機本伸司

  1956年兵庫県宝塚生まれ、甲南大学理学部応用物理学科卒業。
2002年「神様のパズル」で第3回小松左京賞受賞。映画監督?
他の作品
 『メシアの処方箋』
 『僕たちの終末』

あらすじ

  大学生の綿貫くんは女のしりを追いかけて研究室を選んでしたまったダメ人間である。教授から素粒子加速器の設計者にしてひきこもりの天才、穂瑞沙羅華をゼミに連れ出す役を仰せつかった彼は、なにやら偉そうな彼女に『宇宙はどうやってできたのか』という謎を突きつけ、彼女が答えられない姿を見て悦に入っていた。が、そのせいで彼の卒業を左右するゼミのテーマは『人に宇宙は作れるのか』というものなり、しかもディベートでは不本意ながら穂瑞と二人で「作れます」側に立つことになってしまう。ディベートに負けたら単位はもらえない。就職活動もせねばならない。その上、教授からの受けを良くしようと農業の手伝いにまで手を出してしまった。迷走する綿貫くんの明日はどっちだ! え? あぁ、明日は宇宙開闢でしたか・・・
 というお話。

登場人物

 綿貫基一……読者と一緒に勉強するワトソン君。今時の学生の学力なんて所詮こんなもんさ。K大学理学部所属。
 穂瑞沙羅華…四歳で微積ができた物理学のホームズちゃん。ひきこもり先生。
 佐倉・・・・小説などの中にのみ頻繁に存在する、無能な主役をサポートする有能な友人。が、今回は有能すぎて保積さんを持っていってしまった。
 保積蛍・・・綿さんの片思いの相手。なのに、まったく目立たない。
 須藤・・・・ソウル・オリジンの信者。大宇宙根源魂。
 相理・・・・研究室の助手の人。そしてロリ。院に行かずに助手になったツワモノ。
 鳩村・・・・教授。苦労人。
 森矢・・・・見た目切れ者の助教授。ツンデレパパ。
 橋詰老人……冒頭から登場している人。ある意味主役。この作品のメインテーマの答えを求めて大学で勉強中。不法侵入者。
 お婆さん……ご斎田で田植えをしている捕まった宇宙人。


用語

重ヒッグス粒子

んなものはアリマセン。ヒッグス粒子は未発見。

フット・イン・ザ・ドア

初めに小さいお願い事を受け入れてもらうことで、次に大きなお願い事を受け入れて
もらいやすくする方法。

量子コンピュータ

この世界ではすでに存在しているらしい。何十年後の話なんだろうか・・・

グラスビュア

おそらく、頭脳は大人な人が使っているアレ。

ヒィードバック

大雑把に言ってしまえば、得られた結果を次の行動に活かすこと。

加速器(Wikipediaより)

荷電粒子を加速する装置の総称。原子核/素粒子の実験に用いられるほか癌治療などにも応用される。加速された粒子を固定標的に当てるフィックスドターゲット実験と、向かい合わせに加速した粒子を正面衝突させるコライダー実験がある。

シンクロトロン(Wikipedia)

円形加速器の一種。 粒子の加速とともに、磁場を強くし、周波数も変えて、加速する粒子の軌道半径を一定になるように加速を行う。
この加速器は電子にエネルギーを供給し続けて、円軌道に沿うように周回させるので、電子蓄積リング、または電子ストレージリング (Electron Storage Ring) とも呼ばれている。代表的な施設に、兵庫県にあるSPring-8、茨城県のフォトンファクトリーが挙げられる。ちなみにこの作品における『むげん』の旧称はRING-Aである。

ポジトロン(Wikipedia)

陽電子(positron)は、電子の反粒子。絶対量が電子と等しいプラスの電荷を持ち、その他の電子と等しいあらゆる特徴(質量やスピン角運動量 (1/2))を持つ。ポール・ディラックがディラックの海という空間にできる穴の形で、初めて正電荷を持つ電子の存在の仮説を立てた。ちなみに、エヴァで何回かポジトロンライフルが使われました。

プエルトリコにある巨大電波望遠鏡

http://wiki.chakuriki.net/index.php/
アレシボ天文台。ここは、球外知的生命体探査(SETI)と縁が深い。1974年には、「アレシボ・メッセージ」と呼ばれる電波による地球外知的生命体へのメッセージをM13星団に向けて送信している。 また、その天文台は、映画「007ゴールデン・アイ」に登場している。(敵の秘密基地という設定で) また、どうでもいいが、プエルトリコにはチュパカブラがいるらしいですよ?

素粒子を観測するために作られた巨大水槽

いわずと知れたスーパーカミオカンデである。

真空

地球と月の中間が約10のマイナス6乗パスカル程度。『無』には程遠いですなぁ。

ちなみに、現在の物理学では真空を、実在的には何もないが、エネルギーはあり、仮想的な粒子が詰まっているもの、と考えているそうな。偉い人が考えることはわかりません。

ブラックホールの蒸発

そういうものなんです。

素粒子(Wikipedia)

物質を構成する最小単位。現在はレプトンとクォークであると考えられている。この二つはフェルミオンに分類されており、また、ゲージ粒子やヒッグス粒子が分類されるボソンというものもある。このへんは難しいので各自自習のこと。ちなみに、超ひも理論とは、レプトンやクォークはひも状の存在なんじゃないですか、というお話。

ファラデーの法則

ファラデーさんが考えた電磁誘導の法則のこと。これも去年習ったなぁ・・・orz

プランク時間、プランク長さ

時間も長さも本当は連続などではなく、この値よりは小さく区切ることができませんよ、というときの値。世界は常に断絶しているのだ!

特殊相対性理論(Wikipedia)

1. 力学法則はどの慣性系においても同じ形で成立する(相対性原理)。
2. 真空中の光の速さは光源の運動状態に無関係に一定である(光速不変の原理)。
この二つの仮定を満たすために、それまで暗黙のうちに一様で変化しないとみなされていた空間と時間が変化するという結論が導かれた。
「光の速度に近い、加速していないロケットから、光の速度が c に見えるようにするためには、どうすればよいか。」
アインシュタインの答えは、「ロケットの時間が地上と同じように進むとすると、ロケットからは光の速度がのろく見えてしまい、不自然である。ロケットの中の時間の進み方が遅くなるとすれば、ロケットの中から見ても光速度(距離÷時間)は変わらないだろう。」 というものであった。

オルバースのパラドックス

考えてみよう。


考察

  まず言っておきたいのだが、この作品の一番面白いところは、最初の一行目だよな?
 私が最初にこの本を手にとったとき、このセリフに惹かれて『神様のパズル』の購入を即決した。このテーマはSFの中でかなり価値のあるものであると、そう感じるわけで。
ちなみにこの作品の本当の主題は、橋詰老人が口にする「あなたは何ともないのですか? 宇宙がどうしてできたかも知らずに生きているということが。そしてこんな根本的なことも分からずに死なねばならないということがですよ」という考えと、綿貫が田植えの手伝いをした老婆が述べる、生業である農業すらやることになっているからやってるだけであり、結婚も子育ても同じだったと言い、他に楽しみも知らないが充足しているのだ、という二つのあり方の対立と融合を描くことであったと思われる。
この小説における青春もの的な側面は、おそらくこの辺りを題材にするためにわざわざ若い人間を持ってきたのではないかと。つまり、ある程度話の骨格を作った後に人物を役割ごとに当てはめて言った感が強く、正直登場する人物たちのキャラが薄い。いや、普通はSF小説ってそういうものが多いので普通といえば普通なんだが、ある意味表紙に騙されたと感じる人もいるだろううなぁ、と。
最後の無理矢理に近いようなハッピーエンドや、田植えの意味などはよくわからないし、いまいち納得がいかないが、それでも作中における物理に迫っていく姿勢そのものはかなり秀逸だった。理系人間の感想ですな。
ちなみに、映画はどうなっていることやら・・・

部会メモ




2019.03.19 Yahoo!ジオシティーズより移行
http://www.geocities.jp/tohoku_sf/dokushokai/puzzule.html
なお、内容は執筆当時を反映し古い情報・元執筆者の偏見に基づいていることがあります by ちゃあしう
最終更新:2019年03月18日 23:45
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