新宿に大きく聳える都庁の世界樹。
ここを根城とする都庁同盟軍は侵攻してくるであろう
DMC狂信者の大軍団に対して防衛の準備をしていた。
ビッグサイトに潜入させた影薄組、拳王連合軍の迎撃に向かった
聖帝軍、キュゥべえを追跡するオオナズチたちは皆気がかりであったが、これまで以上に激しい攻撃をしてくるであろう狂信者に備える必要は十分にあった。
ここは未だ日本全国としては知られていない滅びの日、二度目の大災害を阻止するための対主催最後の砦として絶対に負けてはならない。
戦果を上げて帰ってくるであろう、遠征に向かった戦士たちのためにも。
「……よし、書き上がった」
世界の謎と予言の真実が明かされた時からずっと、カヲルは都庁にある部屋の一つで数枚の楽譜と歌詞を書いていた。
遊んでいたわけではない。
救済の予言の一つである全てを虜にする歌――鎮魂歌を
テラカオス内部に入るであろう死者に捧げるために絶対に必要な仕事であった。
「カヲルくん、歌ができたのね」
「小鳥さん」
ダオスの秘書である小鳥がカヲルの様子を見にきたようだ。
彼女はカヲルから楽譜を渡される。
そして小鳥を前にカヲルはバサラから受け継いだギターを手に、演奏を始める。
「直感に従って作ったものだけど、どうかな?」
「…………ええ、良いと思うわ。
すごく死んだ人を悼む気持ちが伝わってくる」
「ありがとう」
小鳥は少年の思い想いを詰め込んだ鎮魂歌を聞き、じんわりと涙を滲ませる。
死者ではないのでどこまで予言に通じるかはわからないが、きっと死者を悼み、生者のために力を貸してくれるだろうと信じられる力が歌にはあった。
「それはよかった。なら歌詞は小鳥さんが預かって欲しい」
「え? どうして!」
「人手不足だから、僕もエヴァに乗って都庁を防衛するつもりです」
カヲルは戦いに出るつもりだった。
戦死したり渾身の一作が戦いの中で紛失することを恐れたために、小鳥に預けることにしたのだ。
「待って、あなたの役割は歌! 救済の予言を完遂できるなら立派な仕事よ。
神樹さんの秘密兵器もあるし、狂信者とは戦わなくていいじゃない!」
「いや、万が一ということもある。
セルやまどかちゃんがやられても世界は破滅を迎えてしまう。
エヴァ四号機に乗れるのは僕だけだし、そうなると巫女と器の命を守る可能性は上げた方がいい」
「でも……」
少年の決意に小鳥は惑いを隠せない。
「それに救済の予言の内容的には、大切なことは歌い手じゃなくて鎮魂歌の方。
ハートさえこもっていれば誰が歌っても差して問題じゃないさ。
これからの戦い、何が起こるかわからない……ひょっとしたらこの歌を歌うのは僕じゃなくて、あなたや声を取り戻したきらりさん、もしくは他の誰かかもしれない。
その時に備えて、歌だけは遺していきたい……僕やバサラ、都庁同盟軍が生きて戦った証として」
カヲルは自分が今後の展開で死ぬ場合も計算に入れて、書き上がった遺品である小鳥に預けようと言うのだ。
小鳥は彼の気持ちを理解しつつ、大人としての答えを出す。
「わかったわ、この歌は預かっておく。
でも、あなたも必ず生き延びてこの歌を歌って欲しいの。
カヲルくんの代わりはこの世に誰もいない、死んでしまえばあなた自身の音楽を聞くことは二度となくなってしまう。
バサラでも使徒でもない、世界に唯一の歌が失われてしまうのは悲しい。
それに歌は一人で歌うより、みんなで歌う方が楽しい、だから必ず帰ってきて歌を取り返しにきなさいね」
「……ありがとう。
僕の代わりは誰もいない、歌は一人より皆か。
バサラの代わりを務めることに固執していた僕には嬉しい話だ」
小鳥の言葉を聞いてカヲルは微笑んでいた。
そんなやりとりをしていた、彼らに地面を揺らすほどの振動が襲う。
「きゃ!? 地震?」
「いや、これは!」
―SATUGAIせよ SATUGAIせよ―
カヲルがバッと外を見ると、港区方面より数万人はいるであろう狂信者の大部隊が世界樹がある新宿を目指していた。
「とうとう来たか」
「カヲルくん!」
「小鳥さんはダオスさんのところに戻って! 僕はエヴァで行く!」
「ええ!」
カヲルと小鳥は急いでそれぞれの配置である、世界樹の麓と天辺へと駆けていった。
天辺では魔王ダオスが厳かに戦いの準備をしていた。
「よし、来たな……」
「ダオスさん!」
「小鳥は今すぐ、天ぷらを揚げろ。
それからギムレーの話もありカオスロワちゃんねるは信用ならないが……それでも新宿以外の大雑把な戦況を見るには必要だ。
ネットの動きに目を凝らしておけ」
「はい!」
都庁の魔物を主体とした同盟軍は、これまでの戦いにより疲弊しており、現在進行してくる狂信者と比べれば圧倒的に数で劣る。
しかし、ドラゴンハートなどの各種恩恵により実際の人数の数十倍の戦力は持っており、特にチームワークは折り紙つきだ。
物量に任せた集団や、質に任せただけの作戦では打ち破ることはできず、何度も襲いかかってきた狂信者をレベル上げの経験値に変えてきた。
そもそも、フォレスト・セルのセルメンブレンで自軍はあらゆる攻撃を受け付けずに跳ね返す。
故に、狂信者が相手なら数だけで竦む者は同盟軍に誰もいなかった。
「流石に本腰を入れてきたようだが、少しばかり遅かったな。
エリカ、神樹! 神々の黄昏の使用を許可する!」
「あれは一発しか撃てません」
『再確認だが本当に良いのか?』
「我々にはやることが山積みなのにここで消耗するわけには行かん。
拳王の外道どもは儀式の薪に使った方が良いだろうし、主催が九州ロボに乗ってきた場合は墜落の危険でどのみち使えん。
いかな狂信者とはいえ、あれだけの数を一瞬で失えば組織も傾き、大人しくせざる追えないだろう」
一度しか使えない禁断奥義『神々の黄昏』。
使用すれば相手集団は一瞬で壊滅させられる。
ダオスはここでの人命や力の消費は愚策と考え、ここでの使用を決断した。
『へッ、そうと決まれば!』
「まどかちゃん、術の効力を上げるためにセルと融合、続けて神樹と融合して!」
「はい!」
エリカは発射前に対ハザマ軍団戦で使用したフォレスト・セルと神樹の合体状態で臨む。
融合することで術の威力と効果範囲が大きくなり数万人の狂信者をすっぽり覆うことができるほどになった。
『よし、禁断の奥義行くぜ!』
「多少の撃ち漏らしが出るかもしれん。他の者も神樹だけに頼らず迎撃を用意」
合体神樹だけでなく、後ろに控えているエヴァ四号機、ドラゴン軍団、アルルーナにレスト、その他の戦えるモブFOEも攻撃の準備をする。
これまで散々レベルを上げたため、これだけの数でも敵の殲滅は容易であろう。
さやかはいざという時の回復係として世界樹の中に残り、非戦闘員である魔雲天(人間)ときらりは地下の方で待機する。
世界樹にいる都庁同盟軍全ての者が固唾を飲んで推移を見守った。
『チャージ完了! いくぜ、神々の黄――』
「……? どうしたの神樹? なぜ撃たないの?!」
神樹はいつになっても、神々の黄昏を放たなかった。
エリカの疑問に対して神樹は呟く、ひどく怯えたような声で。
『あいつらなんてことを……』
「暗くてよく見えない! ウォークライ、明かりを!」
要領を得ない神樹の言葉に、レストは配下のウォークライに火球を放たせた。
ただしそれは狂信者に直接当てるのではなく、近くの瓦礫にあてて燃焼させて照明にするためである。
すると、向かってくる狂信者の正体を目にして、神樹が驚いていた理由を他の者も理解し、同時に戦慄した。
敵はMSとかヨロイなどのロボットがメインだ。
だがそこは対して問題ではない。頭数含めて予測可能な敵であった。
予想だにしてなかった手段を用いてきたからこそ、驚愕しているのだ。
――死にたくない!!――
――助けて!!――
――ガオォォォン!!――
『あのクソ野郎ども……人質を取ってやがる!
その人質をロボットの装甲に貼り付けてやがる!』
狂信者が操るロボットの前面には数匹ずつ、生きた魔物が磔刑のように貼り付けられていた。
今まで都庁に合流できなかったグンマーの魔物たちが捕らえられ、磔にされていたのだ。
「なんてこと、これじゃ高火力広範囲の攻撃ができない!!」
「それだけじゃない、セルメンブレン
みたいな敵に攻撃を反射する防御技も使えない!
反射してロボットが大爆発したら人質の魔物も巻き添えだ。卑怯者めえ!」
アルルーナとレストが敵を非難するが、無理もない。
これではいくらレベルを上げたところで、敵を攻撃……特にダオスレーザーなどの広範囲攻撃ならば尚更するわけにはいかないのだから。
「それだけおまえたちは、我々を本気にしたということだ」
「!?」
怒り戸惑うレストたちの前になにかが転移しようとしていた。
最初に中から現れたのはディパックとそこから溢れ出る大量の水だ。
「うわっぷッ! これは海水!?」
水の正体は、大量の海水。
しかし大量といっても溺れるほどではない。
深さ十数cm程度の水たまりが広範囲に出きるだけでこれ自体に直接の害はなかった。
問題なのは次に転移してきた存在だ。
レストら迎撃部隊の中央に現れしは次元連結システムを使って転移してきた最悪の冥王、黒塗装のグレートゼオライマー。
「敵!」
多くのモブ魔物が人質を伴って侵攻してくる敵に気を取られる中、レストら歴戦の戦士たちの反応は素早かった。
グレートゼオライマー相手に繰り出される世界樹ノ剣――全状態異常95%付与、体力吸収。攻撃力は女装鎧であるソウルアーマーの力で40倍。レストのレベルの高さも相まって直撃すればガンダムクラスの装甲までなら確実に消し飛ぶ。
追撃にアルルーナはアシュラマンさえ一撃で葬った冷気の一撃、フロストスマイルを放つ。
幸い、転移に耐えられない都合かゼオライマーの装甲に人質は磔られていない。
倒すのは問題なかったハズだが。
「当たらねばどうということはない! フットワーク、そして分身!」
「なんですって!」
「重そうな見た目の割になんて敏捷性!」
格闘攻撃を確実に躱すスキル・フットワーク、そして必中攻撃以外は確実に躱す分身。
ゼオライマーに乗るドリスコルはこれらを使って、攻撃を凌ぐ。
「ダオスさん! 援護を!」
「ダメだ! 味方が近すぎる!」
「これじゃ撃てないよ!」
ダオスやまどかも追撃に加わろうとしたが、敵と味方の距離が近すぎたためにレーザーや他の攻撃も発射できない。
それはエヴァ四号機に乗るカヲルや氷竜・ウォークライとて同じだ。
相手が泡を食っている攻撃のチャンスを得たドリスコルは反撃を行う。
「Jカイザー、バラージュ!!」
「「うわあああああああああああああああ!!」」
八罫ロボの一体、月のローズセラヴィーの技であるレーザー攻撃を回転しながら放つゼオライマー。
周辺にいたレストやアルルーナは高い回避力と防御力のおかげで大した打撃を受けなかったが、二人未満の実力であるモブ魔物はそうとは行かず、数十匹の魔物が一気に蒸発し、同時に爆炎を引き起こした。
「今だ! 奴を斬れ、天龍!」
「応!」
一瞬だけ開いたゼオライマーのハッチから眼帯の艦むす、天龍が現れる。
水浸しになった地面に降り立った天龍は、ウォータースケートの要領で水上を猛ダッシュする。
その機動力は圧巻であり、レスト含めた前衛の誰も追うことはできず、捕まえようとするものを嘲笑うかのように障害になっていたモブ魔物を天龍は腕の刀でバッサバッサと、滑らかに辻斬りしていく。
「へへん、艦むすは水上だと機動力や戦闘力が地上の数倍から数百倍まで跳ね上がるんだぜ!
世界最高水準な俺をウスノロなおまえたちが捕まえられるわけがねえよ!」
「艦むすだって……!?」
レストには確かに聞こえた。
古代ミヤザキが使用した人口巫女――艦むすの言葉。
彼女の言葉に嘘がなければ、その艦むすが目の前にいるのだ。
「どうして誰も止められないの!?」
『あ、あの女が異常に早くて強いのもあるが、デバフに麻痺や混乱を招く攻撃をしても全然効果がないんだ!』
『罠もダメだ!』
「あいつ、無敵状態になれるスキルでもあるの!?」
アルルーナが束になっても天龍を追い詰められない理由をモブFOEに問いかけるが、返ってきたのは天龍への恐れであった。
「見つけたぜ、俺の標的は――ロリコン臭がするおまえだ!」
『くッ、ミラーシールド!』
天龍が狙いを定めたのは前衛に盾要員として出ていた氷竜もとい氷嵐の支配者。
氷竜は急いで万能属性攻撃さえ無力化するカウンタースキル・ミラーシールドを発動する。
「なるほど、攻撃を仕掛けると反射されるタイプの『特殊効果』もしくは『罠』だな。ということは!」
\ さいごのガラスをぶち破れ~ /
* \ 見慣れた景色をけりだして~ /*
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+ ..ヽ/ /Д`/⌒ヽ / .| / / / //
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し' \_/ i />  ̄ ̄ ̄ ̄
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// し' / /\ + ̄:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
※天龍です
『馬鹿な!?』
氷でできたミラーシールドはガラス窓のように簡単に破られた。
マーラ戦の時のように奇襲で首がもげてミラーシールドが貼れなくなったり、きらり戦の時のようにステータスを強制的に一桁にされたわけでもない、完璧なミラーシールドでもあったにも関わらずだ。
直後に天龍の砲撃が氷竜の三つある首の内、左右一本ずつ粉砕、胸部にも一撃をもらい、残った一本の頭の口から吐血し、地上に倒れた。
『氷竜! 今いくぞ!!』
比較的動けたウォークライとドラゴンの部隊が空から氷竜を助けようとする。
ブレス攻撃などは味方を巻き添えにして危険だが、単体攻撃である爪や牙ならば。
そう考えて天龍に襲いかかろうとするが、ここで狂信者たちの迎撃に合う。
「やらせはせんよ」
「目標をセンターに入れてスイッチ!」
「(味方の邪魔をするのは)やめてくださいよ本当に!」
「ビーム喰らって死のう、な?」
『邪魔をするなーーーッ!!』
数多のモブ狂信者の乗るロボット兵器、初号機F型装備、フェネクスにユニコーン、そしてゼオライマー自体の攻撃により、氷竜を助けようとしたドラゴンの多くが撃ち落とされた。
ウォークライは妨害してきた狂信者たちに怒号を上げるが、それで狂信者が止まるわけではなく、弾幕射撃により他の同盟軍の味方の誰もが、自陣営にいながら氷竜を助けに行くことができなかった。
氷竜自身も周囲の味方を巻き添えにしない貫く氷槍や三連牙で抵抗するが、天龍はこれを刀でカッキンカッキンと弾き、砲撃と斬撃で急速に流血させていき、みるみる内に満身創痍にさせた。
『お、俺を一瞬でロリコンと見抜いた嗅覚!
そして魔法や罠を無力化する防御能力……貴様もしやオシリスの……』
氷竜は目の前の少女の性癖や能力から正体をなんとなく察し、まさかと思い問いかける。
しかし天龍は冷酷な瞳を向けつつ、障壁を貼れなくなった氷竜の残った最後の首を斬り落とした。
「……そいつはもう死んだよ、今の俺は軽巡洋艦の天龍だ」
【氷嵐の支配者@新・世界樹の迷宮 ミレニアムの少女 死亡確認】
「氷竜さん! そんなぁー!!!」
同盟軍の心の声を代弁するかのようにまどかは悲痛な叫びを上げる。
氷竜の死はそれだけ呆気なく、無惨であった。
助けたくとも一切の援護はできなかった。
大技は氷竜や周辺の味方を巻き込んでしまい、セルメンブレンはなぜか天龍相手には反射されず盾としての効果も発揮しないからだ。
『よくも同胞を……!』
「許さないぞ!」
空からは漸く敵の弾幕をくぐり抜けたウォークライが、地上からは追いついたレストの挟撃が天龍に一撃を食らわせんとする。
しかし、それより早くゼオライマーが天龍を庇うように彼女の目の前に転移し、『戦闘から一方的に逃げる』スキルを使用する。
「エスケイプ」
「!?」
「じゃあの」
復讐の一撃を放とうとした者を嘲笑うかのように、ゼオライマーと天龍は次元連結システムによって転移し、次の瞬間に狂信者の陣営に舞い戻っていた。
ドリスコルが使用したスキルは敵の攻撃そのものをキャンセルし、一撃離脱を可能にする『エスケイプ』。
味方が使うとヌルゲー化し、敵が使うとウザったいことこの上ない戦闘スキルである。
今の戦闘でそれを察したレストは舌打ちする。
「チッ、この嫌らしさは、単に欠点を突いてきた魔神皇の比じゃない」
狂信者陣営側に戻ったドリスコルと天龍。
「トラ、トラ、トラ。大成功だぜ」
「ああ、最初の奇襲は成功だ。厄介になるかもしれぬ氷竜の殺害にも成功した」
天龍が氷竜を最初に狙ったのは、彼の持つスキルであるミラーシールドを危険視したからである。
ミラーシールドはどんな攻撃も跳ね返す盾であり、最悪ゼオライマーの最大火力である烈メイオウ攻撃さえ自分たちに戻ってくる危険が有る。
単に跳ね返すだけならレストやフォレスト・セルにもできるようだが、レストは装備による自動発動、セルは自軍全域まで広げてしまうので、こちらが人質を盾にすると攻撃力が現象する。
氷竜はタイミングや防御対象を自由に選んで使用できるため、防御面では厄介ではあった。
だが天龍が持つオシリス譲りの能力により、相手からの魔法・罠・特殊効果を殺せる天龍によって氷竜のミラーシールドは発動することなく、抹殺を可能にした。
それでも高い火力は都庁には残っているのだが、三竜の最後の一匹が亡くなったことで士気と指揮力は減退。
高すぎる攻撃力も人質という肉の盾の前では生かせまい。
少なくともドリスコルは敵の攻勢を削ぐ簡単な方法を、
イチロー戦で学習済みであった。
「人質の存在が、都庁同盟軍の攻撃を渋らせている。
尋問・拷問のためにギリギリまでクラウザーさんへの生贄に捧げなくて正解だった。
奴らを殺すには物量や質、策だけでは足りなかったのだ……一番必要だったのは心を抉るような卑劣さだ」
「狂信者で評判最悪の俺たちからしてみれば失うもんなんて何もないしなー」
「そうだな、さて、モブ狂信者どもの士気が高い内にゆるりと進軍させるか」
指揮官であるドリスコルの指示に従い、人質を盾にしながらロボット部隊が進軍を始める。
一方の都庁側は満足に攻撃できず防戦一方になるしかなかった。
「ダオスさん……どうしましょう」
「クッ……今までで一番辛い戦いになるだろうが……」
同盟軍の長であるダオスは苦渋の決断を迫られた。
大火力による攻撃は人質を殺してしまう、人質を無視すれば少なくともモブ狂信者のロボット軍団だけは一掃できる。
しかし、それをやってしまえば戦争で滅び、現代の苦境を招いた古代グンマー・古代ミヤザキと何も変わらなくなってしまう。
「小鳥、全員に伝達しろ。
人質は何匹いるかわからんが、流石に全部の機体に載せているわけではないだろう。
それぞれで役割を分担する。
レスト、ウォークライ、アルルーナ、カヲルは主軸になっている狂信者を優先的に狙え!
指揮官や隊長格を倒せば敵も混乱する。
その他の魔物は人質救助を優先し、範囲攻撃は使わずに肉弾戦のみで中のパイロットだけ殺せ。
私とまどか、セルと神樹は世界樹の防御に徹し、人質の救助が済んだら、一気に狂信者を殲滅する。
……それまで申し訳ないが、地上の部隊には一切の支援ができんとな」
「厳しい戦いになりますね」
「今は耐えてもらうしかない」
小鳥はスマホや伝令係の魔物を通して味方に指示を伝達。
ダオス、まどか及びセルと神樹は高出力のレーザーを敵ではなく、世界樹に直接降りかかる敵の攻撃に対して向けることで、世界樹への被害を無くす。
「奴らめ、撃ち落とした時の被害を考えてわざと低く飛んでいるな……煩わしい奴らめ。」
ゼオライマー、ホモのガンダム二機はあえて低空を飛んでいた。
レーザーで撃墜でもすればすぐ下にいる人質が巻き添えになるからだ。
そして、自分を含めて命の価値が低い狂信者は無遠慮に攻撃をしかけてくる。
地上でロボット軍団と白兵戦を繰り広げる魔物たちは苦戦を強いられていた。
「ファースト!」
「デュエル!」
「オールヒット!」
「ブラストショット!」
「フィックスDMGIII」
「マイナスショットIII!」
「エスケイプ!」
「ウィークポイント!」
『ぎゃあああああああああ!』
『こいつら、鬱陶しい!!』
モブだけを見た場合、地の能力では魔物側が何枚か上手ではあったが、狂信者側は人質を取ってる上に、ドリスコルから渡されたのであろう所持スキルの数々が、魔物たちの攻撃力を削ぐ。
攻撃の先制権はスピードに関係なく奪われ、連携が取れない一体一の戦いに強制的に持ち込まれ、回避力に関係なく全弾命中。
転倒させられて何もできず、200近いダメージがなぜか半分以下の80固定にさせられたり、ちょっとかすっただけで攻撃力を激減。
攻撃しては逃げられ、挙句まだある程度HPに余裕があるのに部位破壊させられる……そしてレーザーによる支援砲火ができなくなったので倒しても倒しても中々減らない。
戦闘やドラゴンハートで強化されたハズのモブ魔物が何匹も犠牲になった。
ドリスコルの引き連れた軍団はこれまで以上に能力やスキルだけで勝つのは難しい相手であった。
だが、魔物たちもただ黙ってやられるつもりはなく、苦戦しながらもロボットを範囲攻撃を使わずに戦闘不能に追い込み、パイロットを殺した後に人質を救助。
少しずつであるが、人質の魔物を世界樹の中へ保護することができた。
そんななか、ひとつの因縁の決着が今、始まろうとしていた。
「エヴァ初号機……それに乗ってるのはシンジくんなのか?」
「カヲルくん、君がそっち側にいるのが僕には理解できないよ」
白と紫のエヴァを通して銃を向け合う二人の少年たち。
本来なら親友になれた者同士が、敵同士としてとうとう戦場で出会ってしまったのである。
「カヲル、ひょっとしてあれに乗っている彼は君の親友の……」
「ああ。シンジくんの相手は僕に任せてくれないか?
彼の戦い方を知ってるのは僕だけだから……」
『すまん、ここは任せたぞ』
エヴァンゲリオンの相手は同じエヴァンゲリオンに任せ、レストたちはドリスコルや天龍を討つべく、追いかける。
氷竜を殺した艦むす、そしてこの攻撃部隊の総司令官と思われる男を倒せば、活路を見いだせるからである。
「人質の盾は防御としては有効……だが、これだけで決定打を与えるのは苦しいか」
ゼオライマーのコクピットの中でドリスコルは呟く。
確かにダオスやセルの攻撃は自陣営に全く届かず、モブ魔物にも被害を与えているが、都庁の世界樹を確実に倒し切るにはこれだけでは足りない。
反射能力無しでも圧倒的な防御能力を持つセル・神樹が世界樹を守る防壁となっており、遠巻きからのゼオライマーによる攻撃さえ防いでいる。
いくら天龍がスキル殺しの能力を持っているからとはいえ、単身で突っ込ませて殺させるほどドリスコルも馬鹿ではない。
グレートゼオライマー及び現状の狂信者では最大火力であろう烈・メイオウ攻撃を懐から浴びせれば確実な打撃を与えられるかもしれないが、些か博打がすぎる。
人質もいつかは全員奪還されて、狂信者が逆に殲滅される危険がある。
故に都庁軍が気づいていない水面下では別の作戦が展開されていた。
(ふッ……お膳立ては済ませたぞ、ゼロ、あとはおまえ次第だ)
「みんな……ダメ……この戦いは」
「うるさいメス豚は耳レ○プ」
「いやあああああああああああああ!!!」
ゼオライマーの中で再び意識が戻った次元連結システムもといカレンが何かを言いかけたが、ドリスコルが彼女の苦手なDMCの曲を音量いっぱいで流したため、誰にも聞こえず阻止された。
世界樹内部1F、そこにはさやかや彼女に従う魔物が負傷した魔物や人質の治療を行っていた。
『すまない、本当に助かった……』
「私にはこれしかできないからね、ただひたすら治すだけよ」
さやかはもはや、自分がまどかやほむらのように戦闘に向いていないことを認め、逆に戦闘で前線から離れられないまどからに変わって後方で回復魔法を振るっていた。
必死に治療し、激しい戦場にも関わらず魔物を安心させるために笑顔で励ますさやかの姿はまさにナイチンゲールのようだった。
(うッ……もうソウルジェムが真っ黒!)
しかし、怪我人が矢継ぎ早にくる環境では穢れが貯まるのも早い。
すぐに黒ずんだジェムが、外の戦いは地獄めいていると語っている。
『一番回復能力があるとはいえ無理するな』
『補給のためにフォレスト・セルに穢れを吸ってもらえ』
「
ごめん。
こんな時に魔女になるわけには行かないしちょっとだけ離れる」
さやかは穢れを取るために一時的に現場を離れた。
「早く戻らないと……」
世界樹の入口、戦場から運ばれてくる魔物の数は増える一方。
それがさやかに焦りをもたらした。
そこで肩を支えあう、互いに傷ついた二匹の魔物と目があった。
オスと思われる魔物が、弱々しい声でさやかに語りかける。
『そ、そこの人間……俺の話を聞いてくれ』
「待って、今は他の仲間の治療が……」
『敵の、狂信者の作戦に関わる重大なことなんだ……』
「なんですって!?」
人質など汚い手を使ってきたドリスコルの部隊に、まだ奥の手があるのか。
それが本当なら早くダオスや皆に伝えないといけない。
『俺はもうもたん……おまえに情報を渡したい……もっと近くに……耳を貸してくれ』
「待って、治癒魔法を……ダメだ、ソウルジェムが持たない、クッ」
今にも死にそうな魔物だが、現在のさやかには回復できる魔力がない。
悔しい思いをしながらもせめて、死に物狂いで集めてきた情報だけは無駄にしないために魔物に耳を傾けた。
『ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが命じる。貴様は俺の命令に従え』
「イエス、ユアハイネス」
さやかが魔物「だと思っていた何か」はさやかが近づいてきた瞬間、両腕で頭を掴んで強引に目を合わせさせた。
そして見てしまったのだ、目の中の紋章――絶対遵守のギアスを。
さやかはこの瞬間から、このギアスの持ち主の兵士となってしまった。
『うまく侵入できたな』
『ええ、鮮やかでした。さすがお兄様!』
さやかが魔物だと思っていた二匹の正体はカギ爪団の現在の首魁であるルルーシュと義理の妹である深雪である。
(仕事をしないと評価が低かったサイコマンだが、彼の残した技術――オーバーボディの方は大いに役に立ったよ)
サイコマンが狂信者にもたらした技術、オーバーボディ。
二人は着ぐるみのようにオーバーボディで魔物に偽装をしていた。
偽装は完璧で少なくとも視覚や嗅覚ではそこらのモブ魔物と判別不能。
ちなみに負っていた怪我はそれっぽく見せた血糊である。
実はここまでの作戦は全部ルルーシュことゼロの発案である。
これまでの都庁と狂信者の戦闘経緯から、都庁同盟軍は仲間である魔物に対して「仲間意識」が強すぎること……言ってしまえば敵だけでなく味方にも向けるべき「非情さ」が欠如していることを見越していた。
おそらく戦況をひっくり返す核兵器的な奥の手もあると推測していたが、人質を取られればそれも使用不可。
そして人質を救助しようとして、偽装したルルーシュと深雪を内部に招き入れてしまうのである。
(ふふッ、奴らは気づいてませんね、助けた人質の半分はオーバーボディを纏ったカギ爪団の構成員と深海棲艦)
(しかも残り半分は、実際に都庁に合流できずにはぐれた魔物。
気づいたら気づいたで都庁内部は疑心暗鬼でパニックになる)
同盟軍が必死になって助けている人質の半分はスパイ。
今はルルーシュの合図を待って大人しく待機しているようだが、内部で暴れでもしたらどうなるだろうか。
(狂信者はかつてデスマンティスを使ってスパイ作戦を行ったが、肝心のスパイが私情に走り、後詰めの部隊は作戦もヘチマもない連中だったために失敗に終わった。
だが、今度は違う。
俺はただスパイを内部に入れるだけでなく、内部にスパイを作り出せる絶対遵守のギアスを持っている。
味方に甘い奴らが、この少女のようにただ操られただけの少女を撃てるかな?)
ルルーシュは心の中でほくそ笑む。
『おっと、作戦はまだ始まったばかりだ。
深雪は手はず通り、そのマスターボールでフォレスト・セルを捕獲しろ』
『はい、お兄様!』
作戦のプランの内には深雪が持つ、マスターボールによるセル捕獲がある。
このマスターボールはサーフによる魔改造を受けているため、持ち主がいても確実に捕まえることができる逸品。
スキルやステータスの高さはまったく関係なく何であれ捕獲可能。
何より都庁で最強の能力を誇るフォレスト・セルを捕まえてしまえば、トレーナーのレベルの都合でセル自体を操ることはできなくても都庁の戦力はガタ落ちし、世界樹陥落を容易にするという寸法である。
魔物に扮した深雪は背後からこっそりと忍び寄り、不意打ちで捕まえようというのだ。
『俺はこの娘に都庁の内部を案内させてもらう』
『危険ではないですか?』
『ギアスで洗脳できそうな奴を狙って兵隊を増やしていく、俺のことなら心配しなくて良い』
『敵地の中でなんと勇敢な……さすがお兄様!』
いつもの「さすおに」のやりとりの後、ルルーシュと深雪は一時の別れをした。
人質に偽装した狂信者仲間の手で巧妙に隠されたせいか周囲の魔物たちは、スパイが紛れ込んだことに気づいていない。
『さあ、俺を案内しろ、さやか』
「はい」
『……都庁には悪いが、テラカオスに纏わる必要な情報や資材を奪い、今後の役に立ちそうな人材以外は全滅してもらう。
ナナリーの蘇生のためにはどうしても犠牲がいる。
大災害を防げようとも、そのあとの世界にナナリーがいてくれないと俺はダメなんだ……!』
妹への愛に狂った男、ルルーシュの瞳にもまた、ギアスの他に松本と似たような狂気を孕んでいた。
【都庁同盟軍】
※全てを虜にする歌→鎮魂歌がカヲルの手によって作成されました
楽譜は小鳥が預かっています
【ダオス@テイルズオブファンタジア】
【レスト@ルーンファクトリー4】
【ウォークライ@セブンスドラゴン2020】
【音無小鳥@アイドルマスター】
【渚カヲル@新世紀エヴァンゲリオン】
【鹿目まどか@魔法少女まどか☆マギカ】
【エリカ@ポケットモンスター】
【歪みし豊穣の神樹@世界樹の迷宮4】
【アルルーナ@新・世界樹の迷宮】
【諸星きらり@アイドルマスターシンデレラガールズ】
【ターバンのレスラー人間(ザ・魔雲天)@キン肉マン】
【美樹さやか@魔法少女まどか☆マギカ】
※ルルーシュのギアスによって操られました。
【DMC狂信者 都庁侵攻部隊】
※モブ狂信者は人質を盾に侵攻しています。
その人質の半分はオーバーボデイで偽装したカギ爪団構成員&深海棲艦です。
【ドリスコル@フロントミッション】
【天龍(元オシリス)@艦隊これくしょん】
【道下正樹@くそみそテクニック】
【遠野@真夏の夜の淫夢】
【碇シンジ@新世紀エヴァンゲリオン】
【ルルーシュ・ランペルージ(ゼロ)@コードギアス 反逆のルルーシュ】
※オーバーボデイで魔物に偽装中。
※四条化した魔理沙の死体を道下から譲渡されました。
【司波深雪@魔法科高校の劣等生】
※オーバーボデイで魔物に偽装中。
※魔改造マスターボールをドリスコルから譲渡されました。
フォレスト・セルを捕まえる予定。
最終更新:2019年07月15日 23:02