このSSは「小ネタ・分類不可・未整理/24スレ/221」の続編です
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誰がそれをやったのか2




誰がそれをやったのか2

1、霧雨魔理沙の場合
 「おーい、○○!」
空中より箒に跨がった人物が降りてくる。
声の調子からして魔理沙だろうと思ったので、こちらも手を振っておく。
こちらの愛想が良いのは魔理沙に里まで送って貰えたならいいなと、
少し甘えた考えがふっと浮かんだせいなのかもしれない。
瞬く間に降りてきた魔理沙は箒を放り出してこっちに駆け寄ってくる。
こちらの体をぺたぺたと触りながら、体の様子を確かめていた魔理沙であったが、
自分が大丈夫であることが分かっても、なおも心配そうな様子で話してきた。
「○○、大丈夫だったのか?」
「ああ、大丈夫だ。」
「そうか…。実は○○の小屋が火事にあったって聞いて。心配したんだぜ。」
いやに耳聡いなと思いつつ、魔理沙に返事をする。
「まあ、幸いに怪我は無かったがな、しかし一年分の収穫した米がパアになってしまったのは痛いな。」
ビクリと反応をした魔理沙が言う。
「ということは、今は無一文ということなのか?」
「ああ、そうだから、人里に行って何か直ぐの金になる、日雇いでもしようかと思ってな。
出来れば、里まで乗せて行って貰えるとありがたいんだが…。」
幾ら見知った人とはいえ、少女に男と二人っきりで飛ぶ様に頼むのは少々ハードルが高いと思ったが、駄目で元々と頼むこととした。
こちらの頼みを聞いた魔理沙の顔が一瞬暗くなり、やはり駄目かと思ったが正反対の答えが返ってきた。
「大丈夫だぜ。」
「いや、厚かましいとは思っていたんだ。年頃の女性に二人っきで飛ぶのは、ちょっと噂になったら問題だからな。」
言ったものの、魔理沙を気遣って断ろうとするが、それでも魔理沙は頑なであった。
「大丈夫なんだぜ。大体、何が問題なんだ?」
「いや、変な噂が立つのはお互い問題だろうと思ってな。」
目つきが鋭くなった魔理沙を見て、隠れていた地雷を踏んだかと思う。全く、秋の空と乙女心とはよく言った物である。
「○○は私と一緒にいるの迷惑か?」
直球でボールを投げつけてくる魔理沙。ならばこちらも誤魔化して返す訳にはいかない。
「いや、そんなことはない。」
「ふーん…。」
こちらの顔を暫く眺める魔理沙。これでは猫に睨まれた鼠である。
「嘘、じゃないな。」
「そんなに顔にでるのか?」
二人に言われては思わず聞いてしまう。
「ああ、箒に乗ったら教えるよ。ほら、いくぜ。」
箒に誘導されて空の旅に出る。地上とは一転、上機嫌になった魔理沙にさっきの答えを尋ねる。
「ああ、あれか。○○が嘘を付く時には、僅かに目が動くから。」
普段からそこまで見ているのかと、思わず女性の観察眼には驚かされてしまった。

 人里に差し掛かり、もうそこら辺で下ろしてもらおうと思ったが、魔理沙はぐんぐんと人里の中を進んで行く。
人が上を見上げている中で男女二人で箒に相乗りしている状況に気後れするが、箒の速度は緩まない。
少々恥ずかしくなり下ろしてもらおうと、思い切って声を掛ける。
「魔理沙、ここら辺で…。」
「いや、○○は日雇いに行くんだろ。」
「ああ、そうだけれど…。」
そうしている内に、日雇いの口利きをする店を通り過ぎる。
「だったら、私の店で探すぜ。商店には付き合いもあるし。」
「いや、そこまでしてもらうのは悪いな。」
「○○は私が迷惑か?」
空中にいるというのにまたも地雷が炸裂する。
「お言葉に甘えるよ。」
こちらには魔理沙の提案を鵜呑みにする道しか残されていなかった。

 霧雨商店に入り離れの奥まった座敷に通される。
魔理沙は着替えてくると言ってさっさと部屋から出て行ったので、
自分の住んでいた小屋が何個も建てられそうな広い部屋にいると落ち着かなくてソワソワとしてくるが、
お茶と菓子を運んできた使用人がこっちに話しかけてきたので、そちらに気を取られていた。
先祖から奉公していたという初老の女性から魔理沙についての話しを聞いていると、着替えた魔理沙が入って来る。
「ど、どうかな…。」
普段着の白と黒とは違い、色を纏った着物を着た魔理沙は正直に綺麗だと思えた。
「よく似合ってるぞ。」
「そ、そうか…。」
下を向いて言葉が出なくなる魔理沙。
一緒に居た奉公人はいつの間にかいなくなっており、広い部屋に無言が広がる。
このままでは埒が開かないので、本題に入る。
「それで、何か良い日雇いか奉公はあるのか?」
それを聞いた魔理沙は呆けたように言葉を返してくる。
「ああ、それはまあ、どうでもいいじゃないか。○○は昨日大変な目にあったばかりだし、ちょっと位ゆっくりしてもいいんじゃないか?」
「いやいや、財産が空になってしまったから、出来るだけ早く仕事をしないといけないんだ。」
「そんなこと…。ここにいればいいじゃないか…。」
事もなげに言う魔理沙。彼女からすれば他人事なのであろうが、こっちとしてはそうはいかない。
「いや、そんな迷惑を掛ける訳にもいかない。何か取引先は無いか?肉体仕事ならば有り難いが。」
「○○、それは辞めといた方がいいぜ。」
こちらの提案を即座に蹴る魔理沙。会話が噛み合わない。彼女は一体何を見ているのか。
「○○の小屋の残骸から油の跡が見つかったぜ。それも上等の燃料の。」
-だから-と言葉を続けて距離を詰める魔理沙。不意に香水の匂いを感じた。
「下手にここから動かない方がいいぜ。なにせ中々の事件だからな。」
-火付けは繰り返すって言うしな-と付け足す魔理沙。深淵を見透かされている気がした。







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最終更新:2019年01月23日 22:43