東北大学SF研読書会
      「空色パンデミック①」
                                担当:刺身

作者 本田誠

 1982年生まれ、東京都出身。第11回えんため大賞優秀賞を受賞

登場人物

  • 仲西景
  主人公。高校受験に向かう途中、穂高結衣に一目惚れされ、空想に巻き込まれたことがきっかけで結衣や空想病と関わっていく。
  • 穂高結衣
  ヒロイン。自己完結型の空想病。アニメやマンガといったものが好きなため、空想もそういったものが起こる。
  • 青井晴
  ヒロイン?ADMを持つ役者であり、妹が劇場型の空想病、かつ女装を好んでいる。
  • 森崎進一
  景と同じ、8、90年代の洋楽を聴くことを趣味としている。空気も読める。個人的にはこのシリーズで一番カッコイイやつ。

あらすじ

  • プロローグ
 セカイ系の説明と景の決意
  • 第1章 見知らぬ彼女の敵討ち
仲西景は高校受験に向かう途中、空想病の発作を起こした穂高結衣にからまれる。それを振りきり、入試で面接を行っている最中に、追いついてきた結衣の発作を止める。また、一緒に面接をうけていた青井晴と知り合う。中学校の卒業式のあと再会した結衣にお詫びという名目でファミレスに連れ込まれる。
  • 第2章 キス騒動
森崎との話や青井との再会。再び結衣がお詫びという名目で現れる。授業で一緒になった青井から妹が劇場型であることを聞く。またもや結衣が現れ、役者としての出演料をもらう。結衣との会話中に現れた青井がほほにキスをし、一悶着起きる。事の真意を問いただすため、夜に青井に電話をかけると、青井の妹が発作を起こしていた話を聞く。
  • 第3章 女装のススメ
青井におごりだと言われて行ったもんじゃ焼き屋で、青井が参加している劇団《銀世界》への参加を打診される。結局その場に現れた森崎も懐柔され、通し練習を見学することになる。練習を見る前に結衣から電話があり、ニューヨーク土産を持ってきたと言われる。結衣も混ざって青井たちの劇を見る。劇を見て感動する森崎と最後までおもしろいとは言わなかった結衣。結局舞台に参加することになる。青井が空想病への憧れをいだいていることを聞く。青井の妹が発症したとの連絡をうけ、青井に誘われて劇場型の発症を見学に行く。妹の精神年齢が4歳程度であることやその経緯について聞き、青井が女装している理由を知る。
  • 第4章 踊る舞台と君の本音
陵青祭当日、劇の本番中に結衣が発作を起こし、劇に乱入する。結衣の介入により、悲恋話であった物語がハッピーエンドへとなった。劇の打ち上げで海に行くことになり、結衣も誘う。護衛などのために付いてきている研究所員から青井自身も空想世界のパラドックスにより自分が「兄」であると空想していると聞く。また、結衣が高校に通う話を聞く。入学祝いの名目でハチ公前に行ったところ結衣は発作を起こしていて収束に協力することになる。発作が収まった結衣は恥ずかしさからいなくなってしまい、セーフガードの一人である木村と喫茶店に行く。木村から結衣が景に固執する訳を聞く。
  • 第5章 夏の終わり、別離は唐突に
二学期が始まり、結衣と共に授業を受けるようになる。出会ったときと同じ空想を起こしたことから、同じ空想が繰り返されることを知る。授業の後、呼び出された青井から結衣のトゥラウム波が強くなっていることを知らされる。二度目の入学祝い、結衣なりの方法で景との関係をすすめようとしていることを知る。結衣の不安を消そうと「二人で大きな危機を乗り越えましょう」とさっき見た映画のことを考えて言う。大型の台風が日本を襲った日、教室で結衣が劇場型の発作を起こす。青井以外のクラスメイトたちが感染する中、ADMを持っていないにもかかわらず感染していない景。結衣の発作終了後、検査の結果景が自己完結型の空想病にかかったことが判明する。セーフガードをまいた結衣と再会するが結衣は発作を起こしていた。二人が発作を起こしたことで天地創造型の発作が起きてしまう。
  • 第6章 セカイを敵にまわす時
目が覚めた景は青井から空想病の影響でアフリカ大陸が消滅したということを聞く。結衣のトゥラウム波によって世界が作り替えられているという。青井から「セカイを守るか。キミを守るか。」という選択肢を選ばなければならないことを知らされる。協力するという森崎と共に結衣の潜伏するホテルへ向かうが、景の携帯のGPSにより見つかり、部屋に空想上の人物であるジャスティスが現れる。森崎の捨て身により一時は逃れるものの、ジャスティスの手に結衣が落ちる。諦めようとする結衣に新設定を聞かせることで能力を強化した景はジャスティスに勝利する。
  • エピローグ
   っていう空想だったんだって。チャンチャン

用語

 ・空想病
特発性大脳覚醒病。発作をおこすと、映画や小説の主人公の如く自身を特別な存在だと思い込み、それに見合った世界観を脳内で作り上げ、その妄想に精神を支配される疾患。トゥラウム波と呼ばれる特殊な脳波を発する。発作が起きている間のことは記憶に残る。自己完結型と劇場型にわかれる。
 ・役者
   空想病の発作を止める仕事をする人。患者の世界観を理解し何を求めているのかを読み取る洞察力が必要とされる。
 ・ADM
  anti dream matter(反トゥラウム波ホルモン物質)劇場型によるトゥラウム波による妄想や幻覚を無効化することができる。長い間トゥラウム波を浴びたものが所持する。

  • セカイ系
  セカイ系という言葉の初出は2002年10月下旬のことで、インターネットウェブサイト『ぷるにえブックマーク』で現れたとされている「一人語りの激しい」「たかだか語り手自身の了見を「世界」という誇大な言葉で表したがる傾向」がその特徴とされており、ことに「一人語りの激し」さは「エヴァっぽい」と表現されるなど[、セカイ系という言葉で括られた諸作品はアニメーション『新世紀エヴァンゲリオン』の強い影響下にあると考えられ、「ポストエヴァンゲリオン症候群」とも呼ばれていた。
新海誠「ほしのこえ」
高橋しん「最終兵器彼女」
秋山瑞人「イリアの空、UFOの夏」
などが東幹久らのグループによってセカイ系の作品とされた。

《聖法》(神より授かりし奇跡の標)
 《強制(悩める子羊は神罰を)告解(恐れ罪を告白する)》
 あ、うん全部書こうと思ったけど思ったより多かったので挫折。
  • 感想
 セカイ系や厨二病、邪気眼といった言葉がネットを飛び交うようになってからしばらくが経ち、厨二病邪気眼の代表とも言えるライトノベルにおいてもこういった単語をパロったりネタにしたりといった作品は多くでてきたが、このように真面目な(?)方向性でそういったものを扱う作品は始めてだったのでとてもおもしろかった。青井かわいいよ青井。
最終更新:2011年06月01日 21:11