timers   -TIME IS ……-

走れメロス(15:30)

最終更新:

匿名ユーザー

- view
管理者のみ編集可
 小雨も止み、雲の間から太陽が見えてきた。天気予報を信じれば、このまま快晴に向かうだろう。
 石川梨華はニコニコと微笑みながら、M駅の東側広場にいた。待ち合わせをしているのである。
 友達二人と、映画館通りで上映中の「TIMERS」を観に行く約束をしていたのだ。今日が上映最終日である。

 本当は楽しい日なのに、梨華は表情とは逆の感情を胸に抱いていた。
 この日、梨華は友達二人に嘘をついたのである。

 駅前のこの広場で待ち合わせている友人──後藤真希。
 映画館近くの書店で待ち合わせている友人──吉澤ひとみ。

 彼女たちは些細な事で喧嘩をして、未だ仲直りしていなかった。その間に挟まれたのが梨華である。彼女たちは梨華が真ん中にいるからこそ繋がりを持っていたが、いつ完全に離れてしまってもおかしくない状況だった。
 それを打開すべく、梨華はそれぞれを別に誘い、そして有無を言わさず一緒に遊ぼうと考えているのだ。一緒に遊んでいれば誤解も解ける。そう思ったのだ。

 この計画が成功するかどうかは、梨華の腕にかかっている。
 笑顔とは裏腹に、心臓は早鐘を打っていた。
 落ち着こうと、数分前に缶の紅茶を買ってきて飲んだのだが、もう喉が渇いている。

 喧嘩をする二人は見たくなかった。そのまま喧嘩別れなんてもっと嫌だ。

 梨華はひとつ、ため息をついた。
 待ち人は、いまだ来ない。

記事メニュー
ウィキ募集バナー