理想と夢
彼は、たいていの場合、理想論しか語らない。
そんな彼の言い分である。
「理想論ばかりじゃ、うさんくさいとか、世の中はそんなに甘くない、と思うだろ」
あるいは、そうかもな。
「でも理想論の何が悪い。俺は、『~がいいですよ、~をしましょう』とか無理矢理で滅茶苦茶な押し付けなんて、どっかの偽善者みたいに大々的に堂々とはしてないぜ」
まあ、無意識に行動様式や思想を接する人間に押し付けてしまうことは私も君もある。だが、意図的に強引に、嫌だと明確に君に伝わるように意思表示している者には、押し付けはしないと言いたいのか?
「まずはそうだな。だって、叶わないからっていったって、ずっと暗く考えていたら、それこそ機会だって見逃すだろ。明るく理想論で行く事のどこが悪い」
大抵、叶わないし、現実と合わないからじゃないか。で、それが気に入らない人間が大多数いる、と。
「だったら、理想論者だけじゃなく、将来の夢とかいってる青年も糾弾される羽目になるぜ」
ひどい理屈だが、合ってるかもな。
「具体的に理想が叶わないからって、現実と違うからって何がいけないんだ?」
そういう思想は、あからさまに、明るすぎて、暗い面を見ないからだ。『落花生』でも読め。
「君は暗号のような事しか言わないから、時々理解できない時があるよ。もっと分かりやすく、『立つ犬と坊主と黄色い小鳥の話』とか言えばいいのに」
余計分かりにくいな。
最後はそんな、ずれた話で終わった。
しかし、彼の言い分も、もしかすると一理あるのかもしれない。
なんか理想人とでもいえそうだな。
「間違っても『理想の人』なんて呼ぶなよ。世間一般で使われてる言葉は使うな。誤解が誤解を呼ぶ」
はは、冗談がきつい。こちらとしてもそんな気は無いし、そういった事象はあいにく理解できるような生活をしていない。
「そんな事はわかりきってるさ」
そんな会話をして、別れた。
最終更新:2010年04月22日 21:35