雷。
ゲーム北斗無双におけるサウザーの必殺技の一つだ。
そのままではモヒカンを焼く程度の威力しかなかった、パワーアップした聖帝の雷霆はバースデイの装甲を易々と突き破り、大穴を開けさせた!
『お、おい。あの雷の威力、雷竜のブレスを容易く超えていたぞ!?』
『ああ、しかも雷はダオス殿の弱点と聞く、すなわち――』
『……あの速さと雷すら呼ぶ恐るべき南斗鳳凰拳……聖帝軍が敵でなくて良かったな』
『
まったくだ赤竜。巡り合わせが悪かったらあるいは……』
どこぞの野菜王子と同じくサウザーはへたれて都庁に攻め入らなかったが、レストをも凌ぐスピードと、ダオスの弱点である雷を彼は持っていた。
場合によっては聖帝によって都庁が滅ぼされていた可能性もあると思うと竜たちは背筋が寒くなった。
バースデイに空いた大穴からサウザーは内部に侵入。
そこには柩のようなヨロイの操縦席に入ったカギ爪の男がいた。
カギ爪の男は全てを諦めたのか、それとも状況をわかっていないか、慈悲によく似た眼差しで迫るサウザーを見つめている。
「サウザー君、私はあなたを、愛していま」
「いいや、全てを愛して何も憎まないと言う貴様は本当は何も愛してはいない。
愛があるから憎しみも哀しみも味わうのだ。
俺はおまえの仲間をたくさん殺したが、そんな俺を憎まないということは殺した奴らに哀しむだけの価値がなかったと貴様は見なしているんだよ。
憎しみと哀しみ、どちらも持たぬ貴様が図々しく愛を語るな!!」
サウザーはカギ爪からのラブコールを拒絶し、極星十字拳で文字通り切って捨てた。
カギ爪の男が入った柩が斜めに切れて床に落ちた。
自分が開けた大穴から外を見渡すと仲間たちが残るカギ爪団の雑兵を殲滅していく光景が見えた。
やがて戦場に残存する敵は0になり戦いは終わる。
狂信者内でも一大勢力となっていたカギ爪団も消滅の時を迎えたのだ。
「サウザー、無事でしたね」
「おお、おまえたちか! 親玉は俺の手で討ち取ったぞ!」
大穴から闇、亜久里、イリヤ、レイジ、イオリが入ってくる。
そんな少年少女(一人だけ少女じゃなくなったが)に胸高々に戦果報告をするサウザー。
「苦しい戦いだったけどなんとか勝てましたね」
「これで魔雲天たちも浮かばれるな!」
「みんなの犠牲は無駄じゃなかった」
「都庁同盟軍という新しい仲間もできたしね!」
「おまえたち見てたかー? 本気を出した俺の活躍を!
この俺様の神の肉体と南斗パワーがあれば救済の予言や拳王だって……あべし」
「またすぐに調子に乗るのがあなたの悪い癖です……まあ、ちょっとカッコよかったけど」
「ん?」
いつものイチゴ味な調子に戻ったサウザーにツッコミのパンチを入れる闇と、そのやり取りを見て笑う子供たち。
失った者は多く戻ってこないが、その犠牲を無駄にしないように聖帝軍は制圧前進し続けるだろう。
聖帝軍は絶望的な状況下でも退かぬ媚びぬ省みぬ連中なのだから。
……ただしそれは、この直後に起こる惨劇を生き残ることができれば、だが。
同時刻、きらりんロボの肩の上では高津がラゴンの手により首輪解除と怪我の治療を受けていた。
これまでは激しい戦闘の最中ではきらりんロボの肩に乗る暇がなくてできなかったが、戦闘が終わったことでできるようになったのだ。
「体が軽い。これなら十二分に戦えそうだ、ありがとよ半魚人」
「シャー」
「ついでで悪いんだが中の連中の手当もお願いできるか? そこのハッチから中に入れるぞ」
「シャー」
高津はきらりんロボの内部のメンバーの治療も頼み込む。
きらり、犬牟田、つば九郎、蒲原も中で怪我をしている可能性がある。
もしそうならすぐにでも手当をしなければいけない。
特にきらりは予言の歌姫である可能性がある以上、最優先で守らなくてはいけない。
怪我がなければすぐにでもスカイツリーで全国放送ライブである。
それで状況が動けば良いと思うのが、聖帝軍の理想であった。
ラゴンがハッチを開けようとした瞬間に、今まで沈黙を保っていたきらりんロボの首が動いてラゴンと高津を見た。
「シャ?」
「大丈夫だ半魚人、おまえたちのことは味方であると既に知ってるハ――」
きらりんロボの目は輝いていた。
エネルギーが収束している。
「――ズ。なに!?」
「!?」
第六感でまずいと思ったラゴンはエネルギーが放たれる寸前に、呆けていた高津を押して肩から落下させる。
「お、おまえ――」
ジェットマンでもある高津は飛行能力を持っているため宙に投げ出されても大丈夫だったが、飛べないラゴンはきらりんビームアイの光に飲み込まれて蒸発してしまった。
「嘘でしょ……ラゴ――」
まさかの味方からの攻撃、まさかの仲間の死を目の当たりにして思考の処理が追いつかなかったフェイ・イェンにもきらりんロボのビームが直撃し、大爆発させた。
「フェイ・イェン!!」
「おい、カヲル! これは一体どういうことだ!?」
「いきなりあなたたちの持ってきたロボがラゴンとフェイを撃ったんだ!」
「なんだと!」
バースデイの中にいたサウザーたちも騒ぎを聞きつけてやってきたが、返答は聖帝軍の仲間が都庁の救援隊を殺し始めたという衝撃の事態であった。
「おいやめろ! 都庁の奴らは俺たちの味方だ!
中からあいつらが共に戦ってくれたのを見てねえのか!?」
高津はきらりんロボの周囲を飛び回りながら、必死に呼びかける。
都庁を敵と誤解したのか、それとも内部で深刻なヒューマンエラーが生じたのか。
なんにせよ止めなければならないと高津は思っていた。
……しかし、事態は高津が思っているよりも遥かに深刻であった。
突如、バリバリときらりんロボの顔面装甲が破れた。
「!? !!!」
そして中から巨大な諸星きらりの顔が現れた。
だがその顔は可愛げな顔ではなく、機械と臓腑が生々しく合わさっているようであり、ギョロギョロとした目玉は見るものを恐怖させる。
なにより理解の追いつかない事態が高津を一層混乱させ、吠えさせた。
「なんじゃこりゃああああああああああああああああああああああああ!!!」
最終更新:2018年07月02日 00:10