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ある地方人の旅

見物

彼は、昨日、帰ってきたところらしい。
彼は、いままで行った事の無い場所に行ってきたという。

「いや、しかし、都会は、言われているより、普通だったな」
何故そう思う。
「田舎田舎と囃し立てるから、どんなものかといってみたが、案外普通だな。通行人は玄人だが」
そうだろう。目的を持たない人間にとっては、どんな場所も意味がない。通行人が玄人ってのは?
「避けるのがうまい。人と決してぶつからないし、動きも速く、慣れていて、気まずい事もない」
ああ、そうか。そうかもな。同じほうに避けようが、気まずくならずに、すっと通り抜けるよな。
「それに、きちんと規則が守られている。互いに困らないように。過干渉しないように。絶対に」
あの人数であの区画に暮らすためだ。というか実際に礼儀正しい方々が君の周りにいたのだろう。
「ああ、とっても運は良かったな。まあ、例外はあったが、おかげであの町の印象は悪くない。」
それは良かった。囃し立てるような人間もいるが、逆に、まともで誠実な人間もいるだろうから。
「しかし、都会に憧れる、とか、行ってからずっと都会にいたい、という気持ちは分からない。」
何故だ?まあ私はこっちの方が人も適度にいないし、状態がいいから行きたいとは思わないがね。
「いまや、どこでも手に入るからさ。情報も物も。催事限定は手に入りにくいが、他はそうだ。」
その催事に行ってきた君がよく言うよ。まあ、やはりでも定住したくはないわけだろ?たぶんは。
「まあ、いいじゃないか。ああいうのは好きなんだから。でも、まだそこまでの魅力はないな。」
で、他にも理由はあるんだろう?君としてはどう思っているのさ。他にも思う所はあるのだろう?

返ってきた答えは、すこし、拍子抜けした答えで、意外であった。

「だって、借家しかないじゃないか。休まるところがない。それに、なんであんなに金を払うんだ?実際の価格より払ってるぜ、きっと。むしろしっかり管理していれば、管理人が使うより状態はいいかもしれないだろ。下手すると、一生で見れば、借家暮らしの方が高くつくし」
ああ、そうか、としかいえないな。そうくるか。で、こっちの方がいいのか?
「まあでも、あっちの方がいいかもな。むしろこっちより、人情味がある。人になれてるからな。部外者も必要以上に警戒しない。電車の中は両手を挙げてなきゃいけないって所を除けば、いいかもしれない。人の扱いに慣れてる人間ばかりだから、安心するのかもしれないし、楽だな。危険な人間にも会う事はなかったし」

彼なりに、都会も気に入ったのかもしれない。曰く『特にこれと言えるわけではないが、なんとなくいい』らしい。そうか、としか言いようがないが、実際、そういった事はありえるのかもしれない。そう、なんとなく。


追記
「案外、悪くないな」
しかし、言われているのは大げさに気がするし、どこに行きたいかは人次第。そうだろ?
「それも確かだ」

しばらくして、こうも言う。

「田舎者と地方人は違うよな」
かもな。
「田舎者は確か、残念な民度の低い人間って意味合いもあるが、地方人は違うだろ」
いや、同じ意味合いで使われてるかもな。たしかに、辞書的にはそうかもしれないが。
「だとしたら、混同して欲しくないよな。俺が立派とは到底全く絶対に言えないが、田舎に住んでいようがまともな人間はいるのだろ。田舎者って一括りはおかしい。というよりその地域に住んでいるというだけで全員そうだって事がまずありえない」
老人と若者も、邦人と外人とも、そうだろうな。括るのは楽だが、ただそれだけでは個人ははかれない。
「だよな」

そんなに、差を気にして、ふざけて取り上げる様な人間が言うほど、同じではない。むしろ、同じ見方では到底、理解しきれはしない。

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最終更新:2010年03月31日 10:24
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