11月14日 読書会レジュメ
お題 「プラネテス」(作:幸村誠 講談社)
1.周辺情報
2.作品について
初めてモーニングで読んだときの衝撃は、いまでも忘れることが出来ません。その後これだけ待たされることになろうとは。
鶴田謙二といい士郎正宗といい…
○作品の一つの柱であるハチマキの内省のついて(以下単なる数字はphaseの意)
1 では「何故ここにいるのか?」という問い(と言うほどでもない)
2 「誰にでも無慈悲な宇宙」を自分はどう受け入れるか
4 「ここも宇宙」とはいっても「追いつく」対象。九は昔のユーリ。
5 本格的にハチマキ悩み始める 対話相手は宇宙服を着た自分 宇宙船を手に入れるという自身の夢。無理かもしれないけど見続ければよし。
6 人類の夢なんて「つまらん」by親父 ロックスミスの夢は個人的。選べもう一度!
「大きな物語」の終焉とか、『2001夜物語』と読み比べてみてもいいかもしれない。
7 タナベ ハチマキの夢に他者が混ざりこんでくる
8 またも宇宙服 ただ「全部オレのもんだ」と言っている割には毎晩丸くなっている。
9 ロックスミスの目→他者を踏みつけてでも自分の夢を叶える決意がついた(孤独に耐えられるようになったことも含む?)
ところが最後にタナベが出てきておかしいことになる。
おそらく 共同幻想 個人的妄想
「無垢な子供」→8でのハチマキ→ロックスミスor
→親父,タナベ
10 レオーノフ(決心した人間)挫折→個人だけの夢の破綻。しかも何故かタナベに助けてもらう。
宇宙服野郎は、自分を守る為のものであった→一人で夢を叶えようとすることの孤独さを再確認させつつも紛らわせていた。
ここも宇宙の筈なのに生きて帰ることが必要。(※)3巻の展開を暗示していなくもない。
他者を必要としている→タナベであるとほぼ明示されている。
こうなるなら、どうして5や8であんなことを言っていたのかという矛盾。
12 傷を負ったネコ
完全体のネコは死や孤独。3巻はそこからの逃走劇。
13 タナベにとって宇宙は「宇・宙」。女のカンは男の理性に勝っている。
14 その説明
15 どこも宇宙しかし地球へは家族が必要。(※)
16 「ロケットは哀しいだって一人だから」
まとめ
- 宇宙とはこの世界のすべてであり特殊な空間ではないということ
- 「自分の」夢を叶えよう
- ただし孤独では無理なので、家族が必要。
3巻の一連の話が載ったとき柱コメントで「分かってしまいました」みたいなことを作者が言っていました。
餓死しそうにはならなくても、ハチマキと似たようなことをしていたのでしょうか。2巻の裏そでも参照。
当初は「一人で木星行ってやる」だったのが、日和って「タナベがいないとだめなんだ」となってしまったところに個人的には違和感を覚えてしまう。
まあ、極めて日本的な母性主義みたいなものかと諦観してみます。「はしかみたいなもん」。
マンガとして
・phase10のロシア語
タイトル СПАСИБО ありがとう
p211 「ホシノさんですね? 息子からうかがいました」「わたしはレオーノフの母です」
p222「息子を運んでくださったそうですね。息子がここにいるのはあなたのおかげです」
「ありがとう」
「本当にどうもありがとうございました」
「ありがとう」
上質紙(値段がちょい高い)
絵の変遷 特に1、2、3 おまけに3巻169p あと16のハチマキの目が怖いです
幻視の演出 2、4、10
- extra 最高です。「野球・SF・タイガース」。私的には究極の「燃え」です。
SF
- デブリ回収業の考察 もうかるのか? 地雷除去とはまた違ってくる筈。
- 急性放射線障碍 1Gyとは、1kg当たり1Jのエネルギーを吸収したときの線量
「キリンヤガ」、「沈黙の春」あたりを読んでみて下さい。
- サーキット・コイル型 ヘリカル型のこと?
- エネルギー ヘリウム3 核融合
3Heは太陽で作られて太陽風として月に行き、砂に吸着する形で存在している。
3Heを1トン取り出そうとすると、月の砂は10万トン必要になる。日本の年間消費電力を賄う為には、砂を毎日3000トン近くも処理する必要がある。(技術的なブレイクスルーが必要)
D+T→He(3.5 MeV) +n(14.1 MeV)
D+D→T(1 MeV)+p(3 MeV)
3He(0.8 MeV)+p(3 MeV)
D+3He→p(3.7 MeV)+4He(14.7 MeV)
「デブリが衝突する時の速度は、平均で秒速十キロ程度と考えられています。ライフル銃を撃った直後の弾丸が秒速一キロ程度ですから、その十倍。直径三ミリのアルミのデブリでも、秒速十キロでぶつかれば、ボーリングのボールが時速百キロでぶつかるのと同じ衝撃 があります。」だそうです。
- 「プラネテス」「度胸星」「ふたつのスピカ」「MLM」「まっすぐ天へ」「ソラリウム」「ムーン・ロスト」等最近の宇宙マンガに関する随想。
おそらく抜けがあるでしょうし、そのへんは勘弁ということで。
内容はスポコン、アドベンチャー、ファンタジー風味からサラリーマンまで多種多様。
多分、今の時代だから描けると言えるのは、サラリーマン的というか、本当に地に足付いてる「MLM」と「まっすぐ天へ」ぐらいではないかと思われます。現実では、政府はやる気ないし、技術的なところでも、中国に抜かれてるっぽいし。
新展開が無い以上、世相を反映して出てきたとされてる、「ゼロの波の新人」みたいなのは、
この分野には、なかなか出てきそうにないわけで。
あ、唯一の例外に吉川良太郎がいますが。まあいいや。
個人的には、夜寝る前に気楽に読めるエンターテイメントとして、一定の新作がでていれば文句はないです。
多分「宇宙属性」を持っているので。
そういえば、「分析を始めてしまえばソレマデです」なんてことを西尾維新が「きみとぼく」のあとがきで書いてましたっけ。
読書会にて出ていた意見
- プロポーズのしりとりは上手い(ラブコメ)。
- 1巻p17のロックスミスは平野耕太っぽい。
- 未来の商店街がたいして今と変わっていない。
- 100年後のポルノはもっと細分化されて、フェティッシュだろう。Hustlerがまだ残っている。
- タナベの父親のは、ロックではなくメタルではないか?
全体的な感想
- 絵がきれいなので入って行きやすい。ビルディングスロマンとしてよく出来ている。
- 作品世界に入りやすい。人間ドラマが面白い。
- 今後、タナベとの別離を期待。
- 宇宙はどうでもいい。行きたきゃ行けば。
- 宇宙には何も無いのに何故行くのか。
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最終更新:2019年02月24日 11:54