このSSは「小ネタ・分類不可・未整理/24スレ/221」の続編です
先に誰がそれをやったのかを読んでからこのSSを読んでください
誰がそれをやったのか3
誰がそれをやったのか3
上白沢慧音を選んだ場合
まだ暗い内に△△の家から出て道を歩く。
先生の家は村の中心にあり、人里の外れにある外来人の集落からは少々遠い。
正直宛てはないのであるが、上白沢先生に尋ねればきっと何か良い案が生まれてくるに違いない。
そう考えて道を進んでいくが、冬の風は冷たく身も凍るような寒さである。
鼻をすすりながら声が思わず出てくる。
「ああ、寒い。」
そう言ったとしても寒さがましになることはないのであるが、それでもそう言わずにはいられない。
いったいどうしてこんな状況になってしまったのかと考えつつ、薄暗い道を進んでいく。
霜柱が足で踏みつけられ、グシャリと音を立てた。
霜を履んで堅氷至るという言葉があるが、今の自分にはそれが思い至る余裕は無かった。
いざ家の前に入ろうと思うとなかなか思いきりがつかない。
しかしそれでもどうにか気持ちを奮い立たせて部屋の扉を開ける。
早い時間であったが先生は起きていた。明かりがついていない暗い部屋の中で、先生は座って涙を流していた。
いつもは丁寧に櫛でといている白い髪は、ボサボサで振り乱していた。
そして服は乱れており見たものに恐怖を与えてしまうような、
まるで外界で読んだ本の中にいた夜叉のようですらあった。
こちらが扉を開けた音に先生が反応する。赤く充血した目で胡散臭げに此方をぼおっと見ていた。
突然の訪問を詫びるためにこちらが挨拶をしようとする前に、
先生が猛烈な勢いで跳ね上がって私に飛びついてきた。
「○○一体どうしたんだい!一体どうしてここに来たんだい!」
「実は自分の小屋が火事に遭いまして…」
私はそう言って先生に事情を説明しようとしたが、先生は私が話そうとするにも関わらず、
私を自分の家に引っ張り込んだ。
「分かっている。ようく、分かっているんだ。まさかあんなことになるなんて…。」
先生はそう言って涙を流しており、私はそのまましばらくぬいぐるみの様に、先生に抱きしめられていた。
ややあって、と言っても数分の間であったのかもしれないが、先生が少し落ち着いた頃を見計らって、
私は先生に話しかけた。
「実は、先生にお願いがございまして。」
「一体なんなんだい?」
涙で嗄れた声で先生は言う。
「実は火事で財産をなくしてしまったので、来年の地代が払えないのです。
是非とも先生にお願いしまして どうにか収穫以降まで待ってもらえるように、
顔役にお願いしてもらえないでしょうか?」
村の守護者とはいえ、かなり負担を掛ける私のお願いに対して先生はこともなげであった。
「なんだそんなこと…。○○、お前がそんなことをする必要なんてないんだぞ。」
なぜかそのようなことを言い出す先生に対して、私は呆気に取られてしまう。
何か致命的なまでに会話が噛み合わない。
「お前は大変な目にあったんだから、ひどい目にあったんだから、そんなことをわざわざ考えなくていいんだぞ。
どうせならば一年や二年…いや永年でもいいんだから、そんな事ぐらい私が話をつけてどうにでもしてやるよ。」
「しかし、そんなことを言われても…。先生に気苦労をかけるわけにはいきません。
申し訳ありませんが、秋までの繰り延べの方をどうか頼んでいただけないでしょうか?」
こちらとしては先生にそこまでの迷惑をかける訳にはいかず、あくまでもお願いをする。
「だめだ!」
普段は穏やかな先生が大声を出す。
「私がそのお願いをしたら、君はここから出て行くつもりなんだろう!」
いつのまにか話しがすり替わってしまったが、それでも迷惑を掛ける訳にはいかないと答える。
「駄目だ。駄目だ!それは絶対ダメだ!」
優しい先生が断固、私の言うことを拒絶する。
村人から普段慕われている姿とは違う、鬼気迫る勢いにすっかり私は圧倒されてしまっていた。
「一体、どうしてですか…。」
自分の声は知らず知らずのうちに震えていた。
もしも知ってしまえば、もう二度と戻ることが出来ないかのように。
「私は歴史を創る能力と、食べるる能力を持っている。だから幻想郷のことがよくわかるんだ。」
私に話したくなかったことを、先生は言う。
「だから…だからこそ、お前の家に火をつけた犯人を私は知っているんだ。
お前はそれを知れば、絶対にそいつを許さないだろう。
私はお前に出て行ってほしくないんだ…。」
先生は涙ながらに話す。
「大丈夫だ、私が全部上手くやる。私が全て歴史を食べてそして新しく作り変えてやる。
だから、お前は何も心配しなくていいんだ。」
そう自分自身に言い聞かせるように言って、先生は僕を見つめていた。
感想
最終更新:2019年01月23日 22:50