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読書者の話

図書館

彼は読書が好きだそうだ。私も嫌いではない。
だからといって、自宅を図書館の様にまではしたことはない。
しかし彼の家はまさにそうなのだ。居住ではなく書籍のための空間の方が広い。
そんな彼の家に訪ねていった、そのときの話。

「私は読書家ではないさ。よく~家などと言って呼ぶだろう。それが嫌いなんだ。専門家の意味合いを押し付けられたようで」
はは、少しは分かる。まあ、楽天家は例外か。
「いや、彼は専門家といっても通じるかもしれない。私の知る限りでは」
そうかな。で、相変わらず本を読んでばかりなのか。
「活字の森から抜け出せなくなったのさ。それ以来変わらない生活だよ」
そういうものか。君は技術の専門書から小説全般、あるいは宗教書や特に植物などの自然まで範囲が広いな。私は明るくない分野が多いから分からないが。何でもいいのかい、本であれば。
「いや、何でもいいって訳じゃない。楽しいものか知りたいものを読んでいるだけに過ぎない。物好きの彼と一緒さ」
ああ、あの実験屋の彼か。彼も君と同じような住み方をしているよ。危うく巻き込まれて被害を被りそうだったから早めに退散したが。でも彼は実践が好きだからな、それでいい。君は知識を記号で得て、彼は経験で得たい、そういうことか。
「彼も私も何ら変わらない。そういうことさ。ただそれだけに過ぎない」
そういうものか?
「そういうものさ。人はしたいように動くのさ」

ただ、と続ける。

「したいことだけじゃ、何も進まない事もある。生活はままならないかもしれない。それに、礎は必要なのさ、初めにはどうしても」
でもその礎は私もそうだが君の場合もまた…
「そこまでは、そうでもないと言いたいけれど、そうかもしれない。君も私もそれに加えてさらに、何かしらは欠けているのさ。全てがあるというのは自己矛盾につながるように思えるところもあるし、おそらくはないさ。私の知る限りではね」
人だからな。

そうして話はいつものような他愛も無い話になっていった。
完全はありえるのか。それが気になる。しかし、ありえないことはありえないとも聞く。
まあ、どちらかがそうである、と決まることなど無いのだろうか、とはいつも思うのだが。

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最終更新:2010年05月16日 15:19
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