GMの独り言という名の第1回あとがき(Ric)
さて、第1回のシナリオが終わったわけだが……。
今回はそれを少し振り返ることで、改めて伏線を洗い直してみたり、
反省点なども考えてみようと思う。少しネタバレも含むが……まあ問題ないだろう。
東方でTRPGをするに当たって、まず難航したのがどのシステムを用いてプレイするかということだ。
幻想郷の住人は異変を解決するために自ら動き出す、ということが多いため、
幻想郷の住人では対処不可能な事態でもないとプレイヤーキャラクター(以下PC)の出番はないのではないか。
幻想郷の住人がまったく興味を示さない、もしくは丸投げされる事態を解決する、ということは考えられるが、
イベントとしてはインパクトに欠けるものになりがちである。
なのでセッションを終えた後の達成感も余り感じられないという事態になりかねない。
なんとかしてPCにしか対処できない事態を用意することはできないものか……。
同人で作られている東方TRPGシステムはもちろん、既存の市販されているシステムを色々と比較検討して、
行き着いたところがアルシャードガイアであった。
アルシャードガイアにおける敵、それは奈落と呼ばれる存在であり、クエスターにしか奈落は倒せない。
この大前提を見る限り、霊夢や紫でも奈落を倒すことはできない。
これならば幻想郷で奈落がらみの異変が起これば、この異変を霊夢達ではなくPCが解決する理由付けはできる。
さて、アルシャードガイアの舞台は現代の地球となっているので時間軸については問題ないが、
その舞台を幻想郷にするにあたって、当然ながら様々なオリジナルの設定が必要になる。
それについては、シナリオを考えつつ、それに合うように設定を作ることにした。
シナリオ概要を考えるときに引っかかったのは、
幻想郷は奈落に関してどれほどの認識があるのか、ということである。
アルシャードガイアのルールブックによれば、奈落のガイア(地球)に対する侵攻は最近強まってきた、とある。
その最近がどれぐらいの時間かは分からないが、博麗大結界の構築よりも後だと考える方が自然だろう。
つまり、博麗大結界によって外との交流が疎遠、というかほぼ皆無となった幻想郷では、
奈落に対する認識は外の世界に対するそれよりは低い、もしくは認識ゼロと考えられる。
だがまったくもって認識がない、となるといざ奈落が幻想郷に現れた時に何もできない。
それでは困るのでほんの少しは認識を持たせる必要がある。
だが外の世界でも一般には秘匿されている奈落の情報を誰がどうして持っているのか……。
そこで思いついたのが八雲紫である。
色々な二次創作でもこういう困ったときには八雲紫な流れなので、少々マンネリ感はあるが、
おそらくは外と自由に行き来できるその能力はこれから考えようとしている設定にぴたりと合う。
ここまで考えたところで、シナリオハンドアウトを考え始めた。
だいたいリプレイでもPCは4人というのがメジャーなので、PC4人のハンドアウトを作ることにする。
PC全員を幻想郷の住人としてしまうと、PC全員が奈落に関する知識ほとんどゼロの状態となるので、
これはさすがにまずい。なので半分のPC2人を奈落の知識を持つ外の世界のクエスターとした。
では、外の世界のクエスターはなぜ幻想郷にやってくるのか、ということを決めなくてはいけない。
可能性としてまず考えたのが、幻想郷に奈落が現れたから、それを倒すためのカードとして八雲紫に連れて行かれる。
というパターンだが、これでは完全巻き込まれ系のシナリオとなってしまう。
なのでここは、外の世界のPCと関係のある奈落が外の世界から幻想郷へ行き、
それを追いかけるという形にしたほうがキャラクターが自発的に動いてくれるだろう、と判断した。
だが外の世界のPC2人がまったく同じ動機で動くのでは少々芸がないので、もう1人の扱いを考える。
少々ご都合主義だが、ここは1回幻想郷に行ったことのある人物、ということにする。
幻想郷の人間がまったく奈落の知識がないと困るように、
外の世界の人間もまったく幻想郷の知識がないと困るのでは、という判断からだ。
ではなんで幻想郷に行けたのかを考えなければならない。そこで目をつけたのが、オーヴァーランダーというクラスである。
これは異世界からガイアへ来たクエスターであることを示すクラスなのだが、
オーヴァーランダーの力を持つ者ならば幻想郷へ行ったことがあっても違和感はあまりない。
これで外の世界のクエスター2人の大まかな背景が決まったので、ハンドアウトにまとめ上げる。
最終的にはこの2人はPC3、PC4となっているが、この時点では実はPC4はPC1、PC3はPC2で考えていた。
なぜそれがPC3、PC4になったかというと、PC1というのは基本的に主人公の立場という暗黙の了解である。
どちらかというと外の世界のクエスターよりも、せっかく幻想郷を舞台にするのだから幻想郷のクエスターをPC1、主人公にするべきだという考えに至ったからだ。
次に幻想郷のクエスター2人のハンドアウトだ。
前に書いたとおり、幻想郷では奈落に関する認識はほとんどない。
なのでリプレイなどでもよく使われる未覚醒のPCがシナリオの途中で覚醒する、という流れに持っていくことにする。
となるとこれは当然PC1の立ち位置、お約束というものである。
しかしPC2人をこの流れで持っていこうとするとやはり芸がない。
ではもう1人はどのような立ち位置に持っていくかと考えた。
奈落に関しての知識はないが、自分の力には気付いている。しかしその力についての知識はない。……そういう形にまとめ上げることにする。
これで4人分のハンドアウトは出来上がった。これをもとにシナリオと設定を詰めていくことにする。
あと敵役の奈落についてもこの時点で大まかな設定が決まった。
とりあえず名前はアンドラス。これについては悪魔でぐぐってその名前と背景から適当なものをチョイス。
次にどのような性格、行動を取るか。まずはこういう敵役としてはありがちなタイプにしたい。
結果、他人の願望を叶えるタイプとした。ただ、願望は叶ってもそのための過程で悲劇が生まれるという仕掛けだ。
ここからシナリオについて大まかな流れを決める。
PC4とアンドラスが戦い、両者相討ちのような形にする。その結果傷ついたアンドラスは幻想郷へ逃げ込む。
それを倒すためにPC4と、助力を請われたPC3が幻想郷へ行く。どうやって幻想郷に行くかは紫を使ってどうにかしよう。
PC2についてはオープニングでその力を使っているところと、回想シーンを使って奈落についての説明をする。ここで登場させるのは当然紫だ。
PC1はクエスターとしての力はおろかシャードについても知識ナッシングなため、シャードについて調べてもらうことにする。ここを雑魚に襲撃してもらい幻想郷の住人では対処できなかったところをPC1で撃退する、という流れにする。
その後PC4人が合流、これまでの経緯と情報をまとめる。
そしてこの辺りで異変を発生させる。その異変は、幻想郷に来たアンドラスが何者かの願望を叶えた結果起こったものとする。
最終的にはアンドラスを倒し、異変を解決してエンディング。
ちなみにこの時点では、誰の願望を叶えたか。その異変がどんなものかは決まってはいない。
それはプレイヤーを募集して、そのキャラクターを見てから決めることにした。
次に紫についての設定を考える。正直なところ幻想郷の住人については、紫以外は特に設定をする必要はないと判断した。
紫さえ決めておけば、後はシナリオの流れで自然にどんどん決まっていくだろう。
まず紫と外の関係だ。やはり外の対奈落組織のトップ辺りとは顔見知りであるべきだろう。とりあえずそれだけ決めておけば外との関わりは後はなんとでもできる。
次になぜ奈落について知っているのか……。
これは実は最初っから決めていたが、すばらしくネタバレなので敢えて触れないでおく。
とりあえず紫は奈落やクエスターについての知識を持っていることは確かだ。
ここまで決めたところで、プレイヤーの募集を始めた。
なんだかんだ言ってもプレイヤーがいないことには話にならない。
シナリオの細部を決めるのはプレイヤーが揃ってからでもいいだろう。
さてここで問題が発生した。
プレイヤーの皆はもう分かっていると思うが、プレイヤーが5人になったことだ。
用意したハンドアウトも4人分しかなく、シナリオもそのつもりで作っていたのでここで多少の修正を余儀なくされる。
PC5人で幻想郷2、外3だと幻想郷の影が薄くなってしまうとか色々な要因があったが、
メンバーと話し合いの結果5人目は幻想郷の住人ということになった。
また、キャラクター間コネクションの問題もあるので、5人目をPC3として、PC3、PC4がそれぞれPC4、PC
5にスライドした。
次にPC3の立ち位置だ。これについては少し迷った結果、強大な奈落を封印した者の末裔ということにした。
実はこの立ち位置、紫がなぜ奈落について知っているのかという設定に絡ませてある。
突然増えた5人目にしては、超重要な立場となってしまった。その場の思いつきというのは恐ろしいものだ。
ちなみにこのPC3が奈落について知っているかどうか実はこの時点ではプレイヤー任せである。
結果として、第1話の段階では自分の力も奈落についてもよく知らない、という俗に言う巻き込まれ型に見えたが、今後どうなるかはGMにも分からない状態だ。
とりあえずシナリオについてはオープニングと合流をなんとかすれば特に修正の必要はないだろう。
あとはキャラクターの完成を待って、その後に決めるべき事を決めるだけだ。
しばらくの後、全員のキャラのクラスが決まる。
PC1:詞陽(ファイター・サイキック・レジェンド)
PC2:かなで(フォックステイル・ホワイトメイジ・ブラックマジシャン)
PC3:フィル(ミスティック・サモナー・サモナー)
PC4:階二郎(オーヴァーランダー・マシンヘッド・ガンスリンガー)
PC5:舞論斗(ファイター・ルーンナイト・ソードマスター)
これはまたすさまじいパーティー編成になったものだ。
その攻撃力は加護をフル稼働すれば期待値で200オーバーのダメージを叩き出すほど。
ボスの調整に少々頭を悩ませる必要がありそうだ。
次にキャラクターの設定などを決めていく。
……特に差し当たってここでは問題らしい問題はない。
とりあえずこれでキャラは完成だ。あとはシナリオの細部を詰めつつ決行するのみ。
ちなみにこの時点でアンドラスが起こす異変について確定させた。
春が来てレティがいなくなってから、レティに会いたいというチルノの願望を叶えるというものだ。
さて、実際にシナリオスタート。
詞陽のオープニングで最初想定していなかったことを決行。
このオープニングではいきなり戦闘に突入したが、実は最初はPC2と何かしら理由を付けて合流後を考えていた。
だがPC2がPC1に特に会いに行く用事もないという結論に至り、単独で戦闘をすることになる。
その後の合流、情報収集については特に問題なく進んだように記憶している。
そして中ボス、奈落がレティを形取ったものとの戦闘だがここでも誤算が発生。
というかこれについてはGMの認識不足である。
プレイヤーがアルシャードの戦闘における定石がどのようなものか理解していると思いこんでいた。
経験させるという意味では悪くなかったのかもしれないが、
レティ戦の前にもう少し簡単な雑魚戦を用意しておいても良かったかもしれない。
いや、一応詞陽のオープニングで用意していたか……。
まあ第1話を終えたときに分かってもらえれば良しとしよう。
さて、実は誤算はこれだけではなかった。
経験点の関係上、倒した敵レベルの合計を55まで持っていきたいのだが、現時点でその合計は20。
レティを倒す前に取り巻きの雑魚を全て倒しておけば25に達したのだが、これではボス戦でレベル合計35を倒さなくてはならない。
あと30の場合、レベル16のサンプルボスを使って、あとレベル7を2体用意する計画だったが、
あと5レベル増えるとなると強大にもほどがある。それをどうするかだが……。
敵のレベルを上げるのが一番単純だが、それをやると基本能力値が上がるのでPCの攻撃が当たらないということになりかねない。
となると敵の数を増やすというのが次の解決策。とはいえ敵の手数が増えるのは避けたいので、
敵を倒したら敵の援軍が来るシミュレーションゲーム方式を採用する。
最終的にはアンドラスのボスデータはレベルが15のサンプルを使用。
攻撃力、能力値は下がったが、耐久力が増えた。パーティーの攻撃力を考えれば倒せないということはないだろう。
あとは増援を6レベル分用意すればいい。オープニングにも出てきたレベル3の小鬼を2体準備する。
ボス戦のバランスとしてはまずまず及第点をつけていいだろう。
PCの残った加護は2つ。実際は1つは戦闘終了後必要になると予告していたので、余裕は1つだけだった。
雑魚の攻撃はまだしも、ボスの攻撃を食らったら間違いなく死亡。キャラによっては雑魚の攻撃でも危険な状態だった。
パワーゲームとしてはいい感じにできたと思う。
もっとも敵がシミュレーションゲームをするプレイヤーのように、完全効率化をした動きをしてきたら当然結果は変わっているわけだが。
ちなみにアンドラスは最終局面でもまだ加護ヘイムダルが残っていた。つまり最後の詞陽の攻撃をクリティカル回避できたことになる。
が、何故使わなかったのかというとボスの加護には一定のルール、暗黙の了解を定めていたためだ。
まずボスはイドゥンは持たない。もしプレイヤー側のオーディンが尽きていた場合、イドゥンを通したらまず勝利の目はなくなる。
次にフレイとオーディンは持たせても1つずつ。また、オーディンについてはPCのイドゥンを打ち消すためには使わない。
そしてヘイムダル、エーギルといったクリティカル関連の加護は、確実にダメージを通すためだけに使う。
かなでが小鬼の攻撃を回避するときに使用したエーギルがその実例である。ボスが攻撃を受けないためではなく、PCにダメージを与えるために使っていくと戦闘に緊張感が出る。アンドラスがヘイムダルを使わなかったのは、使わなくても攻撃が当たると判断したからだが(実際に1回もかわされていない)、どこかで使っていくべきであった。
今回のボスとは必ずしも一致しないが、ボス戦でありがちな敵の加護は、
トール、ヘイムダル、オーディン、ヘル、フレイヤ、タケミカヅチ、エーギル、ネルガル、フレイ、ティール、フェンリル辺りだろう。アラカナータやニョルドぶっぱなしはあまりお勧めできない。
またミドルフェイズなどで敵が出てきて思わせぶりに退場するシーンを用意するならマリーシは必須である。
しかしオーディンで打ち消されるなどという事態を防ぐために、打ち消されないオリジナルの加護を用意しておくという策も必要だ。
ボス戦の加護……ではなく、シナリオを通して使用する敵の加護の総数は8~9が丁度いいと考える。(PC5人の場合)
さて、最後はエンディングだが、当初は個別エンディングで考えていた。
最後になれば正直そのキャラに合わせて何かできると思っていたのだが、実際終わって改めて考えると、
個別にやったのでは何か噛み合わない。これから起こることを話すのにわざわざ個別でやるのもおかしな話だ。
なのでまずは全体エンディングをやったあと、個別で演出したいシーンがあればということにして、階二郎と詞陽がそれぞれさらに個別でシーンを演出した。
実はこの階二郎と詞陽のシーンで博麗大結界の設定が確固たるものになった。
エンディングで紫が言った「マナの発散防止」「目隠し」「奈落の侵入抑止」
それまではパズルのピースはあったが、バラバラの状態。だがここでそれは繋がり1つの絵になった。
なぜ奈落が博麗大結界を越えてくることができるのか、ということについては幽々白書の結界を参考にさせてもらうことにしよう。
その結界を認識してしまえば、その結界を通ることはできるが、力の強大なものは通ることができないというもの。
砂をふるいにかければ大きい石は残る。濁った水を濾過すれば、分子の大きい物質は残る。そういうことだ。
第2話以降で奈落は幻想郷にあるアレ絡みで幻想郷へ侵入することとなる。
細かい奈落の行動について、ギミックはいくつか用意してある。
さて、ここで問題なのは誰にスポットを当てるかだ。
詞陽と階二郎は個別でエンディングを用意したこともあり、他PCよりも目立っていたと思うので、この2人以外の誰かということになる。
ではスポットを当てることのできる伏線が揃っているPCとなると、かなでとフィルになる。
さてどちらにしようかと考えた場合、プレイヤー経験値を考えるとかなでの方がいいだろう。
……と、今のところ考えているのはこれだけだ。
細かい導入については参加するキャラクターが決まらないと何とも言えない部分が多いし、
その前に一本シナリオがあることを考えると、細かい肉付けはその後でいいだろう。
少々長ったらしい駄文になってしまったが、第1回のあとがきとしてはこんなものだろう。
特に落ちもないがこの辺で終わりにしようと思う。
最終更新:2008年05月20日 06:56