意外な一面
また、あの同級であった楽天家と会った。
しばらくは、仕事を共にする事になるかもしれない。
仕事外で会ったので、話をした。いや、聞いた。彼は酔っていた。
酔っ払うと、まるで別人である。いや、全くの。
「しかし、まあ、最近は〚資格を取りましょう〛ってうるせえなあ、おい」
まあ、そうだな、確かにそうだ。
「何の役に立つっつうんだよ、おい。あんなもん見かけ倒しだっつうの」
そうでないのも、多くあると思うが。
「はいはい、そうですねー。でもよー、見かけ倒しも重要だけどよー、昔取ったからっつってなんで、威張れんだよ、なぁ、おい。昔取った杵柄っつってもなあ、たしかなあ、昔はうまく出来た事って意味もあんだよ。今ができるとはかぎらねぇ。腕が廃れてる事はねえのかよ、ああ?」
十分にありえるな。
「学歴っていったってよ~、そんなもんなあー、昔で来たってだけで今出来るとは限らねぇしよー、実用的でもなんでもねぇんだよ~」
かなり酔っているかと思えば、いきなり、
「大体俺に言わせればなあ、資格なんて全部見かけ倒しで、その時点に取れる状態があったってだけで、今はそうとは限らねえだろう。資格とか経歴なんて捨てちまえ、面と向かってみて評価しろよ、それが大事なんだよ。」
などと、真面目そうに話し始めたりしていて、不思議だった。
が、そのうちに、唐突に
「やっぱ苛つくぜ、あの野郎」
などと、遂に大声で叫び始めた。ここが会社でなくてよかった。
「二十年も前にあの程度の大学受かったからって、いちいちうるせぇんだよ!あの野郎。てめぇなんかぎりぎりだろうが、てめぇの同級に聞いたぜ、おい。たとえなあ、いくら頭よかろうがなぁ、働くなら実務できなきゃ駄目なんだぜ、あの野郎め。大体仕事ちっともしねぇで何邪魔ばっかしてやがんだ。そんなに自慢したきゃなあ、研究して論文出して認められてから言えよっつうんだよ。俺はなぁ、別に学歴じゃ差別しないようにしてるけどなぁ、むしろ、人柄の方が大事だと思ってるけどなぁ、てめえだけはなぁ!今は努力せずにのうのうとしてなあ、ろくに出来もしないような昔の事を自慢する野郎が大っ嫌いなんだよ!何十年昔の入学試験だけできたからって、傲慢なんだよ、ふざけるな。謙虚さって文字はてめえの辞書にはねぇのかあ?」
彼も、苛立ちが募って大変な事になっているらしい。
とにかく酔うと短気なのだ。
数時間後、彼は、元通りになった。
「昨日は変な事いってたか?だったら、済まなかったな。忘れてくれ」
彼もいろいろとあるのだろうな。
追記
しばらくして、機会があったので、その男について聞いた。
彼が愚痴をこぼしていたその人間の。
「学んできたなら、知識はある。ただ、それを生かそうとしていない。怠慢だな。もし、それだけの知識を持っているなら、考えて応用すれば、いくらでもとは言わないが、経費だって浮くし、製品だって良くなる。まあ、本当は、あいつの持ってる知識がどうでもいいものだったとしても、良いものだとしても、まじめにやらないから、そこが問題だ。全員で真面目にやれば、いいのにな。そういう個人が積み重なって会社は潰れるんだ。それを分かっちゃいない。あるいは見ようとしない。考えない。だから嫌いなのさ。いわゆる『当たり前の事』をやってりゃましのなのになあ。『やればできるか』かは知らないが、やらねぇものはできねぇ。そうだろ?」
正論かもしれない。組織である以上は。
最終更新:2010年03月27日 10:38