それでも俺は…
彼は、電車通勤で毎日通勤している。
毎日毎日、窮屈な思いをしているそうだ。
それは彼のような通勤者と、あるいは利用者全てに当てはまるのかもしれないが。
「男性専用車両も作ってくれ。お願いだ。というか、作ってみないか?」
私は役所でも法律でも、権力者でも、なんでもないから、残念ながらその願いは叶えられない。
「いや、そうだけど。もう両手挙げていくの疲れちまったよ」
良いじゃないか。君にはあの人込みの中で、両手を挙げるとか、他にも挙動不審な事をして、周りを空けてもらう事ができるのだから。
「俺は不審者か。あんまりだ」
冗談だったのに。でも、あまり変な事ばかりしていると、少し人が引くらしいじゃないか。
「それは確かだ。俺の時間だと、押しつぶされることはない程度には空いているからな」
で、君は、女性専用車両とやらがある地域にお住まいなのかな。
「でなきゃ、いいませんよ。ああ、にしても、そんなに別れたいならお互いにくっつかなきゃ良いのに」
性別で分けると、まあ、分けられたくない人間もいるからな、問題だ。
「でも電車ぐらい良いだろ。こっちは一生かかってる。俺はそんなもん興味ないって裁判所で言って信じてもらえるか」
一億あればな。各人につき。
「結局金か?」
買収でもしなきゃ、まずありえない。わかりきった事だ。
「そりゃあ、実際に被害にあっている人もいるんだろうから、こっちばっかりは出来ないさ。でも、お互いにそういう車両を設けて利点があるからな、ぜひやって欲しいぜ。あれは冤罪の中で、遭遇してもおかしくないからな」
まあ、彼の側に偏った話も、少しぐらいは許されて欲しい。というか、偏っていない部分もあると思うが。
双方の利益があるのだから。会社にはないかもしれないが。
「でも実際、一般人は、それとなくわかるよな」
まともな人間か?そうなのか。
「いや、だって、知らない男が急接近してくるんだぜ。嫌でしょうよ、通勤途中とはいえ、さあ」
まあそうだろうね。
「本当に危ないのは、二人以上だな。連れがいる場合はもう両手を一粒300mの会社の人形みたいに挙げてるしかない。玄人かもしれないからな、本格的に嵌めに来てるような」
雰囲気でわかるだろ。
「なんとなくな。もう人を押してでも逃げたい気分だぜ。いや、しないというか出来ないけど」
だろうな。
「でも、『それでも俺はやってない』なんて法廷で言う羽目になるのは御免だな」
実際、冤罪であれなんであれ、法廷が裁けば、というか、捕まって証拠不十分などで保釈されたとしても、一度捕まってしまえば、風当たりは途轍もないらしい、と言っていた。
被害者は、加害者が誰か知りたいだろう。そして、周りの人物は関わるのを避けたがる。
いずれにせよ、立場次第で、変わってくる。変わらないのはお互いによくないことだけだ。
最終更新:2010年04月08日 17:34