ひデブ@みくるたんと愉快な仲間たち

短編2

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teste

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だれでも歓迎! 編集

家を出た時点で既に芳しくない空模様だったので、
もしかしたら、と予想してはいたのだが。

(…家に着くまで持ってくれると思ったんだけどな)
シャッターに寄りかかって空を見上げると、心の中で言い訳のように呟く。

いつの間にか、口に咥えたタバコの火は消えてしまっていた。

最初の内は無視できる程度だったので、
気にせずのんびり歩いていたのがまずかったのか。
突然スイッチが切り替わったかのように激しく降り出した雨のお陰で、
後にも先にも行けず、立ち往生することになってしまった。

幸い濡れる前に雨宿り出来る場所を歩いていたのが救いか。


ここは近所の商店街。
この雑然とした街において唯一の、整然とした広い通りである。

とは言え何処もシャッターが降りている上に、
当然のように人通りも皆無で寒々しい。
無駄に広々としているせいで、雑然とした路地裏よりも不気味に感じる。

時間帯関係なく普段からこんな様子なので、
私自身も余り頻繁に訪れる場所ではなかった。
そして今後も、好き好んで来たいと思う場所でもないだろう。


激しい雨で霞む街の中、雑音のような雨音だけが響いている。
動く物もない。

生きている者のいない世界。
まさに言葉通りのゴーストタウン。
むしろお化けでも出てくれた方がまだ趣があるくらいだ。


ひさしから垂れてくる雫に何となく手を伸ばす。
冷たくて気持ちがいい。

火が消えたままのタバコを箱に戻しながら見上げた空は、
雨が止むどころか、弱くなる気配すらなかった。


窓から眺める雨色の景色も情緒があって好きだし、
不規則なリズムを刻む雨音も好きなので、
雨自体はそこまで嫌いじゃない部類に入るだろう。
…とは言え、髪や服が濡れると面倒なので、
外で見る雨は、やはり鬱陶しいだけだ。

「はぁ…」
溜め息をひとつつきながら、新しいタバコを咥えて火を付ける。

手の甲へと落ちてくる水滴を眺めながら吐き出した紫煙は、
風に流れて、雨の街へと消えていった。


もう一度見上げた空は、やはり厚い雲で覆われていた。



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