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放映者の疑問

基準

彼は、彼いわく、放送の業界で働いているらしい。
曖昧な言い方だが、どうやら、その関係でこの近くに来る事になったらしく、昨日泊まっていった。
これはその時の話だ。

「数字とか言う前に、謎なんだよ」
何が。
「あんな番組見て楽しいのかって」
楽しくなければ、視聴者は居なくなる。そうだろ。
「でも、数字もいい加減だろ」
視聴率が怪しいものである、という説は聞いた事はあるが。
「そうなんだよな。まあいいさ。でも気になる」
というと?
「例えば、誤った報道をする。娯楽と言って人を貶めて貶す。品のない番組を送る。しかも、報道は暗い」
それを事実だと信じきっているか、優越感という快楽に浸っているか、品などどうでもいい人間か。それに、娯楽はどうでもよくとも、危険は放置しては置けない。楽しい明るい番組や本当に意味のある番組を作るより、不安を煽ったり恐怖を植えつける方が、注目する。生き物だからな、危険には事前に知って対応しておきたいと思うのはあるだろう。
「そうか?」
というか、そんなに神経を使って見てみようとは思っていないだろう。疲れていればなおさら。見方と楽しみ方は人それぞれだし、楽な方に流れるというのは普遍の原理だ。
「にしても、どうかなと思わないか?」
思うに、どれが正しい、ではなくて、皆はどれか、で人間の世の中は決まっている。だから、全ての烏合の衆が左と言えば、法律は左だと言う。君も私も烏合の衆かも知れない。有象無象かもしれない。
「世界中の九割、九分九厘が殺人は正しいと言えば、正しくなると?」
言わないと思いたいが、そうであれば、そうなるだろう。極端ではあるが。
「でも、なんか、こう、残念な方向に向かってる気がするな」
君や私の価値観が、それ以外の価値観と合致しなければ、無視されるか疎外されるだけだ。というか、決める人間がこうだと決めれば、そうなってしまうのさ。
「そういうものかな」
そういう面もある。ただ、そうだと思えば、君が決める人間になるか、君に賛同する圧倒的な数を集めればいい。
「俺は政治家じゃないよ」

彼は本当にそうなのだろうか、と思うこともあったが、言っている事はわかる。
彼は、疑問も解決しないまま、その業界で働いていくのだろうか。


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最終更新:2010年04月05日 17:01
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