timers -TIME IS ……-
終章 1
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匿名ユーザー
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雨は霧雨になる。
車を止めて、中澤裕子は煙草を取り出した。
立ち上る煙を息で拡散させ、助手席の村田めぐみを見た。
「ここが、狭霧山」
それだけを言い、再び押し黙る。車内に響くのは、ワイパーの音、雨の音、そしてエンジンの音。裕子もめぐみも喋らない。
時刻は八時を過ぎ、天候もあってか、真っ暗だ。このままエンジンを止めてしまえば、周囲の闇に飲み込まれるのではないか、とめぐみは思った。
「……先輩」
裕子は、煙を吹いて返事をした。
「ここに、霧雨村があるんですね」
めぐみの言葉に、裕子はさも可笑しそうに答えた。
「正確には、『あった』やな」
立ち上る煙を息で拡散させ、助手席の村田めぐみを見た。
「ここが、狭霧山」
それだけを言い、再び押し黙る。車内に響くのは、ワイパーの音、雨の音、そしてエンジンの音。裕子もめぐみも喋らない。
時刻は八時を過ぎ、天候もあってか、真っ暗だ。このままエンジンを止めてしまえば、周囲の闇に飲み込まれるのではないか、とめぐみは思った。
「……先輩」
裕子は、煙を吹いて返事をした。
「ここに、霧雨村があるんですね」
めぐみの言葉に、裕子はさも可笑しそうに答えた。
「正確には、『あった』やな」
「でも、まあ」
数分の沈黙の後、裕子が口を開いた。
「存在はしているなぁ。ウチらがそう思っているから」
めぐみは、一瞬「シュレディンガーの猫」の話を思い出した。
「さて、と」
裕子は煙草を灰皿に放り込み、めぐみに言った。
「行きますか。霧雨村に」
数分の沈黙の後、裕子が口を開いた。
「存在はしているなぁ。ウチらがそう思っているから」
めぐみは、一瞬「シュレディンガーの猫」の話を思い出した。
「さて、と」
裕子は煙草を灰皿に放り込み、めぐみに言った。
「行きますか。霧雨村に」
長い夜が始まった。