??? ―――

「幾何学的」といっても良い部屋であった―――

その複雑な文様は常人には使用の意図すら分かりかねる。
計器の数々。無数の生体ポット。
それらが整然と居並ぶ一室にて、中央に大きなソファとテーブルがあり
そのテーブル上には存在感も露に―――チェス盤のようなナニカが置かれていた。

様々な駒が雑多に並べられるその盤上は、まるでそのルールを知らぬ子供が
手探りで並べたかのような不規則性を醸し出す。

―――――――否、

まるで出鱈目で混沌とした配置のその盤の中央で―――
今、二つの駒が向かい合っている。

「ククク……」

中央のソファーには男がいた。
堪えきれぬと言った表情で笑いを漏らす男。
白衣に身を包んだ容貌――その口元には押さえ切れぬ愉悦。その目には狂気。
盤上の世界を、盤内で踊る駒を、嘗める様な手つきで弄ぶ。

「ふむ―――――」

中央のソファにはもう一人、男がいた。
白衣の影の対面に座る新たなる影。
黒衣に身を包んだ―――聖職者風の男が声を漏らす。

「その配置……初手としては些か振舞いすぎではないのか?」

「初めだからさ……クク。 
 これほどの祭だ。オープニングセレモニーは派手に行こうじゃないか!」

白と黒の両者。
その対処的な影が何やら不穏な言葉を交わす。

「それは構わんが、派手に踊らせ過ぎて駒が壊れなければ良いがな。
 そちらの魔導士がどれほどのモノか知らんが―――英霊の御名は伊達ではないぞ?」

「壊れたら壊れたで構わんさ。
 起承を待たずに主賓が壊れるのは確かに盛り上がりに欠けるが
 それもまた流れの一つと割り切ろう。」

白衣の科学者と黒衣の聖者の、誰も聞き知る事の適わない
それは忌むべき揺り篭の胎内で行われる談話であった。

「さあ………打ち上げようじゃないか! 
 でかくて奇麗で、見事な花火を!!」

甲高い嬌声が部屋中に響き渡る。 そしてそれが合図だったのか。
盤上で引き合わされた「エース」と「ナイト」の駒同士が
この歪んだ空間の元に――――引き合っていく。

狂気の宴の始まりの闘い。

その幕が、今―――上がる。


――――――

NANOHA,s view ―――

(お父さん……お母さん……)

彼女は眼前の光景に絶句する。
目の前の、一つの結果に――――

(お兄ちゃん……お姉ちゃん……っ) 

それは考えられる最悪の事態。
彼女の脳がそれを瞬時に受け入れ、眩暈を覚える。

(アリサちゃん……すずかちゃん……ッッ!)

歯の根が合わず、カチカチと耳障りな音。
それは彼女自身の咥内から生ずる音。
裸で寒冷地に放り出されたような寒気が全身を襲い、その震えが止まらない。
呆然と立ち尽くす彼女。半狂乱で駆け出し、叫び出したい衝動。
それを―――唇を噛んで抑え込んだ。

「こちらスターズ1・高町なのはです……
 クラウディア、聞こえますか?……こちらスターズ1……」

動揺を必死で押さえ込み、味方に通信を送る。
前後不覚の状況に陥った時こそ、今、出来る最善を尽くす。
このような事態に陥ってなお、彼女は彼女以外の何者でもなかった。

「スターズ1・高町なのはです……応答して下さい! 
 ライトニング1・フェイトちゃん! はやてちゃん!」

しかしその呼びかけは空しく虚空に響くばかり。
彼女の声は誰にも届く事はなかった。
座標認識不可。音信不通。
計器その他一切が故障としか思えない数値を叩き出している。

「………………」

立ち尽くす彼女。
漆黒の空に灰色の雲がたゆたう。
まるで黒竜がその身を遊ばせているかのよう。
文字通り暗雲渦巻くその凱下にて―――― 
ミッド近郊の廃棄区画を思わせる廃墟が広がっている。

それは彼女―――白き魔導士の愛すべき故郷

海鳴町…………その、変わり果てた姿であった………


――――――

守れなかった……………
手遅れだった……………

後悔と絶望。胸が締め付けられる程の無力感。
目から溢れ出しそうになる涙を必死に拭う。
泣くのは出来る事を全部やってから……そう、自分に言い聞かせる魔導士。
表情は蒼白ながらも、持ち前の強き意思がギリギリの所で彼女の自我を保っている。

この事態―――<敵>もしくはそれに随する<何か>の仕業であるのは間違いない。

そう、敵………JS事件の首謀者。
次元犯罪者ジェイルスカリエッティ。

(誰か……生存者……お願い…)

商店街の街並。 通い慣れた道。
見覚えのある交差点を辿り、無人の街頭にて折れそうになるヒザを奮い立たせ
魔導士は祈るように歩を進める――――


――――――

SABER,s view ―――

(シロウ………) 

眼前の光景に絶句する。
目の前の、一つの結果に―――――

(マスター………どこだ…!)

それは考えられる最悪の事態。
マスターの傍を片時でも離れた自分の迂闊さを呪った。

(何を……何をやっているのだ私は…!)

奔放なマスターに頭を悩ませるながらも、その人柄を好もしいと思った。
かつて共に闘った彼の父親とはついには分かり合う事はなかったが
この主となら―――信条に背く事なく我が剣を預けられる。
ならばせめて、いつ危機が迫っても良いように
令呪に異変を感じればすぐに馳せ参じられるよう神経を研ぎ澄ませていた。
なのに…………

歯の根をギリと噛み鳴らす耳障りな音。
それは彼女自身の咥内から生ずる音。
怒りと不甲斐無さで身を焼かれるような熱気が全身を襲い、震えが止まらない。
一心不乱に駆け出し、主の名を叫びたい衝動。
それを―――唇を噛んで抑え込んだ。

「………………」

猛りは一瞬。 敵の奇襲を受けた時こそ冷静に迅速に―――
このような事態に陥ってなお、彼女は彼女以外の何者でもなかった。

「…………結界?転移? いや……」

端麗な眼差しが周囲を警戒、模索する。 眼前に広がる光景―――
彼女はさっきまで主の屋敷の一室に待機していた。
だが、異変を感じた時には既にこの場に放り出されていたのだ。

漆黒の空に灰色の雲がたゆたう。
まるで黒竜がその身を遊ばせているかのよう。
文字通り、暗雲渦巻くその凱下にて―――― 

廃墟となった……冬木の町…………

夜の新都に一人―――騎士の王はただ立ち尽くす。


――――――

この事態―――<敵>もしくはそれに随する<何か>の仕業であるのは間違いない。

そう、敵……聖杯戦争のマスターとサーヴァント。
これが<敵>の何らかの策謀によるものだとしたら
自分がこうしている間にガラ空きの主を狙われるのは必定。
既に敵の手に落ちた可能性も十分にあるだろう。
焦燥に押し潰されそうになる騎士である。
希望的観測すら見出せない状況――――

(シロウ―――貴方の剣となり御身を守ると誓った……)

その誓いを果たせぬかも知れないという焦りと不甲斐無さ。
かつて守れなかったモノ――――
不意に頭につく幻視を――――必死に振り払う。

ヒザをつくのは出来る事を全部やってから。
衛宮士郎と共に歩いた新都の町並。
通った道、通った交差点を辿って歩を進める騎士。
苦渋に満ちた表情を隠そうともせず、最悪の予感を押し殺しながら
騎士は一人、影絵の町を彷徨う―――


――――――

――――――

ジェイルスカリエッティ――――――
彼が管理局の拘束を何らかの形で逃れ、脱走。
第97管理外世界・地球に逃げ込んだという報告は
機動6課……ことに高町なのはら地球出身の局員の心胆を震わせるに十分な報せであった。 

何故、彼が地球に、という疑問もそのままに
故郷が戦火に晒されるという危機的状況を前に
八神はやては後見人達の協力の元、半ば強引に機動6課の再設立を申請。
上層部もJS事件で彼女らがスカリエッティを退けたという経緯
功績を踏まえ、事は迅速に進んだ。
任務上、フォワード陣の早期の合流が望めない状況だったが故に
スターズ隊長・高町なのはを初め、フェイト、はやて、ヴォルケンリッターら
主力メンバーが先行して地球に降り立つ。

時間にして最短。何としてでも間に合わせる!
その思いの元、6課総力を挙げての強行軍は
しかし―――最悪の未来を回避する力にはならなかった………
絶望に押し潰されそうになる魔導士だったが―――

(おかしい………何か…)

藁をも掴む思いで生存者の探索を続ける、そのうちに微かな違和感――
希望的観測に過ぎない些細な物であるにせよ――
悲しみに染まりつつあったなのはの表情に、微かに懐疑の念が混ざる。

   歩きなれた、住み慣れた町。
   そのところどころに―――自分の記憶と違う場所がある?

散策しながら思考を回転させ、状況を整理していく魔導士。
まず第一にこの地がスカリエッティの蹂躙を受けた事を仮定する。
もし、それにより件の惨状になってしまったのだとしたら―――その跡………
海鳴の人々の「そういったモノ」が、全くない事にまずは違和感。
もし眼前に広がる光景が文字通りの地獄絵図であったなら、いかに自制心を総動員したとて
彼女は嗚咽に崩れ落ちる体を支える事が出来たか否か。

そう、それは完全に廃墟と化したゴーストタウン。
初めから人の住んでいた熱気―――気配が稀薄なのだ。
母艦クラウディアから設定した転送先は地球での拠点と定めた「八神邸」
だが気がつけば全く別の場所に、他の隊員とも散り散りに飛ばされている。

(海鳴……でも、一体…)

彼女の心中は今や、悲しみよりも混乱と
最悪の結果を否定したい気持ちで綯交ぜになりつつある。
だがこの状況………何が起こるか分からないのは確かだ。
恐らくは敵地と化したこの地にて、いつまでも固まっているわけにはいかない。
火急の事態に対して「いつもの備え」を行う。

……故に―――――気づけた。

「!!!」

魔導士の全身に緊張が走る!

それは――確かにいた。

彼女を尾行してくるものの存在。
自分の50m後方をピッタリと――張り付いてくる影。

(敵……)

頬を伝う汗。
時空管理局機動6課所属スターズ隊長・高町なのは。 
愛杖レイジングハートのセーフティ・ロック解除を確認。

思考を切り替える。
クリアに、より冷静に。
焦燥を浮かべていた顔が歴戦のエースの表情へと変わっていく。
深呼吸を一つ―――歴戦の教導官が後方の影に全神経を集中させる。


――――――

奔走する騎士の前方―――

それは――確かにいた。

(………あれは…!)

ほとんど反射的に街頭の影に隠れる騎士。
自分と同じく廃墟となった街を練り歩いているモノがいた。
遠目のビルの物陰に隠れながら、ソレを尾行する。

ガチャリと、自らの発する鎧の擦れる音に舌打ちをする。
数ある戦場にて幾千幾万の敵味方が仰ぎ見た、光り輝くその雄姿。
隠密行動などという行為からは最も縁遠い存在である。
簡単に言えば目立つ人なのだ。黙って立っていても―――
他人の後をコソコソとつけるなどした事もない身。
その、ぎこちなさを隠せない必死の追跡行が続く。

(……いっそ武装を解除して――いや、)

ここは既に戦地だ。
どこから敵が狙ってくるかも分からない場所で武装解除するなど愚の骨頂。
しかし鎧が擦れる音が耳障りでしょうがない―――
いつ敵にばれてもおかしくない、それは殊更、無様な尾行であった。
とはいえ、この不肖の事態において唯一の手がかりとなるモノを見逃すわけにはいかない。

   サーヴァントではない…… 
   その気配は感じない……

だが無関係かと言われれば微妙な―――その風体。
このような場所で、まるであつらえたかのように自分の前に現れた事もある。
身のこなしや佇まいからして素人のそれとは程遠い。

先手を取られ、不利な状況の中―――
この件の企てがあの者の仕業であるなら、これはチャンスかも知れない。
主があの者の陣営に囚われの身となっていたとしたら
ここで相手の身を抑える事によって出鼻を挫く事こそ突破口の一端。

「後ろ……いるのは分かっています。」 

(…………っ!!)

しかして騎士のそんな目論見は―――

「大人しく出てきて下さい。」

―――呆気ないほどに、挫折。

前方の背中からかけられた声が、尾行に勤しむ騎士を嘲笑うように場に響く。
つくづく甘い考えだったと自嘲する騎士である。
そう……これが相手の策略ならば、自分はその網にかかった獲物だ。
相手の胎内にいるも同然の身で尾行など成功するはずもない。

相手は前方50m。
こちらに向き直り、騎士の方に真っ直ぐに杖の先端を向けて構える。
十分な距離。十分な間合い。 自分は見事に、まんまと誘われたのだ。
相手に気づかれてるとも知らず、慣れない間抜けな追跡を続けていた自分を叱咤する。
このような火急の事態に慎重に行動してるヒマなど―――初めからなかった!

覚悟を決める時―――騎士の顔が、常日頃のソレへと変貌していく。

其はサーヴァント・セイバー。
数多ある伝承において最強の剣の英霊と称されるその身。
眩いばかりの白銀の肢体を、今―――魔導士の前に現した。


――――――

高町なのはが騎士の尾行に気づけたのは、その追跡が不慣れだったという事もあるが
ひとえに「ある備え」のおかげだった。

鉄壁を誇るなのはとて不意を突かれれば堕ちない道理は無い。
過去、奇襲による幾度かの敗北。一度はそれで生死の境を彷徨った事もある。
その教訓から、いつ敵が襲ってくるか分からないという状況に際し
スフィアによるワイドサーチを小まめに飛ばす事を習慣つけていた。

そして、そんな事はつゆ知らぬ騎士。
相手の行動がその身の尾行を誘い、罠を張って自らを迎え撃つつもりだったと取る。
状況からそう認識した彼女はもはや相手を―――敵のマスターであると疑わない。

その距離、50mの間合い。
開けた視界に陣取り相手の出方を待つ魔導士と、物陰から姿を現した騎士。
苛烈な戦いぶりと裏腹に、常時は物静かな二人である。
こんな状況でなければ、恐らくは対話による相手との接触を図ったであろう。
しかし今現在、互いに精神的余裕はまるで無く
この異常な状況の中で双方、もがく様に手がかり―――光明を求めて彷徨っていた。

要するに正常な思考とは程遠い状態であったわけで…………


――――――

NANOHA,s view ―――

(………子供? 女の子…?)

少し戸惑う。
てっきり、スカリエッティと共に脱走した戦闘機人や
ガジェットが出てくると予想していたから………

多分、年の頃は15、6。
金色のキレイな髪に薄い緑色の瞳。西洋の人形みたいに整った顔立ち。
そして服装はそんな清楚さとは真逆の銀の西洋鎧に身を包んだ完全武装。 
でもそれを全くアンバランスに感じさせない予定調和のような美しさを彼女は持っていて
敵地だというのに一瞬、その奇麗さに目を奪われてしまう。
それが目の前で敵意を剥き出しにして、私を睨んでいる人の風体………

敵意―――そう、凄まじいまでの闘気。
一瞬で背筋に何かが這い上がってくるような感覚を覚えながら構える私に対し――

ダァンッッッッッッ!!!!、と――――
耳を劈くような、アスファルトを踏み抜く音を彼女は場に撒き散らす。

「……ッ!」

息を呑む私。
何一つなかった。
交わす言葉も、何も。

一切の躊躇いも無く問答無用に、彼女―――白銀の騎士はこちらに突っ込んできた!
既に砲身を向けている私に対して真っ直ぐに、だ!

凄まじい踏み込み……初動の爆音を全くの置き去りにして発射された白銀の肢体。
まるでフェイトちゃんのテイクオフを思わせるようなフルスタート。
その迫力に、思わず上体が仰け反ってしまいそうになる。

その馬鹿げたスピードは私の視界から残像も残さず
反撃も迎撃も出来る十二分に対応可能な距離―――
50mという間合いの対峙を瞬く間に潰してくる。 でも………

「アクセルシューター……!」

予め用意していた48のスフィア。 それが私の周囲に展開する。
どんなに速くたって―――奇襲でも機先を奪われたのでもない以上
先に相手の鼻先に銃口を向けている私の方が速いに決まっている。
あまりにも無策……この状況でそんな突撃をするなんて…

「シューーーーーートッッ!!」

デバイスや魔法の補助を受けての事だけど
超高速移動をする相手との戦闘訓練は十分に受けている。
もっとも相手は真正面からグングンと迫ってくるのだから狙いをつける必要もない――

全弾斉射!!! まずは動きを止めて……ッ!


――――――

SABER,s view ―――

こちらの動きが相手に筒抜けである以上
もはや問答の暇も交渉の余地も与えるつもりはない。元より交渉の材料などない。
何故なら敵の術中に嵌った時点でこちらの身は抑えられたも同然―――

敵サーヴァントがどこから狙ってくるかも分からないのだ。
不利な材料しか持ち合わせていない者が対話の席に着かされたとて
まともな交渉になるはずがない。
敵の胎内で動かなければ、座して消化されるのを待つだけだ。

ならば――――まずは相手の頭を抑える!

絶対的に不利な状況の中、少しでも活路を開かねば何もならない。
勿論、それ自体が罠の可能性もあるだろう。
私の奮起を誘い、飛び出させたところを網に絡める事も十分に考えられる。
だが……事ここで深慮など愚の骨頂。
どんな姑息な罠だろうと、真正面から打ち破り、噛み砕いてみせる。
この身は………数多の戦場でそうしてきた、剣の英霊なのだから。

街頭から姿を現した私と相手の目が合う。
どうやら女の―――魔術師のようだった。
栗色の長髪を両端で結んだ風貌はどこかリンを髣髴とさせる。
その引き結ぶ口元には、蜘蛛の巣にかかった哀れな獲物を見るような優越感―――
そのような嗜虐めいた感情は、表向きは見受けられない。
まあ、どのような罠があれど―――サーヴァントと向き合いながら
弛緩の空気を垂れ流しているようでは三流以下だろう。
向こうも相応に、この身を警戒しているという事以上の意味はあるまい。

だがメイガス―――それでも迂闊さは拭えないと知れ。

先ほどリンを引き合いに出したが、彼女は余程の理由が無い限り
このようにサーヴァントと正面から向き合うなどという愚かな行為は絶対にしない。
その選択が高くつくという事を存分に教えてやる……魔術師よ!

「はぁっ!!」

敵との距離を即座に潰そうと踏み込む。
まずは我が前進、止められるものなら止めてみよ!

「アクセルシューター……!」

私が行動を開始した直後―――全く同時。
相手はこちらの動きに合わせて周囲に迎撃の魔術を展開する。
良い反応だ……私の動きを捉えているというのか…?

「シューーートッッーー!!」

鈴の音のような声が響き渡り、数十を超える魔弾がこの身に降り注ぐ。
その弾幕は直進を続ける我が視界を埋め尽くすほどの豪壮なものであり
相手が並の使い手では無い事を感じさせた。

だが……私はそれに構わず直進する。
それを受けて相手の表情が―――強張る。

その無数に放たれた魔弾が、私に触れるや否や―――
まるで弾かれるように散華し、消滅したからだ。

「ええっ!!??」

驚きの声をあげる彼女。
残念だが魔術師よ。
この身には届かない………その程度の「魔術」ではな!


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最終更新:2010年03月15日 16:29