ひデブ@みくるたんと愉快な仲間たち

短編8

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だれでも歓迎! 編集

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夜の時点で既に蒸し暑く、遂にエアコンの封印を解除してしまった。

元々の睡眠不全に加えて、
この陽気で更に寝つきも悪くなる。
起きた時点で身体がだるく、寝汗でかなり気持ちも悪い。

日課の熱すぎるぐらいのお風呂にゆっくり沈んでいる内に、
少しは気分も落ち着いてくる。

それでもやはりそこまで気力も湧いてこずに、
風呂上がりにそのままベッドに倒れこむ。

生渇きの髪も気にせずに、仰向けになってタバコを咥える。


学生も休みの時期なので、ここ数日は、
こうやってゴロゴロしているだけで誰かが遊びに来てくれている。
お陰であまり外を出歩かなくても、退屈はしないで済んでいる。
私に構ってくれる友人は皆ありがたい。

この間の、半ば強制的に海に連れて行かれた時も、
まぁ海である必要はなかったかもしれないが、
大勢で賑やかな中にいるだけで楽しかった。


(…海と言えば)
新しいタバコに火をつける。


そう言えば最近会っていないが、
夏になるたびに海へ行きたいと言っていた友人は、
今年もやはり同じことを言っているのだろうか。

私にとっては海なんて、天敵以外の何者でもないので、
当時は海に行きたいなどと言われても、
ふーん、ぐらいしか返してなかったような気がする。

そんな私に対して、夕暮れ時の海で黄昏れるのもいいよ、
なんてことも言っていた気がする。

昼間以外なら確かにそこまで苦手でもないが、
それでも自分から好き好んで行くような場所じゃないことは確かだ。
潮風だってやはり辛い。

…なんて、こういった反応が欲しかったわけではないんだろうな。
と言うことが、今なら少しだけ分かる気がする。


当時周りから浮いていた私に対して、
体質や性格を気にせず傍にいてくれた彼は、
それが彼の性格なのかもしれないが、やはり気を使ってくれていたんだろう。
そして、今の友人達にも同じような思いをさせているのかもしれない。


出来るだけ前向きな考え方をしたいと思っても、
それについてこない自分の身体が恨めしい。


もしまたあの友人と再会することがあるなら、
のんびりと夕暮れ時の海岸沿いで黄昏れるのも悪くないかもな、
なんてことを考えて。

天井へ向けてタバコの煙を吐く。

浸れる思い出がある、と言うのは大事だ。
すぐ手の届く未来すら不確定な私にとって確実なのは、現在と過去だけ。


「人間、そう簡単に死にはしないさ」

わざと口に出して安心したいと思えるのは、
人間らしい部分なんだろうか。



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