夏風
私の部屋に限らずこの街全体に言えることなのだが、
風通しが圧倒的に悪く、熱が篭りやすい環境なので、
本格的な夏になると、エアコン無しでは冗談抜きで人が死ぬ。
ただ逆に日当たりが悪いお陰で、
夏が本気を出すまでは、そこまで気温は上がらない。
風通しが圧倒的に悪く、熱が篭りやすい環境なので、
本格的な夏になると、エアコン無しでは冗談抜きで人が死ぬ。
ただ逆に日当たりが悪いお陰で、
夏が本気を出すまでは、そこまで気温は上がらない。
今はそんな時期。
のはずなのだが。
のはずなのだが。
「暑い…」
壁に寄りかかったまま読んでいた本を地面に置くと、
扇風機からの風を受けて、私は宇宙人のような声で呟く。
咥えタバコは扇風機の風で灰が飛ぶので、
少し離れた場所の灰皿に置いている。
壁に寄りかかったまま読んでいた本を地面に置くと、
扇風機からの風を受けて、私は宇宙人のような声で呟く。
咥えタバコは扇風機の風で灰が飛ぶので、
少し離れた場所の灰皿に置いている。
ただしぼんやりと読書に集中していたせいで、
そのほとんどが無残にも灰と化している。
そのほとんどが無残にも灰と化している。
「暑いね~」
私のベッドに寝そべって、足を交互にゆっくりと揺らしている少女が、
そんな返事を返してくる。
ちなみに彼女ものんびりと本を読んでいる。
私のベッドに寝そべって、足を交互にゆっくりと揺らしている少女が、
そんな返事を返してくる。
ちなみに彼女ものんびりと本を読んでいる。
「あ」
ふと何かに気が付いたように少女がパタンと本を閉じた。
ふと何かに気が付いたように少女がパタンと本を閉じた。
「てすさま、カキ氷ですよ~」
「夏はカキ氷だなぁ…」
振っていた扇風機の首を止めて独占しながら、寝惚けたような頭で言葉を返す。
自分の事ながら、もはや全く頭が動いていない。
「夏はカキ氷だなぁ…」
振っていた扇風機の首を止めて独占しながら、寝惚けたような頭で言葉を返す。
自分の事ながら、もはや全く頭が動いていない。
寒いのはそれなりに自信があるぐらいに得意なのだが、
暑いのは本当に苦手だ。
元々ただでさえ鈍い頭の働きが、暑さで更に鈍くなる。
暑いのは本当に苦手だ。
元々ただでさえ鈍い頭の働きが、暑さで更に鈍くなる。
「探してきますねっ」
そんな私の様子を見て軽く笑顔を浮かべると、
少女は隣の部屋へと向かっていった。
そんな私の様子を見て軽く笑顔を浮かべると、
少女は隣の部屋へと向かっていった。
ほら一緒に探してよーなんて可愛く怒るような声が、
向こうの部屋から聞こえてくる。
あぁそう言えば今日もあの子は彼氏連れだったな、
などとぼんやりとした頭で思い出す。
向こうの部屋から聞こえてくる。
あぁそう言えば今日もあの子は彼氏連れだったな、
などとぼんやりとした頭で思い出す。
「…なにこれ」
テーブルの真ん中に鎮座する謎の生物を見て、タバコを吸う手が止まる。
相変わらず扇風機は独占中…だったのだが、少女の恋人候補に奪い取られた。
テーブルの真ん中に鎮座する謎の生物を見て、タバコを吸う手が止まる。
相変わらず扇風機は独占中…だったのだが、少女の恋人候補に奪い取られた。
「ぺんぎんさんのカキ氷製造機~」
いやそんな、まるで某猫型ロボットのように紹介されても。
と言うかペンギンだったのかその生物は。
いやそんな、まるで某猫型ロボットのように紹介されても。
と言うかペンギンだったのかその生物は。
「この家には私が知らない物が多すぎるな。…誰が持ち込んだんだこんなもの」
「てすさまがかわいいからって買ったんじゃなかったですか?」
「そうだったかな…」
まぁ愛嬌のある外観だとは思うが、本当にそれだけで買ってしまう辺り、
当時の自分が良く分からない。
「てすさまがかわいいからって買ったんじゃなかったですか?」
「そうだったかな…」
まぁ愛嬌のある外観だとは思うが、本当にそれだけで買ってしまう辺り、
当時の自分が良く分からない。
タバコ…はさすがに一時中断すると、
開けた窓辺に座ってカキ氷の入ったお椀を膝に乗せる。
開けた窓辺に座ってカキ氷の入ったお椀を膝に乗せる。
窓を開けてもほとんど風は抜けてこないので、
お世辞にも気持ちがいいとは言いがたい。
それでも、ビルの隙間から小さく覗く空は、
気分が良くなるぐらいに真っ青だった。
お世辞にも気持ちがいいとは言いがたい。
それでも、ビルの隙間から小さく覗く空は、
気分が良くなるぐらいに真っ青だった。
見上げていた視線を横にずらすと、
そこには少し気の早い風鈴が、微かな風に揺られている。
そこには少し気の早い風鈴が、微かな風に揺られている。
そしてその風鈴を持ってきた少女も、
ベッドに座ってプラプラと足を揺らしながら、
幸せそうにカキ氷を口に運んでいる。
ベッドに座ってプラプラと足を揺らしながら、
幸せそうにカキ氷を口に運んでいる。
私から扇風機を奪い取った少年は、今頃、私と少女のために、
隣の部屋でペンギンの頭の上のハンドルを回しているのだろう。
ちなみに決して私が命令したわけじゃない。
隣の部屋でペンギンの頭の上のハンドルを回しているのだろう。
ちなみに決して私が命令したわけじゃない。
カキ氷をスプーンで一口。
そのままタバコを咥えるように軽く揺らす。
指先で摘んでふぅと一息。
そのままタバコを咥えるように軽く揺らす。
指先で摘んでふぅと一息。
「毎年言ってる気がするが、今年も暑くなりそうだな」
「ですねえ」
「ですねえ」
夏はどちらかと言えば嫌いな部類だが、
たまにはこうやってのんびり季節感を味わうのも、
まぁ悪くはないかなと、既にかなり溶けているカキ氷を見ながら思った。
たまにはこうやってのんびり季節感を味わうのも、
まぁ悪くはないかなと、既にかなり溶けているカキ氷を見ながら思った。