2006.12.22

SF研読書会 『パプリカ』筒井康隆  byO林


1 著者について-筒井康隆


略歴
1960年SF同人誌『NULL』を発行。短編の『お助け』が江戸川乱歩に評価され、「宝石」誌に掲載される。
1987年『夢の木坂分岐点』で第23回谷崎潤一郎賞受賞。
1989年『ヨッパ谷への降下』で第16回川端康成文学賞受賞。
1992年『朝のガスパール』第12回日本SF大賞受賞。
1993年 パプリカ刊行
1993年 10月、断筆宣言。
1995年神戸市垂水区の自宅が阪神・淡路大震災で被災
1996年自主規制を撤廃する旨の覚書を出版社と交わし、断筆解除。
1997年シュバリエ章叙勲。パリゾリーニ賞を受賞。
1999年『わたしのグランパ』で第51回読売文学賞受賞。
2002年紫綬褒章受賞。
2007年 『パプリカ』今敏監督による同名の劇場用アニメ映画の原作公開に先駆け第63回ベネチア映画祭のコンペティション部門に出品された。

2 登場人物


時田浩作:理事 OT機器、DCミニの開発者
氷室:時田耕作の助手
千葉敦子:理事 夢探偵パプリカとしての秘密の顔も持つ
島寅太郎:日本精神医学研究所所長 人がよい
能勢龍雄:自動車メーカー重役 所長の友人
粉川利美:能勢の友人 警視監
乾清次郎:副理事長 日本精神病理学会会長
小山内守雄:副理事派の職員 乾精次郎の弟子
陣内:ラジオ・クラブ マスター
玖珂:従業員

3 用語


PT機器:他人の夢を画像として出力したり、夢の中に侵入したりすることができる。また他人の夢を別の人間に投射したりすることもできる。
DCミニ:PT機器を小型したもの。「原理確定するといくらでも小さくできる」?
蛋白質の自己組み立てができる生物化学素子が使われ、互いのアクセスには生体電流が応用されている。睡眠を深める効果がある?アナフェラキシー効果がある?
底面の直径が6,7ミリで高さ1センチほどの円錐形となっているが、映画版で      はインカムのようになっていた。
DCミニを着用したもの同士なら、夢の中で互いの思考が読める。
     →生体電流を使用してるから 夢の中でDCミニを奪還できた
→DCミニが、DCミニ自身の持っている機能、または装着している人間の潜在的な精神力のエネルギーで持って、一旦原子レベルまで分解され、同様にしてDCミニを装着した別の人間のところで、ほぼ同時に再構成された

4 あらすじ


第一章

 精神医学研究所に勤める千葉敦子はノーベル賞級の研究者。彼女には、他人の夢とシンクロして無意識界に侵入する夢探偵パプリカとしての秘密の顔もあった。
 時田耕作と千葉敦子のPT機器に関するノーベル賞受賞の可能性が騒がれる中、病院内では、PT機器をとおして、分裂病が伝染するといった噂が流れ始める。それはPT機器を嫌悪する副理事:乾精次郎を黒幕とする内部抗争の始まりであった。千葉敦子は内部抗争の収拾に走る中、所長:島寅太郎から彼の友人、能勢龍雄の不安神経症の治療を頼まれ、パプリカとして治療を開始する。能勢龍雄の治療には成功するが、時田耕作が新たに開発したDCミニが、乾一派の手に渡ってしまう。
 能勢龍雄の依頼により、今度は警視監、粉川利美の抑鬱症の治療に当たる。そうしている間に、乾一派の小山内の手により、島と時田耕作がDCミニによって、分裂病にされてしまう。 粉川利美、能勢龍雄はパプリカが何らかのトラブルに巻き込まれているのではないかと考え始め、力になろうと行動を開始する。

第2章

 粉川と能勢を味方につけ、島と時田の治療をDCミニで開始するパプリカ。その最中で、乾、小山内が治療中の島の夢に侵入してくるのだが、夢の中で小山内から奪還したDCミニが覚醒した後も手に持っていることに驚愕する。DCミニの隠れた機能が徐々に明らかになってくる。
 DCミニを通して、乾、小山内らと接触をしていくうちに、徐々に、現実と夢の区別が曖昧になっていく。目が覚めているのか、それとも目が覚めた夢なのか?
 乾、小山内らによって覚醒したかのような夢に囚われたパプリカ。粉川と能勢の活躍によって覚醒することは出来たが、ついに夢による現実の侵食が始まる。(DCミニによる残留効果?)現実空間に、氷室や能勢の夢に出てきた巨大な日本人形や、虎が現れ、DCミニの残留効果は度を増し、睡眠をとるだけで他人と夢を共有するようになっていく。そんなさなか時田と敦子のノーベル賞受賞が決定する。それを機に乾精次郎が攻撃を仕掛けてくる。 夢の中から現実へ自身の分身のような妖怪、怪物を発生させ、街は地獄へと化していく。
能勢や粉川、ラジオ・クラブの二人などの協力で事態は一旦の収束を迎える。
 敦子らは式典のためストックホルムへ向かう。
 ノーベル賞授賞式会場で再度攻撃を仕掛けてきた乾と決着をつけ、乾は消滅する。

5 感想

 サイコセラピー機器を通して、他人の夢に侵入し、精神治療を行うという発想は面白かった。パプリカというコードネームはちょっと微妙な気がしたが。
 PT機器についてはまさに夢のような機械である。作動原理は本文中「フロート型コンピューター画像処理のスリット・ノー・チェック方式が・・」とあり、なんとなく横文字でごまかされた感がある。たまに本文中に出てくるフロッピーという単語に書かれた時代を感じた。夢治療の場面では、夢の中の登場人物や、背景が、その人間の抱えている問題や、おかれている状況を暗示的に表していたわけであるが、パプリカがそれをうまく説明づけていく様はおもしろかった。しかし、ああもうまく解釈できるものなんだろうか?精神を病んだ人間の夢に、その原因が必ずしも見出せるものであるのか?といった疑問は浮かんだ。
 正直ストーリーそのものは単純であった。能勢の治療の跡に、粉川の治療をまたやるのは蛇足のように感じた。パプリカの味方を増やすなら別の話を入れて欲しかった。後半はDCミニがやりすぎのように感じた。夢と現実の境目がうんぬんといったところは、本文中でもあまり説明がされてないし、最後のほうではやたらと魔物が出てきたりとSFというより、ファンタジーのようになってしまっている。
 批判めいた文になってしまったが、結構楽しめた。文庫でやるよりは、漫画とかアニメなど視覚的なものを通してやったほうが面白いと思う。映画版も面白かったが、収まりきっていないように感じた。

覚醒時と夢との関係

 寝ながら見る夢では、その人の普段は抑圧されて意識していない願望などが如実に現れるケースも多いとされる。ただ、それらは誇張されている事も多く、結果的に現実としては不可解な現象で表現される事が多い。
 また、普段の生活から興味がある現象について夢を見やすいといわれている。具体的には色に興味がある人は色が付いた夢を見る、などである。
 覚醒時に考えていた(悩んでいた)事が影響するケースも多く、考えていたテーマに新しい着想を夢の中より得た事例もある。ベンゼン環の分子構造を解明したドイツの科学者フリードリヒ・ケクレは、夢の中で尾を咥えた蛇を見た事が解明の糸口となったと述べている。しかし科学史研究者の間ではこのエピソードは後に創作されたもので事実ではないという見解が定説になりつつある。文学に於いてはブラム・ストーカーがカニを食べ過ぎて悪夢を見、これを元に吸血鬼ドラキュラを書き上げている。この他にも、重要な発見や発明、芸術作品など、夢で得たイメージを元としている事例は多い。
[編集] 夢の心理学的分析
深層心理学においては、無意識の働きを意識的に把握するための夢分析という研究分野がある。
夢分析の古典としてはジークムント・フロイトの研究、あるいはカール・ユングの研究が広く知られている。そこでは夢の中の事物は、何かを象徴するものとして位置づけられている。 ただし、フロイトによる夢分析に限ると、性的な事象に紐付けられた説明があまりに多く、そのまま現代人や日本人に適用するのは無理がある、とする説も多い。(例えば、銃が男性器を、果実が女性器を、動物が性欲や性行為を象徴するなどとされたりした。これには、当時の禁欲的な世相が反映されているとする説や、フロイト自身が抑圧された性的願望を抱いていたために偏った解釈をしているとみる説が多い)
現在では夢分析も改良され、広く現代人の実情を考慮した分析が多い。自分で自分の夢分析をするためのガイドブックや事典なども出版されており、何がしらの自己分析・自己発見の役に立つことも多いようである。

夢と占い

 夢占い(あるいは夢判断)では、夢は見た者の将来に対する希望・願望を指すか、これから起き得る危機を知らせる信号と考えられている。また、おきた現象がそのまま実現する夢を予知夢と呼び、可能性がある夢を詳細に検討する場合もある。  


部会メモ


部会メモ


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http://www.geocities.jp/tohoku_sf/dokushokai/paprika.html
なお、内容は執筆当時を反映し古い情報・元執筆者の偏見に基づいていることがあります by ちゃあしう
最終更新:2019年03月26日 00:23
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