外
彼は何かに対していつも不平を言う。
だがしかし、聞いていても、これは、不愉快ではなかった。
「俺は納得がいかないんだ、あちらこちらで聞くんだが。そうは言っても、話で聞いてるだけなんだけどな」
何がだ?
「何で猿は駄目で、海豚はいいんだ。あるいは、何で鯨は良くて、蛸が悪いんだ」
それを言う人間はおそらく、ある人曰くの言葉を借りれば、『勝手だから』じゃないか?きれいなものは好き、きれいでないものは嫌、そんな理屈だ。もちろん、我々も他を言うことはできないが。
「ふざけるなと言いたいね。いや、俺も猿はそんなに好きじゃないけど。蝿の王だって元々は、異教の神だったんだぜ。都合で変えすぎだ。何で人間が偉いんだ?むしろ人間は逆だろうに」
まあ、そう、括るなよ。そしてそれはまた別だな、きっと。そして、できるだけ別々にして考えてくれ。
「まあ、人間が『人間は…』なんて言っててもおかしいもんだけどな。でもそう思わないか。理解できるから、いじっていいわけじゃないし、分かるからというだけで、なんでも手を出すのは良くない、と」
まあそうか。
「豚は食っても、海豚は食わないよな。河豚も毒抜いて食うのに。鯨だって鯨油使ってたのに。あいつらが要らないと思う対象には、保護が向けられるのか?」
外見主義は私も良くないと思う。しかしながら、それからは、残念なことに、逃れられない。
「すべては、見た目か。だったら滅んでしまえよ」
いい歳してそんなこと言うなよ。いや、年をとっても言論の自由がないわけではないが、君が言うと、物騒だ。普段それをしない存在がいきなりすると驚くだろう?その年齢においては一般的に…
「わかったよ。でも、それだけじゃさびしくないか」
さびしいな。
「何にもねぇよ。俺のも、あんたのも。それが全てなら」
そうだな。
なんともいえない、さびしさである。
外見が全てならば、他は意味をなさない。
彼の言うことは珍しく極端であった。
しかし、少しばかり、協調したくもなる。
そんな気分だ。
最終更新:2010年06月06日 20:32