(……)
都庁、世界樹。
その奥地で取り残された男、ルルーシュ。
彼はその頭脳を持って考える。
考えねば死ぬ。
しかし彼はそういった死線を潜り抜けて生き延びてきた。
(……都庁の戦力、竜は削れたようだが逆に言えばそれだけ。狂信者共はドリスコルを含め大敗したか)
戦況はそう判断せざるをえなかった。
自分達の作戦にミスは無かった筈だ。単純に相手の力量がそれを上回った。
(救助した魔物が半ば監視されているこの状況、潜り込んだことにも勘付かれた可能性が高い……)
そして自分達の存在がばれているかもしれないことにもたどり着いた。
ルルーシュとて戦えないことは無いが、あの大軍とグレートゼオライマーすら退ける連中だ。
仮にギアスを使ったところで対処しきれず、そもそも何名かはギアスに対して耐性すらあるかもしれない。
(そして、今の歌にあの榛名という女……)
何より、今まさに自分の前で起きた奇跡。
そこから導き出される、僅か十数秒後の必然。
ルルーシュの思考がまとまり行動に移るまで、僅か数秒。彼の思考速度は次の現象よりも早かった。
つまり。
「お見事だ、都庁の者達よ」
「「!?」」
自らその正体を、同盟軍に晒したのだ。
当然、場は混乱する。榛名の登場でただでさえ混乱しているのだから。
その隙をついて、攻撃される前に次の言葉を紡ぐ。
「我が名はゼロ。どうしても諸君らに伝えたいことがあり、悪いが魔物に扮して入らせて貰った」
「狂信者共を利用したことも詫びよう。私の他に……何名か狂信者も紛れてしまっているが、それももう問題ないだろう」
「後は……彼女達が始末してくれる」
ルルーシュの言葉に、共に潜入していたカギ爪団の面々は憤慨する。
裏切ったのかと、即座に飛び出てこの男を始末したかった。
しかしそれはもう、叶わない。ルルーシュの言葉通りに彼らは鎮魂歌が終わった時点で詰んでいた。
「……撃て!」
魔物の中から、少女の掛け声。
直後、救助された魔物の一部が同じく救助された魔物の一部を撃ち抜いていく。
「榛名さん!」
「あ、あなたは!?」
そして、魔物の中から現れたのは海兵のような格好の少女。そう……駆逐艦と呼ばれる少女であった。
(理屈はわからないが、要はサーフの持ち出した兵器はあの歌で浄化されたということらしい)
(ならば必然的に、紛れ込んでいたイ級とやらもその影響を受ける。この結果は当然のことだ)
さらに数名の駆逐艦が飛び出し、潜伏していたカギ爪団を蹴散らしていく。
同士討ちを避けるために密かにつけていた識別基準が仇となり、彼らは混乱の最中で全員が抹殺されるのであった。
そして、少しして混乱が落ち着いた頃。
「……お前は、狂信者ではないというのか?」
「ああ、大丈夫だよダオス。ゼロは信用できるから。あたしに耳打ちで作戦全部教えてくれてさ。
こりゃ大変だって報せに来たところでなんか凄い現場に出くわしたわけだけど」
ルルーシュは既にギアスの支配下においたさやかに命じていた。
「絶対に俺が都庁に疑われない言動を心がけろ。それ以外は全てお前の自由だ」と。
ルルーシュとしては狂信者に潜伏していたのも、敵対しているのも、協力者が欲しかったのも、全て事実。
ここまでくれば身の安全のためにギアスも含めて正直に打ち明けてもよかったのだが、
何しろルルーシュも知ってのとおりここの連中は仲間意識が強い。
明確な害を加えたわけではないが、絶対遵守という人の精神を捻じ曲げる真似は反感……下手をすれば殺意を買う。
だからこそそこだけは伏せ、彼女への命令も極力今まで通りに過ごせるものにしておいた。
万が一の時の手段としてやはりギアスは隠しておきたいという思いもあったが。
「……榛名、と言ったな。この男、ゼロの言葉は本当なのか?」
「榛名も堕ちていた頃の記憶は不完全、全てを把握し記憶しているわけではありませんが……彼が一部狂信者から警戒されていたのは確かでしょう」
そしてここに深海……否、艦むすの証言も加わる。
全てが真実ではない。全てが嘘ではない。混ざり合った情報は非常に手強い壁になる。
「……ここに来るために、狂信者を欺くために、結果として多くの魔物を犠牲にしてしまった」
「……本当に、申し訳ない」
ルルーシュはその場で頭を下げる。
これも偽りではない、一部は本当の気持ち。
状況から都庁の犠牲はやむを得ないとは思っていたが、それ以前は元々可能であれば平穏な接触も考えていたのだ。
こうなってしまえば当初の予定通りに切り替えた方が早いし、何より忌々しい狂信者のフリもしなくてよくなる。
「……そこまでして、我らに会いに来た理由とはなんだ?」
「はい。……この殺し合いの真の狙い。主催者が計画したプロジェクト・
テラカオスについて」
ルルーシュが重々しく口にした言葉に、同盟軍の誰もが反応を示す。
テラカオス。その言葉を知っている者は一握りしかいない筈なのだ。
「主催者の計画を何故……?」
「偶々、ではあったのですが。粛清されたらしい安倍首相の妻は善人であったらしく……
一縷の望みをかけて、参加者にことの真相を纏めたファイルを送信していたようです。
残念ながら、それが発覚したのか彼女も粛清されてしまったようですが……」
再び、嘘と真実を混じらせる。
大切なところはしっかりと真実を伝え、今は関係ないところは嘘を伝える。
ルルーシュも言葉を選びながら、慎重に信頼を勝ち取っていかねばならない。
最終的な目標、ナナリーの為に。
そしておそらくこの後語られる、サーフの正体を聞く為にも。
しかしルルーシュの計画は、思わぬところで中断を余儀なくされた。
突如、空間に妙な裂け目が生まれる。
直後、その裂け目は大きくなり……中からは謎の存在が現れた。
その手に、何かを持ちながら。
「!!!」
怒涛の勢い。世界樹に予期せぬ来訪者、その3。
ミヤザキの巫女たる榛名。彼女は今や巫女まどかも認める協力者。
偽りの狂信者たるゼロ。彼もさやかの話と今後の話を合わせれば協力者なのかもしれない。
さて、この三人目は?
いや、三人目ではない。
追加の100名もご登場だ。
「おや? これは偶々なのか願いを叶えてくれたのか。いや、スキマ転移が座標指定できないと考えるより最速であの二人と戦えるお膳立てg
ドッ!
早口を言い切る前に、スキマより現れた仮面ライダー……
biim兄貴は密やかに戦ってみたかった相手の一人であるレストの拳で心臓を貫かれて死んでいた。
その死の速さは、まさに彼が好む最速であったかもしれない。
あまりの速さに残る100人もパニックを
起こすが、次の瞬間には彼らも兄貴の後を追う。
躊躇いの無い瞬殺、つまりは一緒にやって来た100人も殺すべき敵。
魔物達は示し合わせるでもなく、次々に群がりあっというまに喰らい尽くす。
「……ゼロ、これもあなたの作戦か?」
「ち、違う! こんな連中、私も見たことが無い!」
感情の無い声と共に手についた血を振り払うレストを見て、すかさずルルーシュは本当のことを口にする。
そしてすぐさま元深海勢の駆逐艦にも(見えないが)視線を送る。
自分達が元の姿に戻れた実感もまだ無いまま、怒涛の展開となる現状に彼女達の理解も追いついてはいないだろう。
しかし駆逐艦、子供故にこの状況下で嘘は口にできない。ただ勢いよく首を縦に振り続ける。
「こいつが持っていたのは、N2爆弾!ほむらが回収したものと全く同じだ!なっ……起爆まで30分を切ってる!?」
奪い取った物を見てレストの顔は青ざめる。
空間転移で進入してきた敵が持っていた代物は、かつて仮面ライダー斬月が持っていた爆弾と同じ型。
鍛えられたダオス達ならば耐えられないこともないが、世界樹は少なからず傷を負う。
「くそ狂信者連中め、最初から私も始末するつもりだったか……!」
ルルーシュも当然N2爆弾に対する知識を持つ。
このタイミングで内部にこんなものを持ち出してくるとなると、恐らくは潜伏させていた狂信者が密かに連絡を入れたのだろう。
保身の為に都庁に鞍替えした瞬間、恐らくは灰色だった自分は黒となり、すぐさま狂信者からの粛清を受けかけた。
こう考えるのが一番辻褄があうと同時に、ある悪寒が彼の全身を支配する。
「ま、まさか……」
そしてそれは、ダオスとまどかも同じく。
爆弾の脅威はあるが、僅かに猶予あり。襲撃者も迅速に葬った。しかしその襲撃者は、いきなり内部に転移してきたのだ。
氷竜が倒れ、彼の分の結界が消滅したことが原因なのか。本当にゼロの始末目的かどうかはわからないが、とにかく侵入を許した。
そして相手が狂信者であるならば、101人で済むわけがない!
「あっ……!?」
まどかは思わず叫ぶ。
今、この上層部には残された世界樹のほぼ全戦力が集結している。
だからこそ敵も処理できたが、もし他の場所に、例えば戦えない子供の魔物やきらり達の避難している場所に向かわれたら?
守りは固めているが、N2爆弾を持ち出されたのだ。絶対は無い。
たまらずまどかはレストを護衛につけ、避難場所へと跳べる樹海磁軸を目指す。
かかる時間は僅かに十数秒。万一があってもまだ間に合うはず。
その願いは、直後打ち砕かれる。
「そ……んな……」
がっくりとまどかは膝をつく。
その瞬間、彼女の膝は生暖かくぬめる血の海に沈んだ。
避難所は、地獄そのもの。
無数の魔物の亡骸、一人たりとて生存者がいないとわかる程の蹂躙具合。
むせ返る血の臭いは、さながらカオスロワの縮図のようにすら見えた。
無価値無意味無慈悲に彼らは殺されたのだ。
「……どうして、だよ……っ!!!」
そして亡骸の中にある二人の姿を見つけた瞬間。
まどかもレストも、自分の手を握りしめて、血を流した。
その程度の痛みはなんでもない。魔物達が、この二人が味わった苦痛の恐怖に比べれば。
大きな犠牲を払いながらも
聖帝軍と共に助け出せた、間に合った筈の少女は首を刎ねられ。
そんな少女の亡骸を抱きしめながら、守るという誓いを果たせなかった戦士の無念はどれ程だったことだろう。
「……」
魔物達はもはや原型を留めず修復は難しい。
もっと、はやく気がついていれば。後悔の念を抱きながら、損傷が少なかったきらりと魔雲天をレストは修復する。
魔力の無駄遣いと言われようが、彼はこの二人をこのまま放置できなかった。
自分とサクヤのような……それと違い、間に合った筈の二人。
もう直接的な戦力とはなり得ない彼らが、魔物が、どうして犠牲にならなければならないのか。
狂おしい程の、影薄に出会う前の状態かそれ以上の憎悪と敵意の感情がレストの中に渦巻く。
「……っ!?」
だが、彼は直後に冷静さを取り戻す。
血溜まりの中で、必死に生存者を探していたまどかの手がいつの間にか止まっていたのが目に入ったのだ。
そして彼女の全身…いや世界樹全体から自分以上の強い怒りを感じ取ってしまった。
「ま、まどか!?」
「……まだ、いる」
ぽつりと呟かれた言葉。
それは生存者のことではなく、外敵のことであるとすぐに察しがついた。
まどかの背から伸びる魔力の翼は世界樹と繋がり、今の彼女はより深く世界樹の現状を理解し力を振るえる。
かつての魔王マーラ戦でも全方位攻撃を可能とし、そもそも地下に向かう際は敵位置を確認してから向かっている。
侵入者は、知らなかった。いや知ることができなかったというべきか。
温厚なまどかではあるが、怒りが限界を超えた際の攻撃に容赦は無くマーラが消し飛ぶ程であり。
世界樹そのものを用いて攻撃できるということを。
致命的な失策は、100人単位という人数の多さ。
まどか、世界樹からすれば土足でそれだけの人数が踏み荒らせば嫌でもその位置を完全に把握できる。
「……許さないっ!」
「まどか落ちつくんだ!君は手を汚さなくていい!僕が…」
静止を振り切り、世界樹とまどかがシンクロする。
こうなってはもはや誰も止めることはできない。
巫女の鉄槌が、異物に下される。
※
中層に転移していたメガへクスは、ぞわりと嫌な気配を感じた。
本来感じない筈のもの、これは2度目の経験だ。そしてこれが最後の経験ともなる。
「なっ、なんだ!?」
ヘルヘイムのような…いやそれ上回る異様な速度で周辺の根や枝に葉が荒れ狂う。
たかが植物などではない。明確な殺意と尋常ではない魔力の込められたそれは、無数の刃と槍となり瞬く間に兵士を肉塊に変えていく。
メガへクスも応戦するも、全方位からの殺意には流石に分が悪い。
絡みついた根はそれぞれがあらぬ方向へと動き、彼の身体をバラバラにねじり切り、さらに全身を滅多刺しにした。
※
「こ、これは……!」
下層に転移していた紫はしかしまだ生きていた。
下層は他の階層と比べて空間が広かったのが幸いし、無数の根が兵士を葬る中で紫は回避が間に合ったのだ。
とはいえ流石の賢者も焦る。
この攻撃は罠の類ではなく、明らかに現在進行形で自分達に向けられている敵からの攻撃。
地下で魔物を葬ってから、まだ数分すら経っていない。それなのにもう自分達の侵入がばれたというのか。
とにかくわかるのは、今やこの世界樹内部全てが攻撃範囲ということのみ。
(これはいけませんわね……一度、退かなければ。スキマでの侵入が可能とわかった以上、この部屋に拘る理由はない……!)
爆発までの猶予は無い。
しかし下層に爆弾を仕掛けることは最早不可能である以上、作戦は変えざるをえないだろう。
根が伸びないであろう上層部に狙いをつけて、紫はスキマでの緊急撤退を行う。
※
「え?」
紫の…侵入者達の誤算と不運はいくつか存在する。
内部状況の未把握、作戦実行の為に引き連れた300の兵士。
彼女達も奮戦はしてきただろうが、乗り越えた明確な死地は疲弊した安倍首相戦のみ。
対して
都庁の軍勢は、拠点から動かない故に次々に難敵に遭遇し、犠牲を払いながらもこれを乗り越えてきた。
ドラゴンハートの恩恵も加わり、殺し合いの中で影薄を筆頭に生き延びた参加者達はみなが精神面を含め大きく成長した。
参加者と主催者。成長という一点においてこればかりはどうしようもない。
最速退場した兄貴の骸が貪られるのを見つけた瞬間、紫は驚くと同時に頭に強烈な痛みを覚える。
「がっ!?」
スキマから出ると同時に、魔王に頭を掴まれたのだとはわかる。
だが何故こうも迅速に敵と見なされた?僅かでも喋ることが許されるなら、話術は自分の得意分野だったというのに。
鷲掴みにされた頭部に魔力が流されているのが嫌でもわかる。洗脳でもするつもりか?
妖怪の賢者もまた妖力でもってこれに抗ってみせるが、思考を掻き乱されるのは避けようがない。
頭の激痛に耐えながら、なんとか現状を把握し打破しようとする頃には、彼女の身体は宙に浮いていた。
紫を鷲掴みにしたまま、ダオスは世界樹の外へと飛び出していたのだ。
一瞬だけ、紫は外にいたセルの姿を目の当たりにする。
なんと恐ろしげな出で立ちか。なんとしてでもこいつだけは滅ぼさねば。
(私をセルの餌にでもするつもり?けれど私ならば、たとえセルの触手を受けたとて耐えきれる筈。
口内に入れられた瞬間、脱出と共にセルの体内にN2爆弾をしかければ……)
そこまで思考を巡らせ、紫の意識は消失する。
魔力と握力で頭に激痛を送られ続けながらにセル打倒の考えを巡らせる紫は、賢者と呼ぶに相応しい力の持ち主だろう。
確かに、アルルーナ等ならば世界樹を傷つける愚か者に相応の報いを…女であれば性的な陵辱を考えたかもしれない。
だが現在彼女の生殺与奪を握るは魔王。彼は敵対者に対して微塵の容赦も見せることはない。
そして何より、榛名とゼロというキーパーソンかもしれぬ者まで現れたのだ。
腹立たしいが…所詮は無数の『狂信者の一将』に過ぎないだろう女に、余計な時間をかけるつもりなどハナから皆無。
「ダオス、コレダーッ!!!」
掴んだ女の頭を地面に叩きつけると同時の爆光。ゼロ距離のそれは賢者を塵も残さず消しとばした。
奥義でもって完膚なきまでに迅速に息の根を止めたダオスはすぐさま引き返す。
紫達の不運は、タイミングが最悪であったことに他ならない。
特務機関ではなく、一山幾らの狂信者と思われては、最初から対話も何もありはしない。
せめて、狸組がもたらした主催陣営名簿に彼女達の情報が載っていれば、或いは?
しかしいくらイフを考えたところで、もう彼女達が動くことはない。
※
「……っ!!!」
スコープで状況を直前まで確認していた ジャックは歯を噛み締めて声を抑えていた。
紫が殺された。
相手は魔王。そして紫を殺しながらすぐ様に引き返して行くその様。ここから推理できるのは……
(都庁の感知能力が我々の想定を遥かに上回り、彼女の…いや彼女達の潜入が露呈したというのか!?)
早過ぎる。
ジャックとしてもこの認識だが、実際の問題としてこれ以外は考えられないというのが、彼の導き出した結論だった。
紫がスキマによる逃走もできなかったとなると、他の二人の生存も厳しいだろう。
作戦は失敗?いや違う。まだ自分がいる。やり遂げなければならない!
(それこそが、手向けでもある……)
三人は死んだ。冷静にそう判断し、ジャックは最後の準備に入る。
確かに予定は狂ったが、三人はしっかりと都庁の中に置き土産を残している筈だ。
起爆寸前のN2爆弾3個。今から何処かに運ぼうとしても間に合いはしない。
デイバッグの中に入れても、意味はない。
元より自分が要。侵入がばれてしまっては、もう一刻も猶予は無い。
すなわち、今から防御の暇も与えない程の速攻を仕掛けるしか道は残されていない。
「総員退け!これより、最後の攻撃を行う!」
ジャックの勇ましい声に、それぞれの機体の中で兵達は敬礼した後にその場から距離をとる。
打ち倒さねばならない災厄、その力はまさに人智を超えた存在。
世界樹全体ならともかく、災厄を倒すとなると、いくら兵が武装したところでなんの役にも立たない。
ジャックと、この用意に時間のかかる最強のオーバードウェポンしか勝機は無いのだと、理解していた。
兵士の一人は、改めてこの超兵器を目の当たりにして冷や汗を流す。
これを考えた奴は、絶対に頭が狂ってるとしか思えなかった。
その姿ーー潔し!!!
何も知らない者がみれば、馬鹿
みたいな大きさの鉄筋コンクリートの柱そのものだ。
対安倍首相に使ったマルチプルパルスもふざけているが、それ以上のインパクト。
「……よし」
ジャックは柱…『マスブレード』を目標に向けてセットする。
一度きり。チャンスは一度きりだ。
ジャックがこの無骨な柱を決戦の武器に選んだのには、いくつか理由がある。
もちろん威力は説明不要なレベルだが、マルチプルパルスには流石に及ばない。
とはいえあれは紫の協力があったからこそできた芸当であり、ジャック一人ではとても全弾命中は難しいのだ。
そしてその他のオーバードウェポンもあるが、威力はマスブレードを下回る。
何より、一撃必殺を狙うならばこれ以上の武器はない。
相手のセルはACではなく超巨大な怪物。何をしてくるかもわからない以上、戦闘は最短最速で済ませなければならない。
相手の防御よりも速く、これであいつを叩き潰す。
ジャックのその意志に呼応するように、爆炎を吹き上げながらチャージは進む。
そして。
「っ!!!」
ガクンとジャックの身体が、いや機体そのものが揺さぶられる。
マスブレードの推進力はもはや、そちらが本体だと言わんばかりの圧倒的なもの。
常識から逸脱した超兵器。故に、常識から逸脱した災厄を討つことも可能となる!
「うおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
オーバードウェポンは当然、使用者への反動も尋常ではない。
それでもジャックは吠え、コンマ1秒も逃すまいと災厄へと挑んでいく。
紛れもない決意の顔。背負う者の顔。
バーダックやベイダー卿からひかれるような、ゲイヴンなどという馬鹿げた存在ではない。
(必ず、成し遂げてみせる……!!!)
そう、散った仲間の為。この世界の為。
彼はまさしく勇者であった。
「……幕を引くとしよう。飛んで火にいるなんだったか」
「こそこそ用意してたつもりだろーが、俺の元拠点の様子が変わってりゃ気づくってもんだぜ?」
「にしゃぁ……」
ーー攻撃目標は三人に増えていた。そしてその三人はそれぞれが爆炎の魔力を纏ったかと思えば、それを災厄の口の中に入れて混ぜ込む。
直後に吐き出されたのは、ジャックの視界を埋め尽くす程の煉獄の炎。
魔王の、神の名を冠する樹の、そして魔神の一閃は深夜の関東地方を一瞬で真昼の様に照らし出した。
(アナキーー)
刹那。敗北を悟ったジャックは最後まで未来を危惧したまま、この世から全ての痕跡を残さずに消えてしまう。
超火力兵器諸共に、超々高火力の熱閃は全てを消し飛ばす。
ジャックの敗北を認識するよりもはやく、最終着弾地点の首相官邸跡地にいた兵士も一人残らず消えていく。
ニャル子の生首も、何もかもを飲み込んで。
「狂信者どもの拠点の一つを消せたようだな。だが次の問題は…」
ダオスはこの世から完全抹消された首相官邸跡地を一瞥した後にすぐに引き返す。
彼や神樹、それにセルにとって。今し方熱閃で葬ったのはネームド狂信者の一人程度の認識でしかない。
まさか、この殺し合いに深く関わっていた存在だとは夢にも思わない。
形こそ違うが、共に世界の破滅に抗おうとしていた存在だとは気がつくことはない。
もしかしたら、彼らが対話できる…共に戦う未来もあったのかもしれない。
だが全ては遅すぎた。
最良の未来は崩れ果て、そして無慈悲に時間は進んでいく。
※
世界樹内は騒然としていた。
目まぐるしい状況の変化もだが、何よりもきらり達の惨殺の事実は大きな衝撃と悲しみを与えた。
涙を隠すこともしないカヲルはせめてレクイエムの一つでも捧げたかったが、それさえ許されない。
まどかの怒りで侵入者は一人残らず世界樹と魔物の養分となった。
しかしその置き土産というか、切り札まではそうはいかない。
起爆寸前のN2爆弾。それが三つも見つかった。
この場に犬牟田かほむらがいれば爆発前の対処もできたかもしれないが、今となってはそれも不可能。
しかし、この未曾有の危機すらも。
この場の者達にとっては、通過点に過ぎない。
狂おしい程の怒りと同時に、それに匹敵する怒りを覚える存在、この殺し合いの黒幕。
その名を聞いてしまったのだから。
「…時間がないね。手荒だけど、こんなものに構っている時間も惜しい。神樹、頼むよ!」
「お、おう。まさかとは思ったが、確かにそれが一番早いかもな!」
レストが両手でN2爆弾を縦に積み重ねて持ち上げる。
様々な能力を持つ彼だが、このように『同一物なら質量を無視して絶対落とさず縦積み9個までなんでもかつげる』という妙なものまである。
そして爆弾を持ち上げた彼を、さらに神樹が持ち上げる。
緊急時の対応は、いかに迅速に行えるかが鍵だ。
そしてこの作戦は本来であればとんでもない外法だが、もはやこの世界の無事な地域が残り少ないことが幸いした。
つまり。
「うらああああああ!」
圧倒的巨大かつ、マッチョになりさらに飛距離を伸ばした神樹がその投擲力でレストを世界樹の遥か上空に発射。
投げられる側に凄まじい衝撃だが、丈夫さは随一かつ担いだものを絶対に落とさないから問題もない。
そして高空より、かつて桃子にも語られた投げレベル9999withドラゴンハートのレストの豪速球が炸裂する。
「…狙い目は北海道と青森の間かな」
もう人の残っていない東北地方目掛けて、躊躇いなく3個のN2爆弾が綺麗にまとめて投げられる。
着弾後、凄まじい爆発が起きるが世界樹からは遠く離れている。これで置き土産も処理できた。
「っ!!」
遠方処理の完了を目視し、魔法で帰還しようとするレスト。
しかしあまりにも高く投げ飛んだ彼は、地上の状況を見て愕然とする。
ああ、やはりこの爆弾『程度』はもはや脅威ではなかったのだと認識する。
海上。バラバラにされているが、巨大な龍の翼骨が見える。あれはまさか邪竜ギムレー?
あれ程の存在が殺された?狂信者にはまだ武器があるのか。影薄達は大丈夫なのか?
千葉方面。かなりの魔力を感じる。まさかイチリュウチームとほむら達にも何かあったのか?
関西方面。毒々しい色の花が咲き乱れている。ウォークライの話にあった、より強力なフロワロか。
そして……沖縄。以前よりも強く感じる混沌の気配。ノーデンスの話にあった黒き獣が、あそこにいる。
(本当に、時間がない……!)
同時期に発生している、無視できない異常事態。
達成感に浸ることも、悲しみに暮れることも許されない。
拳を握りしめたまま、彼は絶望の情報を持って世界樹へと戻ることとなった。
※
仲間の死を悼むことも許されない中、世界樹内はさらに混沌とした混乱に陥る。
テラカオスを保護していたイチリュウチーム、その大戦力であっただろう邪竜ギムレーのまさかの死亡。
そればかりか、ほむら達が向かった千葉方面に渦巻く大きな魔力。下手をすれば残りのチームメンバーも危ういのかもしれない。
西からはフロワロに黒き獣が迫っている。
これらの問題は、予言の一節たる野球に大きな影響が出てくる。
『黒いフロワロは、俺が生み出せる赤いフロワロとは比較にならん!耐性の無い者が触れたが最後、あっというまに腐り果てるぞ!
幸い俺達は世界樹とドラゴンハート、二重の恩恵で防ぐことができるがイチリュウチームの人間はそうもいかん…!』
「なんとか、侵食をとめられないんですか!?」
「今までの情報を統合すれば、この能力は真竜を捕食した風鳴翼のもの。そして方角を考えると……」
「彼女は黒き獣に敗れ、その力を奪われた。つまり今フロワロを操っているのは黒き獣だろう」
『フロワロを完全に消すには、生み出している真竜の力を葬るしかない。しかし黒き獣を倒せるのは、テラカオスだけ……』
ウォークライが語る黒いフロワロの脅威。
しかもそれは事実上完全な破壊はできないという絶望的な状況だ。
侵食より早く、イチリュウチームを助け出し、ドラゴンハートの力を与えて速やかに野球の試合を完結させなければならない。
すぐにでもイチリュウチームの追加救援に向かいたいが、もう世界樹も戦力はあるが頭数が減り過ぎた。
計画と防衛の両面からダオスとまどかが動けないのが痛すぎる。
「よ、よくわからないけど、それなら私達が!」
「まだ夢を見ているようだよ。でも、今の時代でグンマーの人と手を取るのは、きっと司令官も望んでいることだろう」
「大丈夫。心配しないで頼ってくれていいのよ?」
「たとえどんな危険な任務でも、今度こそやり遂げるのです!」
そんな中で、カヲルの歌で浄化された数名の駆逐艦が名乗りをあげる。
まだまだ子供。そんな見た目でありながら自ら死地に赴こうとする姿は、まさしく一人の戦士であった。
「……かつての我が一族は、このような者達を虐殺したのか。改めて自分達と戦争の愚かさを突きつけられた気分だ」
「……いくら僕らの一族が硬くても、こんな子達を殺し続ければそりゃ精神を病むでしょうね」
「え?」
「……案ずるな。かつてと同じ愚策はとらぬ」
「グンマーの戦術は知っているんだろう?君達には、二人の巫女を守って欲しい。使い捨て同然に前線に出したりなんかしないからね」
奮起する駆逐艦に対し、ダオスはその頭の上にぽんと手を置くと諭すように静止をかける。
レストも屈み目線を合わせ、死地に向かわず防衛の方を手伝って欲しいと呼びかける。
かつての時代において、凄惨極まる戦争を繰り広げたミヤザキの艦むすとグンマーの剣と盾。
それが永き時の果てに争わずに済んだ。
これは機械の身ながらに最期まで共に戦ってくれたフェイの功績も大きいだろう。
「………」
そんな光景を目にした榛名は、その瞳を潤ませていた。
かつての時代、あの子と一緒にこの光景を実現出来ていれば、どれだけよかったか。
悔しくはある。あの悪夢の日、自分以外の姉妹は悪魔化ウイルスを打ち込まれることなく、無残にそのまま殺された。
自分のように、使徒のもたらす奇跡で元に戻れるかもしれないということもない。
あの子とも、姉妹とも、もう2度と笑いあうことはできない。
それでも、今こうしてグンマーの子孫達は過去を乗り越えようとしている。艦むすに、ミヤザキに歩みよってくれている。
「……みんな、
ごめんなさい。榛名は不甲斐無い巫女でしたが、どうか今一度一緒に戦ってくれますか?」
榛名の言葉に、駆逐艦達は揃って頷いた。
彼女達も深海棲艦に…強い後悔を遺していた娘達。その想いは榛名と全く同じだ。
「……戦艦榛名以下数名、ただいまより貴方達の指揮下に入ります!」
びっ!と乱れぬ敬礼をして見せる艦むす達。
ミヤザキとグンマー。かつて協力し、やがて対立した彼らは、今再び手を取り合った。
ノーデンスの語った過去を、乗り越えて。
※
「それでは改めて……よろしいでしょうか?」
突然の襲撃、予期せぬ犠牲者、そして迫る脅威。
未だ悲しみと焦燥の感情冷めやらぬなか、榛名はゆっくりと口を開く。
この殺し合いを開く羽目になった、根本的な原因。首謀者の正体を。
「本来、榛名達がもっと早くに手を取り合えていれば、今のこの惨劇も起こらなかったのかもしれません……」
「ですが、榛名達の時代の頃からでも次の大災害は遥か未来の話。今この時代の大災害は、人為的に招かれたものなのです」
「それは我々も把握している。少数を率い神々を抹殺した、竜殺剣と悪魔の力を持つ者なのだろう?」
「は、はい。驚きました、榛名達がいなくとも既にそこまで…」
「生き延びた上位神が遺した情報だ。しかし、彼女でもその正体までは辿りついていなかったのだ」
「そうでしたか。概ね、その内容で間違いはありません。榛名達や過去の技術を復元させたのは、ミヤザキの末裔なのです……」
榛名の言葉に、何名かがぴくりと反応するが口は挟まない。
諸悪の根源とも言えるミヤザキの末裔。その正体はもうすぐそこなのだから。
「…その末裔、堕ちた榛名達の提督の名はサーフ・シェフィールド。彼こそが、今代の大災害の首謀者です。
その目的はかつての思想を歪めたもの。生まれたテラカオスを横取りし、自分自身がその力を手中におさめるつもりなのです。
彼はビッグサイトに狂信者として潜伏し、ネット上の掲示板を掌握。榛名達を戦力とし、内部情報の収集や外敵の排除を命じました」
「…自らは表に出ず、身を隠し続けるか。現在位置はわかるか?」
「いえ。ビッグサイト内からは動いていない程度しか。逆に、榛名達の現在位置と生死はあちらに筒抜けでしょう。
元々榛名は堕ちている時は867号と呼ばれ、戦況の定期的報告を命じられていましたから」
「ちょ、ちょっと大丈夫ですの?こうしてあなたが元の姿に戻って正体を明かしたなんて知られたら…」
「それは大丈夫です。榛名達は元々、提督への絶対服従をしないからこそ、悪魔化ウイルスなるものであの姿に貶められたのです。
流石にその状態で後から埋め込まれた生死の判別までは誤魔化せませんが、榛名の意思で彼への報告は断固拒否していますので」
「と、盗聴機とかは大丈夫なんですか?」
「はい。榛名も驚きましたが、この姿に戻れるなんてサーフの想像外だったのでしょう。
意志のない絶対に従順な兵器だと思い込み、盗聴や遠隔解体等の機能もつけていません。いくらでも生み出せる動く兵器程度の認識……」
少し悔しげに吐き出された榛名の言葉。
艦むすは確かに兵器かもしれないが、少なくともこうして榛名達は会話ができる。
それをまるっきり戦争の道具としてしかみない、それこそかつての後期ミヤザキの提督のようなサーフという男に誰しも怒りを覚える。
しかし相手はただ冷血なだけではない。神々の油断を狙い、綿密な計画を立ててこの災害を引き起こした切れ者だ。
榛名の言葉通りならば、これから先の動きもある程度予測がつく。
「……敵が報告がないことを怪しむ可能性が高いな。しかし生存はしている、普通に考えれば我らの捕虜になったと考えるだろう。
自爆機能が無いならば、敵の取る策は証拠の隠滅のため、新たな大群を率いてここにやってくる可能性も否定できん」
ダオスの言葉に、一同に緊張が走る。
多大な犠牲者を許してしまった、3度目の狂信者の襲撃。
いよいよ戦力、そして何より止まらぬ犠牲で心身の疲労で限界が近いこの時に更なる襲撃に耐えきれるのだろうか?
いくら榛名達が加わったとはいえ、敵は少数で神々すら殺す男なのだ。
確実に勝てる保証など、ありはしない。
「….ならば、微力ながら私も力を貸そう」
そんな時に声を響かせたのはゼロであった。
「ゼロ、どういう意味だ?」
「元より私の目的は、この殺し合いの目的であるテラカオスのことを貴方達に伝えることだった。
しかしこうして、更なる根底…黒幕とも言えるべき男の正体まで聞かされては、私の情報の価値も下がっただろう。
私が貴方達と敵対する存在ではないという証拠にはなったと思うがそれまで。私がここに留まるのはデメリットしかない」
「?」
「だが、私が今この場を飛び出せば、それは少なからず貴方達の助けになる筈だ。
何しろ私も狂信者から見れば、信者を偽った許されざる裏切り者。殺害優先度は先程の襲撃から見ても上位の筈。
つまり、私と貴方達が二手に分かれることで、連中も戦力を二分する必要が出てくる。
貴方達の防衛力は今更説明はいらないだろうし、私もこう見えて腕は立つ。そこらの狂信者を引きつけ数を減らすくらいはわけはない」
ゼロの言葉には、納得できる部分もあった。確かにゼロが身の危険を冒してまで伝えてくれた情報も、
集まった各対主催チーム、ノーデンスと榛名の話を統合すれば、情報の旨みは少ない。
やはり主催陣営もテラカオスを目的とした一枚岩ではない存在だったことが確定したくらいか。
「仮に私が狙われなかった場合、それはそれで私はより多くのまともな対主催の者達に、より深く正確なこの殺し合いの真実を伝えられる。
貴方達はここから動けない以上、仲間を増やすことはできない。これはこれで、貴方達の手助けができるだろう?」
「……うむ」
ダオスが小さく声を漏らせば、ゼロも一礼し踵を返す。
「…改めて、感謝しよう都庁の者達よ。そして、貴方達の武運を祈る」
脱ぎ捨てたオーバーボディを再び着用し、彼は足早に去っていく。
残された者達は、止まらぬ悲しみの連鎖の中でも立ち止まれない。
幾つもの難題。次に為すべきことは何か?
【
二日目23時30分/東京都 新宿都庁世界樹内部】
【都庁同盟軍】
【ダオス@テイルズオブファンタジア】
【レスト@ルーンファクトリー4】
【ウォークライ@セブンスドラゴン2020】
【音無小鳥@アイドルマスター】
【渚カヲル@新世紀エヴァンゲリオン】
【鹿目まどか@魔法少女まどか☆マギカ】
【エリカ@ポケットモンスター】
【歪みし豊穣の神樹@世界樹の迷宮4】
【アルルーナ@新・世界樹の迷宮】
【美樹さやか@魔法少女まどか☆マギカ】
【榛名@艦隊これくしょん】
※まどかの所持品に駆逐艦×4が追加されました
※全員がギムレーの死亡、イチリュウチームの窮地、関西の黒フロワロを把握しました
※ゼロとの邂逅で、プロジェクトテラカオスの存在を知りました。ゼロ=ルルーシュには気がつけていません
※さやかのギアスは残ったままですが、命令により普通にしている限りは気がつかれません
【biim兄貴@現実?】
【メガヘクス@仮面ライダー×仮面ライダー ドライブ&鎧武 MOVIE大戦フルスロットル】
【八雲紫@東方Project】
【ジャック・O@ARMORED CORE LAST RAVEN】
それぞれ死亡確認
※連れていたモブ兵士も全員死亡
※死亡時の攻撃が苛烈だったため、彼らの支給品の回収や再利用は不可能です
※首相官邸跡地は完全消滅しました
※
世界樹の入り口から、一体の魔物が飛び出す。
正しくは魔物に扮した者。その最後の一人たるルルーシュである。
(くそ、くそ、くそぉ……っ!)
彼は湧き上がる殺意と怒り、そして焦りに蓋をするのに必死だった。
(深雪、この愚かな兄を許してくれ……)
ドリスコル達が敗れ、おそらく都庁の全ての戦力があの部屋に集まっていた。
その様子から覚悟は決めていたが、やはり作戦途中で愛する妹は殺されてしまったらしい。
当然最後の妹すら奪われたルルーシュの悲しみは並ではない。下手をすれば、あの部屋で自爆覚悟で暴れていたかもしれない。
それをしなかったのは一重に榛名の情報。
そして、さやかから聞き出した情報があったからに他ならない。
(だが深雪、ナナリー……お前達の為にも、兄はここで倒れるわけにはいかないんだ!)
(まずは、サーフをDMC諸共に殺す!奴さえ死ねば、テラカオスは都庁か協力者が手にする可能性が高い。
そうすれば沖縄の黒き獣も止められ、死者の魂が脅かされることも無くなる!)
ルルーシュの瞳は憎悪に燃えていた。
最初に榛名からその名前を聞いた時点で怒りは頂点に達していたが、その後はさらに臨界突破した。
黒幕、カオスロワちゃんねるの疑惑を最初から理解していたルルーシュにとって、榛名の解説の半分は不要だった。
むしろ気になったのは、ミヤザキの艦むすとグンマーの巫女。この関連性だ。
あの場のやりとりから、都庁の者は全員これを理解していると見て間違いない。
そう判断し、彼らが知らないサーフの話に食いついている隙に、ルルーシュはさやかから情報を聞き出していたのだ。
太古の大災害、それからの戦争、残された救済の予言の内容…
どれも信じられないような内容だが、ルルーシュの脳内からはこれらの詳細などもはやどうでもよくなっていた。
大災害の化身。沖縄の黒き獣は今、死者に狙いを定めて襲っている。
この事実が、ルルーシュに最も強い絶望と焦燥を生み出した。
死者の魂が狙われる。以前見た沖縄の異常気象、あれだけの力を持つ黒き獣に襲われたら。どうなるか。
考えるまでもない。生きている状態ならまだしも無防備な魂など完全に破壊されかねない。
当然、その中にはナナリーも含まれる。
(あれだけの戦力、知力、そして情報。救済の予言は都庁連中に頑張って貰うほかない。俺がいなくとも、彼らは止まることはないだろう。
さやかから情報は手に入ったし、火薬庫の真ん中に留まり続けるのは愚策だからな)
ボロを出す前に危険地帯を抜け出したが、先程の都庁に対する言葉は、ルルーシュとしての本心も含まれていた。
忌々しい狂信者を葬り、ナナリーと暮らす世界の為に奮戦してくれる都庁には感謝しかない。
面倒ごとは任せて問題ない。彼らが動いている限り、狂信者もサーフも一裏切り者にばかりかまけてもいられない筈。
その隙を突き、この溜まりに溜まった憎悪の感情を叩きつけてやる。
(……当然、クラウザーの魂も例外ではない。奴らがこの真実を知れば、テラカオスを生むよりも自爆を選ぶだろう。
そう、それを阻止する意味でも、俺の行動に誤りなどない……!なり振りなど構っていられるか!)
「クラウザーさん……」
「ふん、貴様らでも少しは役に立つか?」
戦意を失って立ち尽くしていた僅かばかりの狂信者をギアスの支配下に置き、都庁を難なく後にするルルーシュ。
理性と憎悪の狭間で揺れ動く彼の今後がどうなるかは、まだわからない。
ルルーシュは生き延びた代わりに己より大切な妹の危機を知る。
都庁は守るべき者を守れず更なる絶望を知る。
主催は後に頼りになる仲間の死を知る。
誰も幸せにはなれない。ナイトメアはまだ続く。
【二日目23時30分/東京都 新宿都庁世界樹外部】
【ルルーシュ・ランペルージ(ゼロ)@コードギアス 反逆のルルーシュ】
【状態】健康、ゼロの服装、妹への欲求(絶極大)、非常に激しい悲しみと怒り、半暴走
【装備】ガウェイン@コードギアス@反逆のルルーシュ、スマホ@スマホ太郎 、魔物のオーバーボディ
【道具】支給品一式 、魔理沙の死体半分、ギアス支配狂信者×15人
【思考】基本:ナナリーを生き返らせる
0:サーフを手段を選ばず殺す
1:ディーが自爆する前に蘇生手段を奪い、自分のものとしてキープする
2:ギアスの使用は慎重にする。
3:身の安全の為、都庁に戻ることは控える
※明恵夫人経由でテラカオスプロジェクトを知りました。
※さやか経由でノーデンスの残した情報等を知りましたが、ナナリーの危機の為完全に記憶できていない可能性もあります
※黒き獣の襲来により蘇生が不可能な現状も知りました
※主催者の襲撃を自分の抹殺に動いた狂信者だと思っています
※黒幕がサーフであることを知りました
最終更新:2020年03月26日 23:36