timers   -TIME IS ……-

たすけてください。(10:08)

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ベッドに座った時、毛布の中に何かがあるのに気付いた。
探ると、それは私のハンドバッグだった。それをつかみ、中身を引っくり返す。ベッドの上に、バラバラと中身が散らばる。
携帯電話は無かった。連絡を取らせないということだろう。それ以外はそのままで、財布やハンカチなどがシーツの上に転がる。

刹那、カツン、という音が部屋に響き、私は我に返った。
ベッドから床に転がり落ちたそれは、最近買ったばかりの口紅だった。

口紅を拾い上げると、そのまま蓋を開け、本体を回し、鮮やかな色の芯が現れる。

──円周率を、30桁──

あの女の──時雨の声が頭に響く。

私は壁に向かい、おもむろに数字を書き出した。
円周率を求めなければならない。

高校や大学、果ては小学校の算数まで思い出し、知識を総動員させ、どんどん壁に数字を書いていく。

30桁。
30桁まででいい。

私の口の端は上がっていた。
笑っている。
私は、笑っている。

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