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真実の追跡(17:22)

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匿名ユーザー

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裕子は、救急車が去った後を、呆然と見ていた。
屋上で保護された少女には、めぐみがついている。彼女も非常にショックを受けているようで、事情を聞くのはやめることにした。

…どんなに、殺人の動機を聞こうとも。
……どんなに、彼女の更生を望もうとも。
………どんなに、過去を振り返ろうとも。
…………保田圭は、帰ってこない。彼女は、自ら命を絶った。

裕子は、ビルを見上げた。屋上が辛うじて見える高さだ。
圭が飛び降りた場所である。数メートル先には、血だまりが見える。鑑識の人たちが数人、そこを調べている。

「……くそっ」

小さく、誰にも聞こえないようにつぶやく。

圭を救えなかったこと。
被害者の遺族に対する無念。
真実を最後まで知ることができないもどかしさ。
全てが裕子を包み込む。

煙草を吸おうとしてポケットを探ったが、残っていた一本は折れ曲がってしまっていた。
箱ごとねじりつぶし、壁に寄りかかり、瞼を下ろす。

学生時代の圭の笑顔が、浮かんで、消えた。

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