疑問
彼は利の人である。
だからこそ、違う意見が楽しめるのだが。
「喧伝を見て思うんだけどな」
何を?
「結婚が不利だと宣伝して何が得なんだ」
私の考えでは普段扱わない領域であるから少し黙ってしまった。
「いや、そう思わないか」
思想上それは否定の延長線上にあるものと重なるものも条件によればあるからな、考えてもみなかった。
「じゃあいいさ、君のそれに反しないプラトニック・ラブでもいいよ。それで考えるんだ」
本当に好き合ってるなら影響なんか受けないと思うんだけどなあ。
「案外君はロマンチストだね」
今夜は何か、聞きなれない言葉が並ぶな。
「はぐらかすなよ。まあいいさ。でも、結婚は不幸って決め付けた標識が出回ってたら誰が得をするんだい」
誰もか?
「そうだね。まあおそらく今安定している掌握者は違うがね。だって結婚が無ければその分経済だって回らない訳じゃないか」
それはそうだ。
「君と対立する大義名分もまるで無視されているようだ」
別に私は何が地に塵のように増えようと自然の許容量内であれば構わない。生物でない増殖のための装置があればそれに関しては言わない、ただし、生命倫理は気をつけ留意する必要があって…
「そうですねっと。まあ、倫理面はどうなのかってのは気にならないわけじゃないが、とにかく子育てには金がかかる。一人につき3000万だ」
どこからそういう数字が出てくるのやら。
「資料がいい加減だったらすまんな、まあでも2000はかかる計算だ。だから、そういうわけで結婚は金が動く。仮に離婚だっていい、むしゃくしゃして慰謝料を使ってしまっても動く事に変わりは無い」
ひどい奴だな。人に押し付けた仮定を放置するな。
「ああ確かに、君の理想形にあってはならないことだった。しかし、結婚をしてもらわないと寂れていくし、まあ、大げさに言って国がなくなるぜ」
君の考えるのは長期的だな。しかし間違ってはいないだろう。まあ少なくともその人種が衰えるだけだ。
当然だが生きていくのに必要なものは多くある。物々交換で生きていける国もあるらしいが。
でもきっとそれは大変だろう。
ふと思ったのだが、人は刺激を求めるという。
求めなくなる条件があるのだろうか。それとも、対象が変わるだけなのか。
そして話は変わり行く。
「企業の役割は消費を増やすことさ。消費者が金を出してでもほしいと思う商品を作ることが仕事なのさ」
確かに、消費しない人間が増えているようだな。
「何で保険をかける必要があると思う?君は今雷に打たれて死ぬかもしれないんだぜ。飛行機が落ちてくるかも地震が来て潰されるかも分からない。あるいは脳梗塞でお亡くなりだ。残すべき対象がいない人間はもっと消費すべきだな」
何にもいらないんだろう、文字通り。努力しても報われない、当然意欲は湧かない。着飾ってもほめてくれる人間なんていやしない。車も装飾も同じさ。絆が薄くなってるとかよく言うだろう。繋がり方が緩くても生きていけれしまうからな。君が常々主張するように、必要の無いものは消え去るのさ。
「消費の要求が無いか。それを作り出すのが企業なのに。実につまらない。『それが出来たから何になる』ってのは俺の最も嫌う言葉だよ。それをやってみないで、それが駄目だとなぜ言えるんだ」
では君に聞こう。『外から見れば輝かしいが、中から見ればそれほどでもない』。青い春はこうなのさ。外から見て魅力的に見えないものに食いつく消費者はそんなにはいないさ。洪水を起こすにはせめて2か3人いないとできないだろう。でも私は表と外観だけが全てではないと思うが。
「ふん。まあ確かに今要求されるのは見掛け倒しか。なんとなくよさそうに見える。で買う。でもそんなに使えない」
性能は要求されない。いいものでなくともよいのだろう。か、いい物を知らないか。それに大差ない商品もあるのかもしれないな。
「『金も無い、だから使えればいい。環境にもやさしいでしょ』か、それはそうだが…」
増えすぎたものは皆減る方向に行くように出来ているのさ。なんてな。それは知らないが。
「でもなあ、ずっとそのままで飽きねぇのかな、ずっと同じで。自分は廃れてって、周りはうまくいく。そんなの見てて何が面白いんだよ」
結局私も君も彼も誰も踊らされているだけじゃないのか。
「つまらない思考だ。低みだけでいいなら生きなければいい」
極端すぎるな。
「君がそれをいえた立場かな」
お互い様か。
ただそれだけの会話だったが、それなりに面白い。
違う意見も取り入れるべきなのだ。
思考も同じだ。
水田の土に空気を入れなければ固まった泥のようなものになってしまうのと同じように。
異なる思考も入れなければおかしくなってしまう時が来る。
そんな思いだ。
誤解
あまり言うようなので断っておいた。
君は私のことを誤解しているな。
「どうしてさ」
私は、それが関しない場合は関与しないだけで、否定も肯定もしないだけだ。君が思うような人間ではない。
「そうかねぇ。でも確かに、そのほうが君らしいけどね」
思ったことの意を違わずにに伝えることは難しいのである。
そんなことを思う。
最終更新:2010年05月19日 21:59