アットウィキロゴ

嘆きの人

意識

彼とは、十年来、会っていなかった。
ただ、しかし、彼は変わっていなかった。
特にその思想において。

『やはりこう思いませんか』
まあな。
『それが存在するときは、それを忘れてしまい、ほかの事の不満を言い立てる。存在しなくなれば、それがないことを不満に思う。ああやはり、我々は何事の価値も知ってはいまい、それを無くすまで、と』
しかしながら、無くさずとも、その大切さに気づくことはあるんじゃないか。
『しかしながら本質において、意識が逸れてしまいがちだとは、思いませんかな、少なくとも。やはり、口先だけになってしまいがちだと。むしろ、考えてなどおらず、言うだけだと。さらに言えば、それは言ってすらいないと』
確かに、何がそれへの意思を表示するものなのか、私には分からない。あくまでも、私には。全てが形式的で思え、意味を成しているのか、などとも、考えることすらある。それより以前に、私は考えているのか、これは私か、と。
いや失礼、ずれすぎたようだ。しかし、それでも、意識せずとも、それが常にあるからこそ、宗教としての宗教が成り立つのでは。あくまでも、それはビジネスでも、馴れ合いでも、人間における力のための団体でもなく、真の意味で宗教を指すとしてくれ。
『そうですか、では、それ以外の人々についてはどうですか。私はそちらについても、いや、そちらについて特にそう思いますが』
それについては、やはり、人それぞれというほかない。いや、例外を除く、全てにおいてそうかもしれない。
『あなたとの会話は難しいようだ。続ける事が』
そうかもしれないな、今も昔も。


そして、彼は帰っていった。
私は、どうであろうか。
近頃は、全てを蔑にしているかもしれない、と反省した。
私は、それをそれと考えて、それ自体を見ているのだろうか。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2010年06月13日 22:01
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。