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疲れた

欠落

私は最近疲れている。そして生きがいも無い。
ただ、彼の話を聞いていると、私の疲れなど疲れとは呼べない気がしてくる。

「もう私にはわからないんだ」
何がさ。
「全て、何もかも。何をすべきかも、どうすればいいのかも、人との接し方も」
そんなにか。
「全て楽しくない。何を人に言っていいか分からない。会話も成立しない。人といる事が疲れる。もうわからない、どうすればいい?」

あえて、彼が望まないであろう返答をした。

仕事はやるべきだし、会話が嫌ならしなければいい。
「仕事はやる。やりたくない。でもやる。楽しくない。どうしてこんなに嫌なのか分からない。つまらない、退屈?もう自分が何をやっているか言っているかしているか、何をしたいのか何を言いたいのかわからない」
まともに話せよ。わざとそんな口調で言ってんだろう?

普段の彼はこんな、こんな口調では決して話さなかったはずだ。

「今の気分がそうなんだ。こんな感じ。そしてもう、何を思っているかすらわからない」
さびしいとかは?
「かもしれない。でも会話はうまく出来ない。繋げる事が出来ない。話にならない。お互いにつまらない。話をしてくれる人はいなくなる。そしてつまらない」
なるほど、悪循環だね。
「人と話さないと話せなくなるんだ。何を言っていいかわからなくなる。おまけに話さないから、浮く。いや、俺はもともと変人だからね、仕方ない。でもさ、やっぱし、一日中誰とも話さないのはつらいんだ。特に、周りで他の大多数の同僚が楽しくやってるとさ、俺だけ何なんだろうって。昼とか。子供のときもそうだったけど、そんときはまだ、すごく気にかけてくれる人もいたし、よかったさ。でも今は違う。いや、さすがに気の毒に思ってくれるのかな、話しかけてくれる人はいるけど。でも、その人たちとさえ、何話していいかすら分からないんだ。もう、わからないよ、俺には」
いるだけいいか?
「いや、ありがたいんだけど、申し訳ないんだ。せっかく話しかけてもらっても、応えられないから、とても申し訳ない。善意の人のそれを裏切った気がしてつらい。そんな事を繰り返すうちに、そんな事をしてくれる人も…。いや、こんな俺でも、まだ声をかけてくれる人がいるんだ。ありがたいことだよ、とっても、さ」
そうか。確かに、そういう人たちには感謝したいだろうな、きっと。


以前は、こんなことを言った事はなかったな。
彼の方が、私などより、疲れているのかもしれない。

ただ、彼の苦悩は、彼の時期を過ぎてしまった私には、分かりはしないのだろう。

追記の後日談
「君はいいよね、僕とは違って友人もたくさんいるんだから」
そんな事は無い。
「嘘をつけ。あんなにいるじゃないか。それだけいれば十分だろう。君にはいても僕にはいない」
そんなに暗く考えるなよ。
「無理だね。僕なんかは一生君のようには友人ができるなんて事はありえない。一生一人だろうね。君はいいさ。もういるのだから。そして、ほかの事も充実しているよ。それに比べて、僕はどうだい。考えてから喋れよ馬鹿野郎!」

語気が強まった。

「そうさ、僕は努力も何もしていない。そう、生きている事すら不思議なくらい。そうだよね、生きているだけでもう十分ありがたいことさ。何もしないのに、死なない。不思議だよね。良い人が死んで、俺みたいなどうでもいいのが残ってる。今死なないのだって不思議なくらい、ただ、死にたいわけじゃないけどね、まだ。全て中途半端。何もしないほうがまし。実際、全部そうだったけど。僕は、何事も成功してないよ、これからもしないだろう、するはずが無い。でも君は努力したのかい、したのかもしれないね。でもそんなにした?たったあれだけで?元から恵まれてる君にはそもそも努力すらもしてないんじゃないのかい」
どうだろうな。分からない。いや、指摘の通りかもしれない。

さらにきつい。

「いいよね君は適当に過ごしてさ、暇になったらご友人と談笑かね。いいご身分ですね。お金にも全く困らないし、生活は安泰だ。物質面も保障されてるじゃないか。いいご身分だね、本当に。雷に当たって死んでしまえよ。よく言うのじゃないか、楽しいうちに死にたい、とか。君もそうなりたまえよ」

彼からすれば、そうとしか見えないのだろうか。
歪んでしまったか。

「君から見れば僕はひずんでるんだろう?でもね、これが私、いや、僕なんだよ。ははは。君には分かるまい。本当に君が妬ましいよ、いいねぇ本当に。でもね、気をつけなよ、人生の幸運は有限さ。君の幸運は、後、どれくらい持つのかねぇ、破滅を楽しみにしてるよ」


彼は去っていった。それを言い残して。

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最終更新:2010年03月17日 18:25
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