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ある少年の憂鬱

嫁と姑

先日は奇妙な会話を電車で聞いた。今日はその事を書こう。

昨日も普通に電車に乗っていたのだが、何故その日は、時間帯もあれだったが、乗客が私と少年二人しかいなかったのだ。少年というか青年というかは分からないが、私は目をつぶって、勝手にその二人の会話を聞いていた。

「あーあー、もう嫌になってきたなあ」
「またあの話かよ。それとも別か」
「ああ、そうだよ、その話だよ。いやー、うちの嫁と姑がさあ」

あの歳でか、と不思議には思ったが、次の言葉を聴いて氷解した。

「紛らわしいなあ。親とばあさんの事だろ」
「ああそうだけどさ。まあ聞いてくれよ。また、おばあさんが今日もやらかしちまってさあ…」
「今度は何をだよ」
「炒め物と和え物を混ぜちまったんだよ。しかも自分が食べる分じゃなくて人のをさあ。さすがに参ったぜ。当然、奥さんは怒るわけよ。当たり前だよな。いつもは、まあ、ばあさんが食べる分だけなら、奥さんも我慢してんだけどさ。でもそれだって、なんにでも酢をかけたり、混ぜちまったりしてさ。しかも口をつける前に。味付け勝手に変える前には一口でも箸をつけるのが礼儀だろ。毎日続けば相当頭にくると思うんだけどな。」
「毎日かあ。他人介護するならまだできるけど、一緒の家に住むのはきついとは聞くけどな」
「いやいや、まだ介護必要な段階じゃないから。でも勝手に家族に知らせずにいろいろやっちまうんだよな」
「動けるから逆にたちが悪いって言いたいんだろ」
「いや、そこまでは言わねぇさ。さすがに失礼だろうし。自分がそうなってもおかしくないし。しかたねぇとこもあるだろ。年取ると頑固になるって言うし」
「なんだかねぇ。けなしきらないのがお前のいいところかもしんないけど、煮えきらねぇなあ。うまい解決の方法があるといいけど、それは無理か」
「お互いに譲歩できればいいんだけどねぇ。奥さんはもう毎日のそれで大分疲れてるし、おばあさまは頑固になって行くばかりだしなあ…」

そんな調子で、彼らは降りるまで会話していた。
大変な家庭もあるものだ、と思うと同時に、今時はあんな会話もするのだろうか、と思ってしまった。
しかしむしろ、あんな立ち入った話をする若者はもう珍しい部類に入ってしまうのかもな、とも思う。
この、面倒を避けていく事が主流になってしまった時代にしては、とても珍しい会話かもしれない。

いや、あの歳でこんな話をする人自体があまりいない気はするが。


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最終更新:2010年02月21日 20:29
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