藍さんに送ってもらい、今は妖怪の山の前だ。普段から人は入ってはいけないと言われている危険な場所。だが、さっき藍さんから貰ったこの護符があれば大丈夫だ。ほとんどの妖怪はこの護符に篭められている気で近付かなくなるらしい

それにしても、今朝の藍さんは妙にツヤツヤしていた気がする。妖怪は朝は活力に満ち溢れるものなのか?今度聞いてみよう。

さて、今の季節は秋。当然紅葉が綺麗になる季節だ。前々から妖怪の山の紅葉は綺麗だと聞いていたが、場所が場所なだけになかなか行けなかった。だが、心強い護符がある今ならなんとかなるはず。

俺は山に足を踏み入れた。



やっぱり噂通り妖怪の山の紅葉は美しいものだった。緑から赤に変わった葉っぱはどこか落ち着きを感じさせる。俺の傷ついた心を癒してくれるようだ。

赤く色付いた葉が風に舞い、ヒラヒラと落ちる。だが、そのスピードが途端に早くなった。

○○「なんだ?」

吹いていた風がいきなり強くなった。最初はただ少し風が強くなっただけだと思ったが、風が止む感じがしない。風はもはや突風レベルになり、葉は吹き飛ばされ、俺も立っているのがやっとだ。風を防ぎながら薄目を開けると黒い羽が見えた。

文「ここは人間が入っちゃだめな場所ですよ。それはちゃんと伝えたはずで・・・あれ?○○さん?」

○○「なんだ文か」

どうやら風が強くなったのはこの目の前にいる文と言う少女のせいだったようだ。だが、少女と言っても彼女も妖怪。俺よりも何倍も力はある。文とは俺が幻想郷に流れついて、間もない時に沢山取材されたのが印象に残っている。

文「どうしたんですか?○○さん。こんな所まで」

○○「訳有でね」

文「訳有り?じゃあ、山に入らしてあげる代わりに、その訳を聞かせてもらいましょうかねぇ・・・」

文はペンと手帳を取り出し、興味津々な顔で近づいてきた。例え山への出入りが自由だったとしても、何かしらの理由をつけて聞き出そうとするだろう。俺は溜め息をつきながら、訳を話す事にした。



文「そうですか・・・○○さん振られちゃたんですね」

あらためて言われると忘れかけていたものがまた思い出された。振られたんだなぁ・・・涙が出そうだ・・・。

文「それはそれとして、○○さん。今夜どこかで泊まるんですか?」

○○「あぁ、野宿でもしようかと思ってる」

文「それは危ないですよ!○○さんが例え身を守る力を持っていたとしても、この辺は夜になると他の妖怪が活発になって危険です」

○○「じゃあ、どうしろっていうんだ」

文「ちょうど私の家に空き部屋があります。そこに泊まるのはどうですか?」

○○「文に迷惑がかかるんじゃないか?」

文「人間が山に居るのが分かっていて、それを見捨てるような事をすれば、私が大天狗様に怒られてしまいます。遠慮しないでください」

わざわざ危険な場所に自分から居着く奴はそうそういない。俺は文の家にお邪魔する事にした。



始めて新聞を作る仕事場を見せてもらったが、凄いな。あんな風に新聞を作るなんて知らなかった。俺はまた一つ賢くなった気がする。空き部屋を見て見たが、案外綺麗にしてあった。その隣は文の部屋のようだ。見てみたい衝動に駈られつつもなんとか我慢する。のぞきダメ、ゼッタイ。

歩き回ったせいで疲れてるみたいだ。今日は早めに寝よう。

俺は敷かれた布団に潜り込み、眠りについた。



文の部屋にて

机の上に置かれた沢山の写真。それにはどれも○○の姿が写っており、文はそれを一枚ずつうっとりしながら眺めていた。

文「寝ている姿。食べている姿。喜んでいる姿。悲しんでいる姿。楽しんでいる姿。怒っている姿。困っている姿。それから・・・」

写真はおびただしい枚数で、他にも保管されている物があるらしく、まとめられている。

文「あぁ、どれも大好きな○○さんの姿ばっかり。今日も沢山撮れたし」

特に今日は夕方から一緒だったため、色々な姿が撮れたらしく。カメラを大事そうに抱えている。

文「それにしても○○さんを振るなんて何を考えているんだろ?私がその場にいたら多分、吹き飛ばしちゃうかな。まぁ、このネタは新聞には載せないからいっか」

この事は出来るだけ他の人達には伝えたくない。伝えれば悪い虫が○○さんにつくかもしれしれないから。
文「早くこの写真に写ってる全部の○○さんの姿を私のものにしたいなぁ」

近くにあった写真を眺めながら言う。それは文が好きな写真の一つ、○○が笑っている写真だった。

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最終更新:2011年05月06日 04:04