SF研読書会 『マルドゥック・ヴェロシティ3』 冲方 丁 by銀月
(※1・2は担当者未提出のため存在せず ご了承ください)


1 冲方 丁


先週、先々週と同じなので割愛。

2 登場人物


ウフコック=ペンティーノ=万能兵器。萌えの原点/その愛らしさで主役たちを魅了する=影の主役。
ディムズデイル=ボイルド=擬似重力の使い手。この作品における視点の中心≠主役。
ジョーイ・クラム    =鋼鉄の肉体。
ハザウェイ・レコード  =不死者。女で身を滅ぼす。
レイニー・サンドマン  =ドッペルゲンガー/影が薄い。
ワイズ・キナード    =究極の通信兵。羊じゃねぇ。
クルツ・エーヴィス   =盲目の狙撃者。オードリーを殺害/その後の行動 =厨房と大絶賛。
オセロット        =不可視の犬。
ラナ・ヴィンセント    =機銃掃射/義手。
イースター博士     =世話係/雑用。
ウィリアム・ウィスパー =電脳世界の住人。
クリストファー・ロビン プラント・オクトーバー=三博士の一人/シザーズ/09の指導者。
カトル・カール     =狂った戦闘集団/個性が強すぎる≠キャラクター。
ニコラス・ネイルズ   =ホモ/ガンファイター。
ナタリア・ネイルズ   =毒婦/ボイルドの娘を産む。
フライト・マクダネル  =刑事/ボイルドのコーチ。

3 あらすじ


行方がわからなくなったクリストファーとナタリアのあとを追う09の前に、カトル・カールの罠が牙をむく。09の情報が漏れたとしか考えられないほどの周到な罠の前にウィスパーとレイニーが殺され、クリストファーも拷問の果てに殺されてしまう。
多くの犠牲を出しながらもカトル・カールを撃退することに成功した09は、巻き返しを目指す。
そんななかで、死ぬ間際のウィスパーの働きによりカトル・カールの住処を突き止めることに成功した09は、今度は彼らのほうからカトル・カールに奇襲をかける。この奇襲は大きな戦果をもたらした。カトル・カールは逃走に成功した2名を除き壊滅し、ニコラスを逮捕、また拷問ビデオの撮影者であったエルマーの身柄も確保することに成功する。だが、このエルマーという男を尋問した結果、驚くべき事実が判明してしまう。
一つは、戦時下でのボイルドの誤爆がカトル・カールの司祭の手によって仕組まれていたという事実、そしてもうひとつは、オードリーの死はクルツがもたらしたものであったという事実である。
己の裏切りが発覚したことを知ったクルツは、エルマーを殺したうえで09の前から姿を消そうとする。それを阻止しようとしたジョーイはクルツの手にかかり、一方クルツはオセロットに喉を食いちぎられる。そして、自らのパートナーを殺した重さに耐え切れず、オセロットも自らの死を受け入れてしまうのだった。
その後、劇的に人数を減らしながらも確固たる地盤を築き上げることに成功した09は、数々の事件を解決し続ける。
そして数年後、ついにL4Eに関する事件が彼らの前に現れる。罠であることを前提に捜査を進めていくが、この事件は予想以上に大掛かりな罠であることがわかってくる。このことを察したワイズとボイルドが対策を練ろうとした矢先にワイズは殺され、また捜査を続けていくうちに、ラナもカトル・カールの生き残りの手にかかって殺されてしまう。自分たちが逃れようのない罠にかかったことをはっきりと認めたボイルドは事件の解決を諦め、無垢の良心ウフコックを眠らせ、その間に事件を決着させることを決意する。だが、その行動はウフコックの知るところとなり、ボイルドとウフコックは完全に決別するのだった。


4 感想


 ・張られた伏線(全てかはわからないが…)がきちんと回収されており、事件が次々と繋が っていく様子はとても巧い。
 ・事件の結末が決まっていたため仕方がないのかもしれないが、後半の展開が速すぎる。と いうより、どいつもこいつも喋りすぎかと。
 ・ウフコックが冷たい? スクランブルではもっと他人に甘い印象があったのだが、ボイル ドのことはあっさり見捨てているような…。
 ・『ヴェロシティ』におけるフリントは、『スクランブル』におけるボイルドを髣髴とさせ るインパクトの薄さだった。なにか意味があるのか、冲方の趣味なのか。
 ・ラノベ畑の出身だけあって、冲方は『約束』や『誓い』に焦点を当てることが多い。この 話においてはウフコックが「なにかあったら俺を起こしてくれるよな?」と再三云うヤツで ある。『カオス・レギオン』では主人公は友との約束のために戦い続け、『ストームブリン グワールド』では己に課した誓いがどうした、という話だった。『ファフナー』はよく知ら ないがね。
 ・ラストでワン・アイド・モスが、ボイルドのビジョンであったはずの「炸裂よ!」を口に していることから、本人が死んでもシザーズの間には何かが残る可能性がある―次回作への 伏線?
 ・次回作の主役は、パパの遺志を継いだ娘で決まり。
 ・ヴェロシティ…作中に、比喩としてハンドルを切る、カーブ、などの表現が所々に見られ る。このことから、マルドゥック市の人々が常に加速しているかのように生きていることを 表しているのではないかと。そして、加速を続ける人々の全てが速度過剰による“エクスプ ロード”、その結果としての死となる。誰もが限界を超えて加速していった中で、煮え切ら ないヤツだけが後ろを振り向きながら安全運転をして生き残った、ということかな。スクラ ンブル(前に向かって進みだす)のと、ヴェロシティ(ひたすら前へと突き進む)の違いが 二人を隔てたわけで。

部会メモ

マルドゥック・ヴェロシティ1



マルドゥック・ヴェロシティ2



マルドゥック・ヴェロシティ3



2019.02.24 Yahoo!ジオシティーズより移行
http://www.geocities.jp/tohoku_sf/dokushokai/velo3.html
なお、内容は執筆当時を反映し古い情報・元執筆者の偏見に基づいていることがあります by ちゃあしう
最終更新:2019年03月18日 23:22