第六大陸 小川一水



1.登場人物


  • 青峰走也

後鳥羽総合建設の社員。機動建設部所属建設主任。良くも悪くも熱意があって行動力にあふれ、また一方で冷静な思考をも持つ青年。このお話の主人公。典型的。2000年生まれ。

  • 後鳥羽拓道

後鳥羽総合建設の社長。高度経済成長期の終わりごろの生まれ(1968年)。地方の国立大学地球科学を専攻したあと、90年代初期のバブル期大手建設会社に就職。様々な未来的な計画に関わってから退社。3年ほど業界の内外を放浪。2000年に後鳥羽総合建設を旗揚げ。以来、土木建設と科学技術の両方に通じた才能と放浪期に培った人脈をフルに利用して、20年ほどで後鳥羽総合建設を押しも押されぬ特殊施設建設会社に育て上げた。凄腕の経営者。若手を重用し、部下に仕事を任せて、その成功をもって自分の達成感に変えることができる性格。彼曰く「建設は前進」。

後鳥羽総合建設の主な実績


2008年サハラ砂漠に人工降雨施設を含む大規模緑化施設を建設。2012年南極オングル島昭和基地近辺にウラニウム抽出施設建設。2015年カラコルム山脈の世界第二位の高峰ゴッドウィンオースチン山9合目に高層大気と宇宙線の通年観測基地を建設。2025年、南沙諸島沖水深2000メートルの海底に海底都市「ドラゴンパレス」建設。

  • 岩城高純

後鳥羽総合建設、機動建設部部長。恐ろしく頭の切れる男。口癖は「機械が間違うのは作った人間が間違うからだ」。1991年生まれ。(平成生まれじゃん!!)

  • 参堂哲夫

後鳥羽総合建設、技術開発部部長。理工系大学の非常勤講師も務める科学者でもある。初老。

  • 桃園寺閃之助

桃園寺グループ会長。桃園寺グループ(元「楽園観光」)創業者。「第六大陸」計画の出資者。モットーは「地上に天国を、現実を忘れられるひと時の夢を、人々に。」1940年生まれ。

桃園寺グループについて


主幹事業は自己出資100パーセントのエデン・レジャー・エンターテイメント社(ELE社)が運営する、愛知県のレジャーランド、東海エデン。国内第三位の巨大遊園地。マスコットキャラクターはアダムくんとイヴちゃん。周辺事業もいくつも展開。グループの総資産は1兆2500億円。一大娯楽企業。(東海地方にこのような巨大レジャー施設ができる可能性は低いと思われる。東南海地震をあれほど警戒しているのにこんなものは建てないだろう。)

  • 桃園寺輝一郎

ELE社社長。閃之助の息子。妻の静を交通事故で亡くす。意見団体『満ち足りた故地(ジョイフル・ホームランド)』の設立者。1975年生まれ。2015年にELE社社長に就任。

  • 桃園寺妙

輝一郎の娘。閃之助の孫。13歳でカルフォルニアの大学をでるほどの才媛。「第六大陸」計画の発案者。このお話のヒロイン。2012年生まれ。

  • 保泉玲花

ELE社特別監査部監査員。営利至上主義者。鬼のコストカッターの異名をとる。1996年生まれ。

  • ペン、ジャン、ツイ、フォン、マー

中華人民共和国の宇宙飛行士たち。走也が始めて月へいったとき、一緒に崑崙基地に滞在。ジャンと走也は仲良くなる。18000人の候補者の中から選ばれたエリート。地球へ帰還後は国家英雄殿になれる。モットーは「月の沙漠を第二の黄土にする。」

  • 八重波竜一

天竜ギャラクシートランス社(天竜GT社)社長。資産家の息子として生まれ、幼いころからロケットに憧れる。大学の航空宇宙講座にもぐりこんだり、並行輸入車のディーラーをやったり、軽飛行機の運転免許をとったり、中古の産業機械を東南アジアに売りさばいたり、といった放蕩と紙一重の遍歴を持つ。2020年に大学院生の泰と出会って、泰の人類が変わる画期的なアイディアを実現するために三菱重工から宇宙開発部門を買い取り、文部科学省委託の会社、天竜GT社を設立。自分でやってみないと気がすまない性格。1988年生まれ。

天竜GT社について


宇宙輸送を生業とする私企業。現在の日本国のロケットの製造・打ち上げを一手に引き受ける機関でもある。しかし、日本政府は宇宙飛行士や衛星の打ち上げをアメリカに完全に委託。天竜GT社には国からの仕事が入らない。民間から仕事をもらうといっても、同時期の情報通信産業に比べてその市場規模は20分の1しかなく、絶対的な需要が少ない。そして、新興の会社は信頼されない。そんな天竜GT社の命をつないでいるのは各国各地域の宇宙機関がその需要に応えられない部分の仕事を請け負うことだった。(臓器合成実験衛星打ち上げなど)

  • 泰信司

天竜GT社、先端技術研究室の研究員。航空宇宙の分野に革命を起こすトロフィーエンジンの開発者。基本的には楽天家。1999年生まれ。

  • 日比木秀人

天竜GT社、フライトディレクター(飛行主任)。

  • 山際俊之

天竜GT社、パイロット。

  • リチャード・リングストーン

NASA長官。失敗した火星有人探査計画を「第六大陸」計画に対抗する月面基地「リバティ島」建設計画に変えたやり手のアメリカ人。1975年生まれ。

  • キャロライン・キャバリー

カルフォルニア工科大学ジェット推進研究所(JPL)の無人機械サポートルーム勤務。NASAの「リバティ島」建設の主力となる無人機械群の運用責任者。生物学者の父を持ち、その父が日本人を乗せるためにオールドシャトルのクルーから外されたときから日本人に否定的感情を抱く。ハリウッドの女優のような顔立ち。ハリケーン・キャロルの異名を持つ。

  • ジョセフ・ランバック

NASAのローバーの「運転手」。月のローバーたちに大まかな指示を出す仕事をしている。キャバリーの部下。

  • クレイグ

ボーイング社から出向してきたNASAの生粋のロケットエンジニア。キャバリーの部下。

  • ヘンダーソン、ハーディン

NASAの宇宙飛行士。何度か日本人の危機を救う。

  • ウォルフガング・バルクホルン博士

火星有人探査計画のプロジェクトリーダーだった科学者。その火星探査計画がリバティ島計画に取って代わられると表舞台から姿を消した。

  • メルヴィル

オランダ、ハーグ国際司法裁判所での第六大陸計画を巡る日本対アメリカの裁判の裁判長。オーストラリア人。

  • ロード

第六大陸計画国際裁判でのアメリカ合衆国政府の代理人。大統領特別補佐官。

  • 早坂巴

日本国衆議院議員。五十代の女性。宇宙開発推進派の派閥に属する。宇宙開発が票集めになることに気づき、中国の国家英雄的宇宙飛行士に接近して宇宙通を名乗ろうとする。典型的な日本の議員様。

  • 柏原吉久

南極大陸、日本の深部氷床掘削実験施設ドームふじ基地料理長。元下関のふぐ料理屋『一之瀬』の板前。第六大陸のシェフとして引き抜かれる。

  • ドロシー・ハリファクス

第六大陸事務所の事務員。元カルフォルニア工科大学教授。

  • アーロン・ハリファクス

三重県北部の築山神社の宮司。兼カトリック神父。第六大陸の神父兼神主として引き抜かれる。

  • 紀和

元東京タイユヴァンのメートル。第六大陸接客スタッフ。一級電気工事士の資格も持つ。

  • 御木本

第六大陸接客スタッフ。宇佐神宮で禰宜を務めていた経歴を持つ。

  • 洲本

第六大陸をはじめて訪れた日本人記者。



2.あらすじ


 有人商業月面基地「第六大陸」建設事業建設工程表にしたがってまとめてみる。

Ⅰ.事前調査および起案 2025年

1. 事業計画地ならびに施設試案


  • 海底交通艇「リヴァイアサン」内での走也と妙の出会い。

  • 海底都市「ドラゴンパレス」建設における後鳥羽総合建設の凄さの説明。

  • 桃園寺閃之助と妙の月に基地を作れという依頼。

  • 走也と妙が月に行くことが決まる。

2. 既存施設の運用状況について


  • 走也と妙が中国の月往還船「西王母5」で月へ行く。

  • 月面基地を有人で運用し続ける難しさの提示。

  • 走也と江のつながり

  • 走也と保泉が天竜GT社を訪れることが決まる。

3. 運搬機器の開発と施設の性格


  • 走也と保泉が八重波と泰に会って、トロフィーエンジン搭載のロケットを見学。月への足を確保。

  • 1500億円で月面基地を建てる計画が完成。

  • 第六大陸の目的の一つが判明。結婚式場。

  • 走也と妙が付き合い始める。

Ⅱ.資機材搬入および造成 2029年~2033年

4. 造成対象用地の調査と公知


  • 月面工事用多目的建設機械「マルチブル」の完成とその性能の提示。(2029年5月1日)

  • 2トン級月面試料採集機「サーペント」による、月に水があることの証明。(同)

  • 月の水によるコンクリート造成が可能であることの証明。

  • 月の水のサンプルのなかから不可解な金属繊維の検出。

  • 月面へ初めて作業機材を送り込む。(2029年9月)

  • 保泉と八重波の熱い絆。八重波が自らアップル3に乗り込むことが決まる。

  • どんどん月面へ作業機材を送る。

  • NASAが動き出す。

5. 施工資格ならびに用地取得資格


  • 八重波が乗るアップル3が故障し、NASAに助けてもらう。

  • 第六大陸のもう一つの目的が読者に明らかになる。地球外知性体の探査。

  • 妙と輝一郎親子の対立の構図。

  • NASAのリバティ島計画の発表。

  • NASAを第六大陸計画側が助ける。

  • 『月協定』違反として国際司法裁判所で日本対アメリカの裁判が起こる。(2030年8月1日)

  • 第六大陸側が地球外知性体の探査機器を持っていることを明らかにして、劣勢を逆転。勝訴した。

6. 危機管理ならびに事故対処の心得


  • 輝一郎と閃之助の対立。(2030年)

  • 江と走也の再会。西王母の調達の依頼。

  • 妙と保泉が第六大陸のシェフ選び。

  • 計画のスケジュール消化の遅れ(約一年)。

  • 有人宇宙船アップル7が日本の宇宙船として初めて月に人を送るために打ち上げられる。(2032年5月)

  • アップル7に故障発生。二酸化炭素吸着フィルターの故障。妙の名案により解決。

  • アップル7に事故発生。スペースデブリが衝突。この事故で泰が死亡。アップル7も月を周回して、泰の乗ったコア・モジュールを月に置いてくることしかできなかった。

  • 妙と走也の隔意。

  • 第六大陸計画へのバッシングが強まる。

  • 閃之助が会長を解任。第六大陸計画の資金繰りが苦しくなる。

  • 輝一郎が作った意見団体『満ち足りた故地(ジョイフル・ホームランド)』がスペースデブリの危険性を訴える。

  • 妙と輝一郎の間に決定的亀裂が入る。

  • 異星人の存在をほのめかす。

7. 環境アセスメントの再施工と工程の見直し


  • 走也と山際、そして作業員2名の4人が月での有人作業を開始する。(2032年11月24日)

  • フェイズエクストラ、スペースデブリの除去作業が開始される。

  • 第六大陸事務所でのドロシーのリスクコントロールシミュレーション。

  • 玲花と八重波の婚約。

  • 築山神社で閃之助がアーロンを第六大陸の神父兼神主として引き抜く。

  • 第六大陸計画の危うさの提示。

  • 月面でのコンクリートの完成(2033年春)

  • 軌道タグボートの推進剤の月面での確保のめどが立つ。

  • 走也たちの一時帰還。(2033年5月)

  • 妙が過労で倒れる。

  • 走也と妙の再会。対立。核心を突く対話。

  • 妙の入院。自分の今までの姿を反省。

  • 拓道、閃之助、八重波の三者会談。

  • アーロンと輝一郎の会話。輝一郎の改心。輝一郎と妙の和解。

  • スペースデブリ清掃の問題にめどがつく。

  • 『満ち足りた故地』の解散。

  • 妙の走也への思い。

  • 月での未知なるものの発見。

Ⅲ.建築完成検査および運用手順

8. 外観、運用状況、工程外付帯施設について


  • 第六大陸本館の説明。スタッフの様子。(2036年2月10日)

  • 走也と妙の再会。

  • 電荷摂取性格子(ENG)についての説明。

  • 走也と妙が二人きりの旅。深まる仲。そして、危機。脱出。

  • イングーの正体判明。

9. 工程外付帯施設の評価と新規案件


  • 第六大陸での玲花と八重波の結婚式。(2037年)

  • スターロードの出現とその性能。

  • 地球外知性体について

  • 走也と妙の約束。


2019.02.24 Yahoo!ジオシティーズより移行
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なお、内容は執筆当時を反映し古い情報・元執筆者の偏見に基づいていることがあります by ちゃあしう
最終更新:2019年02月24日 12:11