アットウィキロゴ
異世界横浜スタジアム。
拳王連合軍 VS 聖帝軍
現在2対2、四回表、二打席目。

本来ならば拳王軍4番プニキの打順が回ってくる頃ですが、ここは聖帝軍側がタイムを申請しています。

理由はピッチャーであり、聖帝軍守りの要であった高津臣吾が死亡退場したことにより、交代のピッチャーがいないことに起因しています。
拳王軍側はこれを受諾し、10分までなら待つことを約束しました。


 ~ ~ ~

「高津さん……」
「泣くな、犬牟田……」

先ほど拳王の前に沈んだ高津……そして亜久里、千早の遺体が入った死体袋の前で犬牟田は嘆き、他の聖帝軍の者たちも悲しむ。
聖帝軍側ベンチはお通や状態だ。

「残酷なようですが今は勝つための手立てを。
タイムも有限ですし、瑞鶴の話が本当ならば負けた方が異界に取り残されて全滅します。
高津さんたちの犠牲を無駄にしないためにも負けてはならないのです」

一行の中で比較的冷静に見える金色の闇は、悲しみで思考を止めるより、頭を働かせろと言った。
非情なようだが元々暗殺者故、こんな時に思考停止するのはまずいことを理解しているのだ。
無論、仲間の死を悲しんでいないわけではない。

「だけど、高津さんほどのピッチャーがこのチームにはもういない。
他にピッチャーに適正がある人は……」
「それならば私が投げましょう、肉体に関してはモーフィング能力で高津の真似ができる。
技術は試合やこれまでの彼の戦闘を見ています……100%の再現や、彼がまだ見せていない投球技術に関してはどうにもなりませんが……」
「次点で南斗で鍛えてきた俺ぐらいだが、テクニック再現はともかくピッチャー向けの肉体に構成し直すなんて技は持ってない。
最善策で言えば闇だけが適任だろう」
『ちょっと待て、闇が抜けた二塁の穴はどうすんの?』
「おまえがやるんだデストワイルダー。レフトの方は機動力があるガンダムに任せる」

ピッチャーは体の形を自由に変えられる闇が最も適任とされた。
しかし肉体はともかく、高津に比べれば格段にピッチャーとしての能力は劣る。
これは闇本人や他の聖帝軍の面子さえもわかっていた。

「しかし、よりによって次の打席はアイツかよ」

ばつの悪い表情でレイジが拳王軍側のベンチを見るとタイム明けをハチミツを貪りながら待っていたプニキがいた。
バッティング技術に限定すれば拳王軍最高レベル、下手すればカオスロワ野球界において最強のバッターだ。

「あいつらの方もけっこう死人が出てるハズなのに悲しむ素振りすら見せず呑気に飯なんか食ってやがる……味方を味方とすら思わない態度……絶対に許せねえ」
「気持ちはわかるけど、こらえて紘汰」

殺しあう敵とはいえ狂信者と同レベルか、最悪それ未満の死んだ味方の扱いに紘汰は怒りを覚え、チルノは彼を宥める。
ちなみに拳王軍側は既にマウンドに出ているプニキを除くと、一部がベンチの奥へと身を隠し、残りが余裕すらあるかのような表情でこちらのベンチを見ている。
実際問題、聖帝軍は既に稼働できる選手が7人しかいないのに対し、拳王軍はまだ10人も残っており、まったく消耗していない選手もいる。
同点でも主力ピッチャー不在の聖帝軍相手では余裕すら感じてくるのだろう。
今思えば、タイムに10分もの時間を許したのも優勢故の余裕だったのかもしれない。

「あのホームランぐまか…策を練らないとまずいか」
「向こうが10分も与えてくれたんです、そんなに長くタイムを取らせたことを後悔させてやりましょう」



一方その頃、拳王軍側ベンチ。


「あいつらモンキーのように今のところ、しどろもどろしてるだろうぜ」
「ヤクルトの高津さんともっと野球がしたかったのは俺的に残念だが、良い気味だ。アルトリ…ヒロインXや平等院を殺した罰を受けやがれ」

ベンチから反対の聖帝軍に向けて嘲笑うかのようにクロえもんとディオが中指を立てたが直に怒る翔鶴と上条によって止められた。

「やめなさい、敵とはいえ向こうもヒトなんです。無暗に相手を挑発することは許しません」
「そうだぞ、俺たちまでゲスな真似をするつもりはない」
「しかしジョジョに翔鶴! 奴らは世界を滅ぼすヘルヘイムの味方だぞ」
「へ、マナー講習のつもりかよ。
どうせ試合を始めた以上は皆殺しにする奴らなんだから礼儀もクソもねえ。
野球のルールだけ守ってりゃいいんだろ」

ディオはやや不服、クロえもんは超不服な様子で止めに来た2人に意見する。
翔鶴はさらに言い返そうとするが……

『いや、ディおじさんたちが正しいよ』
「彩……ロックマンさん!?」

翔鶴の持つPET……光彩斗もといロックマンが仄暗くドスの効いた口調で会話に割り込んだのだ。

『敵に敬意を払って丸く済むなら殺し合いなんて起きない。やるだけ無駄さ』
「でも、しかし!」
『そもそもヘルヘイムや聖帝軍は多くの人を殺した……彼らは殺してきた罪のない人に謝罪なんてしたのか?
少なくともカオスロワちゃんねるで彼らが謝罪する書き込みなんて一度も見たことがないよ』
「それは……」
『わかったかな翔鶴、悪党に情けも敬意もいらないんだ』

普段は優しいロックマンの言葉に翔鶴は驚く。
彼の妹として止めるべき発言だが、『義理の妹』がそれを阻害した。

「ここはロックマンの言う通りよ翔鶴姉」
『インドラ』
「瑞鶴?!」
「どのみち殺すのならばマナーだなんだ言っても意味がないじゃない。
下手なモラル自体が敵に付け入れられる隙を与えてしまうわ。
そんなことより敵をいかに倒すかを考えた方が先決よ」
「しかし……」
「翔鶴姉が気に入れないなら兵法の一つとして割り切ってみたらどうかしら?
敵を挑発してミスを誘発する……的なね」

瑞鶴は拳王軍は知る由もないが、彼女はサーフに復元されてから暗殺者として生きてきた身。
殺すべき者たちへの敬意など無意味だと知っていた。
(若干不本意ながらも)ロックマンの意見に賛同する。

『勝つための兵法……納得だね!』
「ええ、そうですねロックマンさん(アンタのために言ったわけじゃないけど)」
「2人がそう言うのなら……」
「だろ! 相手は所詮敵なんだ、遠慮も容赦もいらねえ」

翔鶴もロックマン・瑞鶴両方からの意見に流された。
賛同を受けたクロえもんは敵である聖帝軍へのヘイトを続けた。

一方、その様子に眉を潜めるのは翔鶴・ロックマン以外のネットバトラーとネットナビの二組。
他の者には聞こえぬように小声で会話をする。

『ロックマンの奴、さらに苛烈な性格になった気がする。
戦闘のストレスもあるんだろうが、それ以上にダークチップの影響だろうか』
『お館様、警戒をしてほしい。なるべくダークチップを使わせないように気を遣うんだ』
「ああ」
「……クロえもんに同調してた俺が言うのもなんだが、色々すまん」

ロックマンに現れた攻撃性はダークチップを使ったものによる影響と上条とディオたちは断定。
同じ仲間として注意の目を光らせることに。


「……ふん」
イチローさんイチローさんイチローさん」

そんなやり取りをハクメンは横目で見つつ、ムネリンは相変わらずイチローラブで試合の行方以外は興味なしであった。


一方、ラオウとMEIKOは――ベンチ裏のロッカールームにて仲間の死体を弔っていた。
横倒しにしたロッカーを棺桶の代わりとし平等院とヒロインX(彼女は性質上、死体が残らない仕様だが)を眠らせている。
そしてラオウはその前に座り、黙祷を捧げるように静かに胡坐をかいて座り込んでいる。

聖帝軍は拳王軍は仲間の死を悲しんでないと思い込んでいるが、そんなことはない。
MEIKOの指示により、敵に弱い面を見せないためにわざと表向きは悲しみを見せないようにしているのだ。
ラオウにしてみればムギちゃんの次くらい長い付き合いだった平等院の死は大きなものであった。

「ダーリン……」

悲しみを察しているMEIKOはラオウの背中を恋人のようにそっと抱いた。

「……ムギちゃんや平等院のためにも我々が負けるわけには行かん。
必ずや聖帝軍を討ち倒し、皆殺しにするぞ」
「ええ、あなたが望むのなら」


 ~ ~ ~

そして、試合は再開された。
聖帝軍はピッチャーを金色の闇に変更し、レフトはセンターにいるガンダム一機に任せる形で空白となる。


「行きます」

ピッチャーとなった金色の闇は第一級を投げる。
だがそれはただの高津を真似ただけの投球ではない。
ファーストの鎧武、サードのチルノからさらに支援を受けていた。

「これが打てるか!」
「高津が生きていたら気に入らなかっただろうけど」
「こちらは素人ですからね」

野球ボールに紛れて放たれたクナイと氷柱の弾幕が、プニキを襲う。
ダメ押しに野球ボールの周りは氷でコーティングされており、打とうとした滑る仕様だ。
常人ならば……否、そこらの野球選手では到底打つこともできない弾幕である。

「どこまでもどこまでも甘いな」

だがプニキは攻撃に臆することなく、ニヤリと笑うと。
目にもとまらぬ速さのバッティングにより自分に向かってきた弾幕をすべて打ち返した。
さらに氷で滑るハズのボールもプニキの技量の前では意味もなく、難なく弾幕ごと打ち返すのだった。

「なに!?」
「うわああああ!」

打ち返された弾幕はベンチにいる犬牟田以外の聖帝軍に襲い掛かった。
氷柱やクナイが選手たちに刺さり負傷するも、手練れ揃いである聖帝軍の者を殺すには威力が足りなかった。

……ただ一人、身体的に恵まれておらず、装甲に守られてもいない、一般人であるイオリ・セイを除いては。
スタジアム右側で無惨な屍となったイオリが横たわっていた。

「イオリ!」

親友の死にレイジは言葉を上げるが、その直後にコクピットで警報がなる。
プニキの打った野球ボールはイオリが消えたライト側を狙っていたのだ。
コースはもちろんホームラン。

「させるかあ!!」

友の死を嘆いている暇もなく、レイジはガンダムのバーニアを吹かしてボールを阻もうとする。
そして、ボールはガンダムの装甲部分に当たるが、これは拳王軍にとっても聖帝軍にとっても、レイジにとってもプニキにとっても既視感のある光景だった。

「馬鹿め。ライトにいるガキでは俺の打球を取れないのは想定済み。
おまえがカバーに入るのは予測がついていた!」
「なッ、またさっきの曲芸を!」

ボールはガンダムの装甲の凹凸を何度から跳ねたとあと、観客席の方へ向かう。
もはや魔法じみたプニキのバッティング技術に聖帝軍は戦慄を覚える。
そしてガンダムに後ろへ飛んで行ったボールを追いかける余力はなく、他の選手も打ち返された弾幕による負傷で追いかける余裕はない。
拳王軍の三点目獲得、ホームラン記録の更新。
プニキはさらにニヤリと嗤った。


「一度、言ってみたかったんだよね……狙い撃つぜ!!」
「!!?」

プニキが勝利を確信した瞬間、観客席側から放たれた一条のビームが野球ボールに命中し、威力が死んだボールが落ちた。
ボールが落ちた場所は観客席ではなく、スタジアムの内側だ。ホームランにはならない。

プニキがホームランを逃したことは衝撃であるが、それ以上に驚かせたのはプニキのホームランを止めた存在であった。

「おい、なんでアイツがあそこにいるんだ!? あのガキはあそこでくたばってるハズだろ!」

ホームランを背後にある巨大なビームライフルで止めたのは――イオリ・セイ。
弾幕で死んだはずの少年が、観客席の方にいた。


「ふふッ……トリックさ、ライトにいる死体をよく見てみろ」
「あれは……マネキン人形!?」

からくりを解説すると、イオリは最初からライトには立っていなかった。
一流のガンプラビルダーであるイオリはガンプラ技術を応用してドームに放置されていたマネキンを自分そっくりの顔を人形に貼り付け、機械に強い犬牟田が簡単に動く程度の仕組みをもった機械をつけることで偽装をした。
よく見ればすぐ気づく代物だが、一般人であるイオリの存在を過小評価している拳王軍は気にも留めず……特にプニキは気が付かなかった。

次にビームライフルだが、これはスタービルドストライクから外したものを観客席に放置。
レイジ的には野球の試合では腕が塞がって邪魔なうえ、置く場所が他になかったから置いていただけだが、閃いたセイはこれをホームランボールを迎撃するための対空砲にこっそり改造。
犬牟田のコンピュータによる予測ではプニキが何の特殊能力も持たないライト側を狙うのは予測済み。
そこでビームライフルの存在を悟られないように弾幕を張り、もし打たれても可能な限り速度を減らし、イオリの動体視力でも狙えるレベルまで遅くなった球をビームライフルで撃つ作戦だったのだ。

「最初の弾幕は俺に打たせないためじゃなくて、俺に大砲の存在を気づかせないための……罠!?」
「イオリは確かに俺たちに比べれば格段にひ弱だが、その才能を生かすガンプラ愛と発想力があった。
自分の能力に驕り、イオリをただの能無しと高を括った時点でおまえの負けだよ」
「俺が…ロビカスでもないただのガキに負けただと……」

サウザーの言葉を受けつつ、プニキはホームベースの上で立ち尽くす。
それだけに炉端の石にも等しい子供にホームランを阻止されたのがショックだったのだ。

「何をやってるんだプニキ! とっとと走れ!」
「ええ?」
「タッチされるまではまだアウトじゃないだろ!」
「あ、そうだ!」

ホームランこそ逃したが、聖帝軍がキャッチする前に地面にはついているのでヒットではある。
敵に捕まる前に塁を踏めば、アウトにはならないのだ。

「こうなりゃ塁を踏んでどうにか汚名挽回を……!」

そして(焦りのせいで名誉挽回を言い間違えるミスをしつつ)、プニキは一塁へ走る。
が。

『プニキさん足遅ッ!』
『ああー……ありゃバッティングばかり鍛えて他のトレーニングをまったくやってなかった口だな』
『あんなにハチミツばかり食べてたら太りもする……ブッタファック』

ネットナビたちがツッコミを入れたくなるほど、プニキの足は赤子のダッシュレベルで遅かった。
おそらく走力はカオスロワ球界でも最低レベルであろう。

「一塁が遠い、もっとハチミツを……!」

走って疲れたのかプニキは試合中にも拘わらず腰に抱えていたハチミツで栄養補給をする。
だが、彼がハチミツを口にすることはなかった。
白い悪魔がやってきたからだ。

「え……?」

プニキの行く道を遮るように巨大なガンダムが立ちふさがる。
そのマニュピレーターには野球ボールが握られ光輝いていた。

「うわああああ! お助け――」
『ビルドナックルッ!!』
「うおるとッ!?」

スタービルドストライク最高の武器であるビルドナックルが容赦なくプニキに向けて振り下ろされた。
ズドンという音と重みもと共にプニキは即死し、ガンダムの拳が地面から離れた後にはアウトという結果と潰れて焦げた熊肉のハチミツ漬けだけが残った。


【プニキ@くまのプ○さんのホームランダービー 死亡】


「プニキ……!」
「正直、あんま好きな奴じゃなかったが……これはまずいね」

性格はともかく最高のバッターであったプニキの死は拳王軍のベンチを騒然とさせる。
聖帝軍が守りの要を失ったのならば、拳王軍は攻撃のエースを失ったのだ。

「やったなイオリ!」
「いや、僕だけじゃない、レイジやみんなの援護がなければこんなに上手くいかなかったさ。
……さて、ダミー人形はバレたし同じ方法はもう通用しないね」
「スタービルドに乗ってくれ、久しぶりに相乗りだ」
「うん」

観客席にいたイオリはライトのポジションには戻らずレイジが操縦するガンダムに乗り込んだ。
レフトだけでなくライトが空白になってしまうがイオリの脆弱さやガンダムの機動性を考えれば、レフトやライトをガンダム一機に任せた方が安全だろう。
また、一つのポジションに二人いることも、カオスロワ式野球ではなんらルール違反ではない(超人血盟軍の前例もあるしね)。

こうしてワンアウトとなった拳王軍の次の打席にはMEIKOが立った。
聖帝軍は先にプニキに行った弾幕攻撃は行わなかった。
打ち返された時のダメージがデカすぎると学んだからだ。
ただし、味方の支援がまったくなくなったわけではない。

「高津の投球なんてとっくに見切……クソ、氷で滑って飛距離が伸びない!」
「取ったぜ! これでツーアウトだ!」

チルノによる氷のコーティング自体は続行。
MEIKOは二回の空振りの上で三度にヒットをたたき出したが、当たった瞬間氷で滑ったため、飛距離と制球性を維持できずに一塁側に飛んでいき、紘太にキャッチされてしまう。
あっさりと取られたため呆気なく感じるが、これはMEIKOが弱いのではなく、それだけプニキのバッティングセンスが異常だったのだ。



だが、真の恐怖はここからである。

「任せたぞハクメン」
「……応」

亡き平等院に代わって6番センターに選ばれたのはハクメンである。
白い侍の姿に闇ははっと気づく。

(まさか……私たちの恩人であるフェイ・イェンを殺したという『お面野郎』……!?)

闇は直感と、相手が放つ隠し切れない強者のオーラでハクメンの正体を看破。
レストの話では刀を持っていたことと仮面ぐらいしか特徴がわからなかったが、レストと一対一で交戦して互角に戦える実力者の数は限られている。
となると移動した距離や時間を考えるとレストが戦った男としか思えないのだ。

「我は空、我は鋼、我は刃
我は一振りの剣にて全ての「罪」を刈り取り「悪」を滅する!!
我が名は「ハクメン」、推して参る! 」

ベンチにいる時は隠していたオーラが発揮される。
呑気な性格のサウザーもハクメンの実力に気づいたのか、口には出さぬものの玉のような汗を出す。
(こいつはプニキやラオウ以上にヤバいかもしれない)と。
サウザーと闇はアイコンタクトで合図を送り、さらに闇は左右や前方を見渡すふりをして仲間たちに目線の暗号を送った。
(こいつはまずい相手だから特に警戒しろと)

「投げる前に一つ、聞きます。
スカイツリーの辺りでネギ色の髪をしたロボットを斬りませんでしたか?」
「葱…? ああ、あの時のか」

闇は単刀直入にハクメンに問いかけると、やはりフェイ・イェンと縁がある存在であった。

「それからどうしたんですか?」
「世界を蝕む『凶』を狩るためには邪魔だから切り捨てたまでのことよ。
『凶』を守る者は例えどんな理由があれ悪鬼同然、消えてもらう他ない……必要な犠牲だ」
「マガトだかなんだか知らんが、必要な犠牲だと、貴様ァッ!」

フェイ・イェンは聖帝軍にとって恩人である。
そんな彼女を無惨に殺した怨敵が目の前にいたことに、サウザーや聖帝軍の選手は怒る。
まさかの遭遇に加えて拳王軍の手先だったという事実が怒りをさらに燃え上がらせた。

「もういいです……拳王軍はやはり芯の中まで腐っていた。
その真実があればあなたたちを気兼ねなく殲滅できますから」
「フンッ、なんとでも言うがいい。
『凶』に甘えなど不要、隙を見せれば何もかも滅ぼされるだけだ」


拳王軍は必ずここで全滅させる、その決意を新たに聖帝軍は制圧前進を開始する。


「ッ!!」

そして闇は投げ、チルノは投球に再び氷によるコーティングを施す。
その投球は高津が今まで投げた中でも最高クラスの速さである。

「ズェアッ!!!」

だが、その投球は本気なら惑星破壊も可能なハクメンの前では非力。
当て身の要領で弾き、そして打球は刹那の瞬間に紘太(鎧武・極アームズ)の肩当てに命中した。
その速さと威力は高津の脳を炸裂させたラオウの時の倍以上の威力を誇る。

「うわああああ!」
「紘太!」

幸い、吹き飛んだのは肩当て部分だけだが、かすっただけで立つことも維持できなくなるダメージが紘太を襲い、地面に倒させた。
なお、ハクメン自身が野球に関して素人だったので弾は鎧武に当たった直後にゴロとなってヒットどまりだが、これがホームランコースだったらプニキ以上に危険なバッターとなるだろう。

「させるかよ!」
「遅い! ズェアッ!」
「早いッ!サウザーの3倍以上はある!」

動けなくなった紘太の代わりにボールを取りに行くビルドストライク、そして三塁のチルノはバルカンと弾幕で一塁への進軍を阻もうとする。
だがそれらは全て切り払われ足止めにさえならなかった。
速度に関しても時を斬って移動できるハクメンは残像が置き去りになるレベルで、誰も捕らえられず、しかもほぼ無消費。
もはやBLACK RXですら軽くあしらえる論外レベルの強さ、それがハクメンであった。

(おまえたち自身に『凶』はない。
だが、世界の秩序のためには必要な浄化の邪魔をするなら話は別だ。
障害となるなら撫で斬りにさせてもらう!)

そのような想いを抱きつつ、時を斬りながら進むハクメンは最初のターゲットに見定める。
一塁を守る仮面ライダーは被弾で倒れており、首を落とすにはまたとないチャンスだ。
次に塁を進みながら二塁の虎、三塁の大精霊、最後に聖帝の首を順に落とすことで、聖帝軍の戦力を壊滅させる。
そうなれば六回裏終了を待つまでもなく試合は終了し、凶狩りとヘルヘイム討伐及び死者スレの黒幕を撃破に時間を割くことができる。

止まった時の中で刀を構えて突進しようとするハクメン。
その速度は最大速度であり、これで突進すれば確実に鎧武が細切れの肉塊と化す














――そのハズだった。

ツルッ

「ピャッ!?」



ハクメンが容赦ない奥義が発動しようとしたその瞬間、ハクメンの足が滑り転倒、そのままツルツルと、しかし猛スピードで正面方向に体が滑って行った。

(いきなり足場の摩擦が消え……いったい何が!?)

0.1秒足らずの高速思考の中でハクメンは自分が転んだ原因を探る。

(これは……氷!?
目に見えないほど薄い氷の床が一塁までの道に敷き詰められている!?)

その正体はチルノが秘密裏に仕掛けた氷の床。
氷精としてパワーアップの限りを尽くしたチルノが力の限り設置したトラップだ。
いかなハクメンとて、移動は足を使う以上、勢いがついたまま走れば確実に転倒するレベルだ。
ならばジャンプすれば良いだろという話になると思いきや――

(あの弾幕射撃は私を足止めするためではなく、罠と魔力の動き悟らせないための囮!
弾幕の際に発声した土煙が罠の隠れ蓑にしたか)

ハクメンにしてみればチルノやガンダムはおろか、聖帝軍など蟻を踏み潰すより簡単にできる存在だ。
せいぜい機動力でレストさえ上回っているサウザーなら多少手こずるだろうか、という相手だったハズだ。
しかし、それは直接的に対決すればの話。
個々の技能とそれを掛け合わせるチームワークさえあれば、彼を罠にハメることは可能だった。

(だが、浅い! もう一度時を斬って……――)

それでもハクメンはあきらめず地面に刀を突きたててブレーキをかけて再起を図る。
だが時を斬る能力が終了した直後、それができなくなる事態に陥った。
再び時を止めようとした瞬間、ハクメンの関節という関節が一瞬で氷に阻まれて、一切の身動きが取れなくなった。

「氷が!」
「アタイの罠に引っかかった以上は、逃さないよ!」

こうなれば、「時を斬る」動作は不可能。
それでもハクメンが魔力を解放すれば体に張り付いた氷も足場の氷も一瞬で解けるだろう。

「うおッ、あぶねえ!」
「この私が……」

だが、この瞬間の場合、ハクメンが力を解放するよりも氷に摩擦を殺されてスリップしたままスタジアムの壁面に激突する方が早かった。
それだけハクメンは、自分でも制御できるなくなるほど早く動きすぎたのだ。
あまりの運動エネルギーはハクメン自体をも傷つけ倒れさせた。
ちなみにスリップした結果、紘太さんがいる一塁はギリギリで躱した。

「トドメだ、本日二回目のビルドナックル!!!」
「ぐふうッ!!」

更にレイジは野球ボールを持ったビルドナックルを動けなくなったハクメンに叩き込む。
いつものハクメンならば避けたり防ぐことなど造作もなかったが、今は倒れた状態で態勢が悪く刀も衝突した際に手放していた。
お見舞いされたビルドナックルは直撃し、拳王軍にスリーアウトをたたきつけた。

「やったね、レイジ」
「いや、頑丈な鎧だぜ、仕留めきれなかった」

ハクメンは直撃をもらいはしたが、生きていた。

「気絶……してるの?」
「もう一つおまけにビルドナックルを叩き込もうと思ったが、やめにした。
こいつはとっくにタッチされてアウトだし、もう一回やったら反則になるだろう」

ハクメンは鎧に僅かな罅が入る程度しか目に見える負傷はなかったが、伸びているか倒れたまま動かなかった。
ハクメンはこの後、他の拳王軍の仲間に担がれ――六番センターのポジションを控えの選手であるメーガナーダに交代したため、今試合では退場扱いとなった。


 ~ ~ ~

次回、四回裏。

               拳 2-2 聖

『拳王連合軍 布陣』

川崎宗則         1番ショート
クロえもん        2番サード
ラオウ          3番キャッチャー
瑞鶴           4番レフト
MEIKO           5番ピッチャー
メーガナーダ       6番センター
翔鶴(+ロックマン)   7番ファースト
上条(+シャドーマン)  8番セカンド
ディオ(+デューオ)   9番ライト




『聖帝軍 布陣』

  •              1番ショート
葛葉紘太         2番ファースト
金色の闇         3番ピッチャー
サウザー         4番キャッチャー
イオリ・セイ       5番センター
デストワイルダー     6番セカンド
  •              7番レフト
レイジ(+ガンダム)   8番センター
チルノ          9番サード

 ~ ~ ~

「まさかプニキを失い、期待していたハクメンがああもあっさりやられるなんて」
「MEIちゃん、気を落とすな。
だが認めよう、聖帝軍は今まで戦った中で最強の野球チームであると!」

先ほどはラオウのホームランと高津の抹殺で歓声に沸いていた拳王軍だが、今度は打って変わって拳王軍の方がお通やムードであった。
そんな中でコソコソと光兄妹は内緒話をしていた。

『翔鶴聞いてほしい……もしもいよいよって時は僕にダークチップを使って欲しい』
「彩斗兄さん……あれは……」
『わかってるさ、でもあのチップは戦局をひっくり返す力を秘めている。
僕らが負けて拳王軍が負けてしまえば元も子もない。
……これ以上、仲間の死を見たくないんだ』
「…………」

ロックマンの悲壮な覚悟に翔鶴は何も言い返せなかった。
ロックマン自身もこれまで以上の窮地を肌で感じ取っており、全滅するぐらいなら悪の心を得た方がマシではないかとさえ考えだしていた。

『(最悪、僕が完全に悪の心に染まったら、ジョジョやディおじさんたちがデリートしてくれるさ)』

それは己の破滅を計算に入れてでも妹や仲間を守らねばならないという、覚悟であった。




一方、気絶したハクメンは瑞鶴とメーガナーダによってベンチの裏で介抱されていた。
だが、瑞鶴とメーガナーダは黒幕の手先、その黒幕が喉から手が出るほど欲しいテラカオスを殺す力を持ったハクメンに何もしないわけがなかった。

(本当なら殺しておくべきだけど、この後の都庁の連中やイチリュウチームとの試合を考えたら、まだ生かした方が得策ね)

ハクメンを殺せるまたとないチャンスであったが、拳王連合軍自体も度重なる戦いで戦力が激減している。
今回の試合でこそ遅れを取ったとはいえ、単純な戦力でみれば今殺してしまうと拳王軍まで壊滅する恐れがある。
拳王軍自体は壊滅しても良いが、愛する姉翔鶴まで死んでしまうのはいただけない。
自分と翔鶴が生き延びるのに必要な肉壁なのだ。

(でも、何もしないのも後々まずい……だから)

瑞鶴は治療するフリをして、超小型の爆弾……今まで暗殺のために使ってきたスマホで起動するリモート爆弾を罅の隙間か鎧の内側に入れていき、包帯で固く覆った。

(これでよしと、いざテラカオスや提督さんを殺そうとしたらいつでも起爆できるわ。
流石のハクメンも中身までは鎧ほどの防御力はないだろうし、この爆弾で殺せなくとも手傷は確実に受けるでしょうね)

ハクメンは完全に気を失っており、巧妙に鎧の内側に埋め込まれた異物にはそう簡単に気づくまい。
気づかれて摘出されても気絶に追い込んだ聖帝軍のせいにするだけである。

入り口はメーガナーダに見張っており、ラオウたちに気づかれた様子はない。
瑞鶴の治療に見せかけた工作は完了である。

「ありがとうメーガナーダ、こっちの『仕事』は終わったわよ」
「インドラ~もぐもぐ」
「あれ…? あなた何食べてるの?」
「インドラ♪(熊肉のハチミツ漬け)」

うっかり仲間の死体を食べてしまったメーガナーダくんは、ペットの躾がなってないと拳王軍に怒られた瑞鶴ごと仲間たちの前で土下座することになった。



二日目・23時00分/神奈川県・異世界横浜スタジアム】
※あと1時間で異世界は消滅。
 それまでに点数が低いチームが消滅する異世界に閉じ込められるため、負けたチームは全員死亡します(移籍した場合は不明)


【聖帝軍】

【サウザー@北斗の拳】
【ターバンのボイン(金色の闇)@ToLOVEるダークネス】
【ターバンのガキ(イオリ・セイ)@ガンダムビルドファイターズ】
【ターバンのガキ(アリーア・フォン・レイジ・アスナ)@ガンダムビルドファイターズ】
【ターバンのないガキ(葛葉紘太)@仮面ライダー鎧武】
【ターバンのレディ(チルノ)@東方project】
(支給品選手枠)
デストワイルダー@仮面ライダー龍騎

【ターバンのガキ(犬牟田宝火)@キルラキル】
※負傷により退場



【拳王連合軍】

【ロックマン(光彩斗)@ロックマンエグゼ】
【翔鶴(光翔鶴)@艦これ】
【ラオウ@北斗の拳】
【MEIKO@VOCALOID】
【上条当麻@とある魔術の禁書目録】
【シャドーマン@ロックマンエグゼ】
【ディオ・ブランドー@ジョジョの奇妙な冒険】
【デューオ@ロックマンエグゼ4】
【川崎宗則@現実?】
【クロえもん@ドラベース ドラえもん超野球外伝】
【瑞鶴@艦隊これくしょん】

【ハクメン@BLAZBLUE】
※負傷により退場
 また鎧に罅が入り、瑞鶴が持つ違法改造スマホで起動するリモコン式の爆弾を罅から入れこまれました
最終更新:2020年03月28日 23:43