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青の帰還 - (2011/05/30 (月) 21:36:09) のソース

*青の帰還

#image(ao02.jpg)

L:青の帰還 = {
 t:名称 = 青の帰還(イベント)
 t:要点 = ひょっこり,グリンダと,茶を飲む青
 t:周辺環境 = 騎士王の国

#contents()

**ある寒い日の一日
 寒い日はこたつに限る。木で組まれた枠組みと天板の間に布団を入れただけの簡素な作り。そして足元の部分には木製の格子が嵌めこまれており、その下には足元を温めるための炭団が敷き詰められている。こんな単純なものがこんなにも癒されるなんて思っても見なかった。文明の利器だけが全てではないことがよくわかる。
 まあ、とはいっても、何よりもこんなに間近で無防備に眠る舞がいるのがよかった。

「これいいだろー」

 芯から溶かされたように寝転がる大きい女戦士、愛の女神とも呼ばれる、グリンダが自慢気に胸を張った。転がってるため、胸を張ってるんだか背を逸らしてるんだかわかりやしない。実はといえば自慢気にしてはいるが、そもそもこの家はグリンダの家ではない。

「そうだね」

 適当に相槌をうつ青い髪の青年、青の厚志は隣で突っ伏して猫のように丸くなっている女性、芝村舞の方を愛おしそうに眺めている。まさに至福の刻といった様相だ。たまに動く度に特徴的なポニーテールがぴょこぴょこと揺れる。
 それに合わせて青の視線もあちらこちらを彷徨った。その姿もどことなくじゃれあう猫を思わせる。

「くしゅん」

 忍び寄っていた冷気に舞が可愛いくしゃみをした。それを聞いた青の顔に思わず笑みが浮かぶ。さらに周りを見回す仕草に次第に笑いが止まらなくなった。

「……そなた、笑うでない」
 まだ寝起きなのか舞の調子もまだまだ本調子ではないようだ。その姿が余計に笑いを誘う。
「じゃあ、お茶でも淹れようか」
「う、うむ」
「私も淹れてー」
「はいはい」
こたつから足を抜くと、青は台所へと向かった。


**青の足跡1。

 青の青。今代のシオネ・アラダ。青の厚志と呼ばれる人物が最初にNWにその名を刻んだのは詩歌藩国においてである。
赤ん坊の姿を借りて、第五世界よりゲームとしてアクセスしていたことが知られている。
この時詩歌藩国は国を挙げてお祭りを行った、と記されている。

その名残は未だ詩歌藩国には残っている。”青乃””舞音”この二つの名前は藩王が連れてきた双子の名前とされているが、
これに習い名を頂く国民もいたと言われている。

※参照:http://blog.tendice.jp/200701/article_36.html


**青の招聘計画

 暁の円卓藩国は騎士王の国である。帝國諸国の中でも合併した国々を除けば新しい部類に入る国であり、特に白兵戦闘においては比肩する者なき様であった。 その王、『騎士王』白石裕は帝國軍の将として武名を轟かせている。
そんな国であるから低物理域がメインとなるのだが、ある程度国の形が見えてきたこともあり、一つの計画が持ち上がる。 

 それは青の厚志招聘計画である。 

 表向きは青の厚志及び芝村舞がNWで見られなくなって久しく、今代のシオネがいないのは不味いのではといったような理由であったが、
裏を返せば難しいことは特になく、白石が『青の厚志と芝村舞のコンビが好き』という、ただそれだけの理由であった。
ただ好きだと、それだけであったが、それが全てとなって白石は計画の実行を決めている。
その決定に国民達は特に異論を出すことなく賛成した。俗に藩王の趣味といわれる奇行であったが、国民達には笑って許す度量があった。
“いつものこと”というやつである。もしくは皆も青の厚志と芝村舞が帰還することを望んでいたのかもしれない。

先の第1期でもそうであったが、この国はある程度形が出来、運営に余裕が出ると、今回のようなことを行うことがある。 
第1期の頃には様々なACEを一気に呼んだのだった。その頃に呼ばれた人材が、今の暁の円卓を支え続けているのは人徳といえるかもしれない。 
そして、その中には今回招聘する青の厚志に近しい者がいたというのも偶然ではあるまい。 

全ては繋がっている。 

青の招聘計画はこうして始まったのである。 


**青の足跡2

 青の厚志と芝村舞。いわゆる「ガンパレードマーチ」の世界、第五世界出身のヒロインとヒーローとして知られる二人。
彼と彼女が次に表舞台に姿を見せたのはイベント91、ガンパレードブルーに於いてであった。
その時見せた青の厚志の圧倒的な実力と彼と並びたって戦場に立てる喜びに味方は沸いたものである。

※参照:http://gamechaki.kotonet.com/kohya/log_s/91_gump_s.html


**新緑と犬。

 目に痛いほどの緑が飛び込んでくる。柔らかな日の光に包まれて伸び伸びと育つこの季節は様々な恵みをもたらしてくれる。
「新茶ー、新茶はいかが?」
 茶売りの女性が勧めてくれる一杯を受け取り煽るとふくよかな香りが鼻腔をくすぐった。お茶の盛りにはちょっと早いが早熟の一番茶というところか。
「いいお茶だね、一包みもらえる?」
「はい、まいどありー」
 ちょっと間延びした愛嬌のある声で応える茶売りに幾ばくか余分に代金を渡すとさらに歩を進めた。

/*/

「お前も食べるか?」
「くぅーん」
 その犬を見て手に持った菓子をちぎって分けてやる。くんくんと鼻をひくつかせ警戒しながらも、敵意は感じていないらしくゆっくりと食べる。
「美味いな。この国は随分とゆっくりしている。……父と見上げたあの空に似てるのか。」
「わふ」
そのふわふわの毛並みを撫でてみる。気持ちよさそうに撫でられる犬もリラックスしているようだ。
「猫もよいが、犬もよい」
普段は氷雪の如き頑な表情もこのときばかりは赤みを帯び大いにゆるんでいるようにみえる。
「舞、こんなところにいたんだ?」
鼓動がびくっと跳ね上がる。それに驚いた犬は青の足元に並び立っている。
しっぽふりふりで並ぶ犬と青は、どこか重なって見えた。


**青の足跡3。
 次に姿を見せたのはジェントルラット藩国による全国に公募しての召喚であった。

これには様々な藩国の技族、文族が結集し、その力を持って呼んだ。
これから暫くの間、NWに滞在することになる。

※参考:http://www25.atwiki.jp/gentle-rat/pages/132.html


**最後の希望

 いつか来た道。
幾度となく運命の糸が絡まり、ついに破綻したように見えた。そこから延びる最後の希望。

「それ」が、この呼び出しだった。

愛の女神が先頭に立ち白石藩王が指揮して、摂理の神に立ち向かったあのバレンタイン。

それは運命にすら打ち勝つ、愛の形。
好きなものを好きということすらできなければ、今ここにいることすら嘘っぽく感じるだろう。
だから、力一杯叫ぶのだ。

それは歌ですらない、ただの叫び。
人が人をそれぞれの愛の形で伝えるための純粋な祈り。
消えゆくものすら繋ぎ止め、抗い難きに抗うための純粋な感情。

そのいずれもが、全てを以て愛を奏でていた。

かくして物語は始まる。


**そして…青の帰還。

 「困っている人を助けると舞が喜ぶから」

と青はいった。どうやらこの世界には困っている人が多いようだ。

「舞が望むのなら。」

かくして青はこの世界に帰還する。
舞と共にあり続けるために。


**スタッフ
イラスト:白石裕
設定文:風杜神奈、白石裕
その他:白石裕
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